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2015/10/28

■DAY2 57m
さて、例によって悩みに悩み、DAY2はついに-57mを申告しました。

-57mは、4年前のギリシア大会で出した公式自己ベスト記録と同じ深度。そして58mでブラックアウトの経験があります。55mは何度も潜っていますが、ここから先の50m代後半に、突如として壁が現れます。

私の場合、耳抜きが障壁になることはほぼありません。申告したボトムまでは行こうと思えば行けてしまいます。問題は「息が持たない」という点なので「行けるか行けないか」ではなく「きちんと往復して帰ってこられるか」という帰り道が課題。浮上途中で酸欠になれば非常に危険なブラックアウト(失神)をしてしまいます。これを自己ベストゾーンで潜行の段階で見極めるのはかなり難しいのです。

これを考えるとどうしても申告をためらってしまいます。でも最後はもうこれ以上は逃げられない、57mしかない・・と消去法的に決定。前日はしっかりごはんを食べた後、早々にベットに潜り込みました。

さて、当日の朝・・・いつもの青空を見て深呼吸、と部屋の窓を開けると。

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ん??景色がセピア加工になっている・・・

ちなみにこれがいつもの景色。
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毎日抜けるような青空の中で生活していたので、太陽の無い茶色の風景には驚きです。まあ、曇りの日くらいあるか・・

ともあれ、ストレッチと軽い朝食を済ませて、ボート乗り場へ。途中まで同室の諏訪恵選手が一緒に来てくれましたが、この時何となく息苦しく「これ、光化学スモッグかな??」と言い合ったのを覚えています。

沖に出ると、空気がどんどんくすんできました。海はとても穏やかなのですが、空気が茶色・・沖から見渡せるはずの街並は一切見えず、海の中より空気中のほうが透明度が悪い。

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こんな不思議な空の下、-57mに向けて淡々と時間が迫ってきます。ウォーミングアップを終えて競技ゾーンへ。この日既に競技を終えた木下選手&廣瀬選手が2人でサポートのために待っていてくれました。二人のサポートは可愛くて面白くて、競技直前まで気持ちを和ませてくれました。

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↑これは競技開始直前・・

ここ何年も、55mをしつこい位何度も潜っていたお陰で、57mは頭の中で十分イメージすることが出来ました。40m頃から始めるフリーフォールですが、いつもより、2秒多くカウントすると目の前にボトムプレートがありました。

「よし、ぴったり!」そしてあとは浮上するだけ、、とはいえ、私にとってはこの浮上が一番の課題。途中で意識を失ったりしないように、体全体をリラックスさせながら、でも気持ちは引き締めながら浮上と同時にロープの高い位置を掴んでしっかりサイン。そして・・

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「ホワイトカード!」
今大会最初の公式記録は自己ベストタイ。この日のダイブの感触の良さは格別でした。全てイメージ通り。酸欠感は全くなく、身体にしっかりと血液が巡っている実感。浮上してロープを掴んだ瞬間「もっと深く行ける」そう確信しました。

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(木下 紗由里選手、廣瀬花子選手、私)

この後、環境は悪化します。茶色い空気は、アラビア半島からの砂塵でした。なんと、10年に一回のレベルの砂塵だったようです。お隣のレバノンやイスラエルでは、砂塵の影響で病院に担ぎ込まれる人が出たり、外出禁止令が出た程の酷さです・・
<当時のBBCニュース>
Middle East dust storm puts dozens in hospital

キプロスはヨーロッパというより、地理的にはほぼ中東ですからね。
翌日はまたレスト。砂塵はどんどん酷くなってきました。私は喉が苦しく、咳が止まらず、一歩も外に出られない、そんなオフを過ごすことになりました。この翌日は一番砂塵が酷く、砂塵が気管支や肺に入ることを恐れてトレーニングに出ない選手もいました。

■DAY3 60m
プレ大会の最終日。この日私は、60mを申告しました。

しかも今回の申告は1秒も迷うことなく。一大決意をしたわけでもなく、他の選択肢を検討する余地もなく決まっていました。1mで迷う私が、+3mで何故迷いもしなかったのか不思議ですが。

「こうしたい」という自分の意思というより「こうすることになっていた」とでもいう感じ。人生にはそういう時って、ありますよね^^;

60mは私にとって4年越しの壁。57mまでは4年前にサクッと到達出来たのに、その後のたった3mがどうしても突破出来ませんでした。60mを目指して本当に色々な奮闘をしてきました。フィンワーク、閉息トレーニング、陸上トレーニング、肺活量訓練、体幹トレーニング、試行錯誤しました。が、結局到達出来ず。

私が悪戦苦闘している間に、いとも簡単に70m,80mと潜る選手が増えてきました。けれど、3年前のバハマ大会でも2年前のギリシア世界大会でも、60mは失敗。私は万策尽きて、もう私の身体はこれ以上は無理なのだ・・といわば諦めの境地に達していました。そしてもう、60mを「目指す」ことはやめていました。ただ、今年はキプロス大会に向けて、ベストを尽くそう、と粛々とトレーニングし、食事や鍼灸で身体を整えていました。(そして結果、ブラックアウトしやすさの原因の一つと考えられる低血圧が改善しました!)

