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2014/01/21

JunkStageをご覧のみなさま、こんばんは。
お正月気分も一段落してきたこの時期、今年はなにをしようかな、と考える方も多いのではないでしょうか? 習いごとや勉強などもよいですが、今回お勧めしたいのは初めての伝統芸! とはいえ肩が凝るようなことはちょっと…という方もご安心を。
素直に“すごい!”と感動できる一人のパフォーマーを、今回は皆様にご紹介したいと思います。

■vol.27 曲こま師・三増巳也さん

――みんな子供の頃と同じように、修正可能、針路変更、七転び八起き、なにくそ根性で、大人になってからも、全身自分らしく、誰でも、なりたい自分に、なって欲しい。(三増巳也)

miya
芸人の両親のもとで生まれ、父から皿回しを習う。一度、銀行員として就職するも、再び芸の道へ戻り、曲独楽師(きょくごまし)として活躍中。
http://www.junkstage.com/miya/

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曲独楽とは、江戸時代に考案された演芸で寄席芸能のひとつと言われています。
大小の独楽を使って様々なパフォーマンスを見せる芸能なのですが、明治時代に一旦廃れたものの、現在に至るまで脈々と人気を保っている日本の誇る伝統文化です。
今回ご紹介する三増さんは、その由緒正しき継承者で第一人者。
曲独楽芸能の中でも最も難しいとされる江戸曲独楽の三増流の看板を背負って日々舞台にテレビに講演にと大忙しの日々を送っていらっしゃいます。

高名な芸人である源氏太郎氏を父に持ち、生粋の演芸一家で生まれ育った三増さん。英才教育を施され、ストレートに芸の道へ……入ったわけではないのです。

偉大なお父様の芸を間近で見ていたせいか、「私には出来ない」と高校卒業後は都市銀行へ就職。
時代はバブル期、ちょうど新札発行の時期と重なって毎日のように残業を続け、銀行員としても将来を嘱望された23歳の時期、それでも三増さんは退職することを決意します。
「芸の道は就職してからでも目指せる」というお母様の言葉や、高校卒業の際打診されていた独楽芸の師匠の元への弟子入りの話が再度浮上してきたタイミングでした。

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退職してからのほうが忙しいのではないかと言うほど、それからの三増さんは芸の道に邁進します。お母様の指導で三味線をはじめたのを皮切りに、後見の所作の勉強のため日舞を習い、直ぐに舞台に立てるようにと南京玉すだれを習得。合間には歌舞伎に通い、池袋のデパートで初舞台を踏むことに。当時20代の女性芸人自体が珍しい時代であったそう(http://www.junkstage.com/miya/?p=49)で、三増さんは楽屋では「お嬢ちゃん」と呼ばれていたそうです。先輩方が必ず口を揃えていったという「酒は飲むな」という教訓をお父様から受けていた三増さんは一切酒席には出ず、先達に習って黙々と芸を磨き続けてきたのでした。

その後、平成4年には現在の名義である二代目・三増巳也を襲名。3回にわたる国際童玩芸術節への日本代表出演、文化庁芸術祭への参加、「笑点」をはじめとするテレビ出演など現在の活動領域は本当に多岐にわたり、ご主人と共に生活する愛媛県・内子の町並み保存地区でも毎月のように舞台に立っていらっしゃるのです。

三増さんのコラムを読んでいて感じるのは、芸の道に対する深い尊敬の念と愛。
それは先達に対してだけでなく、道具でもある独楽そのものへも注がれます。

「曲独楽は、綺麗じゃなくちゃ、ダメだ。」

この言葉を体現する如く、講演が終わった後には必ず独楽へも労いの言葉を掛け、丁寧に磨いておくという三増さんは本当に独楽を大切に扱います。それは独楽職人そのものが少なくなってきていること、材料の木も手に入りにくいという事情もあろうかと思うのですが、20年以上愛用している独楽のコラムなどを拝見すると、それ以上に独楽という相棒が心から大事で大切なものだと三増さんが心から思っていることが感じられてくるのです。

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三増さんのコラムには、「プロフェッショナルである」という自負が溢れています。

それは心構えであったり、道理に合わない仕事を断ると言う態度であったり、独楽そのものの真偽を断ずる口調であったりするのですが、共通するのは「芸」への愛と、それを守ってきたお父様をはじめとする芸人先達への敬意です。
曲独楽芸そのものを大事にしていきたいという強い思いが、激しいとすら感じられるこれらの言葉や態度に集約されているように思うのです。

だからこそ、三増さんは芸の歴史をきちんと調べておこうという姿勢を貫かれます。
「芸も技術の話しだけじゃだめ」という言葉通り、興行記録を調べ、独楽の文様を調べ、演じる際のスタイルの変遷を調べ……と、その探究心は留まるところを知りません。

それは、プロであるからこその矜持なのだとわたしは思う。
未だ機会がなく三増さんの曲独楽演芸をテレビ中継でしか見たことがないのですが、これほどの自負と矜持を持っている芸人さんの芸を一度は肉眼で見てみたい。
そして、多くの方に、日本にはこれほどのプロがいるのだと知ってほしい。
今回は、そんな思いでこの手紙を書きました。