Home > その他
2014年も沢山の海で、多くの時間を過ごしました。
一緒に過ごしてくれた仲間に、そして新たに出会った人たちに、心から感謝します。
このブログでもサルディーニャやバハマのVerticalBlueなどの世界のフリーダイビング大会についてお伝えして来ましたが、2014年は世界を舞台に日本のフリーダイバーが大いに活躍した一年でした!
また国内でフリーダイビングがメディアで取り上げられることも多くなりました。新しくフリーダイビングを始めたい、という人も増えて来ており、私が主催するリトルブルーにも沢山の問合せを頂いています。
何より嬉しいのは「フリーダイビングをやっています」と言うと「あ、あのロープで潜るやつですね」と通じることが多くなって来たことです!もちろん今でも、、「スカイダイビング」や「スキューバダイビング」との違いを延々説明するシチュエーションも多々ありますが・・
それから、今年は私自身もBRUTUS×DESCENTEコラボサイト「カラダにいい100のこと」で記事に取り上げて頂きました。インタビューを頂く中で、改めて自分とフリーダイビングの関わりについて考えることが出来たことに、とても感謝しています。
実は私自身は今年は選手として海外大会に出るような活動もなく、ちょっと小休止・・の予定でした。でも何故か海に「そうはさせませんよ!」と言われてしまったようなかたちで、これまでとは少し違った形で、ますます深く海と関わることになりました。
ひとつはインストラクター活動。
もうひとつは大会の実行委員長。
どちらも未熟で試行錯誤でしたが・・自分のために潜る海とは、少し違う海が見えるようになった気がします。海と仲間と自分、その繋がりをますます強く感じることになりました。そして「安全」ということについて、これまでとは比べ物にならない重さを感じるようになりました。自己ベスト深度を更新したわけではないけれど、海との関係がとても深くなった、そんな感じがしています。
私が今年潜った海は、主に葉山、真鶴。あとは、、西伊豆、八丈島、御蔵島、釜石、知床、沖縄、日本海、タオ島。水温-3度から、29度まで。例年より控え目なつもりでしたが、けっこう色々潜ってました^^;
青、緑、灰色、透明な日、濁っている日、凪いでいる日、荒れている日・・海には本当に沢山の表情があります。一日として、同じ海はないのに、全部が繋がっていて、いつでもそこにあります。
嬉しい時も悲しい時も、途方にくれた時も、
海はいつも果てしない癒しとパワーを与えてくれます。
No Ocean, No life
海は自分の人生の一部です。
来年はまた新たな挑戦をしたいと思っています。
2014年の海と仲間に感謝を込めて。
そして2015年が素晴らしい一年になりますように!
ようやくAAA(アプネア・アカデミー・アジア)フリーダイビングインストラクター検定に合格しました!とはいえまだまだ未熟者。ようやくスタート地点にたった、というところです。
2年前の5月、エジプトのシャルムエル・シェイクにて地獄の合宿?アプネアアカデミーのインターナショナルの検定にはどうにか現地合格していたのですが、あくまでこれは基本的技術の認定。国内で実際にインストラクターとして活動するにあたってはこれに加えて実際に「指導する」という経験と技術が必要になります。私はエジプトから2年以上の期間色々な研修に見習いとして参加し、先日これまたハードなIQ(イントラ認定)合宿を経て、やっと合格印を頂きました。
こちらがほぼ不眠不休だった、IQの様子。
口述試験。「今更当たり前」と思っていることを噛み砕いて、正しく、わかり易く、楽しく、伝えます。・・というのが難しい。。130%の知識のエッセンスを一番わかり易く。営業やPRなど仕事柄しゃべることには慣れているつもりの私ですが、5分終るとダメだしの嵐。皆でダメだしをしながら何度も何度もトライ。毎晩この準備で寝る間が本当になかった。
海、プールでの実技指導。限られた時間で、メニューを組み立て様々なレベルのメンバーに指導します。イントラ大先生・先輩達が、あの手この手で「困ったケース」を仕掛けて来ます。この時の目配り気配りはまだまだ、経験を積まないと。
フリーダイビングはまだ発展途中のスポーツです。いまだ未知のことも多く、まだ自然の中行うためリスクもあります。長年ノウハウが蓄積され、メソッドが確立されているスキューバダイビングと異なり、指導者団体も試行錯誤をしながら、安全にフリーダイビングを普及させる方法について、切磋琢磨しています。インストラクター取得のハードルは高さは、とても大切なことだと思います。私も今回のIQを通して足りないところ、課題を良く認識出来ました。このあと更にこの部分の研修を受けてじりじりと進んで行きます。たぶんこの先ずっと修行なんだろうな、と思います。
私がフリーダイビングを競技として始めたのは7年以上前。たぶん人より沢山失敗してもがいて来ました。(あ、今でもか)どーんと落ち込んだ時に、尊敬するフリーダイバーで、イントラの先輩であるみみずんがいつも私に
「ムッチーのこの経験は、後輩に伝える時の宝物になるんだよ」
と励ましてくれました。今この言葉の重みを改めて噛み締めています。
人に何かを伝える。これは小手先では絶対ごまかせない。泳ぎ方、潜り方を見ると何だかその人の性格や人柄までもわかりますからね。技術や知識だけでなくて「自分がどうフリーダイビングと向き合って来たか、向かい合っているか」そのことがとても大事だと思っています。
これは2年前のシャルムの写真。「自分の中の内なる海」を見つめなさい、と繰り返しお話ししていたウンベルト師。このときは居眠りでブラックリストの一番上にいつも名前を書かれていた私ですが、、心を新たに頑張ります!
