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2014/08/20

昨晩の公演で、佐渡裕×シエナ・ウインドオーケストラのツアーが一旦終了致しました。

siena2014

「一旦」というのは、この後も同じプログラムで富士山河口湖音楽祭や東京でのテレビ収録が残っているからなんですが、ツアーとしては昨日で一区切り。この先ソリストが変わるので、チェロの宮田大君も昨日が最後でした。宮田君、昨晩の越谷公演はまさに「集大成」とも云える鬼気迫る雰囲気で、最後は涙を流しながらの演奏でした。「ツアーが終わると思うと寂しくて」というのが理由だそうですが、その感情が我々にも伝わってきて、なんだかこちらも泣きそうになってしまいました。いや、実際泣いている奏者も何人か居ました。デ=メイ作曲のチェロ協奏曲「カサノヴァ」、本当に名曲です。

さて、今回のツアーは名古屋→鈴鹿→清水→長岡→水戸→越谷と移動日・休息日無しの6日間連続弾丸ツアー。佐渡さんは練習でも手を抜きませんし、本番になると演奏者の持つ力を100%以上引き出す方で、シエナと佐渡さんの演奏会は毎回「熱狂」という表現がぴったり当てはまるコンサートになります。連日キャリーケースと楽器を持って(僕は楽器を団のトラックに乗せてもらえますが)移動し、毎晩ハイテンションで演奏会をこなすので、それだけ演奏者にはかなり過酷な環境ではありますが、それでも頑張れるのはやはりお客さんのおかげと言えます。このツアーも6日間全公演完売、満員御礼。終演後の拍手を全身に浴びると「ああ、また明日も頑張ろう」と感じられるのが演奏者の活力の源だと改めて気付かされるのが佐渡×シエナツアーなんです。

シエナの8割~9割の公演に出演している事もあって、僕はよくシエナの団員さんと間違われるんですが、僕はただの客演奏者(エキストラ)です。「もう団員みたいなもんだよ」とメンバーからも言って頂く事も多く、もちろん心情的には嬉しいのですが、団と何の契約も交わしていない以上、この言葉は僕の立場に全く何の効果ももたらしません。ですから、いつ呼ばれなくなっても、誰かに取って代わられてもおかしくない立場な訳です。そんな自分の立場をわきまえ、僕はどんなオーケストラでも、全ての本番を「この団体での最後の演奏会」と位置付けて、自分に悔いが残らないよう徹底的に準備をして緊張感を保ち演奏会に臨むよう心がけています。幸い、シエナに関しては参加させて頂くようになって既に8年目になりますから、多少は「積み上げた信頼」があるのかな、とも思いますが、むしろ、それまで築いたものが崩れ去らないよう強く心がけています。

シエナに出演するようになって最初の1、2年はかなり遠慮して様子を見ていた部分もありますが、3年目くらいからは「音楽的にプラスになる」と思えば意見も発するようにしましたし、自分が不安なところはどんどん質問をするようにもしています。こうして話し合いによって音楽を構築していこうとすると「話し合うなんてアマチュアっぽい、音で通じ合えばいいんだよ」と批判する方もいるのですが、これは「以心伝心」の気持ちを重んじる、実に日本人的発想だと思います。プロだからこそ、ベストの演奏を提供するために奏者同士の意思疎通は欠かせませんし、音だけで通じ合えない部分は言葉をもって解決するべきだと僕は思っています。

そして、最近僕がシエナなど吹奏楽の団体で心がけているのが「視覚的にリードする」ということ。

吹奏楽において、コントラバスは手の動きでテンポや音の変わり目、入るタイミングを周囲に伝えられる数少ない楽器のひとつです。コンサートマスターはサックスやクラリネットの奏者が務める事が多いのですが、やはり管楽器は見た目で音の入り、変わり目が予測し辛いんです。ですから、僕は「ちょっとテンポが前に行き過ぎだな」と思ったら弓を多めに使ったり頭、身体を大きく振ったり動かしたりして周囲に警鐘を鳴らします。コントラバスもそんなに楽器を振り回さず演奏するのが理想だとは思いますが、身体の軸がブレなければそれほど音に影響はありません。それに、オーケストラではかなり自制していますが、僕は曲に入り込むと動きが大きくなってしまう性質でもあります。

どうしても吹奏楽のコントラバスというと「目立たない、聞こえない」という先入観があるからでしょうか、最初は全く存在を認めてもらえない感覚がありましたが、最近はだいぶ見てくれるメンバーが増えてきました。普段から積極的にコミュニケーションを取るように心掛けていることも、多少は関係あるかもしれません。そう考えると、やはりエキストラでも、単発で呼ばれるよりは定期的に呼ばれる方が音楽的にもやり易い環境を築く事に繋がりますね。

特にコントラバスとティンパニは同じタイミングで演奏する場面が多く、その一発で曲の雰囲気を決めてしまうこともありますから、僕は常にティンパニとの関係性は重要だと思っていますし、常にティンパニを意識して演奏するようにしています。海外のオーケストラではコントラバスとティンパニの関係性は常識として浸透しているところが多いように感じます。今回ゲストで参加されているティンパニ奏者の方は、先方から「大変タイミングが分かり易いよ、ピチカートも良く聞こえてくるし、素晴らしい」と仰ってくれました。これはコントラバス奏者にとってはこれ以上ない賛辞の言葉だと言えますし、普段から意識していた事をちゃんと気付いてくれていると分かると、演奏会本番でも安心感、遣り甲斐が増すというものです。

また、吹奏楽でコントラバスが苦労するのが音程。管楽器は口で息を吹き込みますから、疲労してくると口が締まって音程が高くなりがちです。これはプロの楽団でも同じこと。オーケストラでは弦楽器が多いので、管楽器奏者は弦のピッチを聴きながら修正可能ですが、吹奏楽ではコントラバス、ティンパニ、ピアノ、ハープなどハッキリ音程を聞きとれる基準となる楽器が少ないので、管楽器同士の相乗効果によりどんどん音程が高くなっていきます。ですから僕は「音程が上がってきたな」と感じると、コントラバスが裸になる(目立つ)場所であえて音程を低めに取ったりして、周囲に警鐘を鳴らす事を意識的に行っています。よく「コントラバスは弾いていると弦が緩んで音程が下がる」と言われますが、ちゃんと管理して日常からこまめに調弦をしていれば、そんなに下がるものではありません。中学・高校吹奏楽部によくあるような管理状態の楽器だと確かにピッチが変わり易い事は多々ありますが・・・・。

この音程に関しては相当悩んだ時期もありましたが、あるとき佐渡さんに「本番はお客さんもいるし、音程がズレて聞こえるより、こちらが管楽器に寄った方が良いですか」と質問したら「いや、その音程は基準の音程であるべきなんだから、高い方に寄るのは違う」という返答を頂き、気持ちが楽になりました。それでもやはり本番では合わせに行ってしまう事はありますね。
まあ、そんなこんなでいろいろと苦労はありましたが、シンフォニア・タプカーラも、シンフォニア・ノビリッシマも、そしてカサノヴァも、中身が濃くて楽しい曲ばかりでした。もう一度富士山河口湖音楽祭では同じプログラムを演奏しますし、気合いを入れ直して楽しんできたいと思います。

2014/08/20 06:10 | 演奏の現場から | No Comments

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