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2017/02/13

先日、レッスンに携わった生徒さんが2つのソロコンテストに出場し、2人とも審査員特別賞を頂いたとの報告がありました。

このコンテストというのは、吹奏楽連盟や学校主催の「基本的に吹奏楽部で使用する楽器によるソロコンテスト」というもの。つまり、管打楽器とコントラバスに参加資格があるというものです。

僕自身学生の頃にこのようなコンテストがあるとは知らず、この数年生徒さんから相談されて初めて存在を知ったような状態なのですが、最近はSNSでも「ソロコンテストを受けたいが何を弾けば良いか」という質問が増えて来て、選曲などを含め対策を考えるようになってきました。

しかし、コントラバスで管打楽器が主体となると大きなハンデを背負って出場する事になります。

まず、《コントラバスはソロ楽器ではない》ということ。
近年でこそパラパラと超絶技巧を披露するコントラバス奏者が増えてはいますが、あくまでもプロレベルでの話。吹奏楽部で限られた時間でしか練習出来ない学生さんたちにソロの曲を演奏するような技術を求めるのは正直酷というものです。増して、音大受験を考えている学生ならともかく、吹奏楽部レベルで高い音域まできちんと弾ける子はほとんどいません。

次に《管楽器に比べてコンテスト向けの曲が圧倒的に少ない》ということ。
音高生、音大生くらいになればコントラバスのソナタや協奏曲などがありますが、これらの曲目で弾くのは吹奏楽部ではほとんど目にする事もないようなハイポジション。そして中高生でも演奏出来るような曲となると今度は音域が低すぎて聞き取りにくかったり、または地味で映えなかったりするのです。

さらに《審査員に弦楽器を理解出来る人が少ない》ということ。

吹奏楽コンクールでもそうなのですが、こうしたコンテストでコントラバス奏者が審査員に加わる事はなぜかほとんどありません。僕も声がかかった事はありません。
受けた生徒から「ボウイングを見直したほうが良い、と書かれた」と連絡が来た事がありますが、この書き方だと「ボウイング」が弓順の事なのか、それとも右手の弓遣いの技術の事なのかも分かりませんし、「どのように見直したら良いのか」も書いてない。僕が教えていてどちらも特に問題を感じなかったので、その方に何がいけなかったのか伺いたいくらいでした。
先日SNSで「コントラバスのオリジナル曲を弾いたら、審査員に『そんな曲を弾いてないでバッハを弾きなさい』と書かれた」という話も見かけましたが、この審査員は「バッハはコントラバスに曲を書いていない」という事実を知らないのでしょうか。それとも、調弦も違うチェロの曲を演奏するべき、という考えなのでしょうか。これは想像に過ぎませんが、一部の審査員には「コントラバスの講評にはそれらしい事を書いておけば良い」という空気があるように思います。
もちろんこのような審査員ばかりではありません。「音が硬いなあ」と思った生徒さんに「コントラバスらしい音を出すように」と的確な意見を書かれた方もいらっしゃいましたし、僕が普段演奏させて頂いているシエナ・ウインドオーケストラのメンバーは日ごろから「コントラバスだとここはどう演奏するの?」「学校を指導しているんだけど、コントラバスにはどのような練習をさせれば良いの?」などかなり質問をしてきて知識を得ようと努力されています。
 先日あるアンサンブルコンテストに出場した生徒が「シエナの方から講評で褒められました」と言われたので、そのメンバーに連絡したところ「一人だけ奏法のアプローチがきちんとしていました」と評価を頂いたこともありましたから、彼らは正しい評価が出来ると思っています。

こうした事情から、僕は「ソロコンテストを受けたい」と相談されると、まず「勝ちに行くのか、コンテストの空気を経験出来れば良いのか」を確認します。勝ちに行くならそれなりのレベルの選曲をしなければなりませんし、こうしたソロコンテストの事情を知らせ、受ける前の段階で状況が厳しい事を伝える必要があります。

「ソロコンテストの前に一度レッスンを受けたい」と連絡頂き、行ってみたら基本がまるでなっていない場合もよくあります。そんな時は素直に「これでは先には進めないと思う」と伝えます。こんな時、早い段階できちんと基礎から教えていればなあ、と思う事もよくあります。ですから、新入生が入部したらすぐにレッスン講師を呼ぶ、というのは大切な事だと考えています。

こうしてソロコンテストに関わるようになり、この3年ほどはレッスンをした生徒さんがだいたい本選まで行くか、あるいは審査員特別賞を戴くくらいまでは持って行けるようになりました。一昨年には本選で金賞まで受賞する快挙を成し遂げた生徒さんもいます。だいたいソロコンテストを受けたい、という子はこちらが道筋を示すと必死に、真剣に練習に取り組んでくれるので、こちらとしてもやり甲斐がありますね。

いずれにせよ、今後もこうしてソロコンテストに参加するコントラバスの生徒さんは居るでしょうから、出来ればコントラバスの出場者がいる際はコントラバス関係者を審査に加えるなど、改善をお願いしたいところです。

