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2014/06/29

ゴロンタロ州にはスマラタ、マリサ、ボネ海岸沿い、ビンタウナなど州内各地に以前から金鉱山がありました。

ゴロンタロ地域がオランダによって占領されていた当時の資料(遅くとも1700年)には、オランダ軍により上記した地域での金採取が確認されています。

つまり、ゴロンタロでは300年以上の金採掘の歴史かあると言えます。

現在でも、これらの地域やその周辺では金採掘が続けられています。

 

さて、金はどのようにして採掘されるのでしょうか?

ゴロンタロにおける採取方法に関する詳しい資料は多くないのですが、2つの方法があるようです。

まず1つ目。

この方法は、大きな皿(揺り板)を用いた方法です。

砂金などを採取する際に用いられる方法で、比重の違いを利用して砂の中から砂金だけを選り分けます。

もう1つは、水銀を用いた方法です。

以外にもこの方法は古くから知られており、金と水銀の物理的性質を利用した方法です。

この方法は『アマルガム法』と呼ばれており、現在ゴロンタロにある金鉱山で採用されている方法です。

 

このアマルガム法による金採取過程を写真とともにご紹介したいと思います。

① まずは金が含まれている岩石を採取する

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② ある程度小さく砕く

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③ “トロモ”と呼ばれる樽に、砕いた岩石・水・水銀を一緒に入れて、樽を回す

※樽を回している間に、岩石がより細かく砕かれ、姿を現した金属粒子が水銀と接することによりアマルガムと呼ばれる合金を作る。

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④ トロモからアマルガムを採取する

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⑤ アマルガムを加熱し水銀を蒸発させて、残ったものが金!

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このようなプロセスを経て、金を得ています。

 

さて、ここで使用された水銀。

ご存知のように人体を含む動物や環境などに対する水銀問題が深刻です。

ゴロンタロ州にあるほとんどの金鉱山は、『鉱山』とは名ばかりで、産業設備を整えていない金採掘のことです。

手掘りや小規模金採掘と呼んでいますが、水銀を使用する世界最大セクターの1つです。

水銀が引き起こす問題には様々なことがあります。

例えば人体への影響。

水銀は中枢神経や臓器などの器官に障害をもたらします。

高濃度の場合は言うまでもなく低濃度の場合であっても、長時間水銀と関わる環境下にさらされると、脳に障害を受け最終的には死に至ります。

間接的に影響を受けることもあります。

妊娠した女性がすでに水銀に被曝している場合は、母体を通じて胎児の体内へと吸収されます。

 

ここで私が取り組んでいることは、環境および人体などを含む動物にどの程度まで水銀汚染が広まっているか、ということです。

しかし、このような研究・調査はすでに様々な国や研究者によって行われています。

特に新しい研究ではありません。

対象となる地域で『こんなに含まれていますよ』『ここは危ないですよ』と発表するだけでは何の意味もないのです。

労働者やその家族、その鉱山がある地域の政府役人など、皆さん水銀の危険性を知っています。

だけど、どうして未だに働き続けているか?

政府はどうして政策を取れないのか?

根底にある理由に目を向け、その問題に取り組んでいかないと真の解決にはならないのです。

ゴロンタロで抱える最も大きな問題に『貧困』があります。

これはゴロンタロだけでなく、インドネシアを含むアジア、中南米、アフリカなど世界中で問題となっています。

 

そこで私の役目は現地コミュニケーターとして、現地にどっぷり根を下ろし、労働者やその家族から生の声を聞くことなのです。

そもそもここで働いている人は『問題』だと思っていないのです。

私たち(研究者や政府)が勝手に『問題だ』『危険だ』と言っているに過ぎないのです。

もちろん、間違いではありませんし、叶うならすぐに鉱山での労働をやめてほしいです。

しかし、彼らにも生活があり、子供を養わないといけないのです。

初めにお伝えしたように、ゴロンタロでの金採掘の歴史は長いです。

数世代に渡って行われてきました。

文化を断ち切るとまでは言いませんが、いつかは尽きてしまう自然資源(金)であることも確かです。

明日の生活を心配するのも重々承知しています。

しかし、ここで子供や孫の時代に目を向けてほしいと考えるのです。

貧困問題解決を政府と協力して行い、労働者には少しでも水銀の恐ろしさを知ってもらう。

時間がかかり粘り強さが必要だと思います。

確実に一歩ずつ前に進めるよう努めていきます。

2013/10/07

さて、9月中旬より新学期が始まりました。

今期もいつもながら大量な授業科目数です。

日本では秋から始まる学期は“後期”ですが、こちらでは前期です。

前期にはタイトルにあるように、3回生対象に地震学の授業があります。

毎年、この回生は全員履修したいたので気づかなかったのですが…

 

