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フリーダイバー同士の会話で
「採寸した」「新調した」「お直ししなきゃ・・」
というフレーズが出たら、シャツのことでもジャケットのことでもドレスのことでもなく、ほぼ100%ウェットスーツのことでしょう。
私は高価な洋服を買うことはまずありませんが、ウェットスーツは別。気がつけば夏用・冬用・講習用・競技用、、と何着も持っています。しかも大抵オーダメイド。自分が持っている衣類(?)の中で一番お金をかけているのは間違いなくウェットスーツです。
フリーダイバーにとって、ウェットスーツは自分の身体の一部、肌の一部とも言えるくらい、大切なものですからね!特に深度競技用のスーツは競技に集中したり、安全のためにも重要な役割を果たします。
1)身体にピッタリしていて
2)保温力があって
3)柔らかくて
4)水の抵抗が少ないもの
こうした要件を満たす最高のウェットスーツはなんと言っても「フルスキン」。両面ともツルツルとしたゴム生地で肌に密着し、身に纏うとまるで自分の肌がイルカやアシカになったような感覚、潜りながら水がスルスルと身体に沿って流れを感じることが出来ます。
でもネックなのは・・・生地の特性上とんでもなく破けやすいこと。
「スーツ、ビリビリに破けちゃったよ・・」という事態、フリーダイバーでは割とよく見る光景でもあります。フリーダイビング競技は海の中で格闘技のような肉弾戦を繰り広げるわけでもなく、ごく静かに一人で淡々と行うものにも関わらず。
着替えの時に少しだけ爪をひっかけてしまった、、ボートのちょっとした出っ張りにひっかかってしまったりとか、ともかく、ちょっとした行動で簡単に、音も無くサクッと破けてしまうのです。
なので、修復用ボンドも必携。ボンドで傷口を上手に修復して一晩置けば、また元通り着られるようになります。
と、いうわけで、私が一番愛用している3mmスキンのウェットスーツには沢山のツギハギがあります。5年前に初めて作った憧れだったフルスキンのウェットスーツ。慣れないうちは特によく破いていましたが、次第に扱い方にも慣れ、最近では簡単には破かなくなりましたが・・。
ところが、流石に5年も経つと経年劣化であちこちの継ぎ目から水が漏るようになってしまいました。先月出場したバハマの大会でも、ウォーミングアップ中に肩に空いた小さな穴から「ツー・・」と水が浸入してきてなかなか集中出来なかったり・・・
■DELFINOへ
ここまで来たら新調したほうが良いのかもしれませんが、愛着のあるウェットスーツは長く着たいもの。今年はいくつか大会にも出場するので、全身修理をするために、真鶴のウェットスーツ店「DELFINO HOUSE(デルフィーノ)」へ。
真鶴の海を見渡せる高台にあるここは。練習帰りに採寸してもらったり、自力では修復不可能なレベルに破けたウェットスーツをその日のうちに持込みしたり・・と本当にお世話になっています。
スクーバ用、漁師さん用、と様々なウエットスーツを作り続けている後藤親子はプロ中のプロ。この工房には沢山の生地や型紙があり、見入ってしまいます。
生地一つ・型紙一つにも職人芸の細かさとこだわりが感じられます。
こちらがウェットスーツデザイナーの後藤仁志さん。自身も素潜りの名手ですが、何故か海で出会うとウェットスーツではなく海パン一丁で潜っていることが多いのです。
それどころか、マスクも無しの素面ということも。。
素肌で海に潜る気持ち良さを良く知っているからこそ、肌の一部のようなスーツが作れるのかもしれません。
「ウェットスーツを着るのも瞑想の一つなんですよ」
そういえばそんなことを教えてもらったこともあります。ウェットスーツへの愛情と、もはや哲学のようなものすら感じます。
■青い翼
さて、、私のウェットスーツはこんな風に生まれ変わりました!
海女さんのように全身地味で真っ黒だったウェットスーツの肩が青く光っている!肩の後ろで腕を組むストリームラインを作るために一番摩耗しやすい肩の部分に新しい青い生地がつきました。
まさしく背中に生えた青い翼です!
初めて-50mを潜った時も、初めて世界大会の選手になった時も来ていたウェットスーツが、青い翼でパワーアップしました!