こうなったら、ソロコンテスト向けの曲でも作曲するか、または思い切って僕の主催で「吹奏楽部のコントラバス・ソロコンテスト」でも開催してみようかな 笑

2017/02/07

先日、東北地方のある地域に、楽器講習会の講師として伺いました。

楽器講習会は全国で行われており、主催者によってはあまり報酬が出せない理由から音大生が指導に行く事も多く、実際僕が初めて講習会の指導をしたのも音大生の時でした。ただ、音大生は演奏する技術こそ学んでいますが、教えるスペシャリストではなく、また経験値も少ないのでどうしても視野の狭い指導になりがちで、当時の自分の指導を思い返しても、やはり恥ずかしくなるような内容だったように記憶しています。

今回は有名楽器メーカー主催の講習会で、現地の楽器屋さんがある学校を貸し切り、その地域の吹奏楽部の高校生を集めて演奏技術を伝える場で、指導者はプロの演奏家が多く、僕はコントラバスの講師という訳です。

実は昨年の11月にもこの講習会に講師として参加し、今回はこの地域2度目。「前回とほぼ同じ参加者です」と聞いていたので、前回教えた生徒たちの上達を期待して向かいました。

では、前回のレッスンで何を伝えたかと言うと・・・

①楽器の管理、状態の確認
②楽器の構え方
③右手(弓)の基本フォームや練習方法
④左手の基本フォームとその意味、ポジションの取り方

この3点を中心として指導しました。

本当に基本中の基本。

普段使用している教則本は?と尋ねると、吹奏楽部によく出回っている難解なものを使用していたので、僕の著書から一部をコピーして渡し「これはそんなに高価なものじゃないから、良かったら買ってね」と伝えました。僕の著書は本当に苦労して初心者に分かりやすく書いたものだという自負があるので、これを宣伝と捉えられても構いません。

同時に、情報が溢れている首都圏の子と違って地方に行くと「自分の担当している楽器にどんなプレイヤーがいるか」も知らない、それどころか、同じ吹奏楽の世界にプロの団体があることすら知らない子が多いので、前回は「世界には、日本にはこんなコントラバス奏者がいますよ」という解説や彼らの演奏をチェック出来る動画サイトのURL、さらにプロの吹奏楽団の名前などを記した紙も渡し、積極的に知識や情報を得るきっかけにしたのでした。

さて、では今回どうだったのかというと、結果は、とても残念なものでした。

「はい、では前回僕が伝えた右手の5つのポイントはなんだっけ?」という質問に対し、初参加や前回体調不良で早退した子を除いて、ほとんどの子が答えられませんでした。そのポイントは「場所/圧力/角度/速度と量/配分」というもので、そんなに出て来ない言葉でもないと思ったのですが・・・。

さらに、「左手の基本フォームの意味」も重要ポイントとして説明したはずでしたが、これも回答者はゼロ。つまり、やっている事を具体的な理由を理解しないまま、ただ機械的に練習しているのだという事が分かります。

がっかりしながら前回伝えた事をもう一度説明し、さらにもう一歩先に進むための教材を渡したのですが、ここで「前回渡した資料を持ってきた?」と聞いたら、持参した子は1人だけ。さらに、購入を勧めた僕の著書も、もちろん誰も購入していませんでした。

もしかしてと、会話しながらさりげなく「あの動画見た?」と聞いてみたら、動画もCDも、誰も聞いていない。当然、コントラバス奏者の名前も、プロの団体の名前も一つも出て来ない。吹奏楽部でありながら、東京佼成もシエナも知らないのです。彼らは、自分たちの学校の吹奏楽部という、恐ろしく小さな世界で音楽をやっていないのだなと気づかされました。当然、上のレベルを知らないから、いつまでも初心者同然の技術で満足してしまっているのかもしれません。

「今のきみたちは、100m走で例えたら5mくらいしか進んでない」と現在地を教え、「またこの場所に来るから、今度はきちんと説明出来るように頭で理解してね」と伝え、「情報や知識、技術は教えるけど、練習を実践するのは自分なんだよ」と話して終了しましたが、どこまで伝わったかな。

改めて、定期的なレッスンの重要性を知るとともに、僕には「練習する気にさせる力」が足りないのかな、とも感じました。音楽やスポーツの指導者の言葉や練習方法を研究してはいますが、まだまだ勉強が必要なのかもしれません。

人を教えるというのは、本当に難しいですね。

2016/05/23

昨日まで、ジャパンバンドクリニックでコントラバス講座の講師を務めてきました。

「日本吹奏楽指導者クリニック」という名前の通り、全国の吹奏楽部顧問など指導者対象のクリニックで、北海道から沖縄まで1400人もの指導者が集まる日本最大規模のイベントです。こちらで私は、「コントラバスをどうやって生徒に教えるか」を先生方に伝えるコントラバス講座を担当したという訳です。

私がこのクリニックの存在を知ったのは、恥ずかしながら昨年の事でした。シエナ・ウインドオーケストラでファイナルコンサートに出演したのですが、その規模の大きさに驚かされました。

アクトシティ浜松をほぼ全館貸し切って各会場で様々な講座が行われていました。楽器別講座の他にも、指揮法や作曲法、合奏に使用する機械の使用法講座、強豪校の一日の練習を再現する講座など内容は盛り沢山。展示ブースに行けば吹奏楽関連の書籍や録音がズラリと販売されていて、各音楽大学やレコード会社もブースを出しており、楽器の試奏なども出来てしまいます。