そして「この日」は、やってきました。
まだ砂塵が残る中、マスクとサングラスをして船に乗り込みます。少し咳も出ています。海は穏やかで青くてトロンとしていました。

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バージ船の上でストレッチと呼吸、ビジュアライゼーション。

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ゆっくりウェットスーツに着替えて、ウォーミングアップはいつも通り。顔つけ5分、そして10m、15mのフリーイマージョンを1本づつ。

開始15分前、待機場所に行くと前回と同じくdeepダイブを終えた木下選手・廣瀬選手がサポートに来てくれました。全ていつも通り。淡々と進んで行きます。

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カウントの声が聞こえ、潜行開始。

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-20m地点はサーモクラインですぐにわかります。急に水の温度が3-4℃下がり、ひやっとします。薄目を空けると、水中カメラマンたちがこの地点で浮上をし始めるのが見えます。

さあ、ここからはひとりぼっち。
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30mを過ぎ、40mまで、ゆるやかにキックを緩めながら進みます。そしてフリーフォールに突入。このあたりで圧力はもの凄く増しているはずなのに、何故か感じる安堵感。すーっと加速しながら落ちて行くのが心地よい。

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50mを過ぎてもまわりは明るい青。キプロスの海はどこまでも明るい青。目をつむっていてもわかります。

いつもより5秒長くカウントし、目を開けると目の前にボトムプレートがありました。「よし!ピッタリ!」

60mまで「来たこと」は何度もあります。でも浮上を失敗していました。これまではボトム地点で「ずいぶん深くまで来てしまった」と感じていました。ところが今回は「あれ、もう着いてしまった」とあっけなさに笑ってしまいそう。

浮上はいつもより軽快に感じました。50m…40m…30m…ここで1stセーフティダイバーが水中スクーターでお出迎え。このあと20mでさらに2名のセーフティダイバーやカメラマンが出迎えてくれます。

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沢山のダイバーにエスコートされて、私は水面を目指します。

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そして浮上。絶対に水面で失神等しないように、思い切り、高い位置を掴みました。そして、しっかりとサイン。
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取って来たタグを見せながら、顔が笑ってしまうのがわかります。

「ホワイトカード!」

長年の壁をついに突破しました!

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もうこの後は狂喜乱舞です^^;

ジャッジのロバート・キングにハグ!みんなにハグ!!
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60mは、世界大会では全然深い深度ではありません。でも間違いなく、この喜びっぷりは今大会ベスト3入りしたのではないかと思います。木下選手・廣瀬選手、二人とも私よりずっと深く潜ったばかりなのに、自分のことのように顔をくしゃくしゃにして喜んでくれました!

そして、この場にはいない沢山の人たちも、私を支えてくれていました。ありがとうを1000回言っても足りないくらい、感謝の気持ちでいっぱいになりました。早く戻ってこの感謝を伝えたい、という気持ちと、このままずっと水の中にいたいという気持ち。

申告から潜り終わるまで、身体が勝手に動いていたように感じた、とても不思議な一日でした。

この日のダイブは、一生忘れないでしょう。
この先、もっと深く潜れる日が来てもきっと忘れない日です。

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(深度計は左手につけ、タグは右手で取ったので誤差が出ます。潜水時間は1分47秒)

それにしても、よく考えると、あらゆる努力をして、わざわざ60mも潜るなんて、相当馬鹿げていますよね。クレイジーです。そして越えられなかった壁とは何だったのでしょう?本当にそんなものがあったのでしょうか?

でも・・私は浮上後ロープにぶらさがり判定を待ちながら、もっと馬鹿げたことを思ったのです。

「もっと潜りたい・・・そうだ、70mに行こう!」

何年かかるかわかりません。でも私の次の目標はこうして、決まってしまいました^^

photo by Daan Verhoeven , Soteroula Tsirponouri

2015/10/28

大分間が空きましたが、プレ大会のお話と合わせて深度競技での「深度申告」について。

キプロスでは、本大会の前に「Pre Competition」(プレ大会)が開かれました。順位やメダルなどはありませんが、本番と同じ競技環境・ジャッジ陣で実施され、この大会での記録は公式記録として認定されます。

世界大会の本番は各種目1回だけのチャンスなので海況や体調が合わなければそれまで。でもプレ大会では1日おきに3回競技のチャンスがあります。というわけで、ここで記録更新を狙う選手(National recordやWorld Recordに挑戦する選手も!)もいれば、練習試合と位置づけて調整がてら参加する選手、プレ大会には出場せず合間のトレーニングにだけ参加し本大会にピークを持ってくる選手、と様々です。ちなみに私は練習がてら参加することにしました。

■競技船
プレ大会前日。ようやく大会本番の競技船でのリハーサル・トレーニングです。

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見たことも無い装備、巨大なバージ船から鉄の棒が突き出し、そこからロープが垂れています。ウォーミングアップロープが6本、本番ロープが3本。ちょっとロープ同士の間隔が狭すぎるのではなどと思いました。

競技船の甲板には屋根も無くてひたすら眩しい、また、船から海に降りる段差が急すぎる等も発覚。一番この日のトレーニングはまるで「バグ出し」のような状況でした。

■毎回悩む「深度申告」
私は夏の間Deep練習が出来ていなかったので、プレ大会前の4日間の練習は身体慣らしから開始。30m、45m、50m、55mとじょじょに深度を上げ、気持ちと身体がだんだん海に馴染んでいきました。始めはすこぶる調子が悪かったものの、3日目には自分の中で、ようやく大会に臨めるコンディションになったと感じることが出来ました。

少し短くカットしたモノフィンも、フィットしてきました。

そしていよいよプレ大会前日。「深度申告」の時間がやってきました。私はこの「申告」を毎回かなり、悩みます

海洋競技はルール上、申告深度にボトムプレートとロープがセットされます。つまり、申告した深度が潜れる深さの上限になります。

□申告深度に到達すれば成功(ホワイト)
■途中で引き返せば減点(イエロー)
■ボトムまで到達しても浮上時に失神などしてしまうと失格(レッド)

本番で「もっと浅くしておけばよかった」となればボトムまで行かずに引き返せばよいのですが、イエロー、減点になります。逆に「もっと深くしておけばよかった」と思っても、それ以上は潜れません。

