« 【インタビュー】元新潟 アントニ・ワイチ その1 | Home | 【インタビュー】元新潟 アントニ・ワイチ その3 »

2010/02/26

かつて新潟アルビレックスBBでプレーしていたアントニ・ワイチ選手のインタビュー第2回。

今回は楽しさと厳しさが同居した新潟での2シーズンの中でも、特に思い入れのある2006年プレイオフでの敗戦、そしてbjリーグのレベルについて、更には日本のバスケットそのものについて話してもらいました。

********************

荒木ユタカ(以下、荒):ワイチにとって1年目のシーズン(2005~2006年)、新潟はリーグ2番目のシーズン成績を残しました(29勝11敗)。そしてbjリーグとしても初となった有明コロシアムのプレイオフでは、セミファイナルで東京アパッチを下しファイナル(決勝)に進むものの大阪エヴェッサに破れ2位という結果に終わっています。このファイナルという舞台で、果たして新潟が勝つチャンスはあったのでしょうか?
アントニ・ワイチ(以下、AW):この試合の本当のことを話す事は、僕にとっては今でも辛い事なんだ。僕たちは間違いなく優勝するチャンスはあったし、僕たちはシーズンを戦ってきたように全てをあの試合で出しきったんだ。レギュラーシーズンでは大勝した試合がいくつかあったから、それがメンタル的に影響したのかもしれない。大阪は新潟と全く逆のチームスタイルで、4人の外国人選手が得点から何から全てをやるんだ(※1)。パルマーはスタートメンバーじゃなかったけど、彼はすぐコートに出てきてゲームのほとんどをプレーしていたね。大阪とはいつも外国人4人対(新潟の)3人のマッチアップで、これは厳しい戦いだったね。でも僕は、新潟の日本人選手達なら彼らに勝てるという十分な自信があったんだ。(ファイナルでは)僕らは前半のプレーにためらいがあって、このせいでハーフタイムに相手にリードを許してしまったんだ。後半は全ての力を追い上げる事に費やしてしまって、一度は追いつくところまで行ったんだけど、そこから先に進む事が出来なかったんだ。そして最後に、パルマーのジャンプショットで試合が決まったね。誰もが覚えていると思うけど、リン・ワシントンが長谷川にパンチしたのに退場させられなかった事がすごく印象的だよ(※2)。

006.jpg

※ファイナルの後半残り1分、84-82と大阪がリードする場面で、試合を決定づけたミドルシュートを決めたのがパルマーであり、そのパルマーを守っていたのがワイチでした。

荒:続く2年目のシーズン、ここで新潟には大分ヒートデビルズからサイズのあるジャック・ハートマン(※3)が加入し、多くのブースターに「今年こそは優勝」という思いがあったと思うのですが、ワイチ自身はどう思っていましたか?また、結果として新潟はプレイオフ(セミファイナル)で再び破れ最終的に4位に終わるのですが、この結果についてどう考えていますか?
AW:2年目のシーズンも1年目と同様に楽しく、そして厳しいシーズンだったね。どのチームも外国人選手が4~5人いたから、僕たちがリーグで上位を戦い抜く為に他の外国人選手を追加する必要があったんだ。レギュラーシーズンではチームは多くの怪我に悩まされたし、確かシーズンのある時は7人で試合を戦った事があったと思うから、とても厳しかったね。(プレイオフのセミファイナルで)高松ファイブアローズに敗れたのは凄く悔しかったんだ。というのは、僕は絶対にまた大阪とファイナルで戦いたかったからなんだ。高松はいいチームだったし、いいプレーをしていたね。彼らのうち、ソジャナーとカズを外国人選手と考えるならば、高松は5~6人もの外国人選手がいたし(※4)、それが高松のシーズン後半に違いとなって現れたと思う。僕は一発勝負形式のプレイオフは好きじゃないんだけど、もしbjリーグの最初の2シーズンのプレイオフが2戦先勝方式(ベストオブ3シリーズ)だったとしたら、結果は全く違ったものになったと本当に思ってるし、その2つとも優勝できなかったにしても、少なくとも1つは新潟が優勝していたと思うんだ。
荒:新潟で、そして日本でプレーした2シーズンから、何を感じましたか?
AW:bjリーグはチームが増えているし、将来的にレベルアップしていく可能性があると思う。でも、外国人選手の数が増えることはリーグにおける日本人選手の役割が減ることを意味するし、リーグの将来を考えればよい考えではないと思う。
荒:bjリーグのレベルについてはどう思いますか?
AW:競技レベルとしては良いものがあると思うけど、もっと向上することが出来ると思う。リーグは外国人選手の数を制限する必要があるし、外国人選手の制限をしない事は、バスケットのレベルを下げる事になってしまう。チームに保有出来る外国人選手の数は3人まで、コート上には2人までにすべきだね。サラリーが高ければクオリティの高い外国人選手がやってくるし、チームとしても外国人選手ばかりが得点するのではなくて、日本人選手のレベルアップに繋がるからね。僕は、新潟のやっていたモデルは上手く行くと思うんだ。
荒:bjリーグの日本人選手で、印象的なのは誰かいますか?
AW:大阪の城宝、埼玉の清水、東京の青木、仙台のPG(日下)、高松のシューター(岡田)だね(※5)。新潟の日本人選手達もとても印象的なんだけど、特に長谷川だね。あの年齢でオールスターに選ばれる活躍をしていたのは信じられないよ。外国人選手ではニュートンとワシントン、ピッペン、マーシャルだね(※6)。

