Home > momo

2015/06/26

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
もうすぐ7月、行楽シーズンが今年も近づいてまいりました。行先がまだ決まっていないという方にぜひおすすめしたいのは、仕事熱心な若旦那のいる老舗旅館。
今回はその若旦那の奮闘ぶりを読者の皆様にご案内したいと思います。

■vol.44旅館若旦那・柴田良馬さん
――『すべてはお客様のために。』
私共にとっては通常の1日だとしても、お客様にとっては大切な1日。(柴田良馬)

shibata

兵庫県の城崎温泉(きのさきおんせん)にて、旅館『但馬屋(たじまや)』を営む若旦那。渡米を機に実感した和の心と城崎温泉の素晴らしさを伝えていく活動も。
http://www.junkstage.com/shibata/

*  * *

柴田さんは、大正15年創業の老舗旅館「但馬屋」の四代目として生を享けました。
兵庫県の城崎温泉といえば志賀直哉をはじめ、多くの文学者に愛された名湯でもあり、古式ゆかしい風情が漂う日本有数の観光地でもあります。
そんな場所で生まれ育った柴田さんは現在、若旦那として旅館経営をしながら城崎温泉自体のPRマンとメディアやイベント出演など多忙な日々を送られています。

p1

▲柴田さんが若旦那として勤務する旅館「但馬屋」HP

ところで、「若旦那」とはいったいどんなお仕事をしているのでしょう?
恥ずかしながら、私は柴田さんのコラムを読むまでなんとなく若旦那ってデーンと構えて実務はしないのかと想像していたのですが…事実は全然違いました!
意外と大変、そして多忙な若旦那の職務内容は柴田さんがこちらに書いてくださっているのでぜひどうぞ♪

* * *

 

柴田さんのご経歴は現在コラムで連載中ですが、その中から垣間見られるのは「お客様を喜ばせたい!」という全力の熱意です。

ご家族からは家業を継ぐことを強く望まれたわけではないとのことですが、柴田さんが旅館を継ぐ覚悟を決めたのは三代目として働いているお父様への憧れ、そして地元・城崎への想いでした。

“もう一つ、理由を挙げるとしたら、地元である『城崎温泉』が好きだったからだと思います。とにかく田舎で、遊ぶ場所もなく、当時の気持ちを思い返しても、学生時代の自分にとって魅力があったとは思えないような町なので、なぜ「好き」って気持ちがあったのかはわかりませんが、それでも当時の自分が『城崎温泉』を愛していた「事実」だけは鮮明に覚えています。(『若旦那への道のり~その弐~』より抜粋)”

20歳を期に、柴田さんは経営者となるべくマネジメントの勉強を開始します。
ホテルマネジメントの本場であるラスベガスに留学し、専門的な講義を受講するなかで気付いたホスピタリティの精神。当たり前だと思って聞いていたことが、現役経営者であるご両親がいつも気に掛けていたことだと発見した柴田さんは、卒業後に日本屈指の旅行代理店であるJTBのラスベガス支店に勤務します。オペレーターとしての業務のなか、オリジナルノベルティの制作にも挑戦するなど世界有数のエンターテイメントの聖地に大いに学び、遊んだ柴田さんが帰国後に痛感したことは、「城崎温泉」という愛する場所の認知度の低さでした。

* * *

2014年のじゃらん調べによると城崎温泉は「もう一度訪れたい温泉地」ランキングでは10位と健闘しているものの、柴田さんにとっては、その評価ではまだ足りないのです。

『城崎温泉を日本一の観光地に!!!』

だからこそ、多忙な若旦那としての通常業務だけでなく、宣伝マンとしても活動。2013年には渋谷ヒカリエで開催されたトークショーに参加したり、テレビ出演なども精力的にこなしています。
普段から和装で生活するスタイルも城崎温泉のPRのためということですが、しかしながら、柴田さんの広告活動の白眉は「城崎泉隊オンセンジャー」
ご当地ヒーローとして、城崎温泉の伝統と平和を守るために日夜奮闘しているのです。

 

* * *

皆様もご記憶の通り、2015年1月、城崎温泉では痛ましい火災事故がありました。
その際、柴田さんはFacebookの公開メッセージで、こんなメッセージを残しています。

“温泉街の中心の一部が燃えてしまった今回の火災は城崎温泉にとって大きな損失だと思います。『町が一つの旅館』と表現される城崎温泉に住む人間として、決して他人事とは思えない災害でした。おそらく僕だけではなく、城崎温泉に住む人間皆が同じ気持ちでしょう。

が、城崎の若旦那仲間もフェイスブックで書かれてましたが、昨日の出来事が嘘みたいに思えるほど、温泉街は本日も大勢のお客様で賑わっています。

だから・・・こんな時こそ前を向き、皆で力を合わせ、もっともっと輝く温泉街を目指していきたいと強く思いました。そして・・・今回の火災で城崎温泉の新たな課題が明確になりました。市長も強くそこを感じてくださっております。

城崎温泉は絶対にまた生まれ変わります!!!!
なので・・・これからも城崎温泉を宜しくお願い致しますm(_ _)m“

 

愛する城崎温泉のために、そしてそこを訪れるすべてのお客様のために。
柴田さんの若旦那としての奮闘は、これからも続いています。

2015/05/20

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
唐突ですが、皆様はダンスを踊ることはできますか? こんな風に聞かれると身構えてしまう方も多いと思います。もちろん、私もその中のひとりです。
ですが、そんな方にこそ、ぜひこのコラムを読んでほしい。
目から、脳から音楽や踊りへのためらいを軽やかに変えてくれる、このライターを本日はご紹介したいと思います。

