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2010/10/26

BON JOVI:WHEN WE WERE BEAUTIFUL @IMDB

2010/11/04(木) 22:00-23:30@フジテレビNext
2010/11/12(金) 20:30-21:55

ニューヨークのトライベッカ映画祭で2009年4月にプレミア上映されたドキュメンタリーです(約80分で字幕1000枚弱)。去年の今頃リリースされた彼らの11枚目のオリジナル・アルバム“サ・サークル”のCD+DVD版にも収録されていますが、今回のOA版の字幕は全面的にリマスターしてあります。というか、厳密に言うと発売ソフトの字幕はOA用の字幕をほとんど完成させてから見たので、ゼロから全部訳した字幕になっています。

これを訳していて、僕は改めて彼らの魅力を発見した気がします。彼らは25年以上バンド活動をしています。ジョン・ボン・ジョヴィ(イタリア系)、デヴィッド・ブライアン(ユダヤ系)、リッチー・サンボラ(ポーランド&イタリア系)、ティコ・トーレス(キューバ系)。彼らの絆の強さ。そして「成功」という怪物との闘い方。バンド内でのいざこざもあったようですが、メンバーチェンジ自体は少なく、元メンバーも円満に脱退しています。最近、“ゴッドファーザー”を見直したり、去年は“バラキ”の翻訳をしたせいか、なんだか彼らは素晴らしいファミリーだと感じました。

ここからは字幕の話になりますが、まず発売版の字幕。残念ながらこれは海外産の日本語字幕で、2秒で15文字出てきたり、それが10秒のうちに5枚も出入りしたり、逆に1枚の字幕が10秒近く出っ放しになったり、すごい事になっていました。(とは言っても、全編の字幕がそうであるというわけでもなく、この字幕があるおかげで話は分かるようになっている、くらいにはなっています。)

ちなみに、この発売版のCD+DVDソフトのスリーブの裏面には、こう書かれています。「本ボーナスDVDは、日本語字幕も含め、全てオリジナル・マスターに基づいています。一部、誤表記及び不適切な表現等がございますが、あらかじめご了承下さい。」

難解な文章です。【全てオリジナル・マスターに基づいている】と、なぜ誤表記があるのか?なぜ不適切な表現等があるのか?日本語字幕に対する理解の余りない人が海外で作っているからなのですが、それにしたって【不適切な表現】くらいチェックできるだろ?と思ったり…。

そもそも海外産の日本語字幕がどうして生まれるのか。という事を疑問に思う人も多いでしょう。大手のレーベルやスタジオは世界を1つの市場と捉え、世界共通のマスターを1つ作って、それを各国のパッケージに包んで売る場合があります。日本では12月発売なのにアメリカでは10月発売だったりもします。マスターを1つ作る場合、一番早い発売日に間に合うように全ての「部品」の制作スケジュールが組まれます。制作開始から日本の発売日まで半年あっても、実際の現場では1ヵ月しか作業期間がない場合もあります。

その結果、世界共通のマスターを作っている地域の近辺で日本語字幕をチャチャッと作って、それをそのまま「部品」の1つとして収録する。という流れになっていきます。世界共通のマスターには日本語だけでなく、フランス語、イタリア語、ドイツ語、中国語、タイ語…とかたくさんの言語の字幕が入ります。

この「部品」の1つとしての日本語字幕が作られるプロセスは、おそらく、文字通り「部品」の扱いです。その根拠の1つが、英語のテロップが画面に出ている時の日本語字幕の出し方です。日本で日本語字幕を作る場合は右タテか左タテの字幕を出して、その英語のテロップを避けます。これが技術的にも物理的にも可能なのに、海外産の日本語字幕に「タテ」は少ないです。(僕自身は、見た事がなく、もしかして、実際にないかもしれません。)タテ書きで表記できる言語は少ないので、英語のテロップを避ける出し方として、通常は画面の一番上辺りに字幕を出すのです。要するに日本語字幕は海外での制作の場合、特別扱いされる事なく、タテに出すような加工は行なわれません。「部品」の1つとして他の言語と平等に同列です。

