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2009/02/27

東京から名古屋まで、新幹線「こだま」でいくことになった。
途中で浜松に下車するためである。

名古屋・浜松とも、お客様の工場がある。
せっかく東海地方に行くのなら、どちらにもご挨拶すべきだ、という上司の方針によるものだ。
ただ、帰り道だけは「のぞみ」で帰ることを許された。
夜の21時から東京で会議があるためだ。

少し前までは宿泊すら許されていた地方出張も
不景気→経費削減の波に押されてすっかり肩身が狭くなった。
心なしか、新幹線もいつもより空いている気がする。

ところで、ある営業職の女の子(友人)は、
キャリーケースに書類を積め込み、ゴロゴロとひっぱりながら
新幹線の駅に立つとき、働く日常の中で最も孤独を感じるそうだ。
まるで「おまえは一人で生きていけるでしょ」と誰かに言われているような、
本当は全然そんなんじゃなくても、「一人でできるもん」と
意地を張らなくちゃいけないような、そんな気持ちになるらしい。

・・・・・。

その気持ち、わかる気がする。
東海道新幹線の孤独。
それは働く女子の孤独だったり、単身赴任のお父さんたちの孤独だったり、
東京での商談がうまくいかなかったビジネスマンの孤独であったり
色々だと思うのだけど、東海道新幹線にはいつも、独特の空気が漂っている。

さて、そんな感傷を抱えつつ、久し振りの名古屋出張である。
大好きな名古屋に行けるという個人的な盛り上がりも手伝って
名古屋支社の同期に電話をかけた。

「久しぶりに名古屋出張行くよーん。」 「え、お前が来るってことは何か案件動くんだな!?」
「いや、特にないんだけど、営業だからさ」
「えー、そんなわけないでしょー。東京のお前らの部署が金のないとこに
動くわけないじゃん」
「え・・・ウチって社内でも、そこまで感じ悪く思われてたの!?」
「いや、さちこはさー、ほら、地方支店出身だから泥臭いイメージあるけど
(←これもまた別の意味で失礼だと思うが)部署全体としてはけっこう
ツンとしてる感じじゃん?お前らが動くってことは、何か金になる話がある、
そう思われても仕方ないでしょ」

なんだか、切ない話である。
確かに部署の売上高は多い。でも、その売上高の影には、悲しくなるほどに地味な
労働が隠されているというのに、、、。
「まあまあ、何はともあれ、さちこが来るのは歓迎するよ。またベタに山ちゃんの手羽先食いに行く?」
名古屋発の手羽先居酒屋チェーン店「山ちゃん」は関東にも支店を持つ有名店だ。
出張にいく度によく通っていたのだが、私は名古屋の同期のように手羽先を美しく食べることが出来ない。
彼らは本当にスムーズに、つるり、というように肉を骨から引き剥がして食べる。
「今回はすぐ東京帰るから山ちゃんはムリだけど、コメダ珈琲くらいには御一緒できるわ」
コメダ珈琲・スギ薬局・矢場トン・味噌煮込みうどん。
この2年間で、散々名古屋に通う内に、すっかり名古屋ブランドに詳しくなった。
その蜜月も、この不景気でふっとんでしまったわけなのだが・・。

今回伺う顧客のところにも、
最盛期には、現場でのヒアリングが立て込んで、3日間、駅前のホテルに泊まりこんだ。
アポ前日、22時に東京駅発の新幹線に飛び乗ると
ちゃんと25時には名古屋の工場近くの駅まで辿り着き、
「ヒトって移動できるもんだな」と感動した事を覚えている。
ただ、その時はさすがに精神的に余裕がなくて、
翌日の朝起きられるかどうか自信がなかった。
7時にはホテルを出て駅前に向かい、協力会社の営業マンと、
自社の名古屋支社の社員と合流し、打ち合わせをしなくちゃならない。
いま眠って、朝、きちんと起きられるのか。

スーツで、夜中にゴロゴロを引きずって辿り着いたビジネスホテルの3階で
自販機のビールを買ってしまったこの夜を、私は一生忘れられないと思う。
あの、廊下に輝く薄ら寂しい自動販売機の蛍光灯、
缶が落ちてくるゴトンっという重たい音。
「ああ、ついにやってしまったね」と思いつつ、「アサヒスーパードライ」の
やけに男前なパッケージを一瞥してゴクゴクのんだ。
味よりも、このアルコールで脳が覚醒し、明日の朝、早く起きれる事が大事。

翌日は5時過ぎに目が覚めた。
念には念を入れてカーテンを開けたまま眠ったのだが、
ベッドから起き上がってみると、
質素な部屋についている大きな窓から、とてつもなく大きな朝日が見えた。
燃えるように輝く朝日が、窓から見えるたくさんの工場を照らしている。
生命力にあふれた光が、工場地帯の無機質な光景を、橙色に染めていた。

その一瞬の大きな朝日を見たことで、
夜中の寂しさも当日のアポへの不安もふっとんだ。
こんなに大きくて暖かな朝日に毎朝のように祝福されているのなら、
なんだって頑張れるような気がした。