■vol.43 マルチタレント・エイミーさん

――「奥深いと思っていたことは実はもっとシンプルで自然なこと」なのかもしれない。
難しい、と身構えることで本質から遠ざかってしまうことが多々あるということ。――(エイミー)

aimi

声楽、ピアノ、ダンスと幅広く活動するアーティスト、パフォーマー。アートを通じて感じた美と快楽の本質について執筆。
http://www.junkstage.com/aimi/

 * * *

 エイミーさんは声楽やピアノなど音楽芸術分野で活躍するパフォーマー。
ピアノから音楽の道に入り、大学では声楽を専攻。趣味でずっと続けられてきたというクラシックバレエから大学卒業後はテーマパークのダンサーを勤めるなど、マルチな活動を展開しています。

エイミーさんのコラムの特徴は、これらの音楽や表現芸術が混ざり合った見識の高さと、その根底に流れる美意識の高さ、そして貪欲なほどの熱意です。

“私って欲が深いんです。
そもそも歌ったり踊ったり弾いたり演じたり、時々自分は一体なんなんだろうと思う。
普通は音楽家、ダンサー、役者、モデル…等々一つの分野を職業としてる人が多い。
でも、私が今のようなスタンスになったのには欲の深さが原因だと思う。“
「話は飛躍して」より一部引用 )

ご自身をして「欲が深い」と言わしめる、自分の限界への挑戦力。
時間がないから、やれないから、と諦めない。まず挑戦してみる、という行為は当然のことながらリスクもありますし、長じれば長じるほど難しくなってきます。
が、エイミーさんはまず試してみる。ミュージカルの振り付けにもチャレンジし、合唱団の指導やイベントのプロデュースなど多岐にわたる活動の原点はまさにここにあるのだと思わしめる言葉です。

sp02.jpg

▲JunkStageCafeイベントでの演奏の様子

複数分野にまたがって活躍されているからこその気づきである、バレエとサルサという二つのダンスジャンルの違い。ダンスは別世界のことじゃないと力説するこちらの記事、子どものうちから骨格を意識して自分の動きを知ることの大切さ。出産後のレッスンで自分の身体を作りなおしていくことの喜び……。

エイミーさんは自分のあり方を自分で決定し、コンロトールしていくことに対してごく自然な欲を感じています。
美意識、という言葉でくくられがちな身体のメンテナンスが生活の一部であり、そして健康な身体、健康なバランスで自分を維持することの大切さ。
それは手本となる存在と一体でなければ説得力を持ちませんが、エイミーさんご自身もバレエで鍛えた美しい所作や非の打ちどころのないプロポーション、そしてよく通る張りのある声をお持ちの方。
しかも、天が何物も与えたというわけではなく、それはエイミーさんご自身が作り上げてきたものなのです。

 * * *

 

とはいえ、エイミーさんのコラムは単なるファッションとしての美を追及したものではありません。

どこかおやじっぽい語り口ともあいまって綴られる出産時のBGMの音楽のセレクトのエピソードや、ご自身も先生として活躍しながら、いまだ学びの道を続けれているバレエのレッスンでのひとこまなどのコラムは音楽と生活、そして身体が一体となったエピソードばかり。
ラジオ体操の効能などもダンスを難しいものと考えがちな頭を柔らかくほぐしてくれます。
そしてもちろん、姿勢をよくする方がカッコいい!と強く語る言葉も、女性のみならず男性にも参考にして頂きたい部分です。

 

 

* * *

美は一日にして成らず。

でも、その一日を始めるのは今日からでも遅くはありません。
まずは自分の身体を意識すること。音楽に乗って身体を揺らす喜びを感じ、いいな、と思ったらてらいなく身体を動かしてみること。その延長線上にダンスがあり、舞踊があるのだと、エイミーさんのコラムは教えてくれます。

そしてその快感こそがアートの中にある美を日常に発見できる秘訣なのではないかと説くエイミーさんの言葉は、だからこそ私たちにも響いてくるのではないでしょうか。

2015/04/20

JunkStageをご覧のみなさま、こんにちは。
突然ですが、みなさんは音楽活動に憧れたことはありますか? バンドを組んだり、仲間内で対バンをしたり…誰しもが一度は経験する音楽活動への夢のひとつです。
本日はかつてのバンド少年、バンド少女だった皆様に、現役のバンドマンで“夢をみ続けていたかったから”今もなお音楽を続けているという、この方をご紹介したいと思います。

■vol.42 トランペット奏者・太田祥三さん

―死ぬまで上手くなり続けたいと思っています。今が1番上手い、と思って死にたいのです。(太田祥三)

無題

ポップスバンド「3-4-3」のリーダーでありトランペット奏者。小学生のころ鼓笛隊から音楽に目覚め、大学在学中にジャズ研究会に入部。以来、20年以上にわたり奏者として活躍している。
http://www.junkstage.com/ohta/

* * *

まずは、上の動画をご覧ください。
こちらは2011年に発売された太田さんのバンド「3-4-3」のミニアルバム収録曲。アルバムの名前は今の季節にぴったりな「新緑」です。

バンドと言えばロックバンドのイメージが私にはあったのですが、お聴きいただければ分かるように、こちらのバンドのサウンドはボサノヴァなどブラジル音楽のテイストを取り入れた、穏やかで柔らかい曲が特徴。
そのサウンドづくりに欠かせないのが、太田さんの演奏するトランペットです。

太田さんとトランペットの出会いは18歳。大学のジャズ研究会に入部したのがきっかけでした。もともと、小学生のころに鼓笛隊でトランペットに触れた経験があったとのこと。シンプルに唇を震わせて音を出すトランペットに魅了され、太田さんは20年以上、この楽器の演奏を続けています。