これを潜る前日に決めておかなければなりません。プールの大会は競技の最中に自分の上がり時を見極められますが、海洋競技の場合はこの「申告」から既に競技がはじまっている感じです。

体調、メンタル、海況・・・明日を予測しながら、ベストを尽くしながらも確実にホワイトが取れる「浅すぎず、深すぎず、ちょうどぴったりの」申告をしたい・・と思うとたった1m(往復2m分)の申告を決めるのにも迷うことがあります。1mなど誤差の範囲だということがわかっていても、悩みます。

申告深度はメンタルには大きく影響し、リラックス出来たり緊張してしまったり、あとちょっとのところで耳抜きが出来なかったり。また流れなどの海況によっては往復数mの差が成否の分かれ目になりかねないのです。

申告用紙

■たかが申告・されど申告
今回、私は本番大会はCWT,CNF,FIM3種目の出場でしたが、プレ大会では3日とも本命種目のCWTだけに絞って出場する、ここに迷いはありませんでした。ただ、初日の申告深度を
・55m
・56m
・57m
どれにするか?で大いに迷いました。どれも同じに見えますが私にとっては「自己ベストゾーン」なので、1mの重みはとても大きいのです。

事前練習では55mまで潜り、今年4月のバハマでは56mの記録もありました。「もう一度55mで様子を見るか」「いや、初日だからこそフレッシュに挑戦すべきか」等々・・延々と一人ブレスト。潜っている感覚を頭の中でシミュレーションして、紙に3つの数字を書き出して、結局、一番しっくり来た「-55m」に決めました。「ここから本番まではまだあと2週間。前向きなメンタルを保つことも重要なので、まずは確実にホワイトカードでスタートしよう。」そう考えての、いわば守りの数字。実際申告したとたん安心感に包まれ、ああ、これで良かった、と思ったのです。

・・今から考えると、何故ここまで迷ったのか、と可笑しいくらいなのですけれど。。今回の大会中一番迷ったのが最初のこの申告だったかもしれません。長期の大会では、一つのダイブが次のダイブに影響もするので、最初はより慎重になります。

深度を考え過ぎて最後はもうサイコロで良い、と思ってしまうこともあります。人によっては「この数字が好き」ということでサクッと決めたりということもあるでしょう。団体戦はコーチやチームで綿密に計算のもと申告数字を決めるし、NationalRecordやメダルを狙い「数字ありき」で勝負をする選手もいるでしょう。フリーダイビングは数字と密接で、毎回申告を考えるたびに、数字ひとつひとつに、「色」のようなものがあるように感じます。最終的には浅いか深いかよりも「その数字がそのものがしっくり来るか」という感覚で決める、そういった部分もあります。

さて、こうして申告が出揃うと、その夜「スタートリスト」(申告深度とそれを元にした競技時間の表)が発表されます。たかが数字の羅列ですが、この数字のひとつひとつには、各選手の色々な想いや葛藤がたぶん、秘められています^^

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スタートリスト。右から2番目の列が「申告深度」

■DAY1 前日55m
これだけ迷って迎えた大会初日。
競技場までの送迎ボート乗り場につくと、送迎船は影も形もなく、船頭のオジさんから、のんびり「1時間遅れになったよ」と告げられます。

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炎天下で1時間も待つのはちょっと・・と、いったんホテルに戻り、ロビーのソファでウトウト。。

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そしてまたボート乗り場に。大分混雑したボートに乗り込むと、オジさんの携帯に「大会中止」と連絡が入りました。1時間Delayの挙げ句の中止・・そしてDAY1は翌日に延期となりました。

海況不良による中止はよくある話なのですが、今回は競技海況の安全装置のセットの調整が上手く行かなかったようです。これで大幅に時間がずれてしまったため、競技は中止になりました。その代わり、トレーニングで潜るのはok、ということになりました。

周囲は何となく気が抜けてワサワサした雰囲気でしたが、それは気にしない。今日は予定通り大会と思い、-55mを潜り、無事タグを持って来ることが出来ました。一部始終をゆっくり観察しながらのダイブ、良い感触です。そして「多少のことがあっても平常心で潜れる申告」にしておいて良かった、と思いました。

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トレーニングなのでジャッジはいませんでしたが、、自分の中では「よし、プレ大会DAY1、ホワイトカード」ということになり、ガッツポーズでした!

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木下さゆり選手、廣瀬花子選手、みんな予定通りタグを取ってきました!

この後、本来1日おきにあるはずだった大会はスケジュールがずれ、翌日が正式に”DAY1”となりました。その後のスケジュールは延びないので、DAY1, DAY2が連続2日間の競技日になります。

<プレ大会スケジュール>
6th September – プレ大会DAY1⇒中止
7th September – プレ大会DAY1 & 公式トレーニング
8th September – プレ大会DAY2
9th September –  公式トレーニング
10th September – プレ大会DAY3

これまでの経験から、本番は一日ずつ休みを入れながら潜ると決めていたので、自分の中ではDAY1は既に終了したこととして、翌日の競技はキャンセル。まずは良いダイブをした感触とホッとした気持ちと共に、DAY2に向けてゆっくりレストすることにしました。良いダイブの次は潜るのが楽しみになります。長期戦でのこの「また潜りたい気持ちでのレスト」、大事です。
というわけで悩みに悩んだ55mの申告は成功でした^^

photo by Daan Verhoeven , Soteroula Tsirponouri

2015/09/02

さて、キプロス入り翌日、初日のトレーニングはこんな感じです。
大会公式ホテルの目の前がビーチ。

ここから船に乗って沖合のポイントへ。

移動船のキャプテンは女性フリーダイバーSasica。大会コーディネイターのMariaといい、キプロスの女性は美人で逞しくカッコ良い人が多い!

