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このタイトル、発売日を思い違いしていました。昨日、すでに発売になりました!本当に思い入れの強い作品です。子供達のやり場のない怒りが爆発してしまう実話を基にした作品ですが、解説はリンクを辿って見てもらうとして、とにかくお勧めの1本です。(DVDに封入されている解説文も僕が書きました。)
という事で、ここではストーリーでも解説でもなく、字幕について書いておきます。こだわったのは2箇所。1箇所は小さなネタバレになってしまい書けないので、1つだけ書きます。物語の中盤での主人公の少年カールと、彼が想いを寄せる少女コーリーとの会話です。
初稿では:
Cory: Hey, what happened to you?
コーリー:その顔は?
Carl: Nothing
カール:別に
Cory: I thought maybe Mark messed you up after the party
コーリー:マークかと思ったら
違うの?
としました。
マークというのは不良の上級生です。この会話の前段として子供達だけのパーティがあり、そこでコーリーとマークがソファでキスをしているという描写がありました。それを目撃したカールは「自分を大切にしろよ」とコーリーに忠告します。コーリーは麻薬をやっているようだし、かなり悪い友達が多いようです。一方、主人公カールはマークに目をつけられていて、このパーティの後に公園でマークに待ち伏せされ、手痛く暴行されて顔にアザができてしまいます。
それでこの会話になります。顔のアザを見て「その顔は?」と言うコーリーに「別に」とカールが答えると、コーリーは「maybe」をつけて「thought」するわけです。要するに断定的に「マークにやられたのね?」とは言いません。コーリーがキス以上にマークと親密な仲なのなら、断定的に「マークでしょ?」でも「マークね?」でもいいはずです。でも英語のセリフが、わざわざそうなっていない。そこで少し回りくどいですが「マークかと思ったら 違うの?」にしておきました。
この後、この原稿を見たクライアントからの意見が届きました。
コーリー:マークにひどくやられたのね
といった言い回しではどうかという意見でした。「マークにやられたのね?」「マークでしょ?」「マークね?」系の断定形の言い方です。
そこで、「この会話自体はどれでもいいかもしれないけれど、結局、コーリーはマークの行動を断定する程、マークとは親しくないからmaybeを加えて聞いている。「断定できる」関係ではなく「推測する」関係だというのが分かるセリフになっているわけだから、推測色を濃くしたい」といった説明をしました。
そう説明しつつも考え直して作ったのが:
コーリー:もしかして マーク?
という案です。(これでOKという事になりました。)
この場合、どの案でも間違いというわけでもない感じですが、コーリーとマークの距離感を感じさせる要素は活かせたかなと思います。
この作品に共感してしまう僕としては絶対お勧めの作品です。痛い青春、グローイング・ペインかな…。この作品を見た人は自分の思春期とダブらせて見るようで、「これが言いたかったんだ!」と共感するのでしょう。根強いファンが多い伝説の作品です。傑作でも名作でも佳作でも小品でもなく、魂と共鳴する映画、のような気がします。
くどいですが、お勧めです。