夜になるとイベント会場に1000人からの先生方やプレイヤー、作曲家が集まっての大宴会。マグロの解体ショーやジャズバンドの演奏を横に、そこかしこで名刺交換と記念撮影、情報交換の嵐。

こうしたイベントがある事に驚いていたのですが、まさかこの場で翌年講師を務めるとは夢にも思いませんでした。依頼があった時は驚きましたが、吹奏楽界でのコントラバスに対する理解度の低さを考えると、少しでも役に立ちたいと思い引き受けました。

1年も準備期間があるから、とのんびり構えていたのですが、早い段階で講座に使う資料を提出してくれと連絡が来て目が覚めました。ちょうど教則本を2冊出版したばかりでしたし、そちらの内容を引用しつつ、教則本も購入してほしいので情報を小出しにして・・と、少し商売っ気も出しながら資料を提出。いやらしいやり方に思われるかもしれませんが、吹奏楽部に行くと教則本すら与えていない学校がよくあるので、1校に1冊で良いから購入して欲しいと考える気持ちはご理解頂けると嬉しいです。

直前になって何となく資料を読み上げてみて1時間に収まる事を確認し、いざ会場へ行ったのですが、12時半に浜松に到着して、手続き等済ませて14時からいきなり初回の講座。

ここで一つ告白してしまうと、私は人前で話をする事が大の苦手です。よく楽器クリニックなどで「講師の先生、一言ご挨拶を」と促される一言ですら嫌で、本当に軽めに済ませる事が多いのですが、今回は人前で話し慣れている全国の顧問の先生方相手に、1人で1時間みっちり話さなければならないとあって、初回講座の緊張感はかなりのもでした。

案の定、声は上ずり、言葉を選ぶ余裕もなく、吐きそうな緊張感のなか噛み倒して初回の講座が終了。「楽器を演奏するほうがよほど気が楽だ・・」と思いつつ、ガックリ肩を落として部屋の外に出たら、昨年テューバの講座を担当した音大の後輩に会いました。「いやあ、緊張で噛み倒しちゃったよ」と話すと、「分かります!初回はヤバいですよね。でも、2回目から一気に力抜けますよ!」とアドバイス。

実際、初回講座から僅か1時間後の2回目の講座ではかなり余裕が出てリラックスする事が出来ましたし、最終日朝からの3度目の講座では「少し笑いを取りに行こうか」と考える余裕すらありました。人って凄いですね。

本当に悔やまれるのは、講座を録画した資料が参加者に販売されるのですが、収録されたのが緊張マックスの初回講座だったこと。前述の後輩とも、初めて講座を開く講師の場合、収録は2回目以降にして欲しいよねと話していました。思い返しても初回は恥ずかしくなる出来でした・・・

実際講座には各回40~60人くらいの先生方にお越し頂き、多くの方と講座終了後にお話させて頂く事も出来ました。

今でも2点気にかかっているのは、沖縄からいらした先生に「室温が40℃くらいになるが楽器に良くないと思う。どうしたら良いか」と質問をされて良い回答が出来なかったこと。エアコンをつける、部屋に断熱対策をするなどいくつか頭には浮かんだのですが、現実的に予算の事などを考えて答えに詰まってしまいました。でも、今でも良い答えは出ていません。

もう一つ「教則本を購入するのでサインして欲しい」と言われた先生がいらっしゃったのですが、その後展示ブースを歩き回ってもお会いする事が出来なかったのが残念でした。先生、もしこちらをご覧になられていたら、本を送って頂ければサインして返送致します。

さて、最初は本当に話すのが嫌だったんですが、講座を進めるにつれ「こうして少しでも役に立てるならまたぜひやってみたい」と考えが変わってきました。地域などでコントラバス講座をお考えのかたがもしいらっしゃいましたら、ぜひご相談頂ければと思います。

そして夜の交流会では本当に多くの方と初めてお話する事が出来ましたし、多くの友人、プレイヤーの方と再会を果たす事が出来ました。大学の同級生、後輩たち、そしてクリニック終わりには高校吹奏楽部の同級生とも食事をしました。「自分が多くの人に支えられ、人との絆によってここまで来れている」という事を改めて強く感じました。

再会といえば往復の東京駅でのこと。バンドクリニックに向かっているとき、新幹線に乗ろうとホームにいたら「先輩?」と話しかけられ、振り向いたら大学時代のヴァイオリンの後輩。何と行く先も同じ浜松で、彼女はミュージカルのお仕事だということでした。まあ、東京駅でプレイヤーに会うのはそう珍しくないのですが、帰りは驚きでした。

東京駅で楽器持って歩いてたら「すみません!」と駆け寄ってくる警察官。何か怪しかったかな?と思いつつ顔を見たら、高校吹奏楽部の後輩でした。サミットの影響で音楽隊まで警備に駆り出されているそうです。あまりに久しぶりなんで写真を撮りたかったんですが、さすがに警備中はマズいかと思って差し控えました。

「最後に握手お願いします!」とおもむろに手袋を外し手を差し出す後輩、変な顔でこちらを見る通行人たち。警察官に握手求められてる大きな楽器持った人、確かにいろいろと不思議な光景だった事でしょう。