地震学の第1回目の日、教室に行くと…誰1人としていないのです。

また遅刻か、と待つも一向に来る気配がないのです。

やっと見つけた3回生に話を聞くと“履修していません”の返事。

他の3回生にも同様の質問をするも、答えは一緒。

ここでやっと真実を知ったのです。

“先生、地震学は選択科目だよ”

よくよく聞くと、以前から選択科目だったとか!

 

非常に衝撃を受けました。

私の授業内容を先輩から聞いて選択しないように言われたのではないか…などとネガティブな考えに陥ったためです。

しかしそうではなかったのです(かなり、安心!)

理由は2つ。

①この学年は5人しかおらず、そもそも人数が少ない

②卒業に必要な単位をすでに取得または取得予定である

そう言えば、昨年の地震学の授業で履修していた現3回生がいたな~などとやっと記憶が戻ってきているところです(笑)

 

なぜ地震学を教えることが出来なくて、残念がっているのか。

①インドネシアは日本と同様、地震大国であると言う事

②単純に地震学に対する私の思い入れが熱い(笑)

 

生徒もインドネシアが地震大国であることは知っています。

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上の図は1999年から2000年までに全世界で発生したマグニチュード4.0以上、震源の深さ100km以下の地震分布を表しています。

インドネシアはこの赤い点で完全に覆われ、インドネシア国土を見ることは出来ません。

日本も同様です。

しかし、私が教えたいことは別の部分です。

2004年12月26日に発生したスマトラ島沖

そして、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。

両地震に共通したこととして、大部分の犠牲者が津波によってだったと言う事です。

地震と津波、両者の性質や地震が起こった後の対応方法など、様々な視点から“防災の大切さと心構え”を教えたかったのです。

ゴロンタロ地域でも上記の2点と比較すると小規模ではありますが、地震が発生した後に津波が起こり犠牲者を出しています。

災害の大小を比較することなんてナンセンスなのですが…

 

どのような場所にいても安全ではないこと、地震だけでなく様々な自然災害が起こるということ。

このことを常に念頭に置いて生活すると、いざと言う時に冷静に対応できることを知っておいてほしかったのです。

2013/04/30

先月末から今月の上旬にかけ、私の教授がインドネシアを訪れました。

教授はここ数年、毎年訪問しており、ゴロンタロ大学だけでなく様々な大学に行っています。

今回は生徒同伴ではなく、教授お一人での訪問とあって気が楽そうでした。

私は途中から教授に同行し、以前会議を行ったガジャ・マダ大学、バリ観光を経てゴロンタロ大学へ向かいました。

 

ガジャ・マダ大学では、祭日であったのにたくさんの先生方に集まっていただき、今後の交流について話し合いを行いました。

翌日には世界遺産であるボロブドゥール遺跡を巡ります。

毎年来ていたにも関わらず、教授は初めての観光!

遺跡のスケール大きさや歴史に思いをはせず、どんな種類の岩石を使っているのかと、観光地に来てまでも熱心に岩石観察していました。

その翌日にはバリに移動し、キンタマーニ高原にあるバトゥール火山博物館見学へ。

ここは、私も行きたかったので大変楽しみでした。

あいにく日曜日で閉館時間が早く、閉めようとしているところギリギリセーフ滑り込み。

交渉して見学させてもらいましたが、あまり時間をかけて見て回ることが出来ませんでした。

ショック!!

