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2010/10/19

ビッグヒート 復讐は俺に任せろ (1999年リバイバル時タイトル)

 
bigheatpfp.jpeg @allcinema

↑ 1953年、日本初公開時の劇場用パフレット

The Big Heat (1953) @IMDB

日本初公開は1953年12月だそうです。僕が訳したのは1999年5月頃です。今回は日本初公開当時のパンフレットからの引用を少し。

【解説】
これは、新たにコロムビア映画と契約を結んだ、巨匠フリッツ・ラング監督による“暗黒街もの”の野心大作で、五十三年度製作の最新作である。市井の治安維持に当る警察陣に対して、暴力の群はつねに絶ゆることがない。時には市政を脅かし警察を牛耳る悪徳ボスの存在さえある。この物語は、この最も不逞なる凶悪ギャングの魔手に対し起ち上った一警部の激怒に貫かれた苦悩を描くものである。

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主演【グレン・フォード】
「ギルダ」「カルメン」のグレン・フォードは優男型の二枚目ではないが、その重厚なタイプと着実な演技力で近来ますます好評を得ているスタアである。生まれは一九一六年五月一日、カナダのケベック。カナダ前首相ジョン・マクドナルド卿の甥を父に、アメリカ八代目の大統領マーチン・ヴァン・ビュレンの後裔を母にもつ彼は、正に由緒正しき家の一人息子だった。(中略)現在コロムビアの契約スタアとして、社外作品の出演も認められて、目ざましい活躍中である。撮影所の連中は彼と仕事をするのを好む。時間は厳守するし、セリフも正確に暗記して来るからである。(後略)

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助演【グロリア・グレアム】
(前略)サン・ディヤゴからパサデナに移り、九才にして早くも同市の公会舞台に立ち、ハイ・スクール時代に演劇関係の奨学資金を獲得するやら、学生劇を認められてハワード・ラング劇団に引張られるやらで、両親と学校当局の理解により仮卆業の身で遂にブロードウェイへ登り、ミリアム・ホプキンスの代役を経て忽ち「スターダスト」の主役を演じた。(中略)「地上最大のショウ」で得た自信が演技にハクをつけたものであろう。あちらでは歴としたスターであるとはいえ、将来も恐らく花形役より助演陣営でその演技を買われてゆくであろう彼女が、グレン・フォードと組んで荒けずりの太い線で演ずる「復讐は俺に任せろ」は、案外地味な品気を高めつつある彼女の一つの断面として興味深いものがあろう。(中略)身長五フィート五インチ半、体重一一二ポンド、緑色の瞳、ブロンドの髪…(後略)。

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批評【ニューヨーク紙各 絶賛の批評】
☆タイムズ紙
波乱万丈、息づまる緊迫感に満ちている。ラングの監督は優秀。諷刺もピリリと利いた雄篇

以上、引用終わり。

主演の血筋のよさの説明や「撮影所の連中」という表現が面白く、「時間厳守」や「セリフを暗記」が美徳としてパンフレットに書かれているのも楽しいです。助演のグロリア・グレアムの部分も、サンディエゴがサン・ディヤゴだったり、「忽ち(たちまち)」といった漢字があるのに「高校」はハイ・スクールだったり、体重が書いてあったり、突っ込んだ評価が案外辛辣だったり…。1953年12月の公開時の日本は、アメリカ的な部分が妙に色々あったと感じます。(この辺りの歴史のおさらいは「ホフマン物語」のところでも書いているので、そっちも参考にして下さい。)

bigheatdf.jpeg DVD発売日: 2010/10/08

次に、このソフトについてですが、今の時代には珍しく、日本語字幕のON/OFFの切り替えができません。字幕を消せない仕様です。なぜかというと1999年のリバイバル公開時の字幕入りフィルムをそのままソフト化したから。

DVDどころかblu-rayの時代に、「これはないだろ」と思う人の方が多いと思いますが、個人的には嬉しいです。というのも、フィルムに焼き付けられた字幕は、手書き書体でなく活字体の丸ゴシックでも、やはり味があります。エッジがないので読みにくいという問題もありますが、訳した立場からすると、それを見られるのが嬉しい。(この点は通常のユーザーの視点とは完全に違ってしまいますが。)作品のジャンルもフィルムノワールなので、妙に雰囲気も出ます。

いくら言ってもDVDソフトの仕様としては不満が残るでしょうが、個人的には「劇場公開時」のフィルムの状態で見られるのも嬉しいものです。

ちなみにこの作品はソニー・ピクチャーズからもソフト化されていて、そちらは他の人が翻訳した字幕版で、字幕のON/OFF可です。(名前を確認できないですが、クレジット表記はあります。)

2010/10/19 12:43 | 翻訳作品(映画) | No Comments