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これはある作品で見た字幕です。作品名は伏せますが、状況を説明すると…。
場所は都会の大病院のとあるフロア。不穏な事件が発生しています。この危機と闘う男が呼ばれました。彼に助けを求めた医師がいます。今は事態が悪化し、助けを求めた医師が男に言います。
「あんたの講釈は聞き飽きた。警察を呼ぶ」
「それはマズい。警察が来ると事態はさらに悪化する」
「あんたは頼りにならない」
(A)「俺を雇ったからには協力しろ」
(B)「床の掃除からだ」
「手術室の階だ。患者はいない」
「ならいい」
緊張が高まっているところです。なぜ急に床の掃除をするのでしょうか?
(B)は誤訳です。
(A)と(B)2つのセリフの英語はこうです。
Now, you hired me to do a job, why don’t you run with me?(A)
The first thing you can do is clear this floor.(B)
(B)は「この階を無人にしろ」が正解です。
緊張が高まっているところで観客の頭は「?」になるか、ズッコケるかどっちかですが、この字幕は実在します。(説明のため少しアレンジしてますが。)少し言うと、これは80年代にリリースされたビデオにあった字幕です。翻訳者のクレジットがないので誰の訳なのかも分かりません。おおらかな時代だったわけですね。
クライマックスに突入する直前、思い切り緊張すべき局面でも:
「動力室を整頓しろ」
「床の掃除と患者を避難だ」
なんて言ってます。整頓も掃除も避難も「clear」です。
これで緊張が爆笑に変わります。めでたしめでたし…。
自分だってどんな誤訳をしているか分かったもんじゃないですが(怖)