そのあとは、バトゥール火山を見ながら昼食を食べ、外輪山についていろいろお話を伺います。

※外輪山…カルデラの縁にあたる尾根の部分。有名なものは阿蘇山。

 

次の日には観光を終えて、ゴロンタロに向けて出発します。

今回のゴロンタロ大学での目的は、来月の日本訪問の最終打ち合わせ・共同研究の目的確認および調査内容の議論・分析機器の初期設定です。

 

共同研究の内容確認や今後のゴロンタロ大学および愛媛大学の交流については、様々な先生方に会議に出席していただきました。

共同研究のメンバーの先生方とは1人ずつ個別でも話し合いも行いました。

 

 

分析機器の初期設定は、まず部屋作りから始めました。

この機器は24±3℃の環境が第一条件です。

クーラーが設置してある部屋に置いてあったものの、窓が開いていたりドアの下に隙間があったりなどしていました。

温度計で室内気温を計ると30℃をこえていました。

クーラーついていたのに…

ビニールシートで窓や隙間をすべてふさぎます。

待つこと2時間以上…

やっと27℃になり、スタートします。

日本では当たり前の事でも、ここでは違います。

ゴロンタロ大学の先生方・生徒さんには初めての経験です。

と言うことは、ゴロンタロ大学で初めて分析機器を設置し管理すると言うことです。

現在は1日に3回の温度チェックを行っています。

 

上記したように、来月は日本訪問です。

私も同行することになり、大変楽しみです。

新たな協定を結ぶ予定で、さらに交流が活発になることを願うばかりです。

2012/12/21

先週末、急に理学部長から呼び出しの電話がかかります。

“調査行くよ~”

訳が分からないまま、理学部長宅へ。

 

現在、ゴロンタロ大学の校舎を増築する計画があること。

すでに2つの場所を仮押さえであること。

2013年着工・2015年完成予定で、予算はUSD : 350,000,000であること。

様々な情報を教えてもらいました。

この上で、どちらの場所が地質学的に建設に向いているかを調査してほしい、とのことでした。

『えぇー、今からー』とか『一緒に行くって言ったって、理学部長の専門は数学じゃーん』とか『そもそも候補地選ぶ時に言ってよー』とか、こういう叫びはそっと心の奥底に…。

1人では不安なのでもう1人の地質の先生も巻き込んで、いざ出発です。

 

候補地①・Bone Bolango

街から離れているにも関わらず、道路はすでにしっかりと整備されていました。

この場所は現在の校舎からも比較的近く、車で15分程。

建設予定地にはまだ現地の方の家があり、生活していらっしゃいました。

川を探して岩石チェックを行います。

もう1人の地質の先生と“あーでもない、こーでもない”と議論します。

同行した理学部長にも説明します。

大まかな岩石は火成岩の一種である花崗岩でした。

 

候補地②・Haya-Haya

この場所は空港の近くにある、土地です。

空港が近くにあるので、市内までの道路は完全に舗装済です。

しかし、現在の校舎から45分ほどと、ちょっと遠いのですね。

この場所は少しでも雨が降ると水没すると有名な場所。

調査前夜が大雨だったため、まだ少し水たまりなどが…

ここの岩石は堆積岩の一種である石灰岩一色。

近くにはゴロンタロ州を東西に真っ二つにする断層も走っている。

 

私たちの結論は出た。

石灰岩も年代が古ければ強度も強い。

しかし、Haya-Hayaの石灰岩は年代が若すぎる上に大変やわらかかったのだ。

2か所で選ぶなら、断然Bone Bolangoである。

 

しかしまぁ、ボーリング調査することなく、この“調査と言う名の観察”だけで校舎建築場所を決めてしまうのは、非常に怖い。

川に下りてもせいぜい2~3mの地層や構造が分かるだけである。

実は今週の月曜日にゴロンタロから150kmほど離れた場所でM6.1の地震が起きた。

津波が発生したり死傷者が出たわけではなかったが、ゴロンタロも長時間揺れ続けた。

何と、7月に完成したばかりの新校舎の事務所にヒビが!

建築過程を知っているわけでもないし、全工程を見ていたわけでもない。

しかし、非常に不安な作り方であることは知っている。

日本のように基盤工事(というのか?)徹底的にはやらない。

だからこそ、場所が選べるのであれば断層から遠い場所を選択する。

 

さて、この調査がなぜこんなにも急だったか。

さる20日、場所を決定するにあたっての会議がゴロンタロ州政府の関係者と行われるというのだ。

調査結果を報告し、私たちの結論を提示する。

もちろんこの会議の前にゴロンタロ大学学長にも報告し、了解を得ていた。

発表と同時に浴びせられる罵声の数々…

“ふざけんなー”

“日本人連れてきたからってなんだー”

