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怖い話です。一番怖いのはエンディング。当然ではありますが、エンディングが怖い。なぜ怖いかと言うと、ネタバレを避けて言うのは難しいのですが、無理やり言うと「地獄の入り口は生き地獄」という事でしょうか。少なくとも凡人の僕は「あれは生き地獄だ」と思ってしまいます。
主人公アリスン(クリスティナ・レインズ)はニューヨークで活動するモデル。カメラマンはジェフ・ゴールドブラム(当時はまだ新人)。恋人はクリス・サランドン(スーザン・サランドンの元夫)。親友はデボラ・ラフィン。アリスンにアパートを斡旋するのはエバ・ガードナー。上の部屋に住んでいる神父がジョン・キャラダイン。教会関係者は他にアーサー・ケネディとホセ・ファーラー。警察関係者はイーライ・ウォラックにクリストファー・ウォーケン。お茶目な老人役にバージェス・メレディス。ボケをかます老教授役がマーティン・バルサム。最後に2つくらいセリフを言うのがトム・ベレンジャー。
聞き覚え、見覚えのある名前がズラリと並ぶオールスター・キャストのオカルト大作です。かなりギョッとする場面も多いのですが、途中の怖い場面もギョッとする場面も蹴散らす怖さは(くどいですが)エンディングにあります。なぜ彼女はその立場になったのか…。
「彼女が罪深いのなら、罪深くない人って誰なんだよ!」と叫びたくなります。「罪深いのは、あんただろ!」と叫びたくもなります。
この作品、翻訳していて困った事が何点かありました。まず「黒と白の猫 黒と白のケーキ」というセリフが3回ほど出てくるのですが意味不明。原作も手に入れて確認しましたが、そこにも手がかりなし…。なぜ老教授を演じるマーティン・バルサムがボケをかますのか。謎。お茶目なカモノハシ野郎は何が悪かったのか?謎。さらに教会関係の人も、「あんたどっちの立場なんだい?」と聞きたくなる部分があって…。
幸い、こうした謎があっても作品自体は楽しめるのですが、正直言ってストーリー的には消化不良ではあります。
それでも、この作品には70年代のニューヨークの空気が詰まっていて、それだけでも僕には魅力十分です。音楽もいい感じです。さらに徐々に憔悴していくアリスン。こんなに主人公が、ずっと顔色が悪い話もめずらしいのではないかと思います。(ジャケットの彼女も、だいぶ具合が悪そうです。)
暗い話だし、救いはないし、イヤになりますが、でも何か魅力がある…。歯切れの悪い言い方ばかりになるのは、ネタバレしない方がいいかな、という配慮なのですが、異端を悪とする者こそ、真の悪ではないか。と、考えさせられる話です。
なんか、こう、好きか嫌いか、と聞かれれば、好きです。でも、ギョッとするのが苦手な人には勧められないし、ホラーが好きな人は、ぜひこういう作品も見るといいのではないですか。と言えて…。
とにかく70年代のニューヨークの空気に触れたいと思う人に勧めたい作品だけど、怖いし…。
とにかく監督が描きたかったのはキワモノ的な部分ではなく、「真の恐怖とは何か」だと思います。興味があったら見てみて下さい。