この翼は、どこまでブルーな世界に連れて行ってくれるのか、この夏潜るのが、ますます楽しみです♪
海の底でたったひとり数時間。たまに海面からやってくる人の様子を見つめ続けると
どんな気分になるか、、ちょっとこの映像をご覧ください。
映像再生は画像をクリックしてください
映像をつないだだけのものですので異様にリアルな感じですが・・・
なかなかシュールな世界ですが、これはフリーダイビングで使われる「ボトムカメラ」の映像です。先日行われた「第13回真鶴フリーダイビング・クラシック」で記録した、実際には数時間に及ぶ映像を編集したものです。
「ボトムカメラ」とはその名の通り、海底に沈めて競技を記録するためのカメラです。フリーダイビングでは予め潜る深さ分の長さの「潜行ロープ」を垂直に海に垂らすことで深度を測定しますが、この潜行ロープの先、つまり一番ボトムに、上向きにカメラを設置し固定し、録画スイッチをオンにしておきます。すると、ロープに沿って降りて来てはボトムにタッチして浮上する選手の姿が、まるで監視カメラのように定点観測出来る、というわけです。世界大会などでは、記録の判定のためにも必須とされています。
ボトムカメラのミッションは厳しく過酷です。長時間、時には100m以上の深海に沈めて数時間稼働させるため、
・もちろん完全防水で
・大深度に耐えられ
・バッテリーが長持ちし
・ある角度でロープに取り付けられて
・かさばりすぎたり、重すぎたりしないこと
が条件。莫大な費用をかければ特注の素晴らしいハウジングが出来るでしょうが、潤沢な資金があるフリーダイビング大会というのは殆どないため、知恵を絞ることになります。
その知恵の結晶がこのボトムカメラです。2010年、沖縄で行われたフリーダイビング世界大会時には「水中ライトのケース」をハウジングにし、中に小型のハンディビデオカメラを仕込む、というアイデアにより、驚くほど低予算で100mを超えるdiveを含めて全ての競技の映像をボトムカメラがとらえることが出来ました。このカメラはその後沢山の大会で活用されましたが、ついに水没。今年、「真鶴フリーダイビング・クラシック」直前に、新式のアクリルケースのカメラが完成しました。この映像が、冒頭のものなのです。
フリーダイビングは正直言ってスポーツとしてメジャーではありません。
フリーダイビングをこよなく愛する私ですら、これはやはり事実として認めざるを得ません。その原因の一つとしては「観戦が出来ない」という点が大きいと思います。最も代表的な種目であるコンスタント・ウェイト(フィンを履いて海に深く潜る)が、「もっとも目に見えない種目」であるというのも皮肉。競技会場はdeepな海上のポイントになるため、安全管理上、ゴルフやテニスやサッカーのように観客が大勢で観に行くというのが物理的に難しい。仮に競技エリア近くに行けたとしても、トップクラスの選手の潜りの一部始終を肉眼でみることはそもそも叶いません。どれほど透明度の良い海でも数十m以上の深さを海面から見ることは不可能なので・・・。
もしフリーダイビングが海から生中継出来るようになったら、映像でフリーダイビングの「観戦」「鑑賞」が可能になります。それが実現したら、フリーダイビングをより沢山の人が知り、想像でしかなかった世界をかいま見ることが出来るのでは、とワクワクします。映像技術、放送技術、通信技術とフリーダイビングが融合して、いずれそんな日が来ることを夢見つつ・・・・
ともあれ、これまでのボトムカメラ制作にあたっては無茶ぶりに対応いただいた(株)ジール撮影事業部長の加藤様、DIVE SHOP TAIL千々松社長に心より感謝いたします。いづれ生中継用のボトムカメラ制作の際には、ぜひまたよろしくお願いします!!(とまた無茶ぶりしてみたり。。。^^;;)
Powered by Zeal & Tale
Camera setting byYasushi Okawa
Edit by Kosuke Okamoto
前回はフリーダイビングの競技種目についてご紹介しました。
今回は、大会は誰が主催しているのか?いつどこで行われているのか?