というわけで、まだまだイントラのひよこですが、フリーダイビングを正しく楽しく、広めるという活動にこれまでより少し多く関わって行きたいと思います。
これまでも、これからも一番大切にしたいことは
「海の中・水の中って本当に素晴らしい!!」
と自分が心から思い続けることです。
これから冬にはなりますが、どんどん潜ります^^) みなさま、よろしくお願いします。
Photo by Megumi Matsumoto
フリーダイビングをはじめた頃。「-30m」は憧れの深度でした。
そこに行ったら何が見れるのかな??
どんな世界があるんだろう。と好奇心で一杯です。
-30mに到達したら次は31m、32m、33m・・・あまり景色は変わりません。
見えるのは青い水と・・・
ロープ・ ロープ・・・ロープ・・・
ロープの先にはまたロープがあります。そして一匹の魚もいません。
もう1m、あと1mと追いかけて、いつのまにか-40mが目前。
気がつくと、もう数字しか見ていませんでした。
そしてその年の沖縄大会では–40m付近で連続ブラックアウト(意識喪失)。
海で意識を失う。とても危険なことです。フリーダイバーとしては失格行為。
到達出来ない-40mの壁。
ロープの先には素晴らしいものがあると思ってひたすら追いかけていたら、
その先にあったのは壁だったという衝撃。
もうすっかり、潜るのが怖くて、嫌になってしまったことがあります。
自分にはもう潜る資格すらない・・・と。
ひと夏、潜ることすら、出来なくなりました。
でもある日。ようやく恐る恐る、海へ。
そしてごくごく浅いところで、そっと泳いでみました。
そこにあったものは・・
キラキラした岩場。ゆらゆらする海藻。
プニプニしたイソギンチャク。
海底にうつる光と影。
水面近くの青や赤の魚たち。
いつのまにかスルーしてしまっていた浅瀬の世界が、こんなにも鮮やかだったなんて!
ふっと力が抜けたその1ヶ月後、私はホームゲレンデの真鶴記録会で、-40mのホワイトカード(※)を貰うことができました。それは本当に真っ白な、キラキラしたホワイトカードでした!
浅瀬のスイミー。小さな青いお魚。
そういえば、メーテルリンクの「青い鳥」では、世界中を探しまわっても
見つからなかった青い鳥は、実は家にいたんですっけ。
深いところばかり、遠いところばかり見て、
ふと気づくと、猛スピードで何かを必死で追いかけている自分・・・
そんな自分への教訓を、水深0m地点のスイミー達は
久々に思い出させてくれました^^;
@土肥 Apnea Academy Asiaスキンダイビングインストラクター海洋実習にて。
※ホワイトカード:フリーダイビングの競技会における、正しいパフォーマンスと認められた判定結果のこと。(減点はイエローカード、失格はレッドカード)
日差しが眩しい季節になりました。
カフェに入ったら迷わずアイスコーヒーを頼んだり、
上着もないまま身軽に歩き回れたり!街にいてもすっかり初夏!
