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2009/06/19

フロリダ大学を卒業後、グレッグは自らの夢であるNBAに向かってプロバスケ選手としてのキャリアをスタートさせます。それは言うまでもなく、何処にも平坦な道のないキャリアを歩む事を意味します。しかし、グレッグは常に前向きに物事を捉え、そして、常に自らを見つめ直す事を忘れませんでした。

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荒木ユタカ(以下、荒):グレッグのバスケ選手としてのキャリアについては一通り調べたのですが、大学を卒業したグレッグがまず行ったのは……ベルギー?
グレッグ・ストルト(以下、GS):最初はドミニカ共和国だよ。ドミニカのサマーリーグだね。アメリカ人は夏の間はドミニカやプエルトリコ、ベネズエラのリーグでプレーするんだ。ヨーロッパや日本は遠いけど、フロリダからドミニカは近いからね。
荒:プロ選手としてやっていける自信はありましたか?
GS:自信は十分にあったね。ドミニカに行ったのは僕のエージェントが、僕にプロ選手としての経験を積ませるために行かせたんだ。アメリカから近いし、ヨーロッパや日本ほど環境は良くないけど、1ヶ月くらい経験を積むためにはいい場所だからね。
荒:では次がベルギーかな?
GS:ドミニカの次はスペインに行ったんだ。スペインには3ヶ月くらいいて、その次がベルギーのブリュッセルだね。
荒:スペインはプロチームですか?
GS:そう、プロのチーム。ドミニカもプロチームだったよ。ヨーロッパとかに比べるとドミニカは経済があまりいい状態じゃないから、夏の間だけだけどね。
荒:ベルギーのブリュッセルのチームについて調べたんですが……アトミックスというのかな?
GS:ブリュッセル・アトミックスだね。
荒:この後もグレッグは世界中でプレーしますが、例えばヨーロッパでは、バスケについて英語で話すんですか?
GS:普通は英語だね。スペインは……スペイン語かな。スペインではイギリス人やドイツ人とかの旅行者をたくさん見かけたけど、英語を話すのは彼らだけだったね。他はみんなスペイン語。ベルギーは、フランス語、オランダ語、英語かな。
荒:ヨーロッパでのプレーというのはどんな経験でしたか?
GS:僕のいたフロリダ大学というのは、僕が思うに、スポーツの分野では全米でもトップ5に入る環境の大学なんだ。運動選手をとても大切にしてくれるし、コーチング、トレーニング、食事とか……アスリートにとってすごく過ごしやすい所なんだよね。その点、ドミニカなんかは……かなりキツかったね(笑)。国としていろいろ問題があるんだろうけど。ドミニカはフロリダから飛行機で2時間くらいで着くんだけど、環境は全然違ったよ。その点、スペインは良かったね。とても美しい街だったよ。食べ物も美味しいし……環境は日本に似てると思うよ。伝統的な文化もあるからね。ブリュッセルもいい所だったよ。街が大きいから飽きることは無かったね。食べ物も美味しかったし。
荒:ブリュッセルでのバスケについては?
GS:厳しい状態だったね。チームの経営が上手くいってなくて、毎月のようにサラリーの心配をしていたよ(笑)。日本のチームはその点、安心なんだ。日本のチームと契約したら、もうOK。心配しなくていい。でもヨーロッパでは、契約はあまり意味がないね(笑)。バスケ自体もプレッシャーだったね。1試合調子が悪いだけで、「グレッグどうした?怪我か?」って(笑)。どこに行ってもプレッシャーはあるけどね。どのチームにも外国人選手が1人か2人いるけど、1試合悪いゲームをしただけで、新しい選手と入れ替わったり。その意味では凄く競争が激しいね。でも、街としてはヨーロッパは良かったよ。また行ってみたいね。
荒:ベルギーの次にグレッグがプレーしたのは、アメリカ、セントルイスのチーム。これはIBL(International Basketball League、アメリカのマイナーリーグ)のチームですね。
GS:ベルギーのチームが経営的に厳しくてサラリーをきちんと払ってもらえない状態だったので、アメリカに帰りたかったんだ。ベルギーから帰国した後に膝の手術をしたんだけど、その時が25才で、自分がNBAに挑戦するなら、今やるしかないと思ったんだ。マイナーリーグでのバスケは楽しかったけど、問題は食べるのに困るくらいサラリーが安いことなんだ。貯金も出来ないし。セントルイスはとてもいい街だったし、リーグもレベルが高くて面白かったんだけどね。
荒:ヨーロッパから帰ってきたこのシーズンはDリーグ(※1)のチーム、アラバマ州のハンツビル・フライトでプレーしました。DリーグはNBAの下部組織という事で、このレベルで51試合プレーしたことはグレッグにとってNBAを目指す上で自信になりましたか?
GS:これはDリーグとしての1年目のシーズンなんだけど、僕にとってはいいチャレンジだったと思う。リーグのマネジメントには問題があったけどね。というのは、アメリカの南東部はあまりバスケが盛んじゃないんだ。
荒:フットボール地帯ですね。
GS:そう、フットボール。今のDリーグは違うけど、当時はチームが南東部に偏っていたんだ。ただ、僕自身にとってはいい機会になったね。僕のスタッツは大した数字じゃなかったし(※2)、たぶんNBAに行くのは無理だったから、25、26才の僕にはいい決断の時だったんだ。NBAでプレーするのは無理だから、じゃあ毎年のように世界中のチームでバスケをプレーして、世界を渡り歩こうって決めたんだ。それは旅行しながら、自分自身の経験を積んで、たくさんの人に会って……NBAの夢は途絶えたけど、バスケを通じていろんな経験を楽しもうって思ったんだ。