ところでトランペットとバンド音楽と聞くと、違和感のあるかたもいらっしゃるかもしれません。
一見不思議にも見えるこの取り合わせは、太田さんの経歴にルーツがありました。中高生のころはギターを弾いてバンド活動をしていたという太田さんは、社会人となってからレゲエバンドに参加。
そのメンバーと共に通称「イカ天」こと「三宅裕司のいかすバンド天国」という伝説的音楽番組コーナーにも出演を果たします。その後、ポップスバンドへの参加を経て現在はオリジナル曲を中心とした前述の「3-4-3」を主宰。
こちらのバンドはメンバーの入れ替わりなども経験しながら、今年で結成14年目を迎えています。
“バンドの寿命は2〜3年”などといわれたりすることもある世界で、これだけ歴史を重ねてくることが出来たのも、太田さんの穏やかな人柄ゆえかもしれません。

* * *

そんな太田さんのコラムは、だからこそか喜怒哀楽がとてもはっきりしています。

路上ライブでの覚悟の甘さを自戒し、長らくボーカルを努めた青木文子さんの卒業をめぐる寂しさメンバー募集に関する想い、新ボーカリストが決定した喜び。収録に参加したアルバムを聞く嬉しさHPをいじる楽しさ…。

もちろん、トランぺッターという立場から練習用ミュート最新事情や、音楽を嗜まれる方は誰しもが一度は悩む住宅事情。奏法に関するトレーニングから演奏中の写真を見て愕然としたという眉間問題まで様々な内容があるものの、どのコラムを読んでも感じるのは太田さんの“好きなことをし続けられる喜び”です。

太田さんは、無邪気に、無心に音楽を楽しんでいる。
もちろん、大人としてのマナーや節度は十分に保ちつつ、トランペットが演奏できること、バンド活動が出来ることを全力で喜んでいる。
コラムを読んでいると、本当にこちらまで嬉しくなってくるようなわくわくが太田さんの文章には詰まっているのです。

ちなみに、太田さんの生業はライター業
カーオーディオがご専門で、専門誌の編集長経験も6年というベテランです。
だからこそか、太田さんのコラムはJunkStageでも特筆すべき文章量!
寄稿回数もトップクラスで、アクセスするたびに新しい記事を読めるのも大きな魅力です。

4月26日には、新たにボーカリストを迎えた「3-4-3」の初ライブも予定。
新ボーカリストと共に始まる新しい時間も、太田さんはきっといつものように読ませてくださるものと思います。

これからも「3-4-3のおーたさん」と認識してくださる方を増やしていく旅を続けていきたいものだ、と思う次第です。地道に、積極的に、続けていきたいです。(「『3-4-3』の、おーたさん」より引用)

「続けること」が大事だと語る太田さん。
そこには今も音楽に憧れ、希望を持ち続けるバンド少年の面影があるのかもしれません。

2015/03/20

JunkStageをご覧のみなさま、こんにちは。
本日はまず、この動画をご覧ください。

こちらは2013年11月に発売された外山安樹子トリオ名義のアルバムのプロモーション映像ですが、このメロディアスで余韻のあるピアノを演奏しているのが今回ご紹介するピアニスト・外山安樹子さん。
2010年には「W100ピアニスト」紙で日本の女性ピアニスト100名にも選ばれた名プレイヤーの魅力を今回はたっぷりご紹介します。

■vol.41 ジャズピアニスト・外山安樹子さん
――この世の中に自分しかいない、無人島でたった一人の人類生き残りになっても、ピアノを引き続けるのか?
私の結論としては「無人島で一人になったとしても、どこかに受け止めてくれる人が出てくると信じて弾き続ける」です。(外山安樹子)

toyama

幼少時より作曲家への道を志し、転身を経てジャズピアニストに。様々なステージで演奏活動、作曲活動を展開している。
http://www.junkstage.com/toyama/

*  * *

外山さんは2014年にソロで5回、デュオで10回、トリオで26回と数多くのライブを行い、多くの音楽祭にも参加している売れっ子ジャズピアニスト。
ピアニストとしての技量は折り紙付きですが、アルバム収録曲が評価され「ジャズ批評」紙においてたびたびジャズメロディ賞を受賞するなど作曲・アレンジメントの分野でも高い評価を受けています。

一見順風満帆に見えるキャリアをお持ちの外山さんですが、そのスタートはとても意外なものでした。

「青空」という14歳の女の子の作ったメロディに衝撃を受けたという4歳のころから作曲の勉強を始めたものの、クラシックの練習などハードな音楽漬けの日々に不安を覚えて高校卒業後の進路は早稲田大学法学部へ。
たった一人で上京し、裁判官を目指して司法試験の勉強ばかりしていた外山さんは、次第に重くなるプレッシャーから体調を崩してしまいます。
そんなとき、実家のお母様から「気分転換に」と音楽を勧められ、CDショップでなんとなく手にしたのがジャズ。即興的でカッコいい音楽に衝撃を受けた外山さんは、2005年、ジャズとピアノの道に進むことを決意したのです。

*  * *

ピアニストしては決して早くはないスタート、そして一度音楽の道を離れたというご経歴が関係しているのでしょうか。
ジャズと聞くと華やか、ムーディなど様々なイメージがありますが、外山さんのコラムは音楽に対する希望や夢だけでなく、非常に実直かつ真摯な内容のものが多いことが特徴です。

今も実感していることは、人間関係の重要性と、縁の大切さです。他のどの仕事にも言えることですが。
「これで食べてるの?」より抜粋)

実際にこの世界の仕事にどっぷり浸かるようになって肌で感じたのは、「営業力、企画力、マネージメント力」がいかに必要であるか、でした。(「ミュージシャンに必要な能力?」より抜粋)

 このような発言を見ても分かるように、外山さんはピアニストという一見優雅な職業のようでありながら、むしろ小さい会社を一人で切り回している社長さんのよう。
優雅なジャズプレイヤーのイメージを覆す地道な集客努力であったり、リクエストで高額な請求をされたという事案を聞いて憂慮する姿は業界のために奮闘する経営者の姿に重なります。