この時期になると、「海行きたい病」を発症する方も
少なくない?のではないでしょうか・・。
それは平日の真っ昼間に突然、都会のフリーダイバーを襲います。
湾岸地帯への所用で「ゆりかもめ」にうっかり乗ってしまったり
高層ビルのエレベーターで耳抜きしたり、という瞬間に容赦なく。
「う・・海に入りたい・・・」
「み・・・水につかりたい・・」と
突然発症し、もう何かの禁断症状のごとく
手のつけようがなくなります。
もちろん海に行けばすぐに治るのですが。
なかなか、そんなわけにはいかないアーバンフリーダイバーにとって唯一の処方箋は・・
辰巳国際水泳場の5mダイビングプール!
青い水をこんこんとたたえた、「聖地」です!
本当は高飛び込み用のプールなんですが・・空を飛んでるみたいな気分。
水底近くをすぃーっと水平に泳ぐのも気持ちよいのですが。
この解放感!この3Dな世界!5m×25m×25mの青い四角の中で浮いている瞬間がただただ、幸せです!
この日は、大きなお腹でも優雅に泳ぐ、母イルカのような、鈴木あやのちゃんとランデブーもしました^^)まさにイルカと泳ぐということ!
ここに来ると、海の仲間にも沢山会えて、海に帰ってきたみたいです。
小一時間ばかり泳ぐと、すっかり症状も納まり、満足して帰路につくのですが・・・
帰り道すがら「ああ、やっぱり水の中っていいなあ〜」と。
ぼっーと水の中の幸せな時間を思い出してはニヤけます。
そして、よりいっそう海行きたい病が重症化していることにも気づくわけです。。
「海行きたい病」とは恋の病にも似て、もうつける薬がないみたいですね^^;
photo by Tetsuji Akimoto
& thanks for 「海とイルカの学校」
「海の幸」は日本人の食に欠かせないものです。夏になると毎週のように海に通うフリーダイバーにとっては、さらに身近なもの。
こんな風に集中している様子でも・・・
「今日の練習終ったら、シメサバか・・それともアジの叩きか・・」
頭の中ではたいてい、そんな思考が渦巻いています。海に通う楽しみの一つは美味しい海の幸を食べることですからね!
普段、都会生活を行っていると、食べ物とは「料理」「食品」の姿していますが、海に入ると「今目の前を泳いでいる魚」「目の前に生えている海藻」これが食べ物なのだ、という当たり前のことを実感します。
「魚」は刺身や切り身ではなくて、ウロコに覆われて海を泳ぎ回る生物。
「私たちは生き物を食べて生きている」という現実を実感することが出来ます。
●「第4回Marineトークショー」
さて、先日参加した「第4回Marineトークショー」のテーマは
「海のいきもの。食べる。食べられる。」
まさにこのことがテーマでした。トークショーを主催した「Marin Action(マリンアクション)」は「いつまでも生命溢れる美しい海で潜りたい」というフリーダイバーみみずんこと岡本美鈴選手の一アスリートとしての強い思いから生まれた活動。海洋生物や海洋保全に向けた調査研究等を行う「エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)」さんと様々な海洋保全活動を行っています。
さて、今回のトークショーでは3名の講師がそれぞれの海との関わりから、「海」と「食べる」ことについてのお話。
まずはELNA小野澤さんより「ウミガメが食べる。そして食べられる。」
ウミガメは種によってどんなものを食べているのか、そしてどんな生き物に食べられているのか、というお話。周りを取り巻く様々な条件によって食べられるかはたまた生き残れるのか変わってくる、という壮絶なウミガメと生態系のお話。小野澤さんは、おっとりとチャーミングな語り口で解説して下さいました。
続いて、美鈴選手・・・「潜水チャンピオンが見た海の中の生態系」
フリーダイビングの競技の話をする機会が多い美鈴選手ですが、今回は「御蔵島でイワシの補食シーンを素潜りで間近で見た(間近どころか群れに巻かれながら)」という激レアな話をこれまた超レア映像と共に!!海がざわざわとうごめく様子、本当にゾクゾクしました!!(残念ながら映像も写真も著作権の関係で転載が出来ません・・)イワシの群れに巻かれる美鈴選手、一瞬でカツオに食べ尽されてしまったイワシの大群・・・何十回と御蔵島に通っている私でも、こんなシーンには出くわしたことがありません。みみずん、やっぱり「持って」ますね。ともあれ、いつも食べているカツオのタタキ定食がとてもドラマティックなものに思えました。
※写真:ダイブショップテール、千々松政昭氏:2013年6月マクタン島(今回のお話とは関連しないのですが、イワシの大群がどんなにスゴいか!!という光景をお伝えしたくてプロ海中カメラマン千々松さんに許可頂き写真を掲載しています。この群れが全て食べ尽されてしまうのです・・!千々松さん、ありがとうございます!)