ビーチは黒砂で一見地味でしたが、少し沖に出ると、とたんにすごい青さが広がります・・圧倒されるほと真っ青な青です。そしてとろん、とした水面。海ではなく湖のようです。

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そして透明度はなんと-40m近く!吸い込まれそうな青。
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キプロスは9月は非常に気候が安定しているそうです。

水温は表面が28−29℃ととても温かいのですが、少し潜り-20mを過ぎた頃にサーモクラインが発生し、急に水温が5℃くらいガクっと下がります。さらに深く潜ると17℃くらいまで下がるそうです。

でも、こんなことも予め知っていれば何と言うことはありません。先発で潜っている選手達とは早速情報交換。そう、トレーニングでは各国の選手達との嬉しい再会のひとときでした^^
海上で、水中で、ハグで再会を喜びあいました!数ヶ月ぶり、数年ぶりなのにまるで一週間振りに会った、みたいな感じが良いですね。


私は初日はまずは長旅後の水への身体慣らし。体調をみつつ軽く潜りました。
まだ選手も少なく、とてもゆったりのんびりとした雰囲気です。

今回の大会はプレ大会が9/5-10まで、本大会が9/11-20と長丁場となり、
明日からしばらくトレーニングの日々です。

睡眠と食事とトレーニング。ひたすら自分の身体と対話し、海を感じる、それだけのシンプルな日々が始まりました。

 

2015/09/02

二年に一度開催されるフリーダイビング海洋種目個人戦世界大会、
2015 AIDA Depth World Championshipsがまもなくキプロス共和国のリマソール(Limassol, lemesos)にて開催されます!私にとっては二年ぶりの世界大会です!

CYPRUS

私は昨日現地入りしました。毎度ながらの大荷物で羽田を深夜に出発!今大会が初世界大会となる諏訪恵選手と一緒です。
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乗継ぎはカタールのドーハ。ドーハからキプロスのラルナカに向かう便では、キプロス国境の警備にあたる国連平和維持軍の方達と一緒で、旅客機の周囲8割方が迷彩服に埋め尽くされるという何とも奇妙な気分でしたが・・・数年前まで南北情勢が不安定でしたが、現在は情勢は非常に安定しているそうです。

こちらが上空から見たキプロス島。真っ青な地中海に浮かぶ島国です。
日本との時差は-6時間。ここまでの道程、日本から一回乗り継ぎで空港からも近いので、他の大会に比べると身体の負担も少なく、相当スムースでした。

各国から28カ国、150名以上の選手が集結する大きな大会になります。
この大会の競技種目は3つ。(大会種目の詳細はこちら

  • コンンスタント・ウェイト・ウィズフィン(フィンをつけて海に潜る競技)
  • コンスタント・ノーフィン(フィンをつけず平泳ぎで海に潜る競技)
  • フリーイマージョン(フィンをつけず、ロープを手繰って海に潜る競技)

今回は私は3種目に全て出場することになりました!
夏の間十分がトレーニング出来ず、調整は現地入りしてからとなりますが・・・
体力気力を維持しながら、頑張ります^^

【世界選手権・大会概要】
大会名:
2015 AIDA Depth World ChampionshipsAIDA
フリーダイビング世界選手権 2015 海洋種目・個人戦
日程:2015年9月11〜20日
開催国:キプロス共和国
都市:リマソール
種目:コンスタントウエイト withフィン、コンスタントウエイトwithout フィン、フリーイマージョン
主催者: FREE2DIVE FREEDIVING SCHOOL ・SAVVAS SAVVA
公式HP:http://www.freedivingcyprus.com
後援: AIDA キプロス・AIDA インターナショナル
ジャッジ: KING Robert・GESSMANN Ute
参加国数:28カ国
参加選手:150人以上(日本選手11名)

<日本代表公式FACEBOOK>
⇒大会の情報を随時update。ぜひ「いいね」をお願いします!
https://www.facebook.com/cyprus2015japanteam

<大会公式サイト>
http://www.freedivingcyprus.com/wc-2015

【日本代表選手】
コンスタントウェイトノーフィン(フィン無し垂直潜水)
9月14日
男子:後藤修一、岡本耕輔
女子:木下紗由里、廣瀬花子、武藤由紀

コンスタントウェイト(フィン有り垂直潜水)
9月16日
男子:後藤修一、児島光宏、大星太郎、三上知久
女子:岡本美鈴、廣瀬花子、木下紗由里、武藤由紀、諏訪恵

フリーイマージョン(ロープを手繰り垂直潜水)
9月19日
男子:後藤修一、岡本耕輔、児島光宏、竹之内通
女子:木下紗由里、岡本美鈴、廣瀬花子、武藤由紀

【大会スケジュール】
11th Friday: 選手受付・開会式
12th Saturday: 選手受付・公式練習
13th Sunday: 公式練習
14th Monday: 【競技日】 コンスタントウエイトwithout フィン
15th Tuesday: 公式練習
16th Wednesday: 【競技日】 コンスタントウエイト with フィン
17th Thursday: 予備日・休日・練習可能
18th Friday: 公式練習
19th Saturday:【 競技日】 フリーイマージョン・閉会表彰式
20th Sunday: 予備日

2015/01/14

アプネア・トータルには様々なフリーダイビングコースが用意されています。
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Freediver :全くの初心者向け
Advanced Freediver :フリーダイビングの基礎を取得している人向け
Master Freediver :上級者向け4-5週間のコース
Instructorコース
http://www.apneatotal.com/courses/freediver/

基本的には座学やプールを含めたスクール形式のコースがメインで、どれも数日間みっちりと行います。私のように数日だけ単発トレーニングをしたい、という人はあまりいないようでしたが、リクエスト次第で「自主練」「単発コーチング」なども可能です。