世界大会とは?代表選手はどのように選ばれるのか?といったことをご説明します。
■■■フリーダイビング団体:AIDA InternationalとAIDA Japan■■■
「競技」としてスポーツが成立するためには統一のルールが必要です。ルールを設けたり、競技を普及するにあたり、フリーダイビングも他のスポーツ競技と同様の団体があります。フリーダイビングの国際団体としては「AIDA International」という組織があり、各国のフリーダイビング団体がそこに所属しています。AIDA Internationalの本部はスイスにありますが、様々な国のメンバーで成り立っています。日本ではジャパン・アプネア・ソサエティ(通称JAS)という団体がありこの団体がAIDA日本支部(AIDA JAPAN)として活動しています。選手として公式な記録を残したり、代表選手として世界大会に出場したい日本人はJASに選手登録を行うことになります。
■■■大会はいつ、どこで行われているのか?■■■
マラソン大会や水泳大会のように競技人口が多いスポーツとは違い、ひっそりはしていますが、実は国内でも年間いくつもフリーダイビング大会が開催されます。気温や水温の問題から、海洋競技は季節や地域が限られていますが、プールの大会は冬でも開催されています。昨年は一年間でプール・海洋合わせて8回の大会が開催されました。今年は昨年よりさらに沢山の大会がありそうです。今年になって行われた/行われる国内大会は以下の通りです。9月のニースでの大会は国内大会ではありませんが、日本人選手が多く出場するため、記載しておきます。
≪2012年のフリーダイビング大会(2012年3月現在)≫
2月19(日) True North Static Challenge vol.1(プール競技)
3月11(日) 東北支援Apnea Academy 2012 indoor記録会(予定)(プール競技)
3月18(日) True North Dynamic Challenge vol.1(プール競技)
3月25(日) True North Static Challenge vol.2(プール競技)
5月19(土)・20(日) JAS主催:インドアカップ2012 in 館山 (プール競技)
7月14(金)~16(日) フリーダイビング沖縄大会 DEEP WATER CUP 2012(海洋&プール競技)
*9月9日(日)~16日(日) AIDAフリーダイビング世界選手権 inフランス(海洋&プール競技 団体戦)
10月20日(土) 真鶴フリーダイビングクラシック2012(海洋競技)
*現時点で日程が把握できている公式大会を記載しました。これからさらに大会が開催される可能性があります。また、これ以外にも海外の大会は多数行われており、日本人選手も参加しています。
■■■記録とポイント■■■
フリーダイビング大会では、安全に競技が出来るか、公正に記録認定出来る環境が整っているか、などの基準をクリアした大会がAIDA公認の大会となります。公認大会での記録は公式記録となり、国内外のランキングに反映されます。認定された記録はポイントに換算され、各選手ごとの持ち点、となっていきます。代表選手になりたい場合、一定の期間に各種目で公式記録を残す必要があります。
- 深度競技 1 メートル=1 ポイント
- ダイナミック系 1 メートル=0.5 ポイント
- スタティック・アプネア 1 秒=0.2 ポイント
もっと詳しく知りたい、という方は競技ルールの熟読にトライしてみてください。
なお、最近では多くの大会で「トライアル」という枠が設けられ「公式記録はいらないけれど、競技にトライしてみたい」という人にも広く門戸が開かれています。
■■■世界大会■■■
AIDAが主催する世界大会は個人戦、団体戦が一年ごとに交互に行われます。
≪個人戦≫
個人戦は前回ご紹介したそれぞれの種目のランキングの上位者が各国代表となります。海洋競技(3種目)とプール競技(3種目)とに大会が分かれ、それぞれ開催時期・場所等も異なります。2011年は海洋競技がギリシア、プール競技がイタリアで行われました。個人戦は各選手が自分の得意種目に磨きをかけて出場するため、ナショナルレコードなど大記録が出やすいことが特徴です。また、個人がそれぞれの挑戦をする、という性格上、大会自体の雰囲気も比較的自由なものになるようです。
2011年の世界大会個人戦の様子
・野田幾子apnea report
AIDA Individual Depth World Championship 2011
(海洋競技世界大会:2011年9月ギリシア/カラマタ)
World Championship AIDA 2011:EUROPE EVOLUTION CUP/WORLD CHAMPIONSHIPS INDOOR
(プール競技世界大会:2011年10月イタリア/リニャーノ・サッビアドーロ)
≪団体戦≫
一方、団体戦はオールマイティにバランスが取れていることが重要です。
コンスタント・ウェイトウィズフィン/ダイナミックアプネア・ウィズフィン/スタティック
の総合得点の上位者が代表として選ばれ、3人一組のチームで他国とこの3種目の総合得点を競います。バランスが取れた能力や、チームでの総合力が要になります。また一人の減点や失格がチーム全体に影響するため、個人の記録を伸ばすことより、「綿密な作戦に基づきチームとして着実にポイントを獲得する」という色合いが濃くなります。このため団体戦は個人戦とはまた違った緊張感が生まれます。前回2010年の世界大会は沖縄で行われ、女子が金メダル、男子が銀メダルという快挙を成し遂げました!