“2008年に仮押さえのサインしといて今更地質学的に無理とか意味不明ー”

“俺たち(政府方)もHaya-Hayaに移動予定だったのにー”

“じゃ、1つの学部だけでいいからこっちにも建ててくれー”

同席していたゴロンタロ大学学長もなだめようとしますが、一向に収拾できません。

学長が呆れてしまい、“ここは日本人パワーだ”と意味の分からないフリと同時にマイクを渡されます。

上記の2つ目の罵声に、少々居心地の悪さを覚えつつも発言します。

“ぜひ、思い出してほしい。2004年にスマトラ、2011年に日本を襲った津波を。原因は地震であった。犠牲者は津波だけでなく地震によっても出た。大学と言う場所は勉強する場所である。この意味は、ゴロンタロ大学が生徒や教師など大勢の人の命を預かっている、ということにもなる。Bone Bolangoにも地質的に不安な要素はたくさんある。政治的な考えを捨てて、ぜひ考えてほしい。どちらが最善の場所なのでしょうか”

インドネシア語での発言にどこまで私の気持ちが伝わったかは分からない。

英語での発言ならばまだ意味は通じただろうが、相手が英語が出来るか分からなかったから、インドネシア語を使った。

正直、このような大きな建物を建築するのであれば、もっとちゃんとした調査をやってほしい。

しかし、予算的や技術的に難しいとなれば、残る道は1つ。

場所を決定するにあたっての、判断材料を与えて議論するに限る。

政治的な圧力には負けたくなかった、と言えばそうかもしれない。

ただ、日本同様インドネシアも地震大国であり、この脅威を常に頭に置いておかなければいけないのだ。

建設技術も、地震対策など少しでも取り入れることが出来ることは実践してほしいし、切にそう願っている。

 

と言うわけで、ゴロンタロ大学の校舎予定地はBone Bolangoに決定した。

2012/12/07

現在の生徒に足りないもの。

以前のコラムで書いたように、基礎学力が足りないことが分かりました。

純粋な勉強面でも不足していますが、技術的な面も補っていこうということになりました。

もう1人の地質学講師の方と協議した結果、私は技術面を担当することになりました。

 

技術って何…?と思われた方もいると思いますが、つまりは“実習・実験”です。

今期の授業から、外に出る事や実習を以前よりも増やしていましたが…

正直、正規の授業時間だけでは時間が足りない。

と言うことで、金曜日の午前中に特別授業を開講することにしました。

全学年を対象とし、約束事は開始時間を守ることのみ。

 

内容などは私に一任されましたが、すでに私の中では決定していました。

・偏光顕微鏡を使えるようになること

・偏光顕微鏡を使って観察する岩石薄片を作れるようになること

まずは、岩石薄片の作製から開始します。

自分で作った薄片を顕微鏡で観察出来たら…

なんと素敵なことでしょう!

日本だったら機械を使ってすぐに作れるのですが…

ここでは、鉄板を使って作ります。

最初はどんなにデコボコした岩石でも、続けていくうちに平らに。

まぁ、これが根気のいる作業なのですが(笑)

飽きずに続けてくれ~

最終目標は0.03mm!

 

先日の出張で判明したのですが、インドネシアの大学に併設されている地質学科の学生は自身で薄片を作製できないようなのです。

そもそも、その大学の先生が作れない。

したがって、薄片作製のための道具も一切ないのです。

ゴロンタロ大学以外の地質学科の生徒が授業や研究で薄片観察をしたい時は、生徒自身が薄片作製会社に発注・支払をするとか。

しかも、1枚Rp. 40,000となかなかいいお値段。

他の大学の状況を生徒に伝えていたので、特別授業の内容が“薄片作製と顕微鏡を用いての観察”だと伝えると、生徒たちは大喜び。

よかったです。

 

さて、今週で3回目です。

回を重ねるごとに、参加人数が増えています。

呑み込みが早い学生は、今週2枚目の薄片作製に突入。

どの岩石でもいいと言うわけではなく、事前に私が選んで採取したものを使います。

顕微鏡で観察した時に、どの鉱物がどれか分かりやすい、キラキラ感があるもの、を重視。

※【カラーで見る・記載岩石学入門】より

岩石とスライドを張り合わせることが難しく、失敗してしまった学生もいました。

でも、大丈夫。

練習を重ねれば自分にしか分からないコツを掴めるはず!

