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久しぶりの更新です。「スタークラッシュ 超・特別版」Blu-ray。
なんと「ゆるい映画劇場0012」に続いてキャロライン・マンロー姐の連続主演(!)
一点豪華ではなく、十点豪華のイタリアの大作です。
2016年2月26日に発売されたソフトですが、同日、沖縄県那覇市の桜坂劇場で特別上映を行ないました。
「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人にはお勧めできない本作。上映前にネタバレ、矛盾点、破綻ぶりなどを分かりやすく説明して、皆でクスクス笑いしながら見ました。「あ、周囲の席の人も同じところでクスクスしてる」を感じながら、この壮大な宇宙空間を堪能したのでした。こういう作品こそ、映画館という空間でのんびり楽しむべきものだと実感しましたが、1978年の完成以来、日本の劇場では一度も上映された事がなく、この日も1回限りの上映で、我ながらとても貴重な体験になりました。(この特別上映は「ガチバーン映画祭(まつり)」という、毎月1本、レアな作品を桜坂劇場で2年間上映するという企画の1本目。2本目は3/25-3/27の「スウィート・スウィートバック」。3本目は4/29-5/6で「ワイルド・ギース」を上映します。)
さて、いよいよ本題のブルーレイ盤。このソフトの楽しみ方を説明しましょう。「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人には、お勧めできない楽しみ方ですが、(1)何も知らずにメインコンテンツ(アメリカ公開版本編92分)を見る。(2)そのままオリジナル版本編97分を最初の30分見る。(3)そのまま思わず97分版を最後まで見る。(4)監督のインタビューを40分くらい見る。(5)特撮担当者のプロモ映像(のようなもの)を25分くらい見る。(6)音声解説1を聞きながら92分版を見る。(7)音声解説2を聞きながら92分版を見る。(8)キャロライン・マンローのインタビューを75分くらい見る。(9)撮影当時に撮られた8ミリフィルムのホームムービーを20分くらい見る。(10)残りの特典を色々見る。
面倒臭そうですね…。休みなく見てもだいたい9時間(もっとか…)。でも、このソフトを手にしたら、(1)と(2)までは、騙されたと思ってやってみて下さい。(1)と(2)なら2時間で済みます。(1)と(2)を見ると、あら不思議。たぶん(3)まで自然に行きます。(3)まで自然に行けば…。という事です。これは噛めば噛むほど何とやらという味わい深い作品なのです。
冒頭に書いた「十点豪華」は、まず音楽。007の有名なテーマ曲の生みの親ジョ・バリーです。ワクワクします。作品の中の宇宙空間は(フルカラーで色んな色の星が輝き、安っぽく見えますが)、高さ15メートル、幅30メートルにもなる黒い壁に豆電球を仕込んだもの。それもイタリアの有名なスタジオ、チネチッタのサウンドステージに作られたもので、低予算のB級映画なら到底実現不可能な規模での撮影でした。主人公の女宇宙海賊ステラ・スターに襲いかかる穴居人は唐突に飛びかかる描写ばかりで、本編の映像では、彼らが3メートルもジャンプしているなど、本当に体を張ったプロのスタントを見せているのが伝わりませんが、穴居人役の彼らは一流のスタントマンばかり。皇帝の旗艦は後半の浮遊都市と同じくらい安っぽく見えますが、まだ予算があったので細かく作り込まれていて、大きさも軽トラックの荷台に収まるかどうかくらいありました。浮遊都市は残念ながら実際に安っぽい作りだったようですが、それも軽トラックの荷台に近い大きさがありました。そもそも浮遊都市というのが、あまり都市に見えないという問題もありますが…。皇帝役は「サウンド・オブ・ミュージック」の大佐クリストファー・プラマー(「スタートレック」でクリンゴンを演じる前)。「ナイトライダー」でブレイクする事になるデヴィッド・ハッセルホフも出ています。ストップモーション撮影も多く……。こうした「壮大」な要素が、なぜか画面からあまり伝わってこないという、これはすごい作品です。製作は十点豪華でやっていたのに「トンデモB級映画」と言われる仕上がりっぷり。ひどい時には「低予算のトンデモB級映画」呼ばわりです。確かに脚本も二転三転し、92分版、97分版どころか、削除シーンもたくさんあり、そもそも「スタークラッシュ」というタイトルは途中でプロデューサーが言い出したもので、それに合わせてエンディングを変えたとか、イタリア語版では穏やかな性格だったキャラAが英語版制作時にカウボーイか保安官みたいなキャラになってっいったり…。
1回見たら十分の作品とはワケが違います。「1回見たら、また見たくなるけど、しばらく後でいいや」という作品とも違います。オチが分かってしまうと緊張感が無くなって2回目以降は1回目ほど楽しめない、なんてありません。元からそれほど緊張感がありません。でも、ワクワク感は減りません。間違ってリピート再生して惰性で「ながら見」をしても、クスクス笑いのポイントは不動です。(1)と(2)をクリアした人は、最後まで見たくなる可能性が高いです。このソフト1本で週末どころか3連休いけるかもしれません。これで4,968円。
「映画は娯楽の王様」と言われた時代がありました。こういう作品を見ていると、しみじみとそれを実感できる気がします。