2011年の世界大会個人戦の様子
・野田幾子apnea report(団体戦の見どころなどをわかりやすく解説してあります。)
WC2010沖縄:フリーダイビング団体戦・基礎知識
・団体戦海洋競技のムービー(※映像は海洋競技のみ)
by aidawc2010
photo by Junko Ueki
■■■今年の見どころ■■■
今年は2012年9月9日からフランスのニースで団体戦が開催されます。2010年7月17日から2012年7月16日までの2年間の公式記録を元にした、3種目の合計ポイントでの上位者男女各3人から選出されます。今後行われる大会の度に記録が更新され、候補者ランキングの入れ替わりが起きてくることでしょう。(ちなみに私は暫定4位)
AIDA Team World Championship 2012日本代表選考について
http://www3u.kagoya.net/~jas-apnea/selection2012.html
シーズンが始まったばかりの現在では、まだ全ての種目の記録がそろっていなかったり、公式記録がないだけ、という隠れた実力選手も数多くいます。そのため今年は誰が出場することになるのか、これからの大会に注目です。 いよいよ、2012年のフリーダイビングシーズが本格的に始まります!
5月に開催される「フリーダイビング・インドアカップ・イン館山2012」のエントリーがスタートしました。多くのフリーダイバーにとっては桜の開花や花粉症と同じく「ああ、今年も始まるか」とシーズンインを感じる毎年恒例の大会。2日間でのべ100人以上が参加する国内最大規模の大会です。
冬の間着々とトレーニングを積んで来たダイバーも、競技を始めたばかりの新人も、そして冬眠していたダイバーも、それぞれの目的を持って続々とエントリーボタンを押しているはずで、この大会とともにフリーダイビング界はにわかに活気づきます。また、今年9月にフランスで開催される世界大会の選考会も兼ねているために、全国からかなりの参加者が集まり、熱い戦いが繰り広げられるのでは、と期待されます。
では、フリーダイビングの大会がどのように開催され、どのような仕組みで代表選手が選考されるのか、ということをご説明したいと思いますがその前に。そもそもフリーダイビングにはどのような競技があるのか、という肝心なことを、このコラムではまだご紹介していませんでしたので、独断でピックアップした選りすぐりの映像と共にご紹介します。
◎フリーダイビングの競技の種類には、どんなものがあるのか?
