« | Home | »

2013/01/04

こんにちは。タモンです。

新年始めのジャンクステージの記事ですが、タモンは去年の大河ドラマ「平清盛」についての感想を書こうと思います。タイトルにあるように、「大河ドラマ「平清盛」はなぜ視聴率が悪かったのか?ちょっとだけ真面目に考えてみ」たいのです。

だって納得できないんです。大河ドラマ○○や○○や○などよりも平清盛の視聴率が低い理由が。大河ドラマを見ていて、作り手側の熱意やチャレンジ精神を随所に感じましたし、俳優陣の演技にも引き込まれるものがありました。そりゃあ、内容を突っ込もうと思えば突っ込みどころは満載ですよ。でも、そんなこといったら↑の方がよっぽど……と訴えたい。

なので、だいたい不真面目に、ちょっとだけ真面目に、平清盛の視聴率が悪くなってしまった理由をつらつら挙げてみようと考えました。

 

◆ タブーに挑戦したから

まず思いつくのがこれ!作り手のチャレンジ精神が裏目にでて、視聴率が悪くなったとタモンは考えています。昨日テレビ番組で、コメンテーターが「制作が目指したクオリティが高すぎた」ことを指摘していました(正確な引用ではないけど、発言の主旨はあっていると思う)。「画面が汚い」発言が注目を集めましたけど…。『源氏物語』の映画を見過ぎなんじゃないの。制作者の目指した高みに視聴者がついていけなかった典型といえると思います。タモンは彼らにめげてほしくない!

ここでいうタブーとは主に天皇家に関するもの。

前半のクライマックスは保元の乱・平治の乱でした。

前半の主な天皇家の人間模様として、

①白河上皇が孫・鳥羽天皇の妻と関係をもち、崇徳天皇が生まれる。

②息子・崇徳天皇(ホントは甥)と父・鳥羽上皇(ホントは叔父)が戦を起こす。

③後白河法皇はエキセントリックなアダルトチルドレン。明治時代風だと高等遊民、現代風だとニートなオタク。

などが描かれました。③は知らないけど、①と②はほぼ確実な事実と捉えられています。でも、中学高校の歴史・古典の授業で習っている人はあまり多くはないんじゃなかろうか。視聴者の基本的知識があまりない時代だったということもやはり大きかったと思うんだよなあ。

めちゃくちゃな家族関係に加えて、美福門院の野心や西行の恋心などが絡んでくるわけです。これら①~③の要素を今回のように描いたものって、これまであったでしょうか。少なくとも、ここ12、3年は院政期を扱ったことがないと思います。とくに①と②について、天皇家のこのような家族関係を描くこと自体に生理的嫌悪をおぼえた人がいたのではないか、と推測しています。生理的嫌悪って理屈じゃないから。天皇家の人間が少し踏みこんだ発言をしただけでマスコミが大騒動するのが現在の風潮ですよ。肉親同士が骨肉の争いをする展開に面食らった人も多かったのではないか、と。で、皇子を③の感じに描くのも新しかったのでは?と思います。タモンの師匠の話だと、後白河法皇の芸能好きを描いた大河ドラマは初めてだ、ということでしたが、ホントですか?(半信半疑)。ホントにそうだったら、この描き方が、戦後の歴史学・日本文学の研究の成果が反映された好例になると思います。

 

◆ 制作者側の視聴者層のターゲットと、実際の視聴者層が食い違っていたのでは……

タモンは大河ドラマの視聴者層は中高年だと思っています(去年、タモンは中年層に片足を入れました。両足入れたとは考えたくない。嗚呼)。そのなかでも中高年の保守層が視聴者として大河を支えていると勘ぐっています。そうすると作り手のチャレンジ精神があだとなってしまうわけですよ。大河のメインの視聴者層が10代~20代だったならば、もっと視聴率が高かったはずだと思えてなりません。とくに若年層の歴女ね。

放映前から特定の集団から抗議がきていたようですが、「王家」の表現がクローズアップされ多くの視聴者が知るところになったのは、イヤなことには関わりたくない(思考停止したい)空気が広まった結果だと思います。

若い視聴者に大河ドラマを見るための1つ提案をしたいです。それは、教科書みたいな大河ドラマを作ってみるということ。最近の大河ドラマは中高年層よりも若年層をターゲットにしているような感じがします。違うかなぁ。その狙いがはずれている感じがしちゃうんですよね。これは研究者Nがいっていたことの受け売りなのですが、若い俳優を主人公に登用したり、「親しみやすさ」や「面白い」ドラマ作りをしたりして若年層にアピールするよりも、受験に役立つをスローガンに作れば多くの中高生が見るようになると思うんだけどなあ。勉学においてもギブアンドテイクの理屈が浸透した世代には、「これは自分の役に立つ」と思わせることが大事だと思うのですが……。どうでしょうね。

タモンの周りも、様々なツッコミがなされました。あーじゃない、こーじゃない、という文句がいっぱい聞かれました。でもこれ、期待値の裏返しだったと思います。戦国時代のドラマでこんなに話題になることなんてないもんな。全部スルーです。一回、「平清盛」のクオリティで教科書みたいな大河ドラマ(=ドラマとしてはめちゃくちゃつまらないけど、受験生の役に立つドラマ)を作ったらどんなものができるか面白そう。NHKしかできないよ。

