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2010/10/04

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The Ed Sullivan Show (TV Series 1948-1971)

アメリカで絶大な存在感を誇ったエド・サリヴァン・ショーにビートルズが登場した4回を完全収録したソフトです。この場合の「完全収録」というのは、番組本編だけでなく、コマーシャルも含めて当時の放送のままの1時間を4回収録したという「完全」です。

という話は、このソフトの紹介文を見た人なら、誰でも知っていると思いますし、他の色々な所に書いてあるので、ちょっと置いておいて、ここではエド・サリヴァンという人を少し振り返ります。

まず、この番組は1948年に放送が始まり1971年まで続いた長寿番組でした。ソフトに収録されているビートルズ登場の4回だけでも、演芸場の寸劇のようなものから、子供向けの人形劇、コメディアンの漫談にマジック、曲芸師、様々なジャンルの歌が披露されます。こうした様々な娯楽をアメリカのお茶の間に届け続けた番組がエド・サリヴァン・ショーでした。その司会のエド・サリヴァンは音楽の世界でよく名前を目にしますが、もともとはスポーツや芸能記事の記者だったようです。そして1948年(昭和23年)にこの番組を初めて以降は、「1週間の御無沙汰でした」的なお茶の間の顔になっていきました。(といっても後述する通り、玉置宏さんのような饒舌な司会者ではありませんでしたが。)インターネット・ムービー・データベースの情報によると、50年代から60年代にかけての彼はウォルター・クロンカイトと並び、アメリカ人なら誰でも知っているテレビの人だったそうです。

それほど人気の高かった彼の番組ですが、本人は保守的でユーモアセンスには乏しい堅物だったとも言われ、司会者としてはよく「噛む」人でもありました。

そんな彼ですから、エルヴィスを全米の茶の間に紹介した時は、歌っている時のエルヴィスの腰の動きが扇情的すぎると言って腰から上しか撮影させなかったといった逸話もあります。

そんな彼ですから、エルヴィスやビートルズを番組に出す事自体、当初は積極的ではなかったようです。それでも彼らに直接会って話した後は「いい若者だ」「いい若者達だった」と評するようになります。

こうして考えてみると、彼はとても保守的だった50年代のアメリカを象徴するオジサンで、その彼が変化していく様は、まさにアメリカの変化と一致するようにも思えます。カウンターカルチャーに対する彼の軟化が、保守層に受け入れられ、その結果、カウンターカルチャーが主流化していったという気もするのです。そうだとすると、この番組は時代の変化に大きく影響したのではないかと思います。(もっともこれは僕の中途半端な知識で思うだけで、詳しい人は他にたくさんいるし、そういう人達には異論があるかもしれませんが、僕はそう思います。)

ちなみにウィキペディアを見ると坂本九やジャニーズ、果ては円谷英二まで出演しています。

それから、この番組は当初白黒放送で、途中からカラーになりました。ビートルズの登場回は全て白黒でしたが、もう1年くらい後にも登場していたらカラーの映像が残る事になったのに。

というようなエド・サリヴァン・ショーの完全版が、さらに完全版になっての再発売です!

ええ、たしかに。「ちょっとさ~、完全版とか完璧版とか最終版とか究極版とかディレクターズ・カットとかインテグラルとかリミックスとか、何バージョン出せば気が済むんだよ!」と、怒る人も多いパターンです。

でも、それはその時々の事情によって内容が変わる部分もあるので仕方ない事にして、今回の「完全版」の違いを説明してしまいます。前回の発売でも、本編4回分を漏れなく収録していたのは本当です。だから完全版で大丈夫なのですが、今回は、なんと…!