もちろん、アーティストとしての一面に深く触れることが出来ることも外山さんのコラムの魅力。
2011年にはJunkStage第三回公演でスギタクミさんの詩に合わせて楽曲を提供くださった際のエピソードでは作曲する時の心理を解説、ジャンルとしてのジャズの魅力に言及したコラムもあればジャズ好きの方に愛をこめて喝を入れる一面も。
即興性を愛される音楽だからこその悩みや、だからこその喜び譜面の重要性を語る言葉はピアニスト、作曲家としての外山さんの素顔を垣間見れる貴重な内容になっています。

* * *

「どこか本気ではない演奏は必ず見透かされる」と語る外山さん。

JAZZの詳しいことは分からなくても、音楽はわかるものでなく、感じるもの…きっと、伝わると思って演奏しています。(「客席は気にしつつ気にしない」より抜粋)

震災の直後にあった仕事の際、外山さんの演奏を聞いたあるお客さんが言ったという「忘れていた日常を取り戻した感じ」という言葉。

外山さんの音楽は、もしかしたら特別なジャズではないのかもしれません。
それでも、聴く人の心にダイレクトに訴えること、そして自分も迷いつつでも楽しんで演奏すること……そのことを文章からも感じさせる外山さんの音楽は、聴くものの心を打つのです。
その理由は、外山さんがジャズを愛していることと、そしてその愛のために常に自身の技術に磨きをかけ、努力を続けているから。

優雅に見える鍵盤の下で、外山さんは今日も真摯に実直に、音に磨きをかけているのです。

2015/02/23

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
突然ですが、皆様は「のだめカンタービレ」という大ヒット作品をご記憶でしょうか。同名の漫画が原作でTVドラマ、映画、クラシックコンサートと複数のメディアで取り上げられ、敬遠されがちなクラシックの敷居を下げて一大ブームとなりました。
でも、いまだに「クラシック? そんな難しいもの分からないよ」という方もいらっしゃることと思います。
そんな方にこそ、是非この方のコラムを読んでほしい。
「のだめオーケストラ」メンバーとしても活躍されてきた素晴らしいコントラバス奏者を、本日はご紹介したいと思います。

 ■vol.40 コントラバス奏者・鷲見精一さん
――ひとつだけ確かなことは、私にとって「辛い事を辛いと感じず、挑戦を挑戦と感じないもの」が音楽であり、魂を込めて挑戦出来るものもまた音楽である、ということ。(鷲見精一)

sumi

ドイツ生まれ、生粋の音楽一家に育つ。フリーのコントラバス奏者として室内楽、オーケストラからバレエの舞台まで幅広く活躍。現在はイベントプロデュースも手掛ける。

* * *

 

鷲見さんはクラシック業界では知らぬもののない、名門一族に生まれました。
長じてご自身もプロになったあと、『あの鷲見一族にご関係があるのですか?』と尋ねられるほどの音楽一家に生まれた重圧。
その詳細はこちらに譲りますが、恵まれた環境と同時に課せられた大きな期待に苦しみながらもバイオリン、ピアノ、ホルン、トランペットと様々な楽器を経験。そして、高校生の時、鷲見さんはコントラバスと出会います

吹奏楽部への入部がきっかけでコントラバスに魅せられ、進路は東京音大へ。
ベルリンへの留学も果たし、帰国後はフリーの奏者として名だたる楽団の演奏会に参加した鷲見さんは、一度音楽の世界から離れることを決意します。その間の苦悩や葛藤は推し量るべくもありませんが、2007年ごろのコラムには鷲見さんがいかに音楽を愛しているか、それなしでは生きていけないほどの渇望を抱えていたかを垣間見ることができます。

しかし、音楽への情熱に押され、約1年半後には演奏者として復帰。

その後は現在に至るまで、前述の「のだめオーケストラ」をはじめとして多数の交響楽団、バレエ団、アーティストのツアー、テレビ出演と活躍の場を広げています。佐渡裕氏を初めとする名だたるマエストロからもラブコールを受け、今日も共に素晴らしい音楽を響かせているのです。

* * *

 

そんな鷲見さんですが、コラムにはクラシックという言葉のイメージを覆すほど豊富なトリビアかつユーモラスなエピソードが満載。

クラシックなんてお金持ちの趣味でしょ?という方にはぜひこのボーヤの記事を読んでいただきたいですし、アーティストならでは?の珍解答に爆笑必至のこちらのコラムもおすすめです。
また、演奏家同士だからこその話が聞ける「演奏家対談シリーズ」も素晴らしい。
敷居が高い、あるいは別世界の住人と考えがちな演奏家の方々の生身の声を引き出すのも、鷲見さんのお人柄ゆえなのだろうと思わせられます。

 

もちろん、プロならではのコラムも豊富。

弦楽器に使用する松脂に関するこだわりなどのフィジカルな面から、「完璧な演奏」に対する葛藤、自分の中にしかない理想の音楽への想い、アスリートとも共通する記憶と感覚。アクションを交えながら弾く演奏家の心情を解説し、楽器を抱えての移動の苦労話(特に打ち上げの飲み会に参加できない理由に涙が……)はまさに当事者ならでは!また、引っ越しに関する悩み自作の弓ケースに関するこだわりを熱く語ったり、サッカーや野球の結果に一喜一憂する姿も。
ことにW杯の時期のコラムは演奏家というより人間・鷲見精一としての姿がのぞき、寝不足に悩みながらも仕事に足を運ぶ姿はほほえましさすら感じられます。
また、音楽業界ならではのお金に関するコラムも秀逸。

これだけの面白いエピソードをクラシック通の方だけに独占させておくのはもったいないというものです。

 * * *

もちろん、鷲見さんに限らず世の中には素晴らしい演奏家の方は沢山いらっしゃることと思います。鷲見さんご自身も、コラムの中で優れたアーティストの方への賞賛の言葉を惜しむことはありません。