この段階になるまで、毎週コツコツと続けていきたいと思います。

2012/11/26

やっと晴れました。

ですので、先日、2回生の学生とちょっとしたフィールドに行ってきました。

本当はもっと早く行く予定だったのですが、予定している日になるといつも雨で中止に。

雨より大雨の方が正しいかもしれません。

水曜日の朝7時から開始のこの授業。

今はすでに雨季に入っているので、早朝・夕方は雨が降るのです。

少しの雨ならまだ考えますが、スコールでは決行するわけにはいきません。

 

先週の水曜日、絶好のフィールド日和。

初めてハンマーを持って外に出れる嬉しさからか、生徒たちは6時30分には集合していました。

そのガッツでいつも来てよ…

2回生は6人だけなので、移動も楽チンです。

フィールド場所は大学から車で10分程度の近場。

移動中にフィールドにおける注意事項の確認をします。

 

到着するなり、皆ゴソゴソと何か取り出します。

何と、フィールドのためにお揃いの洋服を作っていたのです。

そののちさっそく石を叩きたい生徒を静止して説明を始めます。

ハンマーの使い方やサンプルの取り方・保管方法。

写真の撮り方やスケッチの仕方。

あまりにもボーと聞いているのでレポート提出するように、と釘を刺します。

途端、メモを取る始末…

まぁ、いいけどさ。

気持ちが分かるからです。

私が初めてハンマー片手に外に出たのは2回生の時でした。

ちょうど、同じ時期なのです。

ちょっとした課題も与えつつ、サンプルも採取します。

 

生徒たちは些細な事にも敏感に反応します。

“同じ岩石を叩いているのに場所によって音が違う”

“取れやすい部分と取れにくい部分がある”

“これはどうやってできたのだろう”

“この方法が叩きやすい”

嬉しい反応です。

全部レポートにまとめてね、次のフィールドまで覚えていてね、という気持ちで答えます。

 

以前も書きましたが、今学期の私自身の目標は“外に出て生徒にダイレクトに身に付く授業”です。

天候上、お預け期間は長かったですが、あの生徒たちのキラキラした目。

この科目の今後の予定は、採取した試料を用いて実習を開始します。

このキラキラした目や新しいことに興味を持ち続けてもらえるような授業にして行こう、と再度決意したのでした。

 

 

2012/09/17

マナドに引き続き先生とのフィールドは鉱山です。

以前、お伝えした医療地質学のためです。

 

『エリン・ブロコビッチ』という映画をご存知でしょうか?

2000年にアメリカでジュリア・ロバーツ主演で制作された映画です。

この映画の中で、実際に工場周辺の水を採取したり、蛙の 死骸を拾ったりするシーンがあります。

今回訪問した鉱山で、蛙がため池の中で死んでいる姿を発見したのです。

この瞬間、ジュリア・ロバーツが蛙を採取しているシーンが頭をよぎりました。

 

初めに、鉱山がある北ゴロンタロ県の県長さんにご挨拶します。

※インドネシアにおける県とは、日本で言う市のこと。

そして、研究内容などを説明。

県として、鉱山周辺の水質調査を行っていることが分かった。

しかし、その結果から何を行っているという具体的な策などはないようで、県としても非常に困っているということも分かった。

 

鉱山には職員の方も同行したいただき、いつも通りの試料採取。

土壌・植物・人毛(髪の毛) に加え、鶏の羽や稲、水も採取します。

今回もお医者さんに同行していただいたので、労働者の健康状態のチェックも行います。

さらには、鉱山周辺にあるという浄水場の見学も行いました。

鉱山周辺の川の水も一緒に処理をしていることが分かりました。

WHOの定める飲料水の基準値を大きく上回る結果が得られているそうで、私たちも水を採取します。

 

二カ所目の鉱山を訪れた際、私の先生がポツリと言いました。

“この現状は今まで見たこともない状況だ”と。

私はゴロンタロの状況しか知らなかったので、この現実が普通なんだと思っていました。

しかし、そうですよね。

“普通”なはずはありません。

 