  
それぞれの回の前の週や前々週の予告も収録されています。「いよいよビートルズが出演します」「いよいよ次週です」みたいな。それ。エドがビートルズに言及する、他の放送回の一部も入っています。

さらに、ビートルズ関係のCMというのもあります。エド・サリヴァンがロンドンで4人に会った時の映像も入っています。

ということで「完全版」。結果的には前回の収録時間が240分だったのに対して今回は250分になりました。

さらに、前回はなかった、ビートルズの演奏部分だけを連続して見られるチャプター飛ばしができるので「まずは全部見て。2回目はビートルズの演奏部分だけ見る」という事も可能な親切な設計になっています。

ふ~、また長いけど、まだ半分くらいかな…。

とにかく、このソフトはビートルズのファンの人にも貴重ですが、アメリカのテレビ放送史、文化史を語る上でも興味深い資料です。各回に収録されている当時のコマーシャルも、それだけでも面白いし。

…でも、そういう話は他の人のコメントにも多いし、長くなるのでまた割愛。

次は出演者の芸達者ぶりを少し。

ビートルズ出演1回目の1964年2月9日放送分で一番印象に残ったのがフランク・ゴーシンのモノマネ芸でした。彼はマーロン・ブランド、バート・ランカスター、ディーン・マーティン、アンソニー・クイン、カーク・ダグラス、アルフレッド・ヒッチコック、ボリス・カーロフ、アレック・ギネスなどのモノマネをします。6分くらいやります。それぞれの特徴の捉え方も楽しいし、本家の演技を何らかの作品で見ていれば、実際に似ているのが分かります。余談ですがフランク・ゴーシンは60年代の“バットマン”のテレビシリーズ(と映画版)でナゾラーになった人。さらに余談ですがキャットウーマンを演じていたのは“4Dマン 怪奇!壁ぬけ男”のヒロイン、リー・メリウェザー。さらに、さらに余談ですが、彼の面構えは、モノマネする以前に悪人顔をやっている時のアレック・ギネスに似ています。

長くなるので、次。同じ2月9日の放送では“オリバー!”のオリジナルキャストによる歌も入っていますが、ここでメインで歌う少年は、じつは後のモンキーズの1人、デイヴィ・ジョーンズです。

次。翌週の1964年2月16日の放送ではミッチ・ゲイナーの歌が印象的です。「ハリウッドの人気者」として紹介される彼女の歌の1曲目は“イッツ・トゥ・ダーン・ホット”(=もう暑すぎ~)。2月ですよ、ええ。でもこの回はフロリダはマイアミからの放送。マイアミでは大みそかでも正月でも海水浴できるので、この歌でも大丈夫なわけですが、ニューヨークで見てる人からすると…。というのは置いておいて、彼女の快活さは日本で言うなら「●●3人娘」みたいなイメージでしょう。踊りのキレのよさも気持ちいいし、聞いていて楽しいです。どこかで見た情報だと、ビートルズも彼女に会えて喜んでいたとか。

次。1964年2月23日。そう、3回連続でビートルズはエド・サリヴァン・ショーに登場したわけです。ここでの最強パフォーマーはキャブ・キャロウェイ。映画「ブルース・ブラザース」のクライマックスで歌うオジサンですが、この人のステージは本当に楽しいです。

1965年9月12日ではシラ・ブラック。彼女もリヴァプール出身で、ビートルズと前から知り合いだったという人。僕の知識からすると金井克子のイメージ。何となくグレース・スリックも思い出します。実力派シンガーです。

中には今見ると、さすがに「?」という人形劇もありますが、ビートルズ以外にも見どころ満載の4時間10分です。ムリに書いているわけではなく、本当に他の出演者も含めて、60年代の平和な部分のアメリカを見るにはピッタリのソフトです。

やっと終盤。

最後に前回の字幕と今回の字幕の違いを少し。

まず、前回も今回も、ビートルズの歌には字幕は入れていません。「僕」「ボク」「俺」「君」「キミ」「きみ」など、文字だけで印象は少しずつ違います。こうした解釈を字幕がやらないと分からないほど彼らの曲は無名ではないのは当然で、さらに、そうした解釈を1つに決めてしまうと異論が多いのも、彼らの人気から当然です。

そこでこのソフトでは彼らの曲に対訳字幕は入りません。でも他の出演者の歌や演技などには、コマーシャルも含めて全てに字幕を入れました。1時間で、それぞれ700枚くらい。さらに今回追加になった10分ほどで、これも300枚くらいになりました。

