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2009/11/25

こんにちは、前回はコントラバス運搬の苦労について書いてみましたが今回はその続き、電車や徒歩で運搬する場合です。

「車買えば簡単」という人も居ますが、私は時間の計算がしにくい点が好きになれません。
リハーサルに遅れない為にわざわざ早起きして車でホールに向かう労力と時間が勿体ないと感じてしまう。車が好きならそれも良いのでしょうが、私は車に一切興味がないんです。それに、楽器の維持費は車と同じくらい負担がありますから、短縮に予算の問題も出てきます。人それぞれに事情がありますよね。

楽器は肩に担いで運ぶのがもちろん良いのですが、ソフトケースによってはリュックのように背中に背負えるものもありますので、それだと肩への負担は少なくなります。ただ背負ったときの高さを理解していないと、高架などにぶつけてネックがボキッと折れる、なんて悲惨な状況にもなりかねません。

長年コントラバスを弾いていると腰をやられるケースも多く、身体への負担軽減の為に荷物などを乗せるキャリー(下画像)に積んでゴロゴロ転がす人が多いですね。

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私もその一人で、四輪の台車だと縛りつけておけば信号待ちや電車待ちの際に突っ立てておける利点があるのです。もちろん風が吹いたら倒れて割れたりしますからそこは注意が必要です。専門店にはコントラバスのエンドピンを抜いて代わりに車輪を差し込むタイプも置いてますが、これは安定しませんし、特に腕力の劣る女性にはあまりオススメしません。

ちなみにこの台車、購入場所によって大きく費用に差が出るのでご注意を!

例えば某「激安の殿堂」なら1500円もしませんが、有名デパートの旅行グッズ売場なんかだと7000円くらいします。高ければ長持ちするという訳でもなく、金額に関わらず最終的に必ず車輪が壊れますから、車輪がしっかりした物を選びましょう。特に車輪がプラスチックだと削れやすく、左右の車輪のサイズが違ってきて傾きが生まれ、車輪が外れる要因になり易いです。

近年はバリアフリー設備の充実でコントラバスの運搬もかなり楽になりました。
首都圏の駅ならほとんど階段を使わず移動や乗り換えが出来ますから、最もバリアフリーの恩恵に授かっているのは、或いはコントラバス奏者かもしれません。

ここで台車を使った移動の際のポイントをいくつか記しておきましょう。

まずエスカレーターは楽器ごと後ろを向いて乗ること。
正面を向いたまま乗ると楽器が自分に寄り掛かる形になり、プロレスのバックドロップのような不安定さな体勢になりがちですが、後ろ向きなら一段下に楽器を安定させる事が出来るんです。改札は一番広いところを使うのが良いのですが、楽器を縦にすれば普通の改札でも通ります。

ちょっと混んでいる電車に乗る際は、倒れやすい「駒」を守るようにしましょう。
車両の端で駒を角に向け、壁に両手を付いて楽器を全身で守ります。特に日本は楽器の価値を知らない人が多いですから、平気で「邪魔だよ」と楽器を叩いたり除けたり蹴ったりする輩が目立ちます。わざとらしく「600万」とか値札を付けておくのも一つの防衛策かもしれません。いや、実際は50万くらいだって大袈裟に表示しときゃ良いんです、「楽器は高いんだ」と認識させる事が大事ですから。

さて、演奏旅行などで苦労するのが飛行機、新幹線、バスへの楽器の持ち込みです。

飛行機の場合、国内線ならJALもANAも航空会社所有のハードケースをレンタルしてくれます。但し台数限定のため必ず事前申し込みが必要ですし、ANAのサイトには

「ANA便(機種Q84/Q83)、IBEXエアラインズならびにオリエンタルエアブリッジが運航する便では貨物スペースが限られているためコントラバスはお預かりできません」

と明記されていますから、事前に調べて航空会社に問い合わせるのが良いでしょう。
ちなみにJALならレンタルは無料です。最近ソフトケースのまま手荷物同様に預けてしまう人も居るようですが、私には信じられませんし絶対にオススメしません。

新幹線の場合、最も良いのは事前に駅員に相談すること。
運が良ければ使用しない乗務員室を使わせてくれます。以前グリーン車に乗った際には車掌さんの方から部屋の使用を申し出てくれた事もあります。最近はこの部屋を使わせてくれない場合もありますが、そんな時はあえて自由席で一番後ろに座ります。座席の後ろの空間にピッタリ楽器が入るので、自分が座席を倒せない点だけ我慢すれば確実に安全な移動が出来ます。ただ、2席分占拠する事になるので混み合っている際には遠慮しましょう。