クリニックも含め、2日間で多くの人に再会する気の流れになっていたのかな?緊張もありましたが、それ以上に嬉しい出来事に包まれたバンドクリニックでした。

また講座をやらせて頂ける機会があるなら、今度はぜひ前向きに挑戦したいと思っています。

2016/05/09

 昨年に続き、今年もシエナ・ウインドオーケストラがファイナルファンタジーの楽曲を演奏するツアー「BRA BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2」が始まりました。今年は18都市24公演、さらに台湾でも公演があります。

 思えば昨年のツアーの打ち上げで、ファイナルファンタジー楽曲の生みの親植松さんが「47都道府県制覇を目指したいと思います!」と仰っていたのですが、その際「そういえば自分はこれまでどれだけの都市に行って来たんだろう」と思い、記憶を思い起こしつつ過去の手帳や依頼書、公演プログラムなどを調べてみて、「どうやら和歌山以外は全て行ったようだ」と気付きました。

 そして何と、今回のツアーの最初の公演が和歌山!という訳でワタクシ、演奏会での47都道府県制覇を達成致しました!

この公演で「これで全県制覇した」と話している人が複数いたので、和歌山は一つの難関なのかもしれませんね。

だいたいどんなお仕事で全国行ったかな、と考えると、やはり全国ツアーの多いシエナ・ウインドオーケストラが中心となりますが、後は一時レギュラーメンバーを務めていた熊川哲也さんのKバレエカンパニーオーケストラ(シアターオーケストラ・トウキョウ)もツアーの多い楽団でした。そのほかで言うと、東京佼成ウインドオーケストラの九州ツアー、東京都交響楽団の東北ツアー、NHK交響楽団の関西ツアーなどが記憶にありますね。他にも地域常設の群馬交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団などで各地に訪れました。それから各オーケストラの文化庁公演、寄せ集めオーケストラで音楽鑑賞教室の旅、これも大きかった。コツコツと演奏を積み重ねて帰国から約18年で47都道府県達成というところです。

私がドイツ留学から帰国して演奏活動を始めた頃はバブルが崩壊していたものの、まだその香りが残っており、地方公演の移動に新幹線のグリーン車が手配されていたり、公演後帰京出来るだけの時間的余裕があるにも関わらず宿泊させて頂いたり、宿泊もそこそこランクの良いホテルだったりと、かなりプレイヤーの身体に気を遣って頂いていたものでした。

 ところが近年はクラシックのコンサートのチケット売上が厳しい事もあって主催者側の財布の紐もきつくなり、交通の便が良くなった事も手伝って、例えば山形や名古屋くらいなら日帰り公演は当たり前。空港に朝8時集合とか、地方公演を行って新幹線で帰京した結果、帰宅が日付を跨ぐといった仕事もかなり増えています。以前は夜公演を終えてバスで移動し、夜中にホテルに着くなんて事もありました。主催者にしてみれば「数字の上では可能だから」という事なんでしょうが、演奏で強いられる緊張や移動による疲労までは考慮されていない事が多いのが現実。

こうなるとプレイヤーは肉体的、精神的にきつく、移動で疲労も溜まりますから、ベストな演奏をするため、あまりにキツイ行程の時は自らギャラを削って自腹で宿泊を追加したり移動手段を確保する事になります。こんな時、経済がもう少し上向いてくれたらなあ、という考えが頭を過ったりすることもあります。

それでも旅先でその地の美味しいものを食べたり、お客さんの笑顔を見るとまた頑張ろうと思えるのが我々のお仕事。ファイナルファンタジーのツアーもまだ始まったばかりですし、これからも、全国各地へ伺う事を楽しみに演奏を続けていこうと思います。

このファイナルファンタジーのツアーは観客参加型で本当に楽しいコンサートですし、ゲームがよく分からないという方も一度ぜひ会場に足を運んでみてください。ご来場お待ちしております!

2015/10/25

昨日は吹奏楽アニメ「響け!ユーフォニアム」のスペシャルイベントでした!

実際に声優さんが担当楽器を演奏するイベントがあるので、レッスンをして欲しいとお願いされたのが年明けでした。1回3時間のレッスンが月2回、合計半年も期間があると聞いて、余裕をもって引き受けたのですが、いざレッスンが始まってみたら、何とレッスン当日しか楽器に触らないと知り、一気に絶望の淵に叩き落されました。

毎日数時間の練習が当たり前のクラシック音楽の世界で、月に2回しか楽器に触らないで上達するなんてありえない事なんです。いや、クラシックに限らず何の世界でもそうですよね。

途方にくれた僕はいろんなオーケストラの友人知人に「何か効率の良い練習はないか」「どうしよう」と相談を持ち掛けましたが、「そんな練習方法があるなら俺が知りたい」「そもそも、その企画自体が楽器をナメてるよ」「それでうまくなれるなら我々のやってきた事が否定される」というものでした。どれも正論だと思います。

冷静に考えれば、月2回レッスンしても、2回目というのは言わば入部2日目と一緒。つまり、2ヵ月レッスンしても入部4日分にしかなりません。それでもなるべく無駄を端折って練習をしてみましたが、左手の指で弦をしっかり押さえて音程を作るコントラバスは、日々の鍛錬によって指を強くする事が何より大切で、楽器に触らないのは致命的でした。指を鍛える器具を購入して渡してみましたが、それも効果があるかは疑問でした。夏に入った頃には、担当者に「このままじゃ無理」と話した事もありました。

