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2012/02/13

地球の舳先から vol.225
マダガスカル編 vol.2(全8回)

「バオバブだぞ!降りろ!さあ!写真を撮れ!」
…もちろんこんな乱暴な言い方をされるわでけはないのだが、
たぶん1日100回くらいこの台詞を聞いた。

辿り着いたひとつめのディスティネーションは、定番のバオバブで有名なムルンダヴァ。
空港を出てとりあえず、「暑ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」と叫ぶ。
もう、のっけから、ガイドがバオバブの話しかしない。
当たり前である。バオバブの木はマダガスカル観光の最たるもの。
しかしこれが、後生大事に保護区のような場所に植えられているのかと思いきや、
人々の生活し往来する道にあちこち生えているというすごく庶民的なものなのだ。
この記事に掲載した、上の写真は、わたしが一番気に入っているもの。
信じられない規模の自然の中に、人がいて、当たり前のように共生している。
わたしの中では珍しくなってしまったそのこと自体に、何度も、目を瞠った。

ホテルは海側の2階が予約されており、広いバルコニーからはマングローブの林が見えた。
小さなカヌーのような手漕ぎボートがゆっくりと往来している。
わたしもその小さなボートに乗って、ベタニアという漁村へショートトリップへ出かけた。
ときは雨季。雨が降ると増水して、行けなくなるそうで、さっそく沖向こうへと渡る。
漁村なのに、ニワトリやヤギ、ブタなどの家畜がたくさんいて驚く。
ここの人たちは銀行を使わず、キャッシュはすぐに家畜に換えてしまうのだそうだ。

 

ホテルへ一旦帰還し、さっそくバオバブツアーが始まる。
小さな村にあり、豊作などを祈願する神聖な場所になっているバオバブ。
「愛し合うバオバブ」と名付けられたツイスト型のもの(取っ組みあうバオバブにしか見えない)。
木の幹を撮影していると、現地の子どもが幹の中に手を突っ込んで、
その小さな穴のスペースに巣をつくった鳥の青いきれいな卵を取り出して見せてくれる。
途中、ガイドがバオバブの花を拾って、くれた。鮮やかなオレンジ色、潤沢な香り。
1メートルに満たない細い細い枝はようやく20年物で、大きなバオバブは樹齢700年。
そもそも、700年前から、土地がこのままであることが、わたしには信じられない。

と思っていた途中、異様な光景に立ち会った。
バオバブの木が生えている乾燥地帯であるはずの一帯が緑に染まり、
水生植物であるはずのホテイアオイが咲き乱れている。
あまりに異様な光景で、美しいとはとても思えず、ガイドに思わず尋ねる。
聞くと、近くに中国が建設したサトウキビのプランテーションに常時スプリンクラーで水を撒くため
この場所だけ、湿地帯と化しているのだそうだ。無論、バオバブは根腐れし、ちょっとした台風でも倒れてしまうのだという。


(まったく、破壊するのは自国のみにして頂きたい…。)

最も有名なバオバブの並木道で夕日が暮れるのを待つ。
のどかにテーブルを出して、バオバブの実や土産物を売る人々。
わらで作ったような原始的な家に、子どもたちと子犬、鶏などが走り回る。
それがあまりに“豊かな”光景に見えて、複雑な思いが去来する。

…などと思いを馳せている暇も無い。
まるでロケコーディネーターと一緒にロケハンに来たカメラマンのように、わたしは
「ここから夕陽が落ちるぞ」「待て、あの雲を待つんだ」「この角度から撮れ」
「今度はこっちだ」「次はあのバオバブ」「あっちのバオバブは最大級だ。ズームで撮れ!」
と、ガイドに指示されるがままに「あ、はい!」と、写真を撮る。
あらゆる角度やアングルや色調で収めたはずなのに、わたしの撮影技術が悪いのか、
なんだか似たようなバオバブの写真が300枚ほどおさまって、わたしのSDカードを圧迫する。
一日が終わるころにはすっかり当初の感動も薄れ、帰りの車の中でうとうとしてバオバブの夢を見た。

「明日のバオバブツアーは、何時出発にする」
ホテルへ着き、にこやかに詰め寄るガイドに、わたしはこの日もっとも明瞭な英語を使った。
何か伝えたいことがある時、人は必死になるし、初めて言語というものの存在意義を認識するものらしい。
「や、もういいです。NO MORE BAOBAB」
代りに、キリンディー自然保護区というところに動物を見に連れて行ってもらった。
行きと帰りにもれなくバオバブ並木道でふたたび車を降ろされたのは、言うまでも無い。

つづく

2012/02/13 12:44 | ■マダガスカル | 2 Comments

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