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2013/07/24

 

右手も薬指の先端が紫色に染まっていく、

石を積み始めてどのくらい経っただろうか、

石垣はちょうど膝の高さまで積み上がっていた、

昔、フランスの海岸地帯で見た石垣の長さには及ばないが、

それなりに満足出来る長さの石垣が積み上がってきた、

石を一つ積む度に次の石を目で探す、

どれでも良いという分けではない、

出来れば隙き間なく組み上げる為に、

次に積む石の断面を気にしながら、

石を目で探す、

『次は、私の番よ!!』と、

囁く石を見つけその石を積み上げる、

私に囁く石とは違う石を手に取り、

積み上げようとすると、

なぜか石を置くタイミングを外し、

指の先が紫色に染まりる、

単調な作業のはずなのに、

私はこの石積みの作業が楽しくてならない、

石の囁く声を感じるのが楽しくてならない、

小雨が降り始めてきた、

Tシャツが肌にまとわりつく、

私は石を積み上げる、

私は楽しくてならない、

もう右手の薬指の痛みすら覚えていない、

私は小雨の中、

楽しくてならない、

 

彼女が耳元で囁く声に目を覚ます、

シーツの下にあるベッドの暖かさを、

右の頬に感じながら夢の中で目を覚ます、

どれくらい前から彼女は、

シーツを左の頬で暖めていたんだろう、

彼女が囁くたびに、

彼女の左の頬のシーツのしわで出来た赤い線が見える、

まるでナイフで斬りつけられたように、

彼女の奇麗な頬に赤い線が刻み付けられている、

『あなたは、上着を重ね着するように恋する事が出来ると言うけれど、

私は上着を脱ぎ捨てるようにしか恋が出来ないの、

どんなに着心地が良い上着を着ていても、

それはいつの日か脱ぐ日が来る事を知っているの、

あなたは目で見える世界を生きようとしてるけど、

私は感じる世界を生きていたいの、

だから、どんな時だって幸せでいられるの、

それが自分にとって幸せな事だと思えれば、

私は幸せになれるの、

今、眠っているあなたに話しかけているこの時でさえ、

私は幸せで満たされているのよ、

ただ、あなたが目に見える世界しか、

信じようとしない事が、

私は哀しいの』

 

いつのまにか小雨は止み、

石組みは腰の高さまで積み上がっていた、

青い空と、

森の緑と、

積み上げられたばかりの石組み、

私が残った石の上に腰掛けていると、

ママが石垣の前にテーブルと椅子を並べ、

花を飾り、

アイスティーと、

クッキーを置き、

私の方をちらっと見た気がした、

私が瞬きをすると、

ママの左の頬には、

私をずっと見ていたかのように、

私にだけしか見えない、

シーツのしわで刻み付けられたような、

赤い線が浮かび上がってきた。

2013/07/24 10:05 | 未分類 | No Comments

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