フリーダイビングというと、映画「グラン・ブルー」の印象から海をイメージすることが多いようですが、海洋・プール両方の種目があります。現在の世界大会の種目になっている全6種目をご紹介します。
■■■■■■海洋競技■■■■■■
海洋競技では垂直に何メートル潜れるかという「深さ」を競います。
フィンを付けるもの、フィンをつけずに平泳ぎで泳ぐもの、フィンを付けずにロープを手繰るもの、と3種類の種目があります。「潜って上がってくる」ことが前提なので、往復を想定して距離(=深度)を決めます。予め申告した深度までロープを垂らし、ボトムにあるタグを持って戻ってきます。深度は垂らしたロープの長さで測ります。
1.コンスタントウエイト・ウィズフィン
Constant Weight With fins(CWT)
2枚フィン、またはモノフィンといわれる魚のようなフィンをつけて潜ります。
花形競技とされ、見た目にもスピード感が気持ち良い種目です。
日本女子トップの平井美鈴選手の泳ぎをご覧ください。
Misuzu Hirai, Constant Weight with Fins -68m, AIDA World Championships 2010 Okinawa
※上記映像は2010年7月AIDA 世界選手権 2010 沖縄 (国別対抗戦)で撮影されたもの、平井美鈴選手の2012年3月現在の日本記録は-82mです。
2.コンスタントウエイト・ウィズアウトフィン
Constant Weight Without fins (CNF)
その名のとおり、フィンを一切つけずに、平泳ぎで潜っていきます。
ニュージーランドのWilliam Trubridge選手が昨年達成した、平泳ぎで-100mを超えた世界記録の映像、とても幻想的です。
William Trubridge 101m CNF World Record Freedive
by MovesCountbySuunto
3.フリーイマージョン
Free Immersion (FIM)
こちらはフィンを一切つけず、平泳ぎの代わりにロープを手繰って潜ります。
プロフリーダイバー篠宮龍三選手が、一昨年バハマで出した日本記録-104m。
一緒に深海にトリップしてしまいそうです。
Ryuzo Shinomiya FreeImmersion 104m 篠宮龍三フリーイマージョン104m
by apneaworks
なお、映画「グラン・ブルー」で登場した種目は「ノー・リミッツ(NLT)」というものです。ザボーラという乗り物に乗って潜降し、浮上の際バルーンなどを使います。機械の力を借りるため、コンスタント・ウェイトよりさらに深く潜ることが出来ますが、特殊な設備が必要であるため、現在では公式種目からは外れています。
■■■■■■プール競技■■■■■■
実は海洋競技よりもずっと競技人口が多いのでは、と言われるものがプールでのフリーダイビング。「水平に泳ぐ距離」と「息を止める時間」を競う競技があります。プールでは海のように「行って、帰ってくる」という要素がないのでゴールを最初に決めておく必要はありません。そのため大会でいきなり大記録が出ることもあります。
1.ダイナミックアプネア・ウィズフィン
Dynamic Apnea With fins (DYN)
2枚フィンまたはモノフィンをつけて平行に泳いだ距離を競います。
つい先日3.11に行われた、「BIG BLUE主催 東北支援チャリティ大会」の様子をご紹介します。解説テロップが入っているので、競技ルールを知らない方にもわかりやすい映像です。ルーキー米山美弥子選手が50mプール1往復半以上(=25mプール3往復分)を一息で泳ぎ、歴代日本女子ベスト4に入りました。私はこの日、彼女のサポートをしており、プールサイドで男泣きでした。
Freediving DYN158m Miyako Citrobal Yoneyama 2012/3/11 in Tokyo
by Miyako Citrobal Yoneyama
2.ダイナミックアプネア・ウィズアウトフィン
Dynamic Apnea Without fins (DNF)
主に平泳ぎで平行に泳いだ距離を競います。
昨年10月イタリアで行われたインドアの世界選手権での様子。フリーダイビング界屈指のイケメン(浅野忠信に激似)との誉れ高い金田勝己選手の平泳ぎ。50mプールを1往復強(=25mプール2.5往復分)、126mで日本男子歴代ベスト3入りしました。
Katsumi Kaneda Japan DNF126mPB!!7,oct
by Miyako Citrobal Yoneyama
3.スタティックアプネア
Static Apnea(STA)
究極の「アプネア(無呼吸)」と言えます。呼吸を止め、水面に浮き、その時間を競います。
この競技を始めて見る人は100%びっくりします。「何もしていない」からです。「いかに何もせず、何も考えないか」という精神的な面が大きく影響し、非常に奥の深い競技とも言えます。
ちなみに私は非常に苦手な種目です。。
なお、映像を流しても5分以上は動きがありませんので写真の掲載に代えさせていただきます。
photo by Ikuko Noda (World Championship Indoor 2011 Italy)
さて、どのような種目があるか、ということがだいたいお分かりいただけたでしょうか?
次回は、大会の仕組みと今後の見どころをご紹介します!