007.jpg

荒:ちなみに、JBLの試合は見たことありますか?
AW:新潟にいた時はテレビでJBLの試合を見ていたよ。bjリーグのほうがより激しいリーグだと思うけど、日本人選手のレベルに関してはJBLがベターだね。僕はbjリーグとJBLは将来的に交流戦のようなものやるべきだと思うし、それは若い日本人選手にとっていい結果に繋がると思う。
荒:全日本男子チームはここしばらく結果が出ておらず、アジアでさえ苦戦しています。今日の日本のバスケット界にとって必要な事とは一体なんでしょうか?
AW:彼らはチームが安定して力を発揮出来るように、選手たちの自信をつけさせる必要があると思う。競技力向上の為には継続的に強化していくしかないし、JBA(日本バスケットボール協会)がbjリーグの選手達を全日本チームの候補として認めない限り、今の結果は変わらないと思う。bjリーグの選手が全日本の世界ランキングを向上させるとは言わないけど、継続的に強化を続けることで、全ての選手に努力とレベルアップを求める事になるからね。日本がアジアで結果を出して世界レベルに行くにはまだ時間がかかると思うけど、ヨーロッパや世界各国の、トップの次のレベルの国々のバスケットを観察することが大事だと思う。

008.jpg

2006年5月2日、今はもう無くなってしまった新潟フェイズで行われたシーズン終了後のブースターフェスティバルにて。全選手がスーツ姿で揃う中、なぜかワイチだけが私服でした(笑)。

********************

※1 ・・・ その1で紹介した新潟のバスケットとは対照的に、大阪はマット・ロティック(現bj大分)、リン・ワシントン、ジェフ・ニュートン(現bj琉球ゴールデンキングス)というbjリーグを代表する3選手をガード、フォワード、センターの各ポジションに揃えるだけでなく、シュート力のあるフォワード、デビッド・パルマーがベンチスタートながら試合の大半でプレーしており、これらの選手の活躍により、bjリーグ開幕からの3連覇を達成した。

※2 ・・・ ファイナルの新潟-大阪戦の前半、接触で交錯した長谷川とリンが倒れ込んだ際、リンが長谷川の顔を殴り、長谷川はその後しばらく倒れたまま動けなくなった。このプレーは新潟ベンチの目の前であり、多くの人がその様子を目にしていたにもかかわらず、レフリー、アンパイアの3人(倉田国男、ティム・グリーン、原章次)はテクニカルファウルしか宣告出来なかった。これはbjリーグにとって初のプレイオフであり、そしてその会場は異様な雰囲気に包まれていたとは言え、ここで勇気ある笛を吹けなかった事は、現在5年目のリーグで今シーズンより新設されたパンチングファウル(暴力行為)による出場停止処分が散見されるようになった現状を鑑みると、滑稽以外の何ものでもない。

※3 ・・・ ジャック・ハートマン、6-10(208センチ)のフォワード。前シーズンは大分ヒートデビルズの主力選手として活躍していたが、バイオラ大学時代の先輩であるマット・ギャリソンの存在もあって新潟入りした。前シーズンを通じてインサイドのパワー不足を痛感していた新潟にとっては理想的な補強に思えたが、ハッスルな性格は空回りする事も多く、またフィジカルなプレーに対してパワー不足の面もあり、期待された結果は残せなかった。この新潟でのシーズンを最後に現役を引退。

※4 ・・・ このシーズンからbjリーグに参入した高松ファイブアローズは、参入1年目からリーグでも屈指の有力選手を揃えて優勝戦線に最後まで絡む活躍を見せ、ファイナルでは大阪に敗れたが、シーズン2位という結果を残した。特に外国人選手はレジー・ウォーレン、ラシード・スパークス、ジュリアス・アシュビー(いずれも現bj東京アパッチ)、ディアン・ティエルノ・セイデゥ・ヌロらに加え、アメリカ出身ながら大学以来日本でプレーしているアイザック・ソジャナー、そして専修大学卒業後、アメリカのマイナーリーグでプレーした後に帰国した中川和之(現JBL三菱電機)らが在籍しており、bjリーグでも有数の選手層を誇っていた。

※5 ・・・ 城宝匡史(当時bj東京アパッチ、現bj滋賀レイクスターズ)。清水太志郎(現bj埼玉ブロンコス)、青木康平(bj現東京アパッチ)。日下光(現bj仙台89ERS)。岡田優(現bj高松ファイブアローズ)

※6 ・・・ ジェフ・ニュートン(当時bj大阪エヴェッサ、現bj琉球ゴールデンキングス)、リン・ワシントン(現bj大阪エヴェッサ)、ウィリアム・ピッペン(当時bj東京アパッチ)、マイキー・マーシャル(当時bj大分ヒートデビルズ)。


Trackback URL
Comment & Trackback
Comments are closed.
No comments.