6月14日、コートに乾いたブザーの音が鳴り響き、彼女達の早い夏が終わりました。
スペインのマドリードで行われた、女子バスケットボール、オリンピック世界最終予選。我らが女子代表はグループリーグを突破したものの、本戦では勝利を挙げることが出来ず、涙をのむ結果となりました。
本大会は、各地区予選で出場枠を逃した上位チームが最後の5枠をかけて戦う、いわば崖っぷちの大会。いや崖這い上がり大会というべきでしょうか。
代表権獲得までの流れはこうです。
・各地区から12国が出場。
・グループリーグ:3ヶ国ずつA~Dの4グループに別れリーグ戦を行い、グループ2位までが、本戦(代表決定戦)に進出。
・代表決定戦:とにかく勝てばオリンピック出場権を獲得。(8チーム中4チームが獲得)
・敗者復活戦:本戦で負けた4チームのトーナメント戦で、残った1枠を争う。
日本代表の戦績
グループリーグ A組
セネガル 69 - 71 日本 ギリギリ勝ち!V(0▽0)V
19 1Q 22
8 2Q 17
20 3Q 20
22 4Q 12
ラトビア 83 - 69 日本 グループリーグ2位通過!
20 - 19
21 - 18
17 - 24
25 - 8
代表決定戦
チェコ 76 - 64 日本 チェコが代表権獲得 日本は復活戦へ
16 1Q 21
11 2Q 5
23 3Q 15
26 4Q 23
敗者復活トーナメント
キューバ 66 - 58 日本 日本敗退決定 (T△T)
21 1Q 18
16 2Q 8
16 3Q 17
13 4Q 15
ちなみに敗者復活トーナメント決勝
キューバ 67 - 72 ブラジル ブラジルが代表権獲得
16 1Q 19
18 2Q 15
13 3Q 11
20 4Q 27
でした。
■不安との戦い
今年の3月、日本オリンピック委員会(JOC)は、日本バスケット協会に対し次の通告をしました。
「無期限の登録資格停止。正常化が認められるまでは資格を復帰せず、その間は女子代表がオリンピック出場権を獲得しても派遣しない。強化費合計5000万円の返還を要求する。」
これは、内紛を続ける日本バスケット協会に対して、JOCが突きつけた処分の通告です。
その後、処分に関するJOCの最終決定会議で、元オリンピック選手の委員などから選手に対しての同情論が多くよせられ、結果、出場資格の剥奪だけはなんとか免れたのですが、この間の彼女達の不安はほんとに大変なものだったでしょうねぇ。。
実際、強化合宿や強化遠征など、十分だったと、先進国日本の代表チームとして胸を張って言えるなんてことは、恥ずかしくてとても出来ないでしょう。
■ベテラン、小磯選手の言葉
敗戦が決定したキューバ戦後、今五輪のために現役復帰したベテランの小磯(旧姓 浜口)選手が、「選手が集中できる環境をつくってほしい」とコメントしたというニュースが伝えられています。
ニュースには先の協会の混乱の件が触れられていないので、一般のスポーツファンには「負けた事を環境のせいにするとは何事ぞ!」と思われてしまうかも知れません。
100%保障しますが、この選手はそんな事は絶対しません。コレは敗因を誰かのせいにしているという事ではなく、他の若い代表メンバーの今後のために、あえてこのタイミングで勇気を持って協会に対する批判をぶつけたものと思います。