私の場合は「Apnea academy Instructor」のカードが十分なスキルの証明になり、Master Freediverの自習生と一緒のロープで練習をさせて貰えることになりました。フリーダイビングはスキューバのように資格がなくても出来ますが、やはりこういう時には世界標準の認定基準は必要だし、便利だと思います

フリーダイビングの基本とリスクを理解していて、レスキュースキルがあること。これがわかると世界中どこでも、安心して一緒に練習することが出来る仲間と見なしてもらえます。医師の英文診断書とカードは世界中必携ですね!(もちろんカードがなくても経験やスキルが証明出来ればokだし、カードだけあれば良いと言うわけではありませんが)

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トレーニングは目の前のビーチの沖合で行います。ここはいわゆる「どん深」地形ではないので、小舟で数分、泳いで数十分のところでようやく20m〜30mの深度が取れます。海況が良ければさらに遠出をして、50m〜70mの深度が取れるようですが、そこまで行くことは稀だそう。ディープダイブ向けの場所とは言えません。ただ、水温が年間通して28-29℃ととても暖かく、レンタル機材や船の設備が整っているので初心者には最適ですし、私のような経験者が冬の間暖かい海で軽い基礎練習をする場所としては丁度良いところ、と言えます。

ただし。私の滞在中は、当初から予測はしていたことですが、海況がとても悪く・・海が荒れて練習船が出ないという日すらありました。

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これは沖合の練習場所から岸への道中。沖合の海は荒れていても岸近くはサンゴと魚の数がすごい!
この水中が見たくて、私は帰り道はいつも何人かと一緒に泳いで岸に戻っていました。(ただし、タクシーボートが運航しているので、単独でのスイムはおススメしません)

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こちらが練習船。
http://www.apneatotal.com/headquarters/freediving-boat/

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この船はフリーダイビングの機材が全部積んであります。ロープも簡単に降ろすことが出来、魚探も完備。まさにフリーダイビング専用船!

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何故かここにもニャンコ。

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ニャンコを囲んでノンビリ世間話のNathanとKane。おいおい、、練習は?・・と呼びに行くと副鼻腔のスクイズについてマニアックトークをしていました。みんなマイペース。

私はmax深度-25m程度を繰り返し潜り、じっくり良い練習が出来ました。
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透明度は激悪でした。ぼんやりと映っているのはフリーダイビングでも最も大切なレスキューの練習。初心者も必ず行います。

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これが海底。何もない砂地です。水面はワサワサ荒れていても水中は静かで下の方は透明度やや上がります。潜行すると落ち着きます。

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実はかなりの「うねり」もあり。行きのフェリーほどではありませんが、半数以上が船酔い・波酔いしてました。自主練組は続々リタイアしていき、この日はスタッフのArturoにサポートしてもらい潜りました。

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彼らはノルウェーから来たスキューバダイバー。寒い北欧から来ている旅行者はとても多い。彼らはこれが初めてのフリーダイビング体験とのこと。なのに土砂降りの雨が降って来ました。

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いや、、土砂降りどこじゃないよ・・雨粒が・・イタいイタいイタい!!

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ノルウェー、ドイツ、オーストラリア、米国、韓国、日本・・メンバーは国際色豊か。機材もウェットもフルレンタル可能なので(というか、フリーダイビングの機材など持たずに来ている人が多いので)皆おそろい。いかつい顔にオソロのウェットが何だか可愛い。

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滞在中お世話になったアプネア・トータルインストラクターのSilvia(スペイン出身)、Camila(アルゼンチン出身)。短い時間だったけれど、なんだか同志、みたいな感じに!ここは創設者のMonicaの影響かスペイン系のスタッフが多く、スペイン語が飛び交っていました。私も何故かスペイン語で指示出しされていました。笑。

フリーダイバーに出会うと勝手に世界中どこでも「ただいま〜」とでも言いたくなるくらいほっとします。言語以外の「共通言語」を持った仲間が、ここでも沢山出来ました!

 

 

2015/01/04

タオ島のサイリー・ビーチはのんびりとした素朴なリゾート。
ビーチ沿いの小道の両脇には色々なお店が並んでいます。

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ダイビングショップ・マッサージ屋・食べ物屋・土産屋・タトゥー屋・ネットカフェ
ダイビングショップ・マッサージ屋・食べ物屋・土産屋・タトゥー屋・ネットカフェ
ダイビングショップ・マッサージ屋・・・・(以下同文)

そんな中に少し目立つ店構えでフリーダイビング・スクール「アプネア・トータル」があります。

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入り口は窓も扉もなく、全開。大きなモニターでフリーダイビングの映像が流れています。沢山のクッションが置いてある大きなソファはつい座ってみたくなる。まるでタイマッサージやお土産屋のように気楽にフラっと入れる雰囲気です。

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フロントの奥にはガラス張りのレクチャー・ルーム

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ロングフィンやモノフィン、フリーダイビング用のシンプルな機材が並んでいます。

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皆のアイドル「フランキー・ブルー・アイ」

■「通りがかり」のフリーダイビング
さて、この島を訪れる人の大半はスキューバダイバーかと思いきや、長期旅行中のバックパッカーもかなりの割合を占めているように思います。あとはヒッピーなパーティ・トラベラー。特に隣のパンガン島は夜のビーチで繰り広げられる野外レイヴ、フルムーンパーティで有名。彼らがついでにタオ島に立ち寄ることも多い。

つまり、昼間とてもヒマな人が多い。そして皆、滞在期間がもの凄く長い。そんな彼らが昼間フラフラと小道を歩いているうちに「フリーダイビングでもやってみるかぁ〜。ヒマだし、海綺麗だし。安いし」となるわけです。たぶん。