どうしようと考え込んでいたら教え子の豊田萌絵ちゃんから「このままじゃまずい。楽器を日常的に練習したいです」との言葉がありました。彼女は小学生時代にトランペットで全国大会に出場していた経験の持ち主で、音楽が甘くない事を知っていましたから、危機感があったのだと思います。彼女のプロ意識を感じ、僕のサブ楽器を彼女の事務所に運び、本番までレンタルする事に決めました。もともと持っている彼女の音楽的センスもあって、そこからはあっという間に上達。管楽器のみんなも、楽器を持ち帰るようになり、途中から一気に可能性が見えたような気がします。

とはいえ多忙なみんな、持ち帰って多少は楽器に触ったかもしれませんが、実際には月2回のレッスンが練習のほとんどだったと思います。

さらに、吹奏楽やオーケストラのステージがどんなものか知ってもらうこと、モチベーションを上げる目的で、佐渡×シエナの演奏会に来てもらったり、僕が出演するオーケストラの演奏会に来て貰ったりして雰囲気を感じてもらう事もしました。

僕はコントラバスの担当でしたが、レッスンの合間に話しているうちに他の楽器担当のみんなとも仲良くなり、それこそ学校のクラスの担任と生徒たちみたいな、そんな空気になっていきました。

曲が決まり、楽譜が届いてからは、みんなの合奏を見るようにもなり、豊田さんと朝井さんが自主練習した動画を送ってもらってチェックしてアドバイスする事もありました。

ユーフォニアムの黒沢ともよちゃんは、一番若いのに最もキャリアが長いこと、そして主役という事もあってか、かなりの緊張感をもって練習に取り組んでいたように思います。結果、本番曲では見事にほとんどの旋律を任せられるレベルにまでなりました。本番当日のリハーサル、サウンドチェックで彼女が音を出した際に、客席にいた洗足学園大学の学生たちが「おお~」とどよめき、「音が綺麗・・・」という感想がもれたのも頷けるところ。夜の部では最後に号泣してましたが、この作品にかける思いがそれだけ深かったのだと思います。

テューバの朝井彩加さんは、ずっと陽気で明るいムードメーカーでした。失敗しても決してめげず、常に体育会系のノリでメンバーを笑わせる、そんな存在。テューバの技術もかなり早い段階から安定し、音符の長さや音程、ダイナミクスを要求出来るところまで上達していきました。曲が出来てからは萌絵ちゃんとスケジュールを合わせて自主的に集まって朝練をするなどの積極性も見せ、今回のアンサンブルを支えました。この人の気持ち良い性格、大好きです。

楽器練習で最も苦戦したのがトランペットの安済知佳さん。僕も昔トランペットをかじった事があるのですが、そもそも音を出すのが大変な楽器で、初心者には難易度も高かったと思います。すぐに口がバテてしまい、弱音を吐くことも多く、先生に加えてトランペット経験者の萌絵ちゃんが自分のマウスピースを貸してあげたりと、みんなで協力して応援していました。しかし、本番当日最も底力を発揮し、袖で見ていた我々を驚かせたのもまた安済さんでした。特に最後の本番では想像も出来なかった柔らかい音色を出しており、一緒に見ていたトランペットの先生も思わず涙していました。

最後に担当した豊田萌絵ちゃん。これまでに書いてきた通り、経験者という事もあって音楽的なセンスは文句なし。根性もあって、生徒としては非常に優秀だったと思います。ずっとマンツーマンでレッスンをしてきたので、いろいろ話しているうちに、音楽一家の萌絵ちゃんと僕の間に共通の友人知人が居ることも分かって盛り上がった事もありました。音楽業界、狭いです。そして彼女が本番で聴かせてくれた音色は、100点満点でした。出来ることならこれからもコントラバスを続けて欲しいなあ。

そんな苦労もあってついに迎えた昨日の本番、ヤバかったですね…

袖で彼女たちがステージに出るのを見送ったと同時に涙。
娘を嫁に送り出す父親の気持ち。

その後はこちらまで緊張して軽い震えすらありましたが、さすがはライブをこなす最近の声優さん、本番が一番素晴らしい出来だったと思います。そして、演奏が終わって涙を流す彼女たちを見てまた涙。

そして何気なく公演パンフレットを読んでいたら、豊田萌絵ちゃんのこんな言葉がありました。

「吹奏楽部に入部するなら何の楽器が良いですか」という質問に対して

「今はやっぱりコントラバス」

!!!何より嬉しい言葉です。

いやあ、ついに終わったなあ。
半年間に及ぶ旅路が終わりました。

いま、佐渡×シエナのツアーが終わった時のような高揚感と寂しさが入り混じった気持ちでいます。

まずは素晴らしい演奏をしてくれたキャストのみんな、ありがとう。そしてコントラバスレンタルの岩田哲五郎商店さん、僕がリハーサルでレッスンを出来なかったとき代理を務めてくれた東京都交響楽団の佐野さん、および関係各位の皆様に感謝したいと思います。

せっかくここまで弾けるようになったから、この企画に続編があればいいのに… 笑

あ、そうそう、改めて宣伝です。

響け!ユーフォニアムのキャラクターソングの北宇治カルテット四重奏、僕が全てコントラバスを担当させて頂いております。宜しければご視聴下さい。

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レコーディングの依頼を受けてスタジオに行ったらこの楽譜が置いてあったという、凄い偶然でした 笑