乗務員室も自由席もダメな時は車両間の通路に置きます。
だいたい新幹線は路線によって開く扉が片側に集中しているので、あまり開かない扉側の手摺りに縛りつけておけばまず大丈夫。そちら側が開く時だけ楽器を移動させれば良いのです。ただ、目を離している隙に何があるか分かりませんから、出来れば楽器が視界に入る席に座るか、さもなければずっと寄り添っている事をオススメします。東京~静岡、或いは東京~新潟間くらいなら乗車時間は1時間半程度ですから、立っていてもそんなに苦じゃありません。

楽器を持ち運ぶと一番困るのが、演奏会の打ち上げを楽しめないこと!!!
車ならアルコールを口にする訳にいかないし、電車なら遅い時間のラッシュに遭いたくないしで結局打ち上げにコントラバス奏者が居ないことはよくあります。その日の余韻を楽しむのが打ち上げですから後日改めてって訳にもいかないですしね。私もよく「みんな今頃楽しく盛り上がってるんだろうなあ」と、地団駄を踏むような思いで帰途についています。
 
 
いろいろと楽器運搬の手段を書き連ねてきましたが、お金に困らないなら車が一番ですし、楽器を運ぶのが年に数える程度しかないなら電車で十分。人それぞれに事情や都合はあると思いますが、まずは楽器を大切に守ってあげる事が一番。今回のコラムを参考にして頂けたら幸いです。

   

2009/11/08

お久しぶりです、徐々に寒くなってきましたが皆さん如何お過ごしですか?
私は体調を崩したまま引越しをして全く新居でノンビリ出来ない日々が続いております。

さて、前回は楽器演奏可能物件という、音楽家ならではの苦労について書いてみましたが、今回はコントラバス奏者ならではの苦労について書いてみましょう。

通常、ほとんどのプロのオーケストラは楽器を所有しているのでコントラバスを運搬する必要はありません。コントラバス奏者は自分の弓だけ持って会場に向かい、楽団所有の楽器を演奏します。毎回違うサイズの楽器を弾かねばならないという柔軟性は求められますが、身体に負担のかかる楽器運搬はしなくて良いのです。
従って楽器を運ぶケースは室内楽やスタジオ仕事、寄せ集めの団体など楽器を用意してもらえない場合に限られます。こういった場合、「楽器使用料」「楽器借用料」といった名目で別料金が発生するので、重い楽器を運んでもある程度金銭にて報われる仕組みになっています。

楽器持ちの仕事の場合、ラッシュの混雑を避けてくれているのか練習時間の開始が遅めに設定されている事が多いので電車の混雑はそれほど気になりませんが、それでも私はある程度どの電車のどの時間帯が混むのか把握するようにしています。万が一ラッシュに当たるようなら仕方ないので始発などの空いている時間に出て会場近くのファミレスで朝食を取る、なんて手段もありますが、滅多にそのような体験をしたことはありません。

さて、運搬についてですが、まずコントラバスという楽器はとにかくサイズが大きい。
だいたい身長が190cm前後ありますから、日本なら成人男性の平均身長を楽々上回ります。重さは15~20kgと大した事ないんですが、何しろ持ちにくい形をしているので運搬が厄介です。

コントラバスの運搬は車か電車、大きく分けて二つの方法があります。

車の場合、ワゴンなら後部座席を倒せば後ろから突っ込んで毛布の上にでも寝かせてしまえば準備完了。これが一番簡単です。車種が通常の4ドア車なら、助手席を倒し、楽器の首を助手席足元に突っ込んで固定するのがスタンダード。これやると片側はほとんど視界を遮られますから安全とは言えませんが、多くのコントラバス奏者はこの手段で楽器を積み込んでいます。

「車を持っていなくてもタクシーに乗せればいいじゃないか」と思う方もいらっしゃるでしょうが、どっこいこれが簡単じゃない。まず最近のタクシーは防犯の為前後の座席が遮断されていたりして助手席が倒せないパターンが多いのです。助手席が倒れなければもちろん楽器は積めません。たまにワゴンタクシー(ジャンボタクシーという名称でも呼ばれてます)を所有している会社もありますが、だいたい予約されていて出払っていますし、タクシー会社によっては別料金が発生したりする場合もあるのでオススメは致しかねます。ちなみに個人タクシーならほとんど助手席が倒せるのですが、楽器を見て乗車拒否された経験もあります。

ちょっと長くなってきました。
次回は電車や徒歩で持ち運ぶ場合について書こうと思います。