また余談ですが、前回のリリース時、「素材全てに字幕を入れるかどうしようか迷ってる」と言うクライアントに「これは全部入れなきゃダメですよ。全部入っているからこその完全版にしましょう」と話したものの、CMにも歌にも入れていくと、確かに字幕がいっぱいで大変な思いをしました。今回は前回の焼き直しだから、その点は楽でしたが、素材のタイムコードが違ったので全部スポッティングし直しました。

その結果、今回も全部見たのですが、数ヵ所間違いが見つかりました(!)。

1つは打ち間違い。「トロンボーン」が「トランボーン」になっていた。…前の翻訳の時だって何度も見たのに。前の翻訳の時だって、クライアント側の担当者だって何回も見たのに…。個人的にはこうした間違いは悔しいですが、宿命的に残るもの…。反省。

そして2つめ。4回目の放送時の冒頭、前回のリリース時にはエドが「ありがとうございます」「ラルフ・ホールの皆さん」と言って登場します。最初の「ありがとうございます」は会場の拍手に応えたもの。次のラルフ・ホールって…?

ちなみに、この時の翻訳には英語の原稿がありました。そこにRalph Hallとあったのですが、今回は原稿がなかった代わりにアメリカ発売版のDVDに英語の字幕が入っていました。それを確認したところ、なんとRalph Paulとあるじゃありませんか(!!)。

えっと、ラルフ・ホールは公会堂かどこかで、ポールは人名に多く…。

そうです。エド・サリヴァン・ショーはニューヨークではCBSのスタジオ50(1967年に“エド・サリヴァン・シアター”に改名)で収録されていたので、どこかの公会堂ではなかった…。痛恨。

さらにラルフ・ポールを調べると、簡単に出てきました。この番組のナレーターの名前ですよ!

あ~あ。でもね、英語の原稿にHallとあれば、PaulもHallに聞こえるし、信じますって。古い素材で音質が良いわけでもないし、エドも滑舌悪いし(!)。(言い訳終わり)

そこで今回の発売版では「ありがとうございます」「ナレーターのラルフ・ポールも」にできました。

それに似た間違いがもう1つ。3回目の放送時です。「次はゲイリー・ムーアの/火曜日の番組のパロディ」という字幕があり、その後もゲイリー、ゲイリー、ゲイリーと3回も字幕に出てきます。いわゆる有名なゲイリー・ムーア(Gary Moore)は1952年生まれ。1964年に火曜日の番組を持っているとすると12歳…。何の事ですか?

と、前回の発売時には不幸な事に誰も疑問に思わず。「ゲイリー・ムーアという人が他に誰かいて、その人が火曜日の番組を持っていたんだろう」と思い込んでいました。これも先に言っときますが、英語の原稿があっての事です。英語の原稿でもGary Mooreになっていました。

今回、前述の英語字幕を見てビックリ。GaryじゃなくてGarryでした。そこでGarry Mooreさんを調べると、ギャリー・ムーア・ショーというのが当時の人気番組の1つである事が判明。

このソフトに出てくるゲイリー・ムーアさんは、めでたくギャリー・ムーアさんに改名しました。

前回の翻訳も2003年で、インターネットも普通に使っていました。でも、やはり当時より今の方がこうした情報収集はスムースです。その点は助かりますが、当時だってできる限りの情報収集をやっていたわけで、やっぱり悔しいです…。

とにかく長くなってしまったので、(さすがに打っていて疲れたし)今回はこの辺で終わりにしますが、「字幕のリマスター」も大事だなと思いました!

コンプリート・エド・サリヴァン・ショー
DVD発売日: 2010/10/06 時間: 250分

エド・サリヴァン presents ザ・ビートルズ ノーカット完全版
DVD発売日: 2003/12/17 時間: 240分

2010/10/04 12:33 | 翻訳作品(音楽) | 1 Comment

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コンプリート・エド・サリヴァン・ショー…

↑(左)今回発売されたビートルズ出演時の完全版
  (中)エルヴィス・プレスリー出演時の完全版
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