それにしても、「不適切な表現」はチェックできないわけ?と思う人もいるでしょう。制作期間もそれなりにあるだろうし、いくら時間がなくても、それくらいメールでのやり取りでもチェックできるでしょ?と。

1秒で10文字読ませようとする字幕がジャンジャン出てきたり、句読点が普通に入っていたり、どこの国の漢字か分からないような漢字が入っていたり、直さなければならない要素が多すぎて手が回らない事も考えられます。

海外のスタッフが時間切れになるまで原稿を見せず、そのまま収録されてしまう事もあるのかもしれません。

僕の経験と知識から想像できるパターンは、それなりに色々ありますが、いわゆる「普通」の字幕を見慣れている人が見ると違和感を感じる事ばかりの海外産の日本語字幕が多い事は確かです。

問題の1つは、英語からフランス語やドイツ語やイタリア語への翻訳と、日本語への翻訳が同列に扱われている事ですが、日本語字幕を頼りに作品を見る人にとって、これは不幸な事です。

音楽ソフトの場合、いわゆる輸入盤に対して国内盤は歌詞カードや対訳や解説が追加されるものです。字幕も同じレベルで、しっかりしたものが入っていると、買う側は思うでしょう。それが上記のような事情から違和感がありまくる字幕が収録される事があるわけです。(歌詞カード、対訳、解説などは全て紙で、字幕は映像です。)

日本の発売側の人達も、「これではいかん」と思っている人が多いようですが、それでもそのまま出てしまう字幕が多いようです。結局、これは字幕の制作費よりも制作スケジュールの都合が大きく影響している気がしますが、とにかく国内盤を買う日本のユーザーを失望させる結果になる事が多いわけです。

こんな事情をこうして書くと、僕の仕事が減るでしょうが、それでも割高の国内盤を買う日本のユーザーには、知る権利がある事だと思います。そして実際問題として、僕のような自由な立場の人間しか、こういう事は書けないので、書いておきます。

ここで、ボン・ジョヴィの“ザ・サークル~デラックス・エディション~”のスリーブ裏面の文章に戻ります。「本ボーナスDVDは、日本語字幕も含め、全てオリジナル・マスターに基づいています。一部、誤表記及び不適切な表現等がございますが、あらかじめご了承下さい。」これは日本側の関係者の良心だと僕は思います。簡単に直せるような違和感のある日本語が入っていても、それを直す事ができない立場にいるジレンマ。ユーザーから見れば、彼らは同じ発売元の人間です。できる事といえば、「この状況で出すしかなくて申し訳ない」と、購入者に詫びる事だけでしょう。でも、いわゆる「お詫び」や「訂正」を最初から入れて出すと「それなら最初から直せ」と言われるので、それもできず…。という結果の苦肉の策なのではないかと推察します。

日本語というのは本当に特殊な言語です。ルビを付けられる言語は多くありません。無知なのか、僕は他には知りません。ひらがな、カタカナ、漢字、ロ-マを混在させても字幕が成立するという意味でも、他の言語の字幕と比べてはるかに奥深いものがあります。「字幕は文化だ」と言うと大げさでしょうが、日本語字幕には日本語という言語固有の細やかな工夫が凝縮されます。海外で日本語字幕を作る時、他の「部品」よりも丁寧に作る必要があるのだと、海外で日本語字幕を作っている人に認識してもらいたいものです。

「こう言うのは簡単で、実際にそれをやるのは大変なんだ」という反論も聞こえてくる気がします。でも、大変だからと言って黙っていると、いつまでも状況は改善しないから書いちゃいます。

現場でジレンマを抱えている人には、この文章は不愉快かもしれませんが、少しでも突破口を作らないと、「悪貨は良貨を駆逐する」という事になる気がして、僕は不安です。

…また長くなりましたが、ボン・ジョヴィのドキュメンタリー。ファンではない人も、よかったら見て下さい。スターの「人」としての側面を垣間見られる作品です。

2010/10/26 03:34 | 字幕.com, 翻訳作品(音楽) | No Comments

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