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2009/03/25

売上が、立たない。

国内自動車生産台数が減少し、外注への注文額が激減する昨今、
それでも自動車メーカーを顧客に持つ営業マンは
お客さまの工場が密集する愛知県を目指す。

いつもちょっとした違和感を覚えるのだが、
お客様の工場がある駅のまわりには
少し不思議な光景が広がっている。

新幹線「こだま」しか止まらず、他の電車との接続も
そんなに活発ではない駅なので一般客数は多くない。
それでも駅前はタクシー乗り場を中心に整備され、
小さな駅前公園や、噴水なんかが広がっている。
しかし、そこに一般市民の姿はほとんどなく、
妙齢の営業マンが、スーツケースをガラガラ引っ張りながら
駅前で集合しては各々タクシーやバスに乗り込んでいくのである。

コンビニもなく、なんというか、生活感がゼロな空間。

かくいう私もご多分にもれず、駅前で自社の関係者と集合し、
工場からの循環バスを待ちながら、サラリーマンらしく打ち合わせをした。
「あ~。どうもどうも、おはようございます」
「今日はよろしくお願いします。」
「いやーしかし、不景気ですね」
「まったくですね!もう笑うしかないですわ!」
「ところで、今日のアポなんですけど、商談のゴールは○○で、
話の流れはこうです。ここで私が話振りますから、あとはつなげてください」
「了解です」

新幹線が到着する度に駅前に次々と増えていく背広姿の男たち。
しかし以前と比べると、その数が減ったのは明らかで
打ち合わせを終えた私たちは、なんだか自然と無口になった。

この地域を支える、そして日本を支える一大産業、自動車業界の厳しい現実を
ひしひしと肌で感じたからだ。

でも自分は、業務改善を提案する営業だもの。
たとえ今すぐ自社のお金にならなくても、
お客様の今の課題を聞きに行きたい。

バスに揺られること数十分、田圃の向こうに、
巨大な工場が見えてきた。
その工場を取り囲むように点在するサプライヤーの町工場も
心なしか、いつもよりも静かである。

工場の入り口で入場手続きを済ませる。
入場許可を得るために自分の会社名や訪ね先を書く用紙が
前回来たときの半分のサイズになっていた。
応接スペースの電球も、人がいないところは容赦なく消灯されているので、
フロア自体がぼんやりと暗い。

「いやあ、お金にもならないのに、わざわざ来てもらちゃって、すいませんね」
久し振りにお会いしたご担当者様は、
朗らかにそうお話された後に
「御社は金の切れ目は縁の切れ目かと思っていましたよ」と言って
いたずらっぽく笑った。
私以外の弊社の人間は「またまたそんなお戯れを」程度に
流していたが、私は自社内での評判も聞いていたので、
お客様のその言葉は、あながち冗談ではないのではないかと考え、焦った。

今回は発注・受注をかけたプレゼンをするわけではないので
アポはこちらの予定通り、終始なごやかに進んだ。
「生産調整される中、皆さまどうされていますか?」とか、
「完成車メーカーさんからの発注動向はどうですか?」なんて質問を投げながら、
今、お客様が何に困っているのかをヒアリングする。
その時点で参考になるような情報を我々が持っていればご提供し、
難しくてもお手伝いできる可能性がある情報は宿題として持ち帰る。

発注・受注が成立しない限り、
目に見える成果をすぐに挙げるのは難しい。
だから、この会話のためにお客様の時間をいただくのが心苦しかったのだが、
アポの後、お客様は「私としても課題を整理出来て良かったです」と
優しい言葉を下さった。
営業としては、あとは今日お預かりした宿題を
出来る限り社内で検討し、お客様に返答する事が今日の成果だ。

帰り際、繁忙期には毎日のようにお電話で会話し、
進捗報告以外の事もお話していたお客様は
相変わらず営業部にいる私にこう言った。
「早くお嫁にいって子供つくらんといかんがね」

これはセクハラでもなんでもない。
なんというか、メーカーのお客様からの親しみの証だ。
そしてそれは、自分にとってもリアルな危機感でもあるので
私は深く頷いて笑った。

帰り道も、工場からバスに乗った。
私のすぐ後ろに乗り込んだその会社の社員方は
駅に着く間中、ずっと、社バスのエンジンについて
語り合っていた。それから、前の週末に、東京ディズニーランドに
遊びに行くために乗った長距離バスの性能について。
彼らの話は技術的な見解の違いを巡って
途中からどんどんヒートアップしていったのだが
私はその会話に、以前、この会社のエンジニアに話を聞いた時に
感じたクルマづくりに対する情熱と同じものを感じた。

こんなに真剣に、四六時中、より良いモノづくりについて
想いをめぐらす人たちがいる。
この人たちの珠玉の技術が、私たちの生活を変えていく。

ここまでひたすら誠実に成長してきたこの産業が、
一時期の金融不安で今以上の打撃を受けないように。
どうか日本がこの基幹産業を、守りぬいていけますように。
田圃道をひた走るバスの中で、改めて強く祈るとともに
この顧客に対して自分ができるほんの小さな改善に
全力を尽くさなければ、と強く思った。

2009/03/25 09:53 | OL(営業)所感 | No Comments

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