鉱山で働いている人は悪くない。

生活しないといけないから。

家族もいる。

もちろん、資源はなくなります。

しかし、ここで金が取れなくなったら次を探すだけだ、と人々は言います。

何か方法を見つけなければ、何世代にもわたり続いていく。

だからこそ、私たちがいるのではないかと私は強く感じました。

研究は論文を書くだけではない。

もちろん、発表することは大切です。

しかし、それをどのように伝えていくか、が鍵だと思います。

今回の調査で採取したすべての試料は日本で分析されます。

分析結果から何が分かったのかを、直接政府や住民の方に伝える。

来年はまた各地の鉱山に戻り、小さくてもいいのでセミナーを開催したいと考えています。

水処理をせずに排水を流すことの恐ろしさ。

どのように今の状況をよくするか。

この子供たちが、今よりもいい環境で働けるように・・・

 

2012/09/13

今回の滞在は以前もお伝えしたように、フィールドが中心です。

と言う、フィールドだけです(笑)

前回の記事の最後に“虫や虫や虫や食べ物に気を付ける”と宣言しましたが…

植物を忘れておりました。

両腕に大量のできものが!

私より背の高い草をかき分けた時に、きっと負けてしまったのですね。

 

さて、マナドとは、ゴロンタロ州の東隣の州・北スラウェシ州の州都です。

ゴロンタロ州は北スラウェシ州の一部でしたが、2000年に独立しました。

マナドはスラウェシ島の中で2番目に大きな都市です。

ダイビングスポットとしても有名で、たくさんのダイバーが訪れる場所です。

インドネシアでは珍しく、人口の70%がキリスト教です。

私にとって興味があることと言えば、現在も活動している火山が北スラウェシ州だけでも10以上あること。

そして、数年前にシーラカンスが発見された場所ということです。

 

ゴロンタロからマナドまで休憩を含め、車で10時間の道のり。

突然、教会が増えてきたので“州をまたいだな~”とすぐに分かるほどです。

ゴロンタロでは、日本でのコンビニ並みにモスクがありますが、北スラウェシ州ではコンビニ並みに教会でした。

宗教が違うと、すべてが違います。

まず、屋台にビールなどのアルコール類が置いてある、

豚肉や犬肉を用いた料理がある、

学生(小・中・高)の制服の色がシャレオツである、などなど。

やはり1番目を引いたのは、女性の服装でした。

ノースリーブにミニスカート。

上記した制服も、ノースリーブではないですが、スカート丈は膝でしたし爽やかな紫や緑、青色です。

ついつい、“足、隠してっ!”と思ってしまったほどです。

今回のフィールドが1人ならば、優雅(?)に豚肉をつまみにビールでも…と思っていましたが、ゴロンタロ大学の先生も同行されていましたし、ドライバーさんもムスリムだったので、なかなか思ったようにはいきません(笑)

大変だったことは、毎回食事が出来るレストランを探さなければいけないということでした。

レストランはたくさんあります。

しかし、イスラム教の方が口にできるハラール(ハラル)食品を用いてない店が多いのです。

ゴロンタロであれば、店頭に表記していなくてもすべてのレストランがハラールです。

しかしマナドでは、“あえて”表記しているのです。

ご飯の時間になる頃には、この表記があるお店を探すのです。

レストランだけでなく、モスクも探します。

多くのモスクは市内にあるため、市内から離れているとお祈りの時間に間に合うように市内に帰ります。

ゴロンタロでは想像も出来ないほどの交通渋滞も考慮します。

マナドとゴロンタロの違いを少しは分かっていただけたかと思います。

日が出ている時間をフィールドのために全投入出来ないのは非常につらくはありましたが、これも仕方ありません。

 

今回のフィールドの目的はロコン火山です。

市内から10kmほどの場所にある、現在も活動中の火山です。

ロコン火山を中心として、さらに3つの火山があります。

すべてが活動中です。

何回も言ってしまいますね…“現在も活動中”と(笑)

初めての訪問で、露頭(試料が採取できる場所(崖など)のこと)の場所や状況が全くなかったので、本格的な目的を決めずに現地入りしたのです。

現在も活動中なら現在の火山灰を採取するのもいいな~

いい露頭があれば数万年前の火山灰を採取しちゃおうかな~

もちろん、目的が違えば採取する対象も変わります。

最初の数日は市内や火山周辺の露頭を徹底的に調査します。

徹底的と言っても、地域が広いので車で流すだけなのですが(笑)

そして、目に付いた露頭に片っ端から登っていくという方法です。

露頭は雨で上部が削られている場所もあり、はっきりしませんでしたが、20m超の大露頭が数々ありました。

先生がマナド入りされる前に、どこに調査に行くか決めなければいけない分、責任重大な任務であります。

 

先生が現地入りされてからと言うもの、“すげぇ~”の言わざる負えない彼の頭の回転の速さに圧倒されるばかり。

私は4日も前にマナドに来て何をしていたんだろう…と思う隙も与えてもらえないほどの速さです。

すげぇ~!!

