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訳していて使い分けに迷う事の1つが漢数字と算用数字。僕はあまり迷いませんが、その理由を説明しておきましょう。偉そうに言うとバカにされそうですが、昔は字幕翻訳の学校で講師もしていたので、いいでしょう。
一番は一番か1番か。
答えは両方です。では、どういう場合に一番で、どういう場合に1番か。
競馬のレース結果が字幕になっている場合を考えましょう。
1着、2着、3着、4着、5着、6着、7着…。
一着、二着、三着、四着、五着、六着、七着…。
これは字幕の場合、算用数字が合います。
賞金や払戻金は算用数字を使うだろうし、こういう話の場合は算用数字。
まあ、乱暴にまとめてしまうと数字がいっぱい出てくる話の場合は、算用数字を基本にする方がいいという事です。それからよく聞くのが、「数えられる数字は算用数字」という説明です。これは正しいですが、少し乱暴すぎます。その理由を説明します。
漢数字が合うのはどういう場合でしょうか?
「浮気は1回だけですか?」
これは表現として別に問題はありませんし、文脈によって使います。
ただ口語としては基本的に「浮気は一度だけですか?」になると思います。「一度だけの過ち」と「1回だけの過ち」を比べると、「一度だけ」の方が口語的だと思います。この場合の「1」はoneやonceではなくonlyなので、じつは表現に数字が入っているだけで数えるためのものではないからです。
「浮気は一度だけですか?」
「いいえ、何度も」
この場合は数の問題ではなく単数か複数かの問題になり、数えられる数字と見なさなくていいでしょう。
「浮気は一度だけですか?」
「いいえ、5度」
この場合は数えられる数字になりますが、「度」に算用数字が合わないので「回」にします。
「浮気は1回だけですか?」
「いいえ、5回」
この他、一、二、三までは漢字が合う事も多く、「仏の顔も三度まで」とか「四苦八苦」とか「三日坊主」とか「僕の十八番」とか、熟語や慣用句になっている場合も当然漢字がいいでしょう。
では、最初の一番と1番の見分け方に戻ります。
原語が最上級的な表現の場合は、多くの場合「一番」が合います。「最も」にも置き換えられるような表現の場合です。「僕の一番の友達」(「僕の親友」でもよさそうですが)は、「僕の1番の友達」にすると何か変です。もちろん、変なセリフで「僕の2番の友達」や「33番の友達」などが続いて出てくるようなら「1番の友達」もアリでしょう。
基本としては「最も」に置き換えても通じる話なら「一番」を選ぶという事です。「一番昔からの友達」といった場合もです。
では、この↓場合はどう考えればいいでしょう?
「護身のため殴りました」
「一度ではダメで」
「二度目でやっと倒れました」
この場合は数えられます。算用数字もあり得ます。でも「1度」や「2度」は、やはり好きではありません。そこで「1回」「2回」にするのも1つの方法です。
ただし、この場合の「一度」は、じつは「最初」に置き換えようと思えば置き換えられます。「二度目」も同様に「次」に置き換えられる文脈です。こうした話の場合、3回目や4回目もあるかもしれません。その場合は1回、2回でいいと思います。ただ、多くの場合は原語でも「何度も」になるでしょうし、字幕の中で一度や二度でとまるなら、数えられるけど、「最初」「次」と見なして漢数字のままでいいと僕は思います。
これはあくまで僕の考えですし、書ききれていない例外もあるはずですが、字幕翻訳のこうした具体的な考え方はネットに限らず情報が少ないので、何かの参考になるか、建設的な議論に繋がればいいと思います。
変な表現ですが、字幕は眼で聞く文字ですから、字幕として一番(=最も)しっくりくる文字を選びたいと思います。
ちなみに、「これはどう考える?」という質問がある人は気軽にコメントなりメールで連絡して下さい。返事は遅くなるかもしれないけど、他の人が見て一緒に考えても良い事ですし。
蒼空さんへ
本文にも書いたように、「最も」の意味になる最上級的な使い方の場合は漢数字の「一番」がいいでしょうね。他は志願理由の内容次第でしょうが、1つの文章の中に漢数字と算用数字が混在しても問題ないと思います。統一しようとせず、思った通りに書いていって、書き終えた後、文章全体を眺めるようにして、それぞれの数が算用数字と漢数字のどちらがいいか推敲してみるというのはどうでしょうか。
私は今志願理由書を書いています。その際に数字を漢数字で書くべきか算用数字で書くべきか迷っています。どちらで書いた方がいいでしょうか?