2015/09/28

昨日は東京芸術劇場主催ブラスウィーク・クリニックのコントラバス講師として2年連続で参加してきました。

東京佼成、シエナ、東京吹奏楽団、オオサカシオンという吹奏楽のプロが集まって楽器別レッスンを行うのですが、その中に唯一「フリー奏者」という肩書きで参加しております。肩書きなしで勝負している僕ですが、わざわざ「フリー」って書く必要あるのかな、「コントラバス奏者」じゃダメなのかな・・・という疑問は拭えません。どこのクリニックに行っても「コントラバス奏者」ではなく「フリー奏者」と書かれるのは興味深いですね。肩書き社会の日本ならではなのかな。

コントラバスは受講生が2人。一人は昨年も参加されたコントラバス歴27年という学校の吹奏楽部顧問の先生。昨年同様、学生さんを教えて先生には「教え方」を見て頂く方法を取りました。

生徒さんは楽器を始めて3ヶ月でしたが、明るくて積極的で好印象。彼女なら頑張ってくれそうな気がします。これからもフォローしていけたら良いな。

実技レッスンの後は作曲家スパーク氏による合奏リハーサルと父兄を対象とした模擬本番。スパークさんは昨年のシエナ定期以来1年半ぶりの再会でしたが、相変わらずジョークを飛ばしつつ基礎的な指導をみっちりやっていらっしゃいました。昨年の宮川彬良さんとはまた違った印象。

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クリニックの講評でスパークさんが「1日に5、6時間も練習する学校もあるみたいだしそれも良いけど、音楽を楽しむ事を忘れないで」と仰いました。この言葉、「題名のない音楽会」で佐渡さんの言葉として流れた「音楽は楽しむもの。コンクールで勝つ演奏ではなく芸術性を高めたい」という言葉とも相通ずるものがあります。

人によって「楽しめる基準」が違うと思うので、一概に「楽しめ」といってもいろいろ反応はあるでしょうが、帰宅の道中、吹奏楽の在り方についてちょっと深く考えるきっかけになりました。

近年の吹奏楽コンクールの形態について、個人的に疑問の多い最近のコンクール課題曲について、また学校指導者とプロ演奏家の音楽に対する考え方や環境の相違についてなど、いろいろ書きたい事はあるのですが、その辺の事は、もう少しこの世界の事情を理解し、頭が整理出来てからにしたいと思います。

ただ、一つ言えるのは、学校吹奏楽の主役は演奏する子供たちであるべきで、細かい事を抜きにして、やはり「音楽は楽しむもの」であるということ。これは忘れずにいたいですね。

2015/06/29

ご無沙汰しています。

今回は、ちょっと音楽から離れたお話です。

僕には5歳の息子と3歳の娘がいます。息子は3歳からサッカー教室に通わせています。息子にサッカーをやらせたのは、僕と妻が大のサッカー好きだからという事もありますが、息子の性格が優しすぎてちょっと頼りなかったので、少し強くなって欲しいという気持ちからでした。

幸い、素晴らしいサッカー教室のコーチに恵まれ、基本的には彼に任せて練習の間は口出しをせず、幼稚園の間は「楽しく」という事を最優先すればいい、まずはサッカーを好きになってくれればいいと思っていました。ですから、とにかく失敗しても「次頑張ればいいんだよ」と励ますだけで、叱ることはしませんでした。

初めて出場した大会では、チームメイトの大活躍で無敗のまま全勝優勝。息子は楽しそうにスキップしているばかりで特に目立つことはしませんでしたが、それでも最後まで走っていたし、本人も「楽しかった」と言っていたので、「よく頑張ったね!」と誉めてあげました。

しかし、先日の2度目のサッカー大会、教室の友人たちが確実にプレーの意識が上がっているなか、息子はほとんどプレーに関与せず、みんなの周りを楽しそうに走っているだけ。ドリブルもやれば上手いのに、まずボールをほとんど見ないで何となく人が集まるところに行くだけ、という状態。チームは3位で銅メダル獲得という結果でしたが、息子は正直チームの足を引っ張っている状態でした。

これまで「サッカーは親のエゴで始めさせたから」という思いがあり、そして「幼稚園の間はとにかく楽しむ事を最優先」という方針でずっと叱ることを耐えてきましたが、あまりに歯痒くて不甲斐なかったので、大会途中からだんだんイライラしてきて怒鳴り声をあげてしまい、大会後、「下手でも良いから気持ちを見せろ!」と、サッカーをやらせてから初めて叱りました。

その日、「まず親が見本を見せなきゃ。とにかく諦めない姿勢でボールに食らいつく姿勢を見せよう」と思い、「パパはサッカー下手だけど、チームが勝つために必死で頑張ってるから見においで」と言って、僕がプレーするフットサルに初めて息子を連れていきました。久しぶり過ぎて足元はおぼつかないし体力もキツかったしシュートもほとんど枠に飛ばなかったけれど、とにかく全力でプレーし、ボールを最後まで追う姿勢だけは見せたつもりでした。