女子バスケについては、全然詳しいわけでは無いんですが、浜口選手については学年1コ上で若いときから有名だったし、決して大きくはない身長で、ずっとトップのセンタープレイヤーとして頑張ってて、アテネオリンピックで中心選手として2M近い選手と渡り合ってる姿を、すげぇなぁと思って見てました。(彼女は183cm。)
ユニフォームだと迫力あるけど、普段着だと結構綺麗なひとなんだよね。
彼女の得意技はフックシュート。体の側面から放り投げるような超ムズなシュートです。
十人並みの体格で、長くインサイドのトップ選手でいられたのは、苦労してこのシュートを身に着けたから。他にも古武術を学んで、小さくても当たり負けしない体の使い方を研究するなど「体の小ささを絶対言い訳にしない」気持ちの強い選手です。
旦那さんには当たり負けして寝技にまで持ち込まれちゃったようですが(笑
(旦那さんはそのときの古武術の師匠)
はい親父ギャグ親父ギャグ。
ま、言いたいのは、簡単なことで環境を敗戦のいい訳にする選手では無いってことです。
■世界の壁
私はこの「世界の壁」って言葉があまり好きではないんですが、(日本だって世界のひとつじゃないんかい!)とはいえ、バスケの国際戦の度にこのことを実感せざるを得ません。
今回も、強化や準備不足、エース大神がWNBAのシーズン中のため合流が遅れたとか、まいろいろあるでしょうが、私が感想をいう事を許されるなら、やはり外国人選手との対戦経験が圧倒的に不足しているな、という事です。日本人同士では絶対に体験できない「違い」を克服できないまま終わった。って感じですね。
今回は全試合で、リバウンド獲得数で相手を大幅に下回り、ターンオーバー(失策)で相手を大幅に上回っています。あと生命線であるアウトサイドのシュート率も低いです。
バスケってのは低ければ低いなりにやりようがあるのが大きな魅力の一つで、実際、5人が完全な連携に至らなくても、2対2、3対3の場面ではワリとフリーを作れているんですね。連携プレーを駆使して確実にフリーを作り、フリーのシュートをコツコツ決める。これが伝統的な日本の女子バスケの戦術の柱です。
しかし、ここに落とし穴があったように思います。
選手がフリーだと判断した場面でも、フリーになっているようで、フリーになってないように思いました。
原因は、外国人選手の手足の長さ、体の幅、強さ、やわらかさ、ジャンプのスピードです。
日本人同士なら完全に振り切っているタイミングでも、長い手がパスやシュートのコースに伸びてきたり、同じ体格でもぶつかり合いで吹っ飛ばされたり、フェイントで引っ掛けてタイミングを外したはずなのに、飛んだままいつまでも降りてこないのでコチラもタイミングがずれるとか、まあ、実際やってる選手はかなりの違和感を感じているだろうなと思いました。
その中でも、世界の強豪と互角に戦った代表選手たちは、良くやったと言っていいと思います。
ただ、きつい事を言わせて貰えば、「またそれかよ!」です。
■緻密さの弱点
何回同じ理由で強化の失敗を繰り返せばいいのか。これは男女ともに。です。
外国人、大きくて手足長い。日本人、小さい。
こんなこと、いま気付いた問題じゃねーべさコンチクショウ!!何十年やっとん!?
