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2010/02/22

BARを長い期間やっていると懐かしい顔に再会することが間々ある。数年ぶりに見るその笑顔は全く変わってなく、しばし思い出話に花が咲いたりもする。会わないでいたその間にあった笑えることも苦しかったエピソードも酒のつまみには最高なものだ。もちろん久しぶりの再会を喜ぶその気持ちが一番にあるのだが、当然ながらその懐かしい顔の主は会って数時間後にはまた556を出ていき、元の生活に戻ることになる。いつになく盛り上がったその高揚感はその激しさの分寂しさをより深くさせるもの。…なんて感傷的な文章を書いてしまいましたが、まんざら偽りな気持ちではなく、再会したその懐かしい友の変わっているその状況が羨ましく思うことがあるのだ。私のお店556は今11年目に入ってますが、1999年8月27日のオープンから日曜、祭日、年末年始、急用での臨時休業を除くおよそ3100日余りを、わずか20㎡の狭い箱の中で暗証番号を押して入って来るお客さまをお迎えし続けてきました。オープンした1999年と2010年、オーナーバーテンダーという肩書が変わることもなく、変わったことといえば少しだけ髪の密度が減ったくらいだろう。なのに久しぶりに訪ねてきた懐かしい顔の主は、数年前のちょっと荒削りな社会人一年生の姿から成長し若い社員を指導する管理職になっていたりする。しっかりと確実にその地位を上げ任される仕事の重要度も規模も大きくなっている。そんな晴れ晴れとした懐かしい友の姿を見ていると、一か所に留まっている自分がものすごく守りに入っている感じでほんの少しだけ焦燥感を抱くことがある。しかし逆にその友は『自分の城があっていいですよね』と私を羨む言葉を口にしたりする。どっちがいいのかってことは答えがないんでしょうね。

2010/02/09

「ここだけの話なんだけど…」という前置きをして話を始めることはよくある。「俺は人のことなんて興味がない」とか「私は噂話は嫌いなの」と言い張る人でさえも、本心では気になっているもの…たぶん。喋る方も秘密を持っていることのなんとなくの快感とそれを喋りたい欲求との狭間で揺れている。そんな状況で仲の良い友人らと酒を飲みテンションが少々高めになるとついつい箍が外れて「ココだけの話なんだけど…」と喋りたい欲求が勝ってしまうものである。聞く側にとっても『ココだけ』という特別感がより興味をそそる。そんな『ココだけ』の話が六本木のBARには溢れている。

さてそんな秘密の話はだいたいが声を潜めてお話をするものなのだが案外バーテンダーは耳がいいんです。バーテンダーというのは仕事柄、他のことをしていてもお客様の小さな動きに結構敏感になるもので、たとえば飲み物が無くなりそうなお客様が次のオーダーを考えている時「次はコレを飲もうかな…」なんて呟いているその言葉だけが喧騒の中耳に届いたりするのです。 その技術(?)を使うともなく使ってしまうのが、奥の席あたりで『ココだけ』の話をしている時なんです。まーだいたいがココだけの話とはいえそうそう驚く程の内容ではないのだが、時々…ほんと時々びっくりするお話が聞こえてきたりするんです。

あの時もそうでした…。

「ココだけの話なんですけどね…実は…」

いけないいけない、私がココだけの話をココでしてしまったらとんでもなくココだけでなくなってしまいます。…よかった欲望に負けなくて。やっぱお酒飲んでないと冷静な判断力が残っているものですね。

それにしてもBARというのはいろんな大人が集う場所であり、興味深い楽しい話が飛び交っている。何かを生み出す、新しい価値観を見出す場所としてはとても面白い場所だと思います。きっと今日もまた『ココだけの話』が私の耳に飛び込んでくるのでしょう。そして私はその『ココだけの話』をココだけにできるのだろうか…。