 

◆ つぶやいておきたいな、男色について

タブーといえないけど男色かなぁ…。大河ドラマを見る中高年層は藤原頼長の男色をどのように感じたか、だな。まあ、ちょっとしか描かれてなかったので、これを拡大解釈するわけにもいかないけど。ただ、頼長の人となりを表現するために男色を描くことが必要不可欠な要素と思うのですが、今までの大河ドラマで頼長の男色を描いたことってあるんですかね。一般視聴者にとって頼長の男色をどのように感じたのかは気になるところ。これも何となくイヤと感じる人は感じると思うんですよ。まあ、欧米に比べて少ないとは思いますが。中世を勉強していたら、あの時代に武士同士だけでなく、貴族同士の男色も当たり前だったって知っているけど、藤原頼長が平家盛を押し倒した場面を見て驚いた人も多かったのでは。放映前にもっと腐女子にアピールしていれば……!!(笑)あ、頼長は木曽義仲の父義賢と男色関係を結んでもいる(彼の日記『台記』に記述あり)。

 

◆ 平清盛について、視聴者が共有する「物語」がなかったから

『平家物語』以降、平清盛は悪役として文芸に描かれ続けました。中学・高校の古典か日本史の授業で『平家物語』「祇王・仏御前」のエピソード、「あっち死」の死に様など、を習った人が多いと思います。また、浄瑠璃・歌舞伎では清盛が悪役、重盛が善役と役割が一貫しています。なお、「判官びいき」の慣用句通りに源義経は時代を超えて人気を集めましたが、彼を殺した源頼朝も文芸の世界で人気がありません。

一般的に、平清盛のイメージは、武士ではじめて太政大臣になった人物、驕れる平家の象徴、といった知識でしょう。しかし、坂本龍馬や織田信長などがなした、いわゆる日本人が好きそうな「物語」が平清盛にはない。大河ドラマ以前、鎌倉時代以降、数百年にわたって定着し続けた平清盛=悪役というできあがった知識しか私たちは共有していなかったのでした。

そもそも平清盛に愛着を感じている人があまりいなかったということですね。愛着を感じる以前に悪役だったんですもんね。

平清盛を主人公にした小説がベストセラーになっていて、それをドラマ化という流れだったら、ちょっとは違っていたと思うんです。

あ。『平家物語』で平清盛が一番好きという友人R(アメリカ人)を知っています。この人の発言を一般化はできない(笑)

 

◆ 平清盛の出生の設定について

これも受け売り。ドラマのなかで清盛は忠盛の意志を継ぎ「武士の世をつくる」といっていますよね。

でも、清盛は白河上皇の息子という設定でした。天皇の血筋の人間が武士として貴族の世に立身出世していくことは、根本的な世の中の仕組みを変えることにはならないのではないか、とも考えられるわけです。清盛は、孫の妻と関係を持った白河上皇の息子というわけですから、大きな意味で天皇家のドロドロした人間模様のひとつにしかすぎない側面もある。それだと、庶民の共感が得にくいとも思うわけです。豊臣秀吉みたいに「わかりやすい立身出世譚」にしたほうがよかったんじゃないですかね。つまり、清盛を忠盛の実の息子にしたほうが、よっぽど清盛の出世譚に視聴者は素直な喝采をおくれたはず。

最終回間近で、清盛の出世・平家一門の栄華は白河上皇への「復讐」だったのだ、という台詞がありましたね。一年間のドラマの裏テーマが「復讐」。ねじれたルサンチマンがテーマにあったわけです。「ちりとてちん」でも思ったけど、この脚本家は自分で作った設定を自分で壊したくなる破壊衝動を持った人なんだろうか。主人公が最後の方で落語家やめて「みんなのお母ちゃんになりたい」っていう台詞は私をたまげさせた。母にいたっては「私の40年間はなんだったんだ」とつぶやいた。高齢者の元キャリアウーマンは、若い世代の脚本家(たぶん。藤本有紀の年齢がわからないが、60歳を過ぎていることはないだろう)がこの台詞をヒロインに言わせたことがだいぶショックだったようだ。タモンとしては、この脚本家は「人は時とともに変わる」ことを冷徹に見つめている人なんじゃないかと睨んでいる。もっとルサンチマンを前面に押し出したテーマのドラマを見てみたいなーー。

 

以上、思いつくままに挙げてみました。

2013年の大河ドラマは「八重の桜」。綾瀬はるかが好きなので、第一回目を見ようと思います。絶対、絶対、クオリティを下げてほしくない!したたかに丹念に作り続けてほしい!綾瀬はるかの可愛さと天然ボケをめくらましにして、明治政府に冷遇され続けた会津藩の絶望的な苦労とか、明治時代の黒歴史を(さりげなく)描いてほしい(笑)!!「両性の平等」が憲法に記されておらず、女性が差別されるのが当たり前だった時代背景のうえで、ハンサムウーマンと呼ばれるまでに闘う女となった八重の人柄とかさーー。まあ、もう脚本はできあがっちゃっているとは思うのですが、期待しています!!

2013/01/04 05:02 | タモン(中世文学担当) | No Comments

Trackback URL
Comment & Trackback
Comments are closed.
No comments.