けれど、今までこんなにも面白く、そして真摯にクラシックの話をしてくれる演奏家がいたでしょうか?
「わかんない」と切り捨てがちな世界のことを、こんなにも分かりやすく魅せてくださったプレーヤーはいたでしょうか?
私は、いないと思うのです。

 

2014年、クラシック界は大きな話題の中心となりました。佐村河内守氏のゴーストライター問題です。
連日メディアでも取り上げられたこの問題について、鷲見さんは現場の人間としての苦悩を抱えつつ、こんなコラムを書いています。

 

“あまり好ましくない話題を振り撒いたクラシック界ですが、今回の騒動を一つ反省材料として真摯に音楽に向かいつつ、不謹慎な言い回しになるかもしれませんが、良くも悪くも世間の注目を集めたいまだからこそ、この騒動を利用するくらいの逞しさで、演奏会場に足を運んでもらう企画・努力を続けていければ良いのではないでしょうか。これからも僕は音楽を愛し続け職業としていきますし、このような騒動によって大好きな音楽の世界が誤解と偏見に包まれる事が怖く悲しいですし、もっと多くの方々に、多くの素晴らしい作品の存在を知ってもらいたいと思っています。”

 

一貫して、クラシックの敷居を下げること、多くの方にホールに足を運び、実際に音楽を体感して楽しんでほしいという思いでコラムを書き続けている鷲見さん。

その想いの現れでもあるひとつの作品が、現在ロードショーで公開されています。

クラシックを題材とした映画「マエストロ!」に出演、そして奏法指導などもこなした鷲見さんも演奏が聴きどころと太鼓判を押すこの作品、ぜひ劇場で体験してみてください。鷲見さん自身のコメントはこちらでぜひ!

 

こんなに面白く、素晴らしい世界を一部の人だけの楽しみにしておくのは、あまりにも勿体ない。
そんな思いで、このラブレターを書きました。

2015/01/21

vJunkStageをご覧の皆様、こんばんは。
ところで皆様はトスカーナ地方と聞いてどんな風景を想像するでしょうか?
フィレンツェなど歴史的な場所を連想する方もいるでしょうし、ワインの名産地として記憶されている方もいるでしょう。核となるアイコンを豊富に有する地域だけに、イメージはあるけれど具体的にどんな場所なのかよく分からない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

年始最初の今回は、そのトスカーナ地方で暮らす日本人一家のお話をさせていただこうかなと思います。

■vol.39 南トスカーナ在住一家・四方恵美子さん

――「食べる」とは、ただ単にお腹を膨らます欲求を満たすだけではないのですね。
自分の命を続けさせる行為なので、命を頂くのだと思っています。(四方恵美子)

 

emiko

マクロビオティックをきっかけにイタリア・南トスカーナへ。夫の働く山の上の小さなレストランを手伝い、現在はボンコンヴェントにて一家4人で暮らしている。
http://www.junkstage.com/emiko/

 * * *

四方さんは現在、イタリア料理人のご主人と二人のお嬢様とともに、南トスカーナ地方で暮らしています。
今回ご紹介するコラムは、その四方さんとご家族が暮らす人口3000人にも満たない小さな村でのエピソードを丁寧に綴ったもの。観光地・イタリアでは見えてこない、地に足をつけた暮らしぶりを感じさせる記事の数々はガイドブックに決して乗らない生活の息遣いを感じます。

p1p2

出身地の大阪とも違う、多くの人が思い描くミラノやフィレンツェのような大都会でもないこの村に、四方さんはご主人に呼ばれる形で移り住んできました。

南トスカーナ地方のこの村には様々な美しい風習があります。
たとえばクリスマスシーズンの最後、1月6日に現れるベファーナという魔女。町中が紙ふぶきで覆われる2月の謝肉祭。情報交換の場でもある毎週土曜日のマーケット、4月のクラシックカー・レース、夏には子供たちの絵画教室が開かれ、初秋のブドウの収穫、10月のカッシア街道のお祭り……。
どれも日本では馴染みの薄い習慣ではありますが、地域の歴史に根差した四季折々の行事を追体験できるのも四方さんのコラムの魅力の一つです。

 

そして、ご主人がシェフというだけあって四方さんのコラムには美味しそうな料理が続々!
頂き物も多いという四方さんですが、その新鮮な材料を活かした数々のパスタ、サラミ、フリット、サラダ、チーズ、ジャム……いっそ目に毒なほどの品は是非お写真でどうぞ。

ri1ri2

他にも、ワイン好きなら垂涎のブルネッロの試飲会などのエピソードで味を想像するのも一興ですし、お手伝いされているというワイナリーのナチュラルワインのコラムなどはつやつやの葡萄がそのままでも十分おいしそう。

食べることは生きること、という言葉もありますが、それを実感できる豊かな生活が四方さんの周りには溢れているのだろうと羨ましく想像できる瞬間です。
今回、この原稿を書くにあたり四方さんのコラムを読み返していて感じたこと。
それは、「善く生きる」という言葉でした。

四方さんのスタンスは、一貫して“かあちゃん”です。
一人称もそうですし、コラムの大半にお嬢様たちとの毎日が綴られていることから分かるように母親としての目線がぶれたことはありません。母である四方さんが、子供を通して毎日を楽しんでいる。

もちろん、四方さんはどこに住んでいたって人生を楽しむ方だと思いますが、その類まれなほどの楽しむ才能がボンコンヴェントの地で開花しているように感じられるのは前述のような風習や食事のエピソードの語り口のせいでしょう。

海外に住む、だけではなく暮らすという点において、四方さんは超一流なのだろうと思います。

 