○そして最後はメイントーク!全日本さば連合会会長、小林崇亮氏による
「サバニストが語る“さば”の世界」
その名も「サバニスト」である小林さん。あくまで「一消費者」として鯖(鯖缶含む)を愛する視点から鯖づくしのお話を粛々と語って頂きました!私も「シメサバ」をこよなく愛する一人ですが、期待以上の最高にユニークな、サバとサバを巡る日本文化のお話の数々!特別高級魚ではない鯖という魚。正に日本の魚の代表格と行っても良いのでは??とすっかり、「サバ」に洗脳された私でした。
●魚尽くしの懇親会
さて、「海の生き物を食べる」ことについて様々な確度から勉強した後は実践「魚を食べる」懇親会。
漁業関連、海洋保全関連、魚料理人、サバニスト、フリーダイバー・・・海と魚と食に関する様々なプロフェッショナルたちが集結!!
サバニスト小林さんと、富戸沖の極上の真サバ(市場には出回らない上物)の
サバショット!
一見普通のお寿司ですが、「サメ」のような珍しいネタもあります。
いとう漁港の日吉船長さんからは、こんなに大きな鰤を贈呈!
(料理人の森山さんが持つと大きさが際立たないのですが・・^^;;)
目の前で薄く捌く技、見惚れます!お刺身って芸術です!
凄腕料理人の森山さん、日吉船長さん、仲買人長谷川さん。穫って買い付けて捌く、
カッコいい魚男子三人衆!
そして、サバニスト小林さんとロッキー松尾さんによる「サバンド」の熱唱で夜は更けて行きました♪
●「生き物を食べる」「命をいだたく」ということ
こんな楽しい会でしたが、海産資源、漁業、捕鯨、自然保護、などが自然に話題になり時に真面目にも語り合いました。
「魚を食べる」ということ。「生き物をいただく」ということ。
高級なお寿司であっても、サバ缶であっても、それは同じです。
私は、自分で初めて素潜りで銛で魚を突いて穫った時の強烈な感覚を思い出しました。
それは、体調20センチ程度の小さなカワハギでした。さっきまで、目の前で泳いでいたおさかな。
目玉からしっぽの先まで、全て全部を残さずに、美味しく頂きました。
そんなことを思い出しながら「海の恵み」というものを改めて考えながら、
改めて、海に囲まれて、海が大好きな人たちと繋がって、
これからもずっと海と関わって行きたいなあ・・・と思った夜なのでした。
photo by Masaaki Chijimatsu, kosuke okamoto
今年も「流氷フリーダイビング」の季節がやって参りました。
というわけで行って参りました、遥々世界遺産知床・ウトロまで!
フリーダイバーはそもそもマニアックな人が多いのですが、その中でも特に流氷ダイバーは「トップクラスのモノ好き」です。ここから先はどうぞ、良い子は真似せずへぇーよくやるねぇ・・、というスタンスでお読み下ください。
私は昨年に引き続き2度目のチャレンジとなります。
昨年は女満別空港到着時から終始吹雪いていて日帰りを余儀なくされたのですが、
今年は快晴。青空と、雪の積もった真っ白な大地のコントラストも鮮やかな
ピカピカの世界でした。太陽の力は偉大です!
一面の流氷を見ながら海岸線を快調にドライブ!とはいえ外気温は氷点下。この後のダイブに備えてしっかり唐揚げを食べて防寒対策も万全です。
●いざ、ウトロ港へ
ここは、湾内なのです。何度見ても不思議な光景です。
てくてく、、てくてく。沢山の機材やウェイトを橇に乗せて。
そしてやっと辿り着きました。大会会場の「アイス・ブルーホール」
今回は2つの穴が会場となります。既に氷がはっていたので、掻き出しているところです。
これは前日の写真。積もった雪の上からポイントを見つけ出し、ツルハシとスコップで、穴を掘ります。たいへんな作業なのです。前乗りして作業してくれた皆さん、ありがとう!