そしてバックパッカーやヒッピー的なものを好む人たちの志向に、フリーダイビングのナチュラルさはFitするのかも知れません。

というわけで、アプネアトータルでは、フリーダイビングを始めたきっかけが「通りがかり」だったという人も結構いるようでした。日本ではなかなか無いパターンですよね、これは。笑。

ただ、きっかけはそんなに気楽でも、いったんハマった人がとことんのめり込むこともしばしば。私が滞在中知り合った一人は当初フリーダイビングなんて知らずに、軽い気持ちで体験してみたらすっかりハマってしまい、かれこれ1ヶ月ここで本気で修行している、とのことでした。

ふらっと通りがかるとこんな映像が流れています。

■Blue Immersion

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島にはもう一件、「Blue Immersion」というフリーダイビングショップがありました。ここもApneaTotal同様に、経験とスキルと健康の証明出来ればdrop in可能でした。SSI系でとてもしっかりしており、とても親切。一日くらいここでトレーニングしてみようかと思っていたのですが、今回は時間が取れずに諦めました。

きっとここからも「通りすがりのフリーダイバー」が生まれているのだと思います。

このお店の並びにはタトゥー屋、そしてオカマバー。こんなカオスな感じも、ザ・コタオ。ザ・サイリービーチなのでした。

2013/10/31

初日の練習を終えて・・・「さあ昼寝だー!」というわけにはいかず・・この日は
選手登録、イベントコミッティ、開会式と怒濤のようにイベントが続きました。

●選手登録
既に殆どの選手が済ませていた選手登録。私は到着したばかりだったので、練習後にレジストレーションに行きました。診断書、パスポートコピー、誓約書などを渡して、そして恒例の「ラニヤードチェック」。

ラニヤードは競技ロープと選手をつなぐ命綱のようなものです。もし深い深度で選手がロープから離れてしまった場合・・・恐ろしい事故に繋がります。(2年前のカラマタ大会では、こんなことがありました。詳細は北濱選手のブログにて・http://freediving.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30)なので、ラニヤードは選手登録時に毎回ジャッジが必ず強度や安全性をチェックすることになっています。

強度チェックは・・・こんな感じで。とてもシンプルな方法で・・・
ジャッジの中でも体格の良い力自慢が・・・

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ふんぬーーー!!!

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ぶちっ・・・・・・?!?!?
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おーまいがー!!

なんと、私のラニヤードは破壊されました。。AIDA公式ラニヤードなのでまさか・・と思っていましたが実は同じラニヤードは皆破れていました。。これはケーブルの製品不良ということでその日のうちにAIDA会長のKIMOが無償交換をして回るという自体になったのですが。まあ海の中で壊れる前に発覚して良かったのですが。

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私にとってこれが後日の伏線になるとはつゆ知らず・・・

●イベントコミッティ

イベントコミッティは大会中毎日のように開催されます。運営、事務的な連絡を中心に行われる会合です。通常はコーチやキャプテンが参加し、自国の選手に連絡事項等を伝えるのですが、初日は選手全員集合!という連絡が流れたためとりあえずわらわらと、選手達が集まります。(日本チームとドイツチームは集まりが良いなど。お国柄、出ます。)

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がやがや・・一体どこでやるの?

あれ。本当にあるの?

そもそも今日だっけ??

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世界大会の基本「イベントコミッティが定刻通りに始まることは決して無い。」の図。

●開会式
ともあれ、レジストレーションとイベントコミッティが終わると、間髪入れず今度は開会式!のはずが・・・

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がやがや・・(再)

しかし誰もイラッときたりはしません。15カ国200人以上の選手をオーガナイズするというのはとてつもなく大変なことなのです。競技が安全に行われることが第一なので、みんな陸上ではとても寛大。

とはいえ結局、何かの手違いでバスが来なかったため、ホテルから港まで、延々と歩くことになった時には・・

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各国の選手はそれぞれの言葉で「まじかよ・・・」とつぶやいたのです・・(たぶん)

でも夕暮れ時の美しい海沿いの道を延々と歩きながら、色々な国の選手やスタッフがゆったりと話しながらそぞろ歩く、なかなか忘れがたい時間になりました。

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カラマタ港に到着するころにはすっかり日が落ちていました。

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海岸沿いには昔からある屋外のレストランや食堂がずらりと軒を連ねています。素朴で気取っていないけれど、とんでもなく素敵な港町なのです。

開会式は選手のパレード、カラマタの市長さんの挨拶、地元のフードフェスティバルやブラスバンドも出動。地元の人たちが集まってちょっとした一大イベントとなっていました。

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夜中まで続くイベント・・練習以上に疲れ果てました。明日のトレーニングは大丈夫なのかな・・と思いつつホテルの部屋でバタンキュー。(全て恒例)

さあ「祭」らしくなってきました!

photo by Kohei Ishida, Ryuta Nakanishi

2013/10/28

さて、カラマタまでやっと辿り着いたところで、だいぶ間が空いてしまいましたが・・
カラマタの海で最初のトレーニング。やっと水に入れる!というところから再開です。

●到着翌朝
ギリシア到着翌日。それほど疲れは感じず、意外にスッキリ目が覚めました。何と言っても、この青空ですからね!