ボンコンヴェントは2013年に水害に見舞われました。数十年に一度という大きな災害であり、ご無事だったとはいえ異郷の地でさぞご不安だったことと思います。
それでも、水が引けばワインを仕込み、子供たちを学校へ行かせ、ワイナリーに働きに行く。このたくましさはまさにかあちゃんの面目躍如で、それが出来るのが四方さんの素晴らしさなのです。

 

当たり前に生きていくこと。
食べ、笑い、感動して、明日を迎えること。
そんな大切なメッセージを、四方さんのコラムは教えてくれているように思うのです。

*マクロビオティック…玄米を主食、野菜や漬物や乾物などを副食とすることを基本とし、独自の陰陽論を元に食材や調理法のバランスを考える食事法のこと。

2014/12/22

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
師走のこの時期、お仕事だけではなくプライベートでも色々と雑事が増える時期です。学生のころの気分を思い出してしまう方も多いのではないでしょうか?
ということで、今回は社会人から脱サラし、大学院生として第二の人生を歩んでいるこの方をご紹介したいと思います!

■vol.38 脱サラ大学院生・藤原整さん

――時には、理屈では説明できないようなことを、
噛み砕いて、受け入れていくほうが、
もしかしたら、ずっと生き易いのかもしれない、ということ。(藤原整)

fujiwara

3年間勤めた会社を辞め、大学院生に。おそらく日本で唯一、「ブータンの情報化」について研究中。GNH研究所研究員。ライフワークは、競馬とTV。
http://www.junkstage.com/fujiwara/

* * *

 

2010年、藤原さんは3年勤めた某大手ゲーム企業を退職されて大学院に入学しました。
それまでもJunkStageでは主として趣味の競馬を中心としたコラムを書いてきた藤原さんの文章力は折り紙付きであり、その中に垣間見える丁寧な裏付けや物事への真摯な姿勢は確かに研究者向きであるような印象でした。

が、新たに藤原さんが研究対象として選んだ分野は「ブータンの情報化」。
おりしもGNH(国民総幸福量)という言葉が徐々にささやかれはじめ、翌2011年に熱狂的に迎えられた国王夫妻の訪日を控えた時節のことでした。
(藤原さんも参加したブータン国王夫妻の歓迎レセプションの模様はこちらから!)

このGNHという概念に惹かれ、本格的な学問の世界へ再び足を踏み入れた藤原さん。
あの熱狂的ブームのお蔭か国名としての認知は高いブータン王国ですが、その実情は意外と知られていません。
が、知らなくても藤原さんのコラムを読むに何の痛痒もありません!
なぜなら、それらはコラムの端々からにじみ出るように教えられるからです。

といっても、堅苦しいのは苦手……という方でもご安心を。

軽妙なテンポとユーモア、そしてはにかみに包まれた文書に押しつけがましいところは一切なく、研究者の日常を淡々と描きながら独自の目線でブータンという国の素顔を教えてくれるのです。

たとえば料理。野菜≒唐辛子で卒倒しそうな辛さのブータン料理のこと。
たとえば社会。幸福の国と呼ばれる場所で生まれている失業率の問題、国内のサッカー事情、はじめて訪れたブータンで目にした携帯電話の普及率の高さ、facebookの大流行、そして昨年行われた政権交代開票日のドキュメンタリ……。

また、観光地の紹介も東西ブータンの文化差から書き起こされており、東ブータンの豊かな自然を写真とともに堪能できます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

藤原さんのコラムの端々にはまっすぐなまなざしと綴られる対象への素直な敬意が感じられます。そして、それでいて淡々とした語り口。文章には人柄が現れるものですが、藤原さんの綴るエピソードはそれを実感させる誠実なものばかりです。

だからこそ、読者としても単なる研究者のレポート以上の情報を楽しみながら得ることができ、知らない間にブータンという異郷の魅力に気付かされているのではないでしょうか。

それを端的に示す、わたしの一番気に入っているエピソードをご紹介します。

 「君は今日、普通にこの山に登るよりも、2倍のカルマを手にした」と。
なぜなら、「君がここに来てくれたおかげで、僕(ガイド)も、
今日ここに来て、良いカルマを得ることができた」からだという。
この言葉、宗教的な観念うんぬんは抜きにしても、
なんだかとても、素敵な発想のように思えたのだ。
「物見遊山」より引用)

こんな体験ができるなんて、と思わずにはいられないような体験。
ブータンというまだ見ぬ国に、そこへ住む人々に、なんだか暖かく迎えられるような気がして、とても印象に残る記事でした。

藤原さんはブータン研究家として日本ブータン友好協会での理事としての顔だけでなく、現在、出身地でもある宮城県でまちづくりを通した被災地復興支援活動を行うなど幅広く活動。最近では気仙沼市でも研究分野の無料講座を行い、双方のフィールドで活躍を続けています。

冒頭に掲げたのは、そんな多岐にわたる活動の一つひとつを支えるもののように思われる藤原さんの言葉。
あるがままを見る、そして受け入れる。
難しいことではありますが、藤原さんのコラムにはそのヒントがたくさんあるように思うのです。

2014/11/20

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
皆様はお花をどなたかに贈ったり、贈られたりしたことはありますか?
お花といえばお祝い事には欠かせないアイテムの一つですが、日常でもふと通りかかった花屋さんの店先に目を奪われるという経験をお持ちの方は多いはず。