このような調子で続いた先生との2日間のフィールド。

マナドでのフィールドは火山が対象のフィールドでした。

次回は、先生とのゴロンタロでのフィールドについて書きたいと思います。

2012/08/16

ラマダンも折り返しに入った頃、フィールドワークに行ってきました。

先月からゴロンタロ中の様々な鉱山に行っています。

場所によって鉱山の規模やそこまでの交通手段が変わります。

今回の鉱山は今まで行った中で1番の規模で内心テンションが上がっていたのは、ここだけの話です。

 

そもそもなぜ鉱山ばっかり?

ここで、タイトルにある“医療地質学”との関係が出てきます。

“地学”や“地質”と聞くと何を、そしてどんな分野を想像しますか?

“地球”“石”“地震”“火山”など漠然とした単語・イメージをお持ちの方も、“構造地質学”“記載岩石学”など少し難しい内容でお答えになる方もいらっしゃると思います。

地質に限らずどんな学問にも共通して言えることだと思いますが、学問は単成分ではないと思います。

私の専門の火山学も火山や火山灰だけ研究すればいいというものではありません。

岩石学・結晶学など以外に、化学の知識や全く予定外(笑)の物理(例えば流体力学など)の知識など、さまざまな知識が合わさっていると思います。

さてここで“医療地質学”です。

医療と地質は、あまり縁がなさそうですが…改めて考えてみて下さい。

私たちは、長い間、特定の地質や土壌の上で生活してきました。

井戸水を飲み、その周辺でとれた作物や魚介、肉類等を食べてきました。

これらの水や土壌、食物の中には、その地域の特徴を反映したミネラルや様々な化合物を含んでいて、環境媒体内の含有成分と生物内の化学組成とは高い相関を持っています。

すごく極端な言い方をすると、人間の体や遺伝情報などは食物だけでなく、地圏環境情報に強く依存するということになります。

このような地質に深く関わる金属元素や無機・有機化合物の情報をもとに、健康や医療、公害のような社会的な課題について科学的な検討を行うのが医療地質(Medical Geology)の研究領域なのです。

 

日本国内では深刻な公害問題は少なくなっています。

しかし一方で、途上国や経済発展の著しい国々では、依然として土壌・水質汚染による深刻な環境・健康問題が山積しています。

少し例を挙げます。

バングラディッシュやパキスタンでは、ヒ素やふっ素による飲料水汚染が深刻で、何万人という市民が皮膚がんや内臓疾患により亡くなっています。

作物中のカドミウム濃度が高い汚染米の問題も知られています。

これとは逆に、土壌中のセレンが極端に少ないセレン欠乏症のような医療問題も報告されています。

 

話を戻します。

私がフィールドの場所に選んでいる鉱山は、ほとんどが違法鉱山です。

ほとんどの鉱山で、金や銀・銅などを精錬しています。

これらの鉱山・精錬所では、精錬中に使用した水を薄めることなく川に直接流しています。

この精錬中に使用している物質が“水銀”なのです。

鉱山で働いている人やその家族は、この水が混ざった川にいる魚を食べたり、稲作に使用したりしています。

これらの水が井戸水にも混合している可能性もあります。

さらに、汚染は広がります。

大抵の鉱山は山の奥深くにあります。

したがって、川の上流で汚染された水は、中流・下流とその周囲の鉱山とは直接関係のない住民にも被害が広がります。

 

私が実際に鉱山に行って、“水銀使用を中止してください”とか“水の処分について考えて下さい”と言うことはありません。

実際のところ、本人たちも環境や人体に影響が出ることを知っているのです。

なぜならば、どこの鉱山の方も“ミナマタビョウ”について知っていたからです。

私たちが出来ることは、鉱山周辺の土壌や水・植物を採取して分析することです。

さらには、人毛(髪の毛)も採取します。

このフィールドには、医師にも同行していただいています。

さまざまな問診をしていただき、髪の毛の分析結果と合わせて症状を考えていきます。

 