そして翌日、僕は自宅でレッスンだったのですが、夕方、最後の生徒さんが帰宅したら息子がやって来て

「パパ、レッスン終わった?僕、サッカーが上手になりたい。公園でサッカーの練習したいから一緒に来て」

と言われました。

「おお、じゃあ一緒に行くか」と素知らぬ顔をしながら一緒に公園に行って練習してましたが、内心嬉しくてずっと泣きそうでした。

それだよ、その気持ち。

お前が上手になりたいと思ったらパパは何でもやってやるよ。ただ、一生懸命な姿が見たいんだよ。

そう感じると同時に、僕が楽器を始めた時の両親の歯がゆさはきっとこんなものじゃなかっただろうなとも思いました。音楽の世界では第一線で活躍する両親から見て、高校2年から楽器を始めた僕の努力は、さぞ物足りなかっただろうと改めて思います。親になって初めて分かる、自分の親の気持ち。改めて親に感謝。

そしてこれからも、僕は息子のサッカーの練習に付き合おうと思います。

でもね、フットサルで折れた右足の指が治るまで、足踏まないでね。

2015/04/27

大変お久しぶりです。

この何か月か、ツアーやら出張レッスンで家にほとんど居りませんで、なかなかPCを開くことも出来ず、更新が滞っていました。

実はいまシエナ・ウインドオーケストラとゲーム「ファイナルファンタジー」がコラボした「BRA★BRAファイナル・ファンタジー BRASS de BRAVO
withシエナ・ウインド・オーケストラ ~製作総指揮:植松伸夫 全公演出演!~」というツアーで各地を回っております。

ツアーに乗っかって移動先で学校のレッスンなんかも頼まれるケースがあり、そうなると家を空ける時間がさらに長くなります。今回は九州公演が終わってから鹿児島に移動して3日間レッスン、一瞬東京に戻るもレッスンして翌日には島根に移動、さらに千葉公演が終わってからも愛媛に移動して3日間レッスン予定。4月~5月は半分も家に居ません。子供たちには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・・。

さて、今回のFFツアーは東京(2回)・大阪・福島・山形・鹿児島・熊本・佐賀・島根・鳥取と終わり、これから千葉・三重・愛知・静岡・長野・岩手・宮城さらに東京の追加公演が2回と、ようやく昨日で折り返し地点に到達したところ。ツアーの内容については後日全公演が終了したら書きますが、急遽決まった東京の追加公演も既に完売し、盛り上がっています。客層はゲームファン7割、吹奏楽ファン3割というところでしょうか。

こうやって各地を回っておりますと、ご当地グルメを堪能するのがストレス解消であり本番後のご褒美になります。今回だと大阪でねぎ焼、山形からの新幹線では名物「牛肉ど真ん中」弁当、熊本で馬刺、佐賀のシシリアンライス、鹿児島の刺身や黒豚を使ったトンカツやラーメン、島根の割子そば、鳥取のB級グルメ・ホルモン焼きそばなどを食べてきました。

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面白いことに、どの地方に行っても1人くらい知り合いが居て、地元の方が紹介してくれるお店はやはり美味しいんですね。さらにFacebookを通じて演奏家仲間から美味しいお店の情報も入りますから、これまでほとんど味に外れはありません。

ハードな移動日程、本番の緊張感を経て、共に演奏を作り上げた仲間と飲む本番後のビール、そして地元のグルメが翌日以降への頑張りに繋がっています。

旅芸人も、悪くない。

2015/02/19

僕が出演・現場での演奏指導などで撮影に関わった映画「マエストロ!」が絶賛公開中ですが、皆さまご覧頂けましたか?まだの方、この作品はDVDやBR-Dではなく、音響の良い劇場へぜひ足をお運びください。音が違います。

さて、この映画について、やはり出演した者としてはご覧になった方の感想が気になるところ。幸い、小林監督がTwitterでお客様の感想をRTして下さっているのでこちらも労せずチェック出来ているのですが、ここで気になったのがオーケストラの名前を間違えている人が多いこと。

というのは、この映画、最後に劇中のオーケストラが演奏する場面があるのですが、さすがに多くの俳優さんを入れた状態で観客を納得させるような凄い演奏をするのは難しいですから、実際には佐渡裕さんが指揮をしたベルリン・ドイツ交響楽団の音に合わせて僕らが当て振り(弾きマネ)をしていました。この実際に演奏しているオーケストラ名を「ベルリン・フィル」と間違えている人がかなりいらっしゃったのです。

確かに、日本のプレイヤーでもよく分かってない人が居ますし、佐渡裕さんはベルリンフィルを指揮したときに日本中で話題になりましたから、「佐渡裕=ベルリンフィル」と勘違いする人が多いのは仕方ないのかもしれません。ただ、これは野球で例えるなら、「関西」という括りで阪神とオリックスを一緒にしているような、そんな違和感を禁じ得ません。

そこで、余計なお世話であることは百も承知の上で、今回は、間違えやすいオーケストラの名前についてお話してみたいと思います。

実は、ベルリンには「ベルリン」と名の付くオーケストラがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ベルリン=ドイツ交響楽団、ベルリン交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、シュターツカペレ・ベルリン、さらにベルリン室内管弦楽団、ベルリン古楽アカデミーと9つもあります。他にもあったかもしれませんが記憶が曖昧です・・・・。