今回は素敵な贈り物としてだけでなく、日常生活を彩ってくれる花のスペシャリストをご紹介させていただきます。

■vol.37 花屋経営・上村恵理さん

――『じゃあ 好きな花ベスト3は?』
即答できる人ってちょっとかっこいいと思うのです
もちろん一つでもいい 好きなお花、ちょっと考えてみて下さい(上村恵理)

eri

花屋へ嫁ぎ、現在は家族で経営。様々なお客さんと接する中での花と人との人間模様を執筆。
http://www.junkstage.com/eri/

DSC00370

上村さんは29歳のとき、ご結婚を機に、ご主人の家業である花屋で働き始めます。それまではブライダル関連のお仕事を7年されていたとのことですが、花に関してはほぼ素人の状態だったとのこと。最初は特別花に思い入れもなかったという上村さんですが、だんだんに花が好きになり、現在に至るまで約10年弱にわたって“街の花屋さん”として店頭に立ち続けていらっしゃいます。

bx5

ところで皆様は花屋についてどんなイメージがあるでしょうか。

男性だと少し入りにくいとか、何か特別な日のプレゼントを買いに行く、という具体的な利用の仕方を考える方まで様々だと思いますが、上村さんのコラムを読むといろんな方がいろんな用途で花屋を活用している様子がうかがえます。

たとえば、200本のバラの花束を贈られた相手は…? というエピソードやプロポーズのためのブーケの話、意外と地域差のある墓参用のお花の話、出産のお祝いなどはまさに花屋という職業だからこそ見聞きできるもの。ほほえましいものから切ないもの、そしてあっと驚くような話まで豊富にコラムに描かれています。

DSC00772

といっても、ロマンチックなエピソードだけが面白いわけではありません!

たとえば、バラの花の棘抜き話。あの棘を一つ一つ手作業で抜いているのか…!と思うと、その細かな作業はほとんど感動ものです。また、生花という商品の性質から来るインターネットを介した販売のむずかしさ市場での競りの様子、バックヤードには配達するからこそ知る表には出てこないある業界の裏の面。実は想像以上に大変な在庫の花の水替え……。

挙げればきりがないですが、営業職を経験されてきた上村さんだからこその視点と批評眼が光るコラムは思わず「そうだったのか!」と思うような発見に溢れています。

 

 * * *

単に花を売るだけではなく、技術やセンスを売りたいという矜持をお持ちの上村さん。
そのため、生産農家を訪ねたりデザインコンテストに応募し見事受賞するなど色々と研鑽を重ねていらっしゃいます。

でも、上村さんの基本は、あくまでも“街の花屋さん”なのです。

たとえば先に挙げたような、少し照れながら花束を買いにくる男性だとか、墓参のために切り花を求めに来る常連のお客さん、そして近所の皆様のために、上村さんは花屋として看板を上げていらっしゃるような気がします。
DSC02404-1

今回、このページに掲載してあるお花の写真はすべて、上村さんとご主人、そのお義母様の作品です。どれも見ているだけでなんとなく幸せになるようなパワーのある作品ばかりですが、それはおそらく上村さんたちが花の力を信じているからのように私には思えます。
新しい商品のアレンジメントに心をくばり、プレゼントに悩む方にアドバイスし……というのは贈られた側の気持ちを考えるから。
お花を通して贈る側も贈られる側も幸せになる、そんな花の力を信じているからこそ、上村さんのコラムには読んでいて爽快で、でもどことなく明るい気分になるような、不思議な力があふれているのではないでしょうか。

2014/10/24

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。最近、すっかり秋めいてきましたね!
この時期は各種放送局でも続々と新番組が始まり、テレビドラマやドキュメンタリーなどの新作を楽しみにしている方も多いことと思います。
ところで本日取り上げるライターのご職業は声優。
そんなの関係あるのはアニメだけでしょ?と思われる方にこそ読んでいただきたい、知られざる業界事情や職業観をご紹介します。

■vol.36 声優・北沢力さん

――本物には敵いません。わかっています。でもやるからにはできる限り小手先じゃないような表現を提供したいんです。(北沢力)

riki

テレビアニメ、OVAから映画の吹替、ナレーションまで幅広く活躍する声優。既存のイメージを越えた「声の俳優」として綴る仕事と情熱。
http://www.junkstage.com/riki/

 * * *

声優という仕事の職域は非常に多岐にわたります。
私も北沢さんのコラムを読み始めるまでは正直映画の吹き替えかアニメのキャラクターの声を当てるのが主な職域なのかと思っていましたが、それは大間違い。それらの仕事はごく一部でしかなく、たとえばコンビニの店内アナウンスやカーナビの音声ガイドなども声優の仕事に含まれるのだそうです。

そんな声優という職業を持つ北沢さんのコラムは、ある一つの明快な方針に貫かれています。
それはすべてのコラムが、北沢さんの表現を借りるなら「独り言」、言い換えるなら北沢さんご自身の意見と考えに基づいて書かれているということです。

そんなの当たり前じゃない?とおっしゃる方もいるでしょうが、違います。
コラムライターのハンティングスカウトのため、日々いろんな方のブログを大量に読んでいて思うのですが、主語を明確にして自分のかかわっている何かについて意見を書くことは自身の見識を問われるため、意外と大変なことなのです。

しかし、だからこそ北沢さんのコラムは潔い。
毎週1回という驚異的な更新頻度を誇りつつ、声優という職業について惜しみなく語る言葉はユーモアに富んでおり、そして自分の仕事に関する誇りに満ちています。

表現者として演劇人と声優が根本的には同質であること、アテレコの現場練習に関する苦労話デビューしたときの思い、業界ならではの“休日”の概念ボイスオーバーという声の当て方……。
挙げていけばきりがありませんが、この辺りはエピソードはどれも読んでいて面白く、知らない世界を覗き見る楽しさと同時に北沢さんの心地いいプロ意識に触れられる話題でもあります。

 * * *

このような職業的美意識、プロ意識というのはどの業界・業種にもあるのでしょうが、普段なじみがないと思われがちな職業を持っている北沢さんの言葉は、実はどの仕事にも共通する要素があるのも大きな魅力です。