少し、固い話が続いてしまいました。

こんなフィールドですが、サブタイトルにあるように絶賛ラマダン中の調査です。

私は、出来る限り断食をしようと心に誓って出発しました。

しかしフタを開けてみると、キリスト教だったり生理中だったり…という具合でした。

唯一、男子学生(手伝いとして同行)が断食を行うという状況でした。

さらには、重労働をする場合などは断食が免除されるので、鉱山で働いているほとんどの方は断食を行っていませんでした。

と言うことで、私の不安は必要のないものに終わり、男子学生には申し訳なかったが、昼食を摂ったり水分補給したりしました。

この学生は1日目こそ断食をしていましたが、2日目に行った鉱山のあまりの過酷さにとうとう断念してしまいました。

2012/07/14

このコラムが告知通りでなく、すいません。
さて、今回は自然災害のリスクと恩恵についてです。
火山および火山灰についての自然災害については、以前ご紹介させていただきました。
今回は、火山および火山灰の恩恵についてです。

さて、火山の1番の恩恵は何と言っても温泉でしょう!
♪いっい湯だっな~、あははん♪
火山地帯の近くには温泉があります。
ですので、日本にはたくさんの温泉があります。
休日に家族や友達と温泉へ訪れる人も多いかと思います。
私自身も、フィールドと偽って温泉へ入りに行ったり…
いや、ちゃんと試料採取も行いますよ(笑)

さらには、温泉に入っている時に見えるあの景色。
大自然の美しい景観です。
これも温泉の醍醐味ですね。

さて、次の恩恵は熱資源です。
もっとも聞きなれているのは地熱発電だと思います。
地熱発電とは、地熱を利用して発電を行うシステムです。
エネルギー源として利用するのは主に火山活動によって生じる地熱です。
地熱発電は、主に火山のマグマを利用します。
エネルギーの採取や発電設備建設の場所がおのずと限られてきます。
通常は地下にたまったマグマの熱エネルギーによって、自然の水が高温の水蒸気に変わります。
それをボーリングによって取り出し、高温の水蒸気を使って発電タービンを回す仕組みです。
と、まぁ、難しい話はここまでです。
一言で言うと、火山があるから発電できるというわけです。

鉱物資源も忘れてはいけません。
ここで言う鉱物資源とは、有用金属をさしています。
火山を形作るマグマに金属元素が含まれているためです。
この金属元素は金属鉱床を形成します。
しかし、どのようにしてマグマの中の金属元素が鉱床を作るかは分かっていません。

上記の3つは、火山活動にともなった恩恵です。
今からは火山灰による恩恵です。

1つは降り積もった火山灰の土地。
火山灰も、“年月”がたてば野菜の栽培に適した土地になります。
このような土壌で育つ野菜は、桜島ダイコンがいい例ですね。
ただし、水はけがよすぎるために稲作には不向きな上に栄養分も乏しいです。
以前のコラムで書いたように、噴火した直後(この場合は数百年単位)は全く農耕には向きません。

また、火山灰や軽石が固まった凝灰岩は石材として用いられます。
コンクリートの骨材といても利用されます。

さらには、火山灰を含む洗顔料も販売されています。
この商品を知った時、私は非常に納得しました。
私は実験で火山灰を手で洗うことが多かったのですが…
この作業を行った後、本当に手がスベスベのツルツルになるのです。
他の仲間ともよく話題にしていました。
※商品の注意事項にも書いてありますが、眼に入らないように注意して下さい。
以前のコラムに書いたように、火山灰には火山ガラスという“ガラス”が入っているということです。
火山灰に含まれている火山ガラスは、時が経過しても尖ったものも含まれてしまいます。

日本には火山の周辺に多くの人々が生活しています。
また、美しい景観・温泉などを求めたくさんの方が火山を訪れます。
周囲に火山がなくても、私たちの生活には火山灰を用いたものも溢れています。
しかし、火山への理解は必ずしも十分ではないことも事実のように思います。
これらについて少しでも正しく理解し、災害を出来るだけ小さくし、これらの恩恵を受けていきたいものです。

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