1993年から、通算で14年間男子代表を勤めているベテランシューター、折茂選手がなんかのインタビューでこういってます。「外国人との対戦は、要は慣れ。やってやれない事はない。」
一昨年、日本で行われた世界選手権。期待の若手陣を押しのけて当時37歳のこのベテランがエーススコアラーとしてチームを牽引したのは記憶に新しいことです。(知らない方も、まあ、とにかくすごいんですよ。このオッサン。)
外国人が多いbjリーグの選手達も、対外国人選手については多くの選手が同じような事を言います。要は「慣れ」だと。あとは気合。
相手が外国人だからって怖がったり戸惑ったりでは仕事にならんのです。
WNBAの大神選手と、その他の選手がタイミングが合わず、ミスになってしまう場面が結構ありました。それを合流して合わせる時間が少なかった事による連携不足、と片付けてしまうのは危険だと考えます。
どんなに連携の練習が出来ていたとしても、咄嗟の場面では絶対ズレが出ると思います。WNBAにフィットさせるために必死になっている大神選手は、自分の中にあるプレーの基準を作り替えている真っ最中です。先の述べたとおり、外国人を相手にプレーするには、高さ、速さ、手足の長さなどの違いに対応しなければなりません。パス一つとっても、出す場所、タイミング、スピード、全てがよりシビアになるのです。
アトランタ五輪以前、世界中の女子のトップ選手は、日本に集まりました。
当時の日本リーグ女子は、コート上に1名外国籍の選手が出ることを許可していました。
WNBAも無く、ユーロバスケの規模も小さかったので、給料のよい日本の実業団は、女子のトップ選手にとっていい条件でプレーできる数少ない場所の一つだったんです。
例)アン・ドノバン
80年代、シャンソン化粧の黄金時代を支えた、当時現役のアメリカ代表センタープレーヤー。1999年に米バスケットボール殿堂入り。なんと今や北京オリンピック女子アメリカ代表監督です。
少年時代の私に「長身女性フェチ」という特殊性癖を植えつけてくれたお方でもある。
とかね。
アトランタや、アテネオリンピックで活躍した女子代表は、外国人選手がいた頃に育った選手が主力でした。
国内女子のトップリーグWJBLは現在外国人選手の出場を禁止しているので、国際戦や海外リーグでプレーしない限り先述の「違い」を体験できないわけです。
プレーが緻密になればなるほど、単純な体のぶつかり合いによる体力消耗やリズムの狂いが大きく影響してしまうのは、火を見るより明らか。
世界のバスケレベルが著しく上がっていく中、日本人らしい緻密なバスケをさらに追求するならば、それこそ、男女問わず、いい加減考えを改めて「長期的な強化方針の確率」「フィジカル強化」、「他国との連携強化」に正面から取り組むべき時がとっくに来ていると思うんですが、どうなんでしょう。
誤解を恐れず言うと、たとえば今回の代表も、大神選手が代表にあわせるんじゃなくて、他の代表が大神にあわせられるようじゃなきゃ、組織プレーを追及したって勝てないんじゃないの?
■爪痕を超えろ
今回の大会は、ベテランと中堅、若手がバランス良く選抜されたメンバーだったように思います。それぞれ出来たこと、出来なかったこと、当事者しか感じられない貴重な体験をしたと思います。
前回、アテネオリンピック出場を決めた予選は日本開催。後の無い試合で宿敵の韓国を破った試合は「仙台の奇跡」と呼ばれていますが、ホームの後押しが無ければどうなったか分かりません。
その点、今回の代表は地区予選、最終予選を完全アウェイの地で戦い抜きました。
しかも協会のゴタゴタ、JOCの処分という逆風の中を進んできたのです。
精神的にも相当厳しかったでしょう。今予選を戦い抜いてくれた代表選手達を、私はバスケ馬鹿としてとても誇らく思います。
オリンピック出場の夢はたたれましたが、大神選手や吉田選手など、才能ある若い世代にとっては大きなターニングポイントになる経験になった思います。特に今回は強化選手として192センチの大学生 渡嘉敷来夢(通称ラムちゃん)を帯同させるなど、次の世代のモチベーションを高めることも出来たでしょう。
必死で世界の壁に掴みかかったそれぞれの爪痕。
「あ~、そういえば、前はあんなトコで必死だったよね~。」とか言ってしみじみ振り返りながら、次の大会では軽々とその爪痕を飛び越えてくれるものと信じています。
頑張れ!!
ところで、女子バスケって激しいので、試合が終わると選手の腕の引っかき傷とか凄いんですよね。
今大会は、バスケ馬鹿目線のほかにオヤジ目線でもしっかり捉えておりまして、ええ。
セネガル代表とかキューバ代表とか、褐色の凄くきれいな肌をしとるわけでして、ええ。
チェコ代表の皆さんも、はい。白くて綺麗な人が多くて。ええ。(なんせ長身フェチ。)
そこにこう、叩いた痕とか爪の痕とかがギャギャギャっとついたりするとね、
団鬼六の気持ちがね
少し分かりました。
う、
うへへ。