年賀状に見る礼儀作法好感を与える電話応対の仕方仕事を続けるための覚悟挫折経験の乗り越え方先達に学ぶ姿勢、そして全ての人間関係に適用可能であろう、教え方・教わり方

これらの記事から見えるように、北沢さんは仕事にかかわるすべての方に対して細やかな配慮と気遣い、そして謙虚さを持って接しています。

たった一言のセリフから始まる仕事であり、その一言を次につなげていくために、もっとも北沢さんが大切にされていること。
それはもしかしたら、諦めずに手に入れた職業への強い誇りと誠実な人間関係なのかもしれません。

最後に、こちらの記事から、北沢さんの言葉を引用してこのラブレターを締めくくりたいと思います。

自分が思うがままに自由に声を発してそれが受け入れられればお金になるし、それが受け入れられなければお金にならない。
ただ、受け入れてもらえるような表現を提供する為に、時にはある意味自分の意図とは違った表現を提供しなければいけない事があります。
それを高校生の時のようにやりたい事しかやらないという子供じみた自由を主張し続けてしまっては仕事になりません。
自由に生きるという事をコンセプトにしている僕にとっては不本意なことかもしれませんが、自分が自由でい続ける為の不自由だという事で自分を納得させています。“

現在は憧れの職業としても認知度の高い、声優という仕事。
北沢さんは上記のような現実と立ち向かいながらも、日々その仕事で着実に成果を出しています。
自身への甘えを許さず、きっちりと求められる成果を上げる。
これは声優だけではなく、すべての職業に共通する“誇り”につながるのではないでしょうか。

 

2014/09/20

JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。
最近、めっきり朝夕が涼しくなり、秋めいてまいりました。秋といえば芸術の秋、スポーツの秋など色々な秋がありますが、今月は食欲の秋をテーマにこのライターさんをご紹介させていただきます!

 ■vol.35 和菓子職人・高橋由美さん

――可愛くておいしい和菓子を作って、食べた人を笑顔にできる。なんだか、すごいですよね。(高橋由美)

takahashi

専門学校卒業後、自らの店を持つことを目標に大和市内の2軒の和菓子舗で修業を続ける和菓子職人。食べておいしく見て美しい和菓子の世界の担い手として日々研鑽を積んでいる。
http://www.junkstage.com/takahashi/

* * *

 

高橋さんは、現在神奈川県大和市にある2店の和菓子舗(「みどりや」さん、「鈴木屋」さん)に勤務される和菓子職人。製菓の専門学校を卒業後、現在も勤務されているお店に職人として入り、いつかご自身のお店を持つことを目標に日々おいしいお菓子を作り出しています。

ところで、高橋さんの上記の経歴のうち、面白いのはもともと彼女がパティシエを目指していたというところ。勉強を重ねる中で、また、幼いころから嗜んでいた茶道の影響もあり、和菓子の道を志したという変わり種です。

JunkStageでは主に季節の和菓子や、その時期の歳時記などにちなんだコラムを連載してくださっていますが、……どうにも読んでいておなかがすいてしまうのは、その美味しそうな和菓子の数々!

kiku_1CA3C0830

 ▲練り切りで作られたサンタ。和洋いずれも造作が素晴らしい!

また、私が高橋さんのコラムをお勧めする理由のひとつは、和菓子が季節感を大事にしているものだと感じられる部分です。春の雛祭り、冬といえばの雪だるま、秋にはきんとんで表現された紅葉……。、そして季節限定感が楽しい苺大福

cimg2455CIMG3545

 

 

 

いずれも芸術品のような、小さくて美しいお菓子たちは、目でも舌でも楽しませてくれる存在です。高橋さんがいみじくも言うように、「可愛くておいしいお菓子」の力は偉大だと感じられる作品たちは、まさに特別な日のおもてなしにも最適なのではないでしょうか。

また、お菓子にまつわる知識が増えるのも甘党としては楽しいところ。

普段何気なく口にしている求肥や雪平、練り切りが実はもともとの材料が同じであるとか、茶席での出入り和菓子屋さんの苦労、あるいは、和菓子屋さんならではの理想の女の子「白餡女子」など、トピックの選び方や語り口はまさにプロの女性職人ならではの遊び心ある着眼ばかりです。

普段美味しく頂いている和菓子の一つ一つの名前の由来なども謂れのあるものが多く、たとえばこちらの「調布」というお菓子は租庸調という税制度に由来したものだとか。お正月といえばの花びら餅は宮中行事に由来すること、和菓子屋さんの作る恵方巻、お盆に供えるお迎え菓子
ざっと列挙しただけでも、何気なく店頭で見かける和菓子がいかに創意工夫を凝らして発展してきたものかと感心してしまいます。

もちろん、これらの知識・背景を知らなくてもお菓子のおいしさは変わらないと思いますが、ちょっとだけ得した気分になって、ますますおいしくお菓子を味わえそうな気がしませんか?

* * *

高橋さんは現在、和菓子職人として厨房にたつ傍ら、茶道でもお弟子さんをとるほどの腕前。2店舗を掛け持ちして働いていることを考えれば、圧倒されるほどの仕事量です。にもかかわらず、高橋さんのコラムには、甘味と同じよにゆったりとした気持ちになれる“何か”があるような気がします。

その“何か”とは、夢に向かってまい進しているからこその余裕なのではないでしょうか。

旅行のたびに土地の和菓子舗やケーキショップにはいって研究したり、他の職人さんの言葉に謙虚に耳を傾けたり、時間があれば講習会へ通うほど勉強熱心である高橋さん。その、自分の店を持つという夢に向かって着実に進んでいる手ごたえが、ゆとりとなって、読むものをくつろがせるのではないか。

高橋さんのコラムを読んでいると、どこかそんな確信めいた余裕を感じます。
そして、そのゆったりとした空気と添えられた写真を眺めていると、たまには丁寧に緑茶を淹れて生菓子を頂こうかなという気持ちになる。
これは、得難い高橋さんのコラムの特徴であり、美質であるような気がします。

Next »