さて、これが今回のメンバーです。フリーダイバー7名、スキューバーダイバー3名、カメラマン1名、陸上サポート2名の総勢13名です!去年よりだいぶ仲間が増えています。
皆モノ好きすぎる・・・。
そして何と今年ははるばる台湾からJAYさんも参加!実は彼は昨年秋に「流氷フリーダイビングに参加したいのだけど・・」と密かにメールをくれたのですが。私は全くおススメしないどころかむしろこんな風に脅していました。
「言っておくけど本当にクレイジーな人しか集まらないし、ハッキリ言って極寒で全然楽しくない。だいたい寒いって、どういうことか知ってるの?君これまで潜った最低水温何度?」
などなど。。が、にも関わらず、彼は、やって来ました。本物の雪を見たことすらなかったのに。このために、台湾では全く必要無い分厚い7mmウェットスーツをオーダーメイドし、湯船に氷を張って準備して。
彼もトップクラスのCrazyダイバーですね・・・
さて、いよいよダイブ開始。外気温は0℃〜2℃、無風。水温は-1〜2℃ほど。
「海水が液体でいられるギリギリの温度」です。
●コンスタント・ウェイト(垂直潜水)
今年は2種目を実施。まずは縦に潜るコンスタントウェイト。
昨年と同じく、水深20m程の海底にロープを垂らします。スキューバダイバーが待機する中を順番にフリーダイバーが潜って行きます。
水中は真っ暗、頭を下にして潜行すると・・ほぼ何も見えません。
でも浮上時には・・ぼんやりとした青い光に包まれた不思議な世界。
●ダイナミック(平行潜水)
ほの暗い氷の真下を1つの穴から別の穴へ、平行移動します。通常はプールで行う種目なのでいつでも好きな時に水面に上がることが出来る種目ですが、流氷下のダイナミックは「途中で水面に上がれない」という点が特徴的です。初の試みであったため、距離は20m弱。厳重なセキュリティ体制で実施します。
こんな風にずっと水面近くを移動するため、氷と光の不思議な世界を終始観察しながら泳ぐことが出来ます。
実は私の順番で、少しトラブルがありました。安全上、選手は自分の身体と繋がった「ラニヤードケーブル」という安全綱と水中のロープを繋いで潜水します。が、私が潜水し、もうすぐ出口、という一歩手前で、ラニヤードがたわんだロープに絡まってそれ以上進めなくなってしまったのです。
ラニヤードトラブルは私は通常の練習で何度か経験していたので落ち着いて「クイックリリース」(ラニヤード自体を自分から切り離す)で対処しようとしたところ、、・・・これが何故か外れなかったのです。
氷点下で手がかじかんでいたせいか、または機材の一部が凍って外れにくくなっていたのか不明です。幸いすぐにセーフティダイバーが飛んで来て、無事に外して貰うことが出来ました。
そして何事もなく「アイムOK!」と顔を出すことが出来ましたが・・・ほんの1分にも満たない時間とはいえ、5分にも思える時間でした。
氷点下のダイビングは本当に、通常のダイビングとは大違いだ、ということを改めて肝に銘じた一件でした。ともあれ、これ以外は何事も無く、競技は無事終了しました。
13時すぎから開始して、もう日が傾いてきました。流氷の上に長い影が出来始める中、撤収。
お疲れさまでした!
そのあとは、昨年のように東京にトンボ帰り、ということもなく皆で知床の海の幸を堪能しながら、夜中まで語り合ったのでした。
●知床の森へ
翌日は森に繰り出しました。
森の中をどんどん進みます!
エゾジカにも沢山会いました!
エゾジカの群れの向こうは崖、その向こうは一面の流氷です。
エゾジカに大感動している私たちを見て、ウトロ生まれウトロ育ちのフリーダイバー唯ちゃんは「このへんでは犬より多いんですけどね、エゾジカ・・・」とポツリ。。
●流氷とオホーツクの生態系
今年は、海だけでなく山にも少しだけ行くことが出来ました。そしてこの知床は本当に豊かな豊かな大自然に囲まれているのだなあ、と改めて五感で感じたのです。
海が豊かな場所は陸も豊かです。オホーツク海にやってくる流氷は、酸素やミネラルなど沢山の栄養分を運びます。やがて春になるとそれは海水に溶け出し、プランクトンが増え、それを餌にする小魚が増え、小魚は大きな魚の餌になり、魚は鳥の餌になり・・と食物連鎖を起こします。そして豊かな生態系を育んでいるのです。( 詳しくはこちら:オホーツク流氷振興局)
近年の温暖化で流氷にもだいぶ変化が出ているとのことです。北海道に到達しても氷が僅かであったり、期間が短かったり、 と・・そしてそれは少なからず生態系に影響を与えているとのこと。
流氷と、流氷が育む生態系がいつまでも豊かでありますように。
ともあれ・・今度は緑溢れる夏の知床に来たいと思っています^^)
photo by Tomohiro Noguchi, Tetsuo Hara, Jay huang, Yuko Noguchi , M.Kawamura.
