« | Home | »

2007/12/13

地球の舳先から vol.34

3_001.jpg

カナダ旅行記 vol.3(最終回)

最後の晩に、数百枚の年賀状の最後の1枚を書き終えた。
山小屋で暖をとる間に、せっせと年賀状を書いていたのだ。
最終日にはもう、私はオーロラを見ることは諦めていたし、
よし、次はフィンランドだな、とも思っていた。

それから、懐中電灯を持って、外へ出た。
しかし、歩をすすめる気には、なれなかった。
樹海で死ぬ人間の状態が、よくわかったような気がする(入ったことはないが)。
360度、すべてが同じ景色に見えて、一歩歩けばどこから来たのかわからなくなる。
おまけに、かさかさ言う小動物の足音や、もうちょっと大きそうな生き物の呼吸が聞こえたりもする。

あの地で、自然は決して広大なものではなかった。
広く遠くまで続いているからこそ、自分の手の届く半径のところだけが、世界だった。
そこに取り残されることを思うとき、自分は異常なまでに小さく頼りないが、
それは逆に、自分以外を中心に据えることは考えられない、究極の利己でもあった。

3_002.jpg

空を見上げても、景色は変わらない。
そのことが救いなのか、残酷なのか、わからなかった。
懐中電灯をつければ、すぐそばにある木の葉だけが、照らされた。

虎とかアルパカとか、もしくはもっとわけのわからない動物に、食われるかも。
そう思いながら、防水もきいたウェアで、雪の中に寝た。
高いはずの空がどのへんにあるのかさえ、暗闇の中ではわからない。
孤独は、ひとりになることではなく、自分しか居ない、ということなのだろう。

山小屋の明かりのそばまで、戻った。
ほんのすこしの明かりがあってはじめて見えるものもある。
空気のなか一面を、ダイヤモンドダストが舞っていた。
end

2007/12/13 07:53 | ■カナダ | No Comments

Trackback URL
Comment & Trackback
No comments.
Comment




XHTML: You can use these tags:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>