そんな気がした社会人3年目。
08年上半期、まだ、景気がこんな事態に陥っていなかった頃の話である。

こうして身も心も顧客につぎ込んでいた頃と、今と、
営業としての想いが大きく変わったかと問われれば、決してそんなことはない。
でも、会社対会社の取引が成立していない以上、
どう関わっていけるものなのかが分からなかった。

でも、今回も名古屋まで来てしまった。
うまく伝わらない、利益にならない、助けにならない、その他諸々・・・
懸念はあるが、ここまで来たら行くしかない。
顧客との様々な思い出を噛みしめながら、工場の最寄駅前にて社バスを待つ。

*社バス・・・工場と駅を結んでいる企業保有のバス。通勤時間以外は
1時間に1本程度運行している
(以前はこれを待つ事もせず駅からタクシーで営業に行っていた・・・)

次回は、、営業活動(現場編)をお伝えします。。

2009/02/18

私の会社は、壁に営業マンの成績が棒グラフになって貼ってあるような、
非常に解りやすい営業会社である。

だから通常、効率よく「売った」ヒトが何をおいても一番偉い。
そして私が所属する部署は、全社的に見ても「売る」ヒトが多い
狩猟民族系営業部である。

しかし、最近、会社のとても偉いヒトが、営業部に来てこういった。
「おまえらの営業は、効率が良すぎてつまんねー。」

「課題ヒアリングして解決案いくつか提示して見積もり出して
談笑しながら次の商売のタネだけ拾ってくるんじゃねーよ。
つまんねーっ。おまえらみたいな薄くて冷たい関係じゃあ、
不景気で辛い時にお客様は離れていくゾ。」

この勢いの良いツッコミにより、自分らは「売れている」(=イケてる)と
思い込んでいた営業部に激震が走った。
サラリーマン組織におけるこういう偉いヒトの発言は、
時にバカバカしいほどの影響力を発揮する。
通常、あまのじゃく気味な私は「フン」程度にかわしているが
今回の場合、私はこの発言に心の底から共感を覚えた。

そうだ。東京の営業は、薄いのだ!

それが都会のやり方なのかもしれない。
もちろん、こうして薄いからこそ居心地が良いのかもしれない。
かつて地方の営業所にいたころに、その濃密な営業先との関係に
辟易していた事を今さら美化するつもりもない。

でも、薄い。薄すぎる・・・!

私も上司に「お前は顧客と話している時間が長すぎる」と
いつも怒られているうちに効率だけを重視した
コミュニケーションを心がけるようになっていた。
もちろんその方がお客様も便利だったろうとは思うのだが。
しかし、営業としてはどうだったんだ。この薄さ志向。
そんな薄い奴に、この不景気下のシンドさをお客様は告白するか?

たぶんしない。だって信用できないもん。

私の仕事は、ある業務分野の改善策などを提案するコトだ。
しかしこの不況下、社内改革のアウトソーシング費が削られると
すっかりオーダーが来なくなった。
営業部のオフィスにいても、お客様からの電話はほとんど鳴らず
ビルの外を吹き荒れる風の音さえ聞こえてくる。
半年前までは、うんざりするほどに電話が鳴りっぱなしだったというのに・・。
そして、顧客の経営状況も大変なのが目に見えるので、
こちらから連絡も取り辛い。

先方も電話口で「ごめんなさいね、本当に、お願いできる仕事もなくて。。」と
繰り返されるので、こちらも恐縮してしまう。
しかし、こうしていては、何も話が進まない。

嫌われたくないから顧客に踏み込めない、という残念な習性をもつ私は
弱りきって大阪支社の先輩に電話をかけた。

「おう!さちこ!どや、東京は!」
「瀕死です~。」
「お!そうか!こっちもな、も~息するのもシンドイわ!」

息するのもシンドイ・・。おお、大阪の現場はいかに!?

「でもな、俺らはそんでもお客さんとこ行ってんで。
いつも行って話してるから、お客さんがいかに大変な状況だって事わかるしなー。
バカ話もたくさんしながら、次、いい波が来たら、
一緒に乗ってきましょーねーって話してるわー」

おお!まさしく、理想はこれだ!
やっぱ、営業はハートなんじゃないか!?
大阪で学んだ営業ってやつは、コレだったんじゃないか。

「なんか話聞いてると、さちこもすっかり東京人ぶってて全然おもんないなあ。
おまえ今、お客さんとこ行って話したくないん?」

最近の悩みを先輩に相談したら、そう返された。
*「おもんない」=創意工夫が感じられない様子。だから、面白くない。

この言葉を言われてしまっては、はっきり言ってオワリである。
ほんと、営業として存在している価値がない。

不景気だから売れなくても仕方ないと心のどこかで思ってた。
しかし!違うんじゃないか!?何かやりようがあるんじゃないのか!

突如前のめりになった営業マインドを胸に秘めつつ、
思い切って名古屋の某メーカーにアポをとった。
人口減少量はなはだしい東海地方、ものづくりの現場へ、
ニーズはなくとも突撃アポ!

「え、名古屋行きたいの?・・高速バスでいけば?」

突然経費に厳しくなった上司に新幹線のチケットを懇願しつつ、
次回は久しぶりの名古屋上陸についてお伝えします!