Home > ■フィンランド

2010/01/22

地球の舳先から vol.152
フィンランド編 vol.1

fin012.jpg

出発のその朝に使った化粧品と、携帯の充電器を詰め込んで、わたしのパッキングは終わる。
がらごろと引きずる小さめのスーツケースは、5年前の北朝鮮旅行のとき新調したもの。
ソフトタイプのため荷物が大幅にはみ出ても上に乗って押せばなんとかカギがしまるすぐれもので、ほとんどの旅を一緒にわたった相棒だ。
相棒を守るため、わたしはオレンジ色のスーツケースカバーを愛用している。
なぜなら初回の使用時、1発目のフライトを終えて出てきたこやつには、新品とは思えない豪快な傷がついていたからである。
その後、面倒ながらカバーをかけて預けるのだが、このカバー、年2回程度の旅行にも関わらず
小さな穴は無数に空き、いろんな色の汚れがつき、取っ手は4回縫い直してまたやぶれた。
そのくらい、やつにとっての旅はハードなのである。
もしかしたら、僻地に行きたがる持ち主にあたってしまった運の問題かもしれないが。

久々のひとり旅、しかも最低限の現地手配しかしていない珍しい旅行。
だれかにがっちり守られる旅が多かったため、旅能力が落ちていそうでちと不安。
向かう先は羽田空港、これまた海外旅行の緊張感を醸し出しにくいシチュエーション。
そして実際、わたしの旅能力はやはり大幅に低下していた。
まずは羽田のチェックインカウンターでなぜか1時間も国内線の行列に並び、
「えっ、海外?!ターミナルからして違うけど」と突っ込まれ、軽いジョグ。
「海外っていうけど、関空までは国内なんですけど」などという素人じみた返しをしてしまう。

さっそく遅延のJAL。乗継時間が短くなった。のはわかってはいたものの、関空でぼーっと歩いていたらなぜか空港の外に出てしまう。「どこだここ!出ちゃダメだよ!」と一人ツッコミ。
関空は3度目だが、いまだに構造がわからない。
寄り道をしているとまた何か起きる気がしたので、すなおに搭乗ゲートへ進む。
初日だけで、羽田-関空、関空-ヘルシンキ、ヘルシンキ-イヴァロと3フライトを乗り継ぐ。
8時20分に羽田を出て、現地時間19時着、時差7時間をみて、都合18時間移動の日。
離陸のときの、ガタンという最後の車輪が外れる音は、いまだにぞっとしない。
ヘルシンキまで、たった9時間半。映画を2本見て過ごす。寝る時間でもないのに電気が消えたり、食べる時間でもないのに食事が出てきたりするので、すっかり腹時計がこわれる。

フィンランド航空は、巷で絶賛されているほどのクオリティではなかったが、不足もなかった。
ヨーロッパ系の直行便なんかで旅をする日が、わたしにも来るとは。
まわりを見渡すと、パリやロンドン、イタリアのガイドブックを手にした乗客が多い。
安めのフィンランド航空で、ヘルシンキから乗り継いでいくのだろう。
意外にもわたしがドのつく観光地であると考えていたフィンランドに行く人は少ないらしい。
ヘルシンキから、フィンランドで日本人に一番人気のオーロラ帯であるイヴァロという地に飛ぶ飛行機に乗り継いだ頃には、日本人はわたし一人になっていた。
おまけにこの国内線、大家族連れだらけ。子どもがぎゃあぎゃあ喚き、叫び、飛ぶ。
ここでも飛行機が遅延したため、絶好の密室保育園と化した機内でわたしは頭を抱えた。
キャビンアテンダントももはやシートベルトを締めさせるのを放棄している…。
「勘弁してくれ」何度日本語でそう呟いたか…
おもしろかったのは、飛行機が着陸する瞬間、子どもだけでなくフィンランド人の大人からも一斉に拍手が起こったことだった。国民性なのだろう。パイロットに届いただろうか。
そうだよな。飛ぶはずのないものを飛ばしているんだもんな。とわたしも納得して拍手。