008.JPG

時系列は前後しますが、フロリダ大学1年の頃のグレッグ(55番)。 左の画像でマッチアップしているのは、マサチューセッツ大で大活躍し、後にNBA入りするマーカス・キャンビー。

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※1 ・・・ 正式にはNBAデベロップメントリーグ。2001年からスタートした、NBA傘下のマイナーリーグ。レベル的に最もNBAに近いリーグであり、Dリーグ出身でNBAで活躍する選手もいる。

※2 ・・・ Dリーグでのグレッグのスタッツは、シーズン51試合でスタートが1試合のみ、平均出場時間10.9min、平均得点3.9pts、FG成功率39.8%、3ポイント成功率40%、平均リバウンド2.1reb。確かに、上を目指すにはちょっと厳しい数字です。なお、このシーズンのDリーグMVPはA・シーセイ、他にランキングで目に付いた選手は、T・ハミルトン、O・クック、T・マッキンタイアー、E・チェノウィズ、S・ペン、B・トーマス、D・フッド、R・ラルー……といった感じで、大学レベルではそれなりに活躍したけれどNBAは厳しい、といった感じの名前がずらずらと並んでいます。

つづく

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ちょうど今回の話と関連したインタビューを見つけたので追加します。

グレッグより少し上の世代になりますが、日本でプレーするために来日した選手達が当時の状況について、NHK-BSでインタビューされていたのを見つけました。1994年当時の話です。

まずはマット・ノーバー。彼は名門インディアナ大を卒業後、イタリアで1年プレーしたのち、当時の日本リーグNKKシーホークスに入団しました。曰く、「イタリアは最悪の状況で、多くのチームが潰れてしまった。チームの経営は酷く、契約もいい加減でした。あまりに面倒が多かったイタリアに比べ、日本はずっと環境がいいです。選手のタレントやチームの運営とかもね。」

続いて東芝のケニー・ペイン。彼は大学時代にジャパン・クラシックで来日していたのを覚えている方もいると思います。ペインはNBAにドラフトされフィラデルフィアで4年プレーし、その後CBA(アメリカのマイナーリーグ)とイタリアを経て来日。彼は「CBAは正直者が蹴落とされる世界だよ。給料は少ないし、NBAとも日本とも違う世界だね。」と言います。

一方、日本で働きながらプレーするというスタイルを早くから取り入れていた選手も登場します。それは松下電器(現パナソニック)のクラーレンス・マーティン。この時点で彼は既に8年間プレーしているだけでなく、当初から「日本で働くこと」を視野に入れていました。「海外事業部」所属という名刺を持つマーティンは、「私達はプレーできなくなる日の為の準備をしなければいけません。若い選手達はそれを考えないけれど、いずれその時が必ず来るのです。その日のことをきちんと考えておかなくてはなりません。」

膝の怪我の為にNBAを諦めたというマーティンですが、そのNBAの選手達が公式戦で来日した際、ある選手はマーティンのことを羨ましがっていたとか。「NBAでも選手を続けながら、会社の社員として働ければいいのに。選手を辞めてしまったら、その先には何もないよ。」と。

現在のNBAの平均サラリーは約5億円。莫大なサラリーを得るトップ選手を含む平均ですらか、ベンチの後ろに座る選手達にとっては決して将来安泰という訳ではなさそうです。

なお、マーティンを羨ましがったというNBA選手はマイク・ブラウン。キャリアの大半をベンチで過ごした選手ですが、その10年のキャリアのサラリー合計額は約740万ドル、当時のレートからすると8~9億円くらいかな?加えてNBAの年金もあるから、十分なような気がしますね……。

2009/06/19 11:33 | 元アルビ_グレッグ・ストルト | No Comments

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