どれもフルネームで呼ぶと長いので、例えばベルリンフィルはBPO(Berliner Philharmoniker)、ベルリン・ドイツ交響楽団はDSO(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin)、ベルリン放送響はRSB(Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin)といった略称で呼ばれることもあります。今回の映画で演奏しているのはDSO、つまりベルリン・ドイツ交響楽団。インターネットで見ていると、このベルリン・ドイツ響とベルリンフィル、ベルリン交響楽団の3団体を取り違えている人が多かったように思います。今回映画で演奏しているベルリン・ドイツ交響楽団にはコントラバス奏者の知人がおり、僕も留学中にチケットを戴いて何度も演奏会に行きましたが、ベルリンフィルに引けを取らない素晴らしい音をしていますし、僕が大好きなオーケストラの一つです。

日本でも、東京には「東京」の名を冠するプロのオーケストラがいくつか混在しています。東京都交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と「東京」の名を冠する団体が4つ。こちらも都響、東響、東フィル、シティといった略称で呼ばれています。あまりクラシックに詳しくない人はどれがなんだか分かりにくいでしょうし、正直僕も音大に居た頃はドイツのオーケストラにしか興味がなかったので、東京にこんなにオーケストラが存在する事も知りませんでした。

実際にいろんなオーケストラに客演するようになり、それぞれ全く別の特色を持った素晴らしい楽団だという事が分かってきましたが、最初は留学から帰国してお仕事の依頼を頂くようになって「え、今度行くのはこの前の《東京》のオケとは違うの?」と混乱したものです。無知とは恐ろしいですね。

クラシックに興味のない方々も、まずは映画「マエストロ!」でオーケストラの雰囲気を知って頂いて、その上で日本のどの楽団がどのような特色を持っているのか、そんな事も考えながらいろんなオーケストラの演奏会に足を運んで頂けると嬉しいですし、クラシックに少しでも興味を持っていただけたなら幸せです。

2015/02/02

先日、ネットで「フリーランスの方のための無償(またはあり得ない低額)で仕事を依頼された時のお断りセリフ集」という記事を読みました。

さすがに無償でお仕事をお願いしてくる人はほとんどいませんが、「あり得ない低額」での依頼はたまにあります。

そんな時僕がそう対応するかというと、まずスケジュールが空いている事を大前提に、依頼してきた相手との関係性、それと「低額」の程度で判断しています。それまでお世話になっていた人であったり、仲が良かったり、或いは「またこの人と一緒に演奏したい」と思った経験がある人などであれば、ある程度低額でも引き受けるようにしていますが、流石に生活に支障が出るような額の場合はお断りするようにしています。まあ、親しければ、2人の子供を育てていると知っていて且つ低額で依頼してくるケースも少ないと思うのですが。

相手の「低額」と僕の考える「低額」の基準が違う場合もあるので、まずはハッキリと数字で出して貰います。「これしか払えないんですよ~」と提示された金額が高くてビックリ、なんてことも稀にあります。本当に稀ですけど。

これまでに面識がない、あるいはそれほど親しくない方からの依頼の場合、あまりに低額であれば、こちらから最低ラインを提示して「これ以下ではやらないと決めているんです」と伝えています。

これには訳があって、実は以前、「あまりお礼を出せないんだけど」と言われながらも、何度かご一緒した知人からの誘いだったので「いいですよ~」と額も聞かずに引き受けた演奏会が、とてつもない低額報酬だった経験があるからです。確か3日間のリハーサル、ゲネプロ本番で交通費込み計1万円だったかな。往復の交通費だけで計6000円くらいかかってますから、単純計算で日給1000円。帰宅して封筒を開けて、しばらく茫然としたのを覚えています。妻には「あなた3人養ってんだから、今度から先にギャラ聞きなよ」と言われたものでした。

こんな経験から、自らの最低金額を設定し、仕事の依頼があった際には交渉させて頂くようになりました。ドライな話かもしれませんが、生活がありますからね。

ちなみに、プロのオーケストラの場合は最初からギャラが決まっているので、そちらに対しては全く問題がありません。

あ、よく誤解されがちなのが「オーケストラのプレイヤーも、チケットの売上が自分の収入になる」と思われているケース。新人ボクサーや役者さんには多いみたいですが、僕らはチケットの売上に関わらずきちんとギャラは支払われます。ちなみに、自分で主催する室内楽の演奏会なんかはチケット売上が主たる収入になります。

テレビ関係のお仕事や学校の吹奏楽部への出張レッスンなんかになってくると、「ギャラはおいくらお支払いすればいいですか?」なんて先方から聞かれるケースもあります。これは難しい。高く設定し過ぎると「アイツは高い」と次に繋がらなくなる可能性もありますし、何より自分が「俺なんかがこんなに貰っていいのか?」と恐縮する場合もあります。かといって安く設定すると次から良いように利用されるだけになる可能性もある。ですから、「皆さんどの程度頂いてるんですかね~」などさりげなく平均値を聞き出して、そこから自分の価値を設定して交渉します。数字を伝えて「あ、そんなんでやって貰えるんですか」などと言われると「しまった!」と思いますが 笑

ちょっと生々しい話になってしまいましたが、フリーで活動していると、こんな苦労もあるんですよというお話でした。

あ~、確定申告の書類揃えなきゃ。。。。

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