さて、私は今年は陸上での運動には全く無縁だったのですが、年末にいくつか武道を学ぶ機会(しかもちょっとマニアックな^^;;)がありました。
インド古武術カラリパヤット:
日本ではあまり聞き慣れませんが、ヨーガと同じルーツを持ち、様々な武術の起源になったとても歴史がある武術です。私はご縁あって今回が二回目のワークショップ参加となりました。様々な動物のポーズが基礎の基礎の基本形になっており、それが繋がって一連の動作になりますが簡単にお伝えすると
「え、それはないでしょ、その次にこれっていうのはむ・・むりむりむり〜〜あ””ーーーーーー!!!」
という感じで・・腰を痛めている方にはお勧めしません。私は想定通り、翌日ありえないほど全身筋肉痛になりました・・。ともかく、相当身体の鍛錬をしないと基本の動きすらままならない、奥が深い武術です。何より身体の軸がしっかりしていることが基本中の基本。勢いで騙すことも出来ません。取得するのは時間がかかるかもしれませんが、時間をかけて得たものは簡単に失われない。難しいというのには意味があるのだと思います。
「まずはバランス。強さはあとからついてきます」
という言葉が印象的でした。そしてさらにその先にはやはり「美しさ」があります。稽古の最初と最後には必ず祈りと感謝をもって神様に捧げる演武が行われます。ニディーシュ先生の演武は全ての動きが曲線的で、とても美しいけれど、底知れぬ強さがあり、不思議と見ていて穏やかな気持ちになります。「柔らかくて、強いこと」これは私が憧れる理想なのだということを、思い出しました。
(※ちなみに、カラリの稽古では、一つ一つの動作の意味といったものは一切説明しないそうです。あくまで私の個人的感想です。)
法螺貝の稽古:
法螺貝とフリーダイビングって何が繋がるんだよ!って思うかもしれませんが、まあ貝というのは海のものなので・・。これは武道というより、修験僧の方が行う”行”だと思うので、とても貴重な経験です。貝好きな私ですがもちろん法螺貝は初めてです。ずしりとした貝を渡され、最初は音を出そうと一生懸命になっていました。ひとりで鳴らしてみるとふっと音が出たのに、修験者である先生が目の前にくるだけで、なんとも弱々しい情けないスカスカした音しか出なくなるのです・・。
そして、途中から貝のことは忘れて、しばし身体をほぐすワーク。
そしてもう一度貝を持つ。
音というのは結果として出るもの。
出る、と言うか、空気の震えで響くものということが少しだけわかってきました。
そのためには呼吸が大切で、深い呼吸はしっかりと大地を踏みしめるこの自分の身体を通して出てくる。そして面白いくらい、呼吸と言うのは気持ちと連動しているんですね。法螺貝稽古の最後の全員での法螺の掛け合いは凄くて、もはや音が聞こえるというより空気が震えてました。出そうと思って無理矢理出す音と、結果として響くものの違い。自分から出ているのか、周りから出ているのかもはやわからない。身体と空気と貝が共鳴していた空間、忘れられません。
(※法螺貝の稽古でも、言葉を使った説明は殆どなかったので、あくまで私の個人的な感想です)
カラリパヤットや法螺貝の稽古はクロストレーニング、というにはちょっと次元が違うのですが、思わぬところでフリーダイビングとの共通項を発見したり、フリーダイビングでは感じなかった沢山のことを気づかせてくれました。
年間通してわりと真剣にやっているはずのフリーダイビングでは何故かこうした気づきを得にくくなっている、ということがあります。私はオリンピックを目指すようなアスリートではありませんが、それでも競技結果にフォーカスしすぎて、気がつくと数字やテクニックばかり追っていた、ということがままあるからだと思います。
もっと深く、もっと長くと数字を追いかけて、数字の先に何かあると思ったら、数字以外何も見つからなくて、なのでまたその先にある数字ばかりを追いかけてしまう、という悪循環。結果を急ぐことによって、沢山の、もっと豊かなことを見落としてしまいます。もしかしたら数字の先ではなくて、その途中に欲しいものは、あるのかもしれません。
クロストレーニングというのは、ある意味でとても良い寄り道になるのでは、と思います。結果ではなくて、理想を目指すとか、何かを手に入れることより、もう持っている何かに気づくとか、そんな簡単なことを教えてくれます。
人間は陸上で、酸素を吸って太陽の光を浴びて生きる生物です。でも細胞のどこかでは海を覚えていてそれでフリーダイビングに魅せられてしまう。でも、とても深いけれど、やはりフリーダイビングは、陸上生物にとってとても魅力的なひとつの「寄り道」に過ぎないのかも・・などとふと、思います。普段気がつかない自分の心や身体や空気、そういったものに気づくことが出来る、人生を豊かにする寄り道、私にとっては、フリーダイビングはそんな風に思えているのです。
フリーダイビングのために武者修行をしているのではなくて、フリーダイビングが何かの修行になっているのかも・・?