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それに私はともかく空腹で、少し早起きして朝食へ。潜る前は何も食べずに胃を空っぽにしておく選手も多いので、朝のダイニングは選手もまばらです。

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朝食はもちろんギリシアヨーグルト!2年前の大会ですっかりファンになってしまったのですがこれが毎日食べられるだけでも来た価値ありです。ギリシアの乳製品と蜂蜜のレベルの高さは凄いです。ついでにカロリーも相当高いレベルなので要注意、と日本に帰ってから気がつきましたが・・。

●最初のトレーニングへ
さて、トレーニングはこんな風に時間割が決められています。

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この日は殆どの選手がトレーニングに繰り出したようで、朝9時から午後14時まで30分刻みでボートの時間割が決められています。スタッフは本当に大変だと思うのですが選手側は基本的にはかなりノンビリしています。

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Elite Resortという海沿いの綺麗なホテルが大会の本部となり、全選手がここに宿泊しています。

ホテルの敷地内のコテージから歩いて数分の目の前のビーチへ。ウェットに着替えて、そこから船に乗って5分ほどであっという間に沖合のポイントへ。

部屋からポイントまで所要数10分!日本の練習の過酷さとのこの違い・・。これに慣れてはいけない、いけない!などと思いつつ・・。

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いざ、真っ青なカラマタの海へ。

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初日はまずは様子見、-50mを申告して潜りました。
私にとって-50mというのはとてもリラックスしながらも独特の集中にも入れる良い練習深度です。もう何十回潜っているかわからない深度なのですが、飽きることはありません。海況、体調、自分のメンタル、いつでも違った感触が得られるのです。自分の調子を観察するバロメーターにもなります。

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今回は長旅の疲れもあるので、どんな調子かな・・と思いつつでしたが面白いくらいに耳がすーっと抜けて、カラマタの海に「久しぶりだね!ようこそ」と言ってもらえた感じがしました。

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数日前までのカラマタは「油を流したような穏やかさ」だったそうです。この日からだんだん海が荒れて来て、波は高く、とても穏やかとは言いがたい海況でした。

カラマタの海は荒れる時は荒れ、流れる時は流れ、色も毎日違いとても表情豊かです。バハマのブルーホールのような安定したコンディションではない代わりにとても生き生きした海です。

その点だけは、いつも練習している真鶴とどことなく似ている気がするのです。
それ以外はどこも似ていないのですけれど。(カラマタの海にはフナムシ一匹もいないし、磯の香りもしないし・・)

ともあれ、トレーニングを終えた私はすっかり元気になっていました。不思議に思うことですが、疲れている時に海に入るとその疲れの素が全てが融けて消えていくような気がします。

数日後の本番に備えて、あとはコンディションをキープするだけだ、と良い感触を得たカラマタでのファーストダイブでした。

Photo by Megumi Matsumoto
                 Ryuta Nakanishi

2013/09/30

AIDA Depth World Championships 2013、世界大会が、終わりました。

残念ながら、目標のCWT-60mは達成出来ませんでした。
でも想定外の心境に至りました。
何と言うか、スッキリ燃え尽き心軽やか。
応援し、協力して下さったみなさま、改めて、本当にありがとうございます。

それにしても、2分にも満たないほんの一瞬、ただ潜るためだけに
多大なお金と時間をかけ、数ヶ月にわたり生活の優先順位を変え、
はるばるギリシアまで行って、そして白壁のエーゲ海の島々に渡ることも
遺跡を見ることもなく帰国。

つくづく、「本当ーーーに、モノ好きだよなあ・・・」
と、思います。

海に魅せられた最高のモノ好き達の最高の「祭り」。それがフリーダイビング世界大会。
私の武者修行の集大成、記憶がうすれないうちに、ポツポツと書き始めます。

●カラマタ
2011年に引き続き、今回も海洋競技の世界大会はギリシア・カラマタで開催されました。

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「カラマタ」は日本人にはあまり知られていない場所ですが、一部のフリーダイバーとオリーブ通には馴染みのある地名です。ペロポネソス半島の中では2番目に大きな都市で静かな海沿いの町、古くからある素敵なリゾート地です。なんと言っても有名なものは・・・オリーブと、オリーブと、オリーブと・・オリーブ。

フリーダイビングの大会は日本から最低1回は飛行機を乗り継ぎ、20時間以上かけて辿り着くような場所で開催されますが、今回の開催地カラマタもご多分に漏れず、なかなかのロングジャーニー。今回私は2度目のカラマタなので、余裕かと思いきや、結局30時間ほどかけてやっとの思いで辿り着きました・・・

 

●羽田〜ドバイ

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休暇前日、都内を駆け回り怒濤のように過ごした後、羽田にダッシュです。まずはエミレーツ航空の深夜便でドバイへ。飛行機に飛び乗った瞬間の頭の中は99%仕事でいっぱい、ドバイ空港ではちゃんとWiFiが入るだろうか、メールが取れるだろうか、などと心配しながら・・・しかし膝の上のMacbookは一度も開かれることなく、機内爆睡すること約10時間。

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そして一瞬で砂漠の国ドバイ到着。空港中に溢れるラクダやツボ。

そして・・もう自分が何を心配していたか忘れていました。そう、忘れっぽい、というのはフリーダイバーの最大の美徳(?)でもあるのです。

 ●アテネ〜カラマタ
そして再び爆睡してアテネへ。どこでもドアのように何の問題も無く到着しました。しかしここからが遠い道程なのでです。アテネからカラマタまでは飛行機が飛んでいますが、これがとても本数が少なく、この日は確か一日一便のみでした。最短日数で大会に来ている身としては一日でも早く現地に辿り着きたいのでアテネで一泊すると言う選択肢はなく、当日中にカラマタ入り出来る方法として長距離バスをチョイスしました。

というわけで、まずは、空港から片道約1時間かけてキフィスウの長距離バスターミナルへ。日本国内でも長距離バスターミナルというのは私にとっては大抵「わかりにくい」場所なのですが・・

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ましてや、ここはギリシア。そもそも文字が読めません。ハンパないアウェー感・・・しかもなんと、乗ろうとしていた1時間後のカラマタ行きバスはまさかの「満席」でした。