こうして無事、荷物のロストも無く相棒を引き上げ、わたしはフィンランドの地を踏んだ。
もう暗い。というか、日照時間が数時間とのことだから、これがデフォルトなのだろう、
とおもっててくてく歩く。日本人は、ほんとうにいなかった…。

fin02.jpg
(北極圏のイヴァロ空港。)

つづく

2010/01/13

地球の舳先から vol.152
フィンランド編 序章

たったの9時間半で着く、直行便も週15便も出ている、実はとても近いフィンランド。

fin11.jpg
(自分の足跡。スノーブーツで歩きにくいからか、意外と小幅だ)

2010年、1月3日。わたしはフィンランドで予定していたすべてのスケジュールを消化し、
ヘルシンキ空港へ降り立った。午後2時、気温マイナス15度。
豪雪でも電車もバスもぴったり時間通りに運行し、街中で話しかける人々は流暢に英語で答えてくれる、キッチリとして民度も高そうなこの国の国民性をひしひしと感じる旅だった。

個人旅行でここまですべてが予定通りに進むなど考えられないような奇跡で、
東ティモール以来、ひとり旅を長らくしていなかったわたしにとってはありがたかった。
スーツケースの取っ手をみじかくして、eチケットを握り締め、チェックインカウンターへ向かう。
こういう旅も、あるんだ。安堵感とともに顔を上げたわたしは、
目の前で繰り広げられる騒然とした光景にふと冷静さを取り戻し、自分で自分に突っ込んだ。

…いや、あるわけないじゃん、そんなの。

8つあるフィンランド航空のカウンターの中には、グランドスタッフがわずか2名。
その先には、100人はいようかという多国籍な旅客の超行列。
閑散としたカウンター。「乗り遅れる」というヒステリックな叫び声。

これは…

明らかに…

その光景を見て、わたしの頭のなかに浮かんだ一語が、明確な確信で結ばれた。

“ストライキ”

こうしてわたしの「完璧だったフィンランド旅行」は、最後の最後であっけなく覆された。
しかしこれだけのことになっているんだから、飛行機が遅れるだろうというわたしのヨミを裏切り
予定通りに離陸の30分前には緑色の「搭乗開始」表示が灯り、「まもなく最終案内」に変わる。
2時間半、行列に並び、チェックインカウンターで先頭に立ったのは離陸の10分前。
ところがギリギリすぎてデータセンターが閉まっており予約が確認できないと言われる。
ようやくつながった空港の日本人スタッフの「いや遅いことは遅いので、やっぱ2~3時間前
には空港に来てくれないと」の台詞に(日本語で)「あたしは2時からいたんだぎゃー」と吠え、
ほぼ手書きのボーディングパスを握りしめる。離陸5分前。
軽装で手荷物チェックを抜け、出国管理で「ヨーロッパ在住?」となぜか突っ込まれる。

それでも本気ですべりこんだ機内で「アナタの席いまないから、みんな乗ったら空席を案内する」と後方に立たされる。なに、コレ!
「あんたんとこのおかげでお土産も買えなかったしおなかもすいたからなんか食わせろ」
と主張すると、「ユーロ余ってる?」と2ユーロでカップ麺を買わされた。なに、コレ!!
(フィンランド航空はおつまみ、カップ麺、スピリッツ酒類は有料。ご注意)

結局飛行機は、「荷物にトラブルがありました」とのことだったのだが、強引にもわずかに30分遅れで出発。絶対に乗り遅れた人がいたと思われる。
このあたりでわたしは「時間に正確なフィンランド人」のデメリットを見た。
成田へ着くと、99%ロストするだろうと最初から諦めていたわたしのスーツケースは
意外や意外、一番最初にコンベヤーに乗って現れた。はて、と機内放送を思い出す。
「荷物にトラブル・・・」・・・もしかしてこの子?

とはいえ、最後のどんでん返し以外は素晴らしかったフィンランド。
次回から、フィンランドの旅行記をおとどけします。

« Previous