などと思う大晦日です。「人魚の武者修行」はまだ2013年のことも書ききれていないのですが、まもなく2013年も終わりなので・・・ここでいったん〆ます。
今年一年の海に、空気に、身体に、そして周りの皆様に、感謝します。
良いお年を!
photo by Mayuko higuchi
大晦日なので私もこの一年を振り返っております。
思い返せば、運動といえばひたすら泳ぐか潜るかでした。(思い返すのそこかよ・・?)
限られた時間で効率よくフリーダイバーとしての身体をつくるために、泳ぎや潜り以外の陸上での「運動」を止めていました。これ以上無駄な筋肉を脚につけないようにと、走ることも。(電車に乗り遅れないようにダッシュする以外は・・)
たしかにスポーツ選手やプロフェッショナルの身体というのは、それに適した動きの中で出来上がると思います。
ランナーは走ることで
スイマーは泳ぐことで
格闘家は闘うことで
バレエダンサーは踊ることで
そしてフリーダイバーは潜ることで
(営業マンは歩くことで?)
その活動にとって必要な部分が自然と鍛えられ無駄の無い身体が出来上がるのだと思います。
とはいえ、オフシーズンには全く別の種目の運動を積極的に取り入れる「クロストレーニング」も良いかな、と思っています。クロストレーニングには身体のバランスを整えたり、精神的にリフレッシュされたり、新しい気づきをえられたりと様々な効能があるそうです。
フリーダイバーがクロストレーニングとしてよく取り入れる運動と言えば・・ヨーガ、水泳ですが、私の場合は、長年空手を嗜んでいたことから武道に関心が行きます。陸上と水中の違いはあれど、実は武道とフリーダイビングは、通じる部分がたくさんあります。例えば・・・
足の力で蹴ろうとしないで
体全体の力を抜いてやわらかく”しなり”をつくるように
空手の師匠からは回し蹴りの指導で、潜りの師匠からはドルフィンキックの指導で、全く同じことを言われたことがあります!
それから・・
動きに呼吸を合わせるのではなく、呼吸に動きを合わせる。
ということをひたすら基礎練習として行うという、別の武術を学んだこともあります。フリーダイビングは無呼吸だからこそ呼吸を意識することがとても大事で、陸上でのこの訓練は目からウロコでした。
美しさを追求しても強さにはならない。
強さを追求すると結果として美しい動きが生まれる。
これも武道の師匠の言葉です。フィンワークに置き換えると「ひたすら泳ぎ込むことにより、結果として無駄のない美しい動きが出来る」ということかな、とも解釈しています。
一つ一つの動きを理屈で理解して頭で考えながらゆっくり練習するというのも大事ですが、頭を空っぽにして、ひたすら反復するとそのうち身体が勝手に動き出すというようなことがあります。頭ではなくて身体が勝手に覚えてくれる、ということなのだと思います。
何だかストイックな話になってきましたがまだまだ続きます・・・
長くなるので、その2へ。
photo by Kosuke Okamoto
Mitsuhiro Kojima
猛反対を恐れず書きましょう。
夏は、終わりました。
フリーダイバーはみんな海が大好き。当然夏も大好きです。なので
「冬以外は、全部夏!」
「季節には”夏”と”それ以外”がある。」
と豪語する人々も珍しくありません。
でも、正真正銘の日本の夏は実はとても短いのです!