次のバスはそのさらに2時間後。

半べそをかきたくなりながら、大荷物と一緒に待合室でひたすら待ちます。前回は数人で移動したのでバスを待つ間も苦にもならず、かなりすんなり辿り着いたのですが、今回はもう殆どの選手が現地入りした後だったのでモノフィンを担いだ人などひとりも見かけませんでした。

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ギリシアの演歌のような民謡が流れ、扇風機がぬるい風を運ぶ「昭和」な空間で、「次回カラマタに来ることがあったら・・絶対飛行機で来よう。」と固く決意したのです。東京からの出発便ではなく、カラマタへの到着便から逆算して東京発の便を取る、というのが賢明でしょう。フリーダイバーにとって、いかに遠征の長距離移動で疲労しないか、というのは本当に重要なので・・

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やっと来た2時間後のバス、高速に入る手前でウンともすんとも動かなくなりました。
さすがに20分くらい停車したところで窓の外を見ると・・・周囲をパトカーに囲まれています・・
ぎょっとして周囲の人に「いったいどうしたんですか???」と聞いても
「さあ・・・Policeがいるねぇ〜」とノンビリ構え、とりあえずバスの外に出てタバコ等
ゆっくり吸って、談笑してみなさんゆったりと待っていました。

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一体何があったのかわかりませんが1時間程停車したあと、何事もなく走り始めました。
本当に何だったんでしょう・・・

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ともあれ、このあとバスは順調に走り出しました。夕暮れ時のペロポネソ半島をひたすら西へ、西へ。日本とは全く異なる風土、違う神様がいそうな神話の舞台をひた走りながら、旅情たっぷりの車窓の旅も悪くないなあ・・などと。大会で潜りに来たんだから!体力温存しなくては・・と思いつつ、眠るのも勿体ない程、美しく刻々と変わる風景。もはや自分が何をしに来たのかもわからなってきました・・・

そして4時間後、カラマタに到着。

抜け殻のように疲れ果ててホテルに到着したのはもう22時半過ぎ。
もう皆翌朝の練習に備えて寝静まっているかな・・・と
ヨロヨロチェックインをしていると・・・

「Yuuuuuuu—-ki-iiiiii————!」

よりによって、正真正銘ラテン系フリーダイバーのミゲールと、アプネアアカデミー仲間のパスカルの2人組に遭遇。いきなりハグの嵐でお出迎えしてもらいました。

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すぐにはチューニングが合わないハイテンションの洗礼を受け、

「ああ。来たんだなあ、世界大会」

と、しっかりと噛み締めたカラマタ入りの夜でした。
一刻も早く部屋に入って静かに眠りたい・・と思いながら・・。

2013/07/31

早いもので、セルビアでのプールのフリーダイビング世界選手権終了からはや一ヶ月が経ちました。そうこうしているうちに、次は海洋種目の世界大会。先日7/25、AIDA Depth World Championships 2013の代表選手が決定しました。 時期は9月、開催地はギリシアのカラマタです。

AIDA World Championship 2013(海洋個人戦)日本代表メンバー決定!

プール大会はどんどん記録が更新され、実力ある新人選手が次々に現れているのですが海洋種目の選手陣を見ると、あまり顔ぶれが代わらず同じ選手が頑張っているという感じ、ですが・・ともあれ、プール大会はもっぱら応援専門ですが、いよいよ今度は私の出番がやって来ます^^)

海洋競技の世界選手権、私は2年前に初の代表選手として参加して来ました。今回は2度目のギリシア大会となります。今回私が出場する種目は

・コンスタント・ウェイト・ウィズ・フィン
(略称CWT:フィンをつけて垂直に潜る種目)
・フリーイマージョン
(略称FIM:ロープを手繰って垂直に潜る種目)

の2種目です。私の本命は何と言ってもCWT。モノフィンをつけて青い海に融けるように、吸い込まれるようにぐんぐんと潜る種目。フリーダイビングには色々な種目がありますが、私はほぼCWTのためにフリーダイビングをやっている、といって良いくらい一番大好きな種目です。

ギリシアの海は真っ青で、時に-40mほどの透明度もあります。この海で再び潜れることが、とにかく楽しみです。

(2011年カラマタでの私のトレーニングでの映像)

実は今回の選考に残った私の公式自己ベスト-57mはちょうど2年前のギリシア大会で達成した記録です。大会出場前の私の当時の公式自己ベストは-50mでしたが、現地の最終練習では-54mを何度か成功しました。ところがこの後突然風邪をひき大会当日までの3日間完全レストを余儀なくされたのです・・・。

当日朝にはどうにか回復し、「えいや!」と一発集中で潜りました。結果+3m、-57mの自己ベスト達成という、自分としては大満足の結果を得て帰ることが出来たのが、2011年の世界大会でした。詳細はこちら。

ところが、この後記録は停滞中。簡単に達成出来ると思っていたあと3m、-60mが・・未だに達成出来ていません。というわけで、この3mはおあずけのまま、再びのギリシアとなりました。

さて実は私、本業では一日の休みも惜しいITベンチャー企業で全力投球奮闘中です(意外にも?)。本当はギリシアのギの字も入り込む隙がないところ、特別なお休みを貰っての、今年一回限りの海外遠征一本勝負となります。

青い海とオリーブのカラマタまで、あと一ヶ月半。毎日がとても貴重です。トレーニングにかけられる時間は日々とても限られていますが、たった一本に向けた地道な毎日が、ギリシアに繋がっています。このプロセスを今、とても楽しんでいます。

そして今年はどんな青い色に会えるのか、楽しみにしています!

 

 

photo by Sachiko Iizuka, Sep 2011, Greece, kalamata

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