※なお、競技としてのフリーダイビングを正しい知識なしで行うことは危険ですので、絶対に独自で真似をしないでください。興味のある方は個別にお問い合わせください。
⇒フリーダイビングチーム・リトルブルー http://www.littleblue.biz/
連載開始直後にいきなり専門用語満載の10大ニュースを掲載してしまいましたが、
今年の武者修行の話に入る前に、まずは「フリーダイビングとはどんなものか?」
ということを書きたいと思います。
ネットを検索すると色々なサイトでこうした解説は出てくるのでこのコラムではいっそ
このまま割愛してしまおうか・・などと無精なことを考えていましたが、考えて見れば
世間一般に圧倒的に知られていないことばかり。
というわけで、フリーダイビングの基礎知識コーナーを時折交えていきたい
と思います。
まずは第一弾。
■フリーダイビングを一言で言うと?
「酸素タンクを使用せず息を止めて潜水をすること。」です。
「アプネア(apnea)」とも呼ばれています。「アプネア」とはラテン語で「息こらえ」
「無呼吸」の意味です。
freedivingのfreeは「自由」ではなく「タンクなし潜水=(tank)free diving」
のことだと言われます。「砂糖無し」=sugar free などと同じwithoutと同意
のfreeであり、「自由気ままな何でもあり潜水」という意味ではないのです。
むしろ競技としては色々な細かい規則が存在し、練習でも大会でも安全面
から守るべきルールが沢山あり、その意味では全然自由ではありません。
でも、身体一つで海に潜ると、ある一瞬、間違いなく「自由」を感じます。
このfreeは「呼吸と引き換えに得られる重力からの自由」とでも言えるのではないか、
などと私は思います。
■似たような海のスポーツとどんな風に違うのか?
◎「スキューバダイビング」との違いは?
スキューバダイビングは酸素ボンベを背負って海中に潜ります。
海の中を楽しむという点では共通していますが最大にして決定的な違いがあります。
それは「息を止めるか止めないか」という点。
私はどちらも好きですが、タンクの有無は、全く同じ海で潜っても、別の場所に感じる
くらいの大きな違いです。この二つの違いは例えて言えば「スキーとスノボ」
「ボクシングとキックボクシング」「アコースティックギターとエレキギター」の
違いとでも言いますか。似たフィールドだからといって言い間違えると、やっている本人
たちからは「全然別物!」と反論されるに違いない、そんな類の違いです。
スキューバでは息を止める必要がないため、長い時間水中にいることができます。
ただし、窒素酔いや減圧症の防止という意味からも、通常の潜水深度は-40mが
限度とされています。
◎「スノーケリング」との違いは?
マスク、スノーケル、フィンの3点セットをつけて、パシャパシャと、スノーケルをくわえて
呼吸を続けながら海中の魚などを見て水面泳ぎ回るものが「スノーケリング」です。
海水浴のついでに、または南の島のリゾートで、経験したことがある人も多いのでは
ないでしょうか?小さな子供でも楽しめ、ライセンスなどは必要ありません。
タンクはもちろん背負わないのでこれも「tank free」ですが、基本的には「水面を泳ぐ」
もので海水浴の延長です。フリーダイビングとの違いは「息を止めるか止めないか」
それ以前に「潜るか潜らないか」という点になります。
◎「スキンダイビング(素潜り)」との違いは?
スノーケリングをしているうちに、必ず生まれる欲求が
「上から見ているだけでは我慢ができない・・」というものです。
海の中に潜って行きたくなるのです。なので、多くの人はスノーケリングを楽しむ途中で
「えいや」っと潜ってみます。最初は1、2メートルかもしれません。でも、水面から水中に
入ったとたん、世界は一変します。マスク越しの視界は水面から見るものと何ら変わりま
せん。けれど、体に感じる水圧、耳の痛み、そして水中の音。何もかもが違うのです。
水というものを身体中で感じます。そして思うはずです。
「もっと長く、深く潜ってみたい」と。
これが「スキンダイビング」または「素潜り」です。
実はフリーダイビングと、やっていることは全く同じ。必要な技術、そして感覚も同じです。
フリーダイビングとの違いは「競技性があるかどうか」という点だけです。
例えてみれば「ランニング(広く走る行為全般)とマラソン(42.195kmを走る陸上競技)」
のような関係です。
ちなみに、これらを中国語で何というのか、台湾のフリーダイバーに聞いてみました。
Freediving =自由潜水
Scubadving =水肺潜水
Snokeling =浮潜
Skindiving =徒手潜水
英語より、何だかわかりやすい、ような、気がしてきませんか?
「自由潜水」の練習の合間の「徒手潜水」