8月2週目頃から既に夏はもうエンディングに向けて加速して行きます。
ある日ふとした瞬間に感じる「秋の気配」。それは日に日に勢力を増し、
そして8月後半のある日、「秋」と「夏」はこっそりと、完全に入れ替わります。
そしてどんなに日差しが強くてもそれはもはや夏ではなく
「まるで夏みたいな日」となるのです。
さて、ストイックなフリーダイバーの「夏」はというと。
毎週海に通ってはロープを見てひたすらまっすぐ潜り、
深度や潜行時間、耳抜きや横隔膜の柔軟性の事を考えています。
見つめるのは海ではなくあくまで「自分」という内向きなもの。
周り中に溢れる「夏」という贅沢なものに鈍感になりがちなので、
うかうかしているとロープしか見ていないうちに「夏みたいな秋」になっていた、
などという 事になりかねません。
これはいけません。というわけで、私は正しくサボって、「正しい夏」を掴みに・・^^;;
真夏というのは不思議です。
まっただ中にいるとそれは特別なものではなく、永遠にあるもののような気がします。
そして終ってしまって初めて「ああ、真夏は一瞬だったなあ」と気がつくのです。
「若さ」ってやつにも似てますね..^^;
でも身体が記憶した本物の夏のエッセンスはちょっとやそっとでは消えません。
たっぷり日差しを浴びて、真っ黒な顔で笑い合った記憶。
「正しい夏」の記憶は、細胞の一部になります。
自分の一部になった夏は、終わることがありません。一瞬で永遠の夏。
それは、季節が変わっても人をあたため、強くするものに違いないと思います。
さて、正しい夏の後には、正しい秋がやって来ます。
フリーダイビング的には海のシーズンは実はこれから。
海も気持ちも落ち着き、トレーニングも本格化する季節です。
なお、正真正銘の日本の夏はもう終わりましたが、ここから先は本人次第。
「エンドレス・サマー」を楽しみたい方、ご自由にどうぞ!
photo @ manazuru, mikura-jima, hayama
毎年夏になったな、と感じる瞬間はどんな時でしょう?
今年始めて冷房を入れた日
今年始めてビーサンを履いた日
今年始めて蚊にさされた日
色々予兆はありますが。
私の場合は何と言っても「海が身体に戻って来た」という感覚がやってくる日。これが夏の始まりです。
これはフリーダイバー全般に共通の感覚ではなく、私のちょっと変わった体質特有のお話です多分・・悪しからず。
深度競技には耳の圧平衡=耳抜き、が必要です。deepに潜る選手はこのためのテクニックを取得しているものなのですが、私の場合はラッキーなことに、「自動的に耳抜きが出来る」(本来意識的に行うはずの耳抜きを無意識にしている、という感じでしょうか)体質です。これは、特に肺活量が多い訳でも、息堪えが得意なわけでもない私の、唯一のフリーダイバーとしての特技(?)といえます。
一方で耳抜きが「完全に身体任せ」なので、自分の意志でコントロール出来ないという困った点があります。(はい、、テクニックも取得せねば。汗)私は、シーズン始めは耳が水圧を思い出してくれるまでは殆ど潜ることが出来ません。皆がどんどん深く潜りだす中、私はひたすら、耳に慣れてもらうまで、-5m、-10m、-15mとちょっとずつちょっとずつ、潜ります。でもこの状態だと-20mが限界。昨年平気で-50m以上潜っていた自分など想像もつかない状態です。
が、これを数週間続けていると、「その日」がやって来ます。
ちょうど先日。ウォーミングアップで軽く5-6mロープを手繰って潜っている時
「あ、海の耳になってる!」
と、すぐに気がつきました。-5mでも、この感覚の違いは明白なのです。
試しに潜ってみると、-35mのボトムプレートまでスーッと違和感無く到達しました。
久々の、海に身体が吸い込まれて行くような、
青い世界にやっと自分が入って行けたようなこの瞬間。
水圧が窮屈な場所ではなく、とても広くて、冷たいのに温かい場所に感じる瞬間。
「ああ、やっと身体が海モードになってくれた」という感じです。
この感覚は、こんな表現はおこがましいのかもしれませんが、
「自分が海に戻って来た」のではなく「海が、自分の身体に戻って来た」
とでもいう少し不思議な感覚です。
少しずつ海に通って、浅瀬で海藻を見たり、船に乗ったり、
ボートハウスで、真鶴で釣れたシメサバやアジの干物をご馳走になったり、
海帰りにアイスなど食べたり、そういう一つ一つのプロセスを経て、
いつのまにか、だんだん身体が海仕様になって来る気がしています。
テクニックではどうにもならない、自分の身体が海に馴染むための毎年のステップ。
自然に四季あるように、たぶん人間の身体にも四季があるのかもしれません。
ともあれ、こうして今年も夏が始まりました^^)
photo by Mitsuhiro Kojima
Yuko Senga