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2010/09/22

beyond_jct.jpg @allcinema
ビヨンド<未>(1980)
THE BEYOND
SEVEN DOORS OF DEATH [86分] @IMDB

この世には地獄への入り口が7つあるそうです。その1つの上に建っていたのがアメリカはルイジアナ州にあるセヴンドアーズ・ホテルでした。セヴンドアーズなんて名前を付けたんだから、それを建てた人は地獄の入り口がそこにある事を知っていたのではないかと思いますが、この物語の主人公は何も知らされずに、面識すらない遠縁の伯父さんからホテルを相続します。長い間閉鎖されていたホテルを改装し、いよいよ営業再開しようとした頃が、この作品が描く世界です。

主演はルチオ・フルチ監督の絶叫女王、またの名を“ベルサイユのばら”のオスカル、カトリオーナ・マッコールです。子供だった僕にはオスカルのインパクトが強すぎて、“地獄の門”、“ビヨンド”、“墓地裏の家”がビデオ化された頃、とっても違和感があるなと思ったものでした。でも最近は、この3作を何度も見た上、“ベルサイユのばら”は公開当時に見たきりなので、自分の中でも彼女は絶叫女王になりました。

という事で、カトリオーナ・マッコール。今回のソフトには特典が満載で、まず彼女の挨拶があります。予告編もオリジナル版とタランティーノ監督がアメリカでリバイバル公開した時の予告と、さらにドイツ語版も入っています。ドイツ版予告も、ドイツ語の聞き起こしをしてもらい、ドイツ語の翻訳者の方に手助けしてもらって訳しちゃったりした字幕的力作です。で、ドイツ語の予告が興味深く、基本はオリジナル版と同じ構成なのですが、ナレーションが入っている事と、セリフそのものが少しずつ違っていました。これは言い回しの違いという事ではなく、話している情報自体、少しずつ違っていたりします。この作業をやっていて興味を持ったのが吹替え版と原語版の違いです。日本語吹替え版の場合もそうですが、言語の違いによって言い回しが変わったり、原語版と比べ色々な差が出てくるのは当然です。この作品のドイツ語版は、どの程度話が違うのか、とても見てみたいと思いました。ちなみにドイツ語の本作のタイトルは直訳すると“現世を越えたあの世”だそうです。(っていうか、イタリア語版の予告はねぇのかよ!?)

それから面白かったのが、やはり特典の1つの中でカトリオーナ・マッコールがフルチ監督の思い出話をするところ。「監督が橋の上に1人でディレクターズチェアに腕を組んで腰かけている写真がある。孤独な感じで、監督の生きざまを象徴しているようだ」みたいな事を言います。この橋の名前で、ちょっとした事故がありました。特典映像の原語台本はなかったので、基本的に聞き起こしで翻訳をして、それで分かりにくい音の部分は英語のネイティブスピーカーに実際に聞き起こした原稿を作ってもらいます。その担当者はPunchard train bridge.[I don’t know the name. But it’s a train (and road) bridge.]と、メモもつけて起こしてくれました。ちなみに、このネイティブスピーカーはテキサス州出身。ルイジアナは近くです。「よしよし、ポンチャード橋でいいね」と翻訳を進めます。でも心の片隅で、僕は何か腑に落ちないものを感じていました。結局、そのまま納品しようとしていたのですが、それこそ偶然にして、ネットで別件の調べ物をしていた時、ルイジアナの地図を見る事になったのです。ありました。ルイジアナにポンチャートレイン湖というのがあり、そこに全長40キロ近くもあるポンチャートレイン橋が!

ポンチャード橋でいいと思った時、腑に落ちなかったのは、自動車と鉄道の二重橋だというメモでした。写真を見る限り、二重橋には見えなかったのです。

実際のポンチャートレイン橋はwikipediaを見て分かる通り、ギネスブックにも登録された2007年6月の時点では世界最長の橋だそうです。(案外、有名な橋ではないか!)

結局、納品する前に気づく事ができたので問題なしですが、気づきもせずスルーしている問題がありはしないか。いや、絶対あるはずですから…。こうして今日もビクビクしながら字幕を作っているのでした…。

また長くなってきましたが、さらにもう1つ。前出の監督の思い出を関係者が語る特典ですが、イタリア語で話す人もたくさん出てきます。そこでは素材自体に英語字幕が乗っていて、それが3行だったり4行だったり、時には5行まであり。さらに、これが消せない。素材に焼き込まれているのです。そこにどうやって日本語字幕を出すか…。困り果て、かなり試行錯誤しました。英語字幕入りのそのままの素材を収録し、さらに、その字幕にマスクをかけた別素材を作り、それも収録する。そこに日本語字幕をon/off可の状態で出す。とにかく4行も5行も英語が出ていますから、それにマスクをかけてしまうと画面の半分以上が消えてしまいます。この方法だと、話し手の手振りや身振りを見るには英語字幕版。話を聞きたいなら日本語字幕版。というように選べます。でもスマートじゃない。(っていうか、何行でも平気で出す英語字幕が居座っている以上、何をしてもスマートにはなりませんが。)

英語の字幕とダブらない高さに日本語字幕を出そうとすると、英語の字幕の出入りのタイミングと日本語字幕のタイミングを完全に一致させないといけないのですが、これも極めて困難…。そもそも、英語が4行出ている上に日本語字幕を出すと、話している人の顔まで侵略します。

とにかく英語の字幕の出入りのタイミングはとってもアバウトなので、話し終わって数秒くらい字幕が残っていたり、息継ぎのタイミングと字幕が平然と1秒とか2秒とかズレていても平気です。それに合わせた日本語字幕を作るのは、無意味な工夫の連続になり、どうしようもない。(これは実際にやったのですが、大変だったのに没になりました…。)

こうして文字で説明していると何が問題なのかチンプンカンプンになっている人も多いでしょうが、とにかく大変。最終的に、日本語字幕のエッジを太くして、英語字幕の存在を完全に無視して字幕を出すという事にしました。答えとしては簡単なのですが、他の試行錯誤も実際にしてみた上での最終判断です。

見ている人には何でもない事です。むしろ「まったく、読みにくいぜ」「なんで英語字幕の入っていない素材を調達してこないんだ?」と憤慨するような話なのですが、権利元が「素材はそれしかない」って言うんだから仕方ないです。それをどうにかするしかありません。

グロいシーン満載で、見る人を思い切り選ぶ作品ですが、「地獄の門が開いたら何でもアリ」の世界を堪能するには最適です。

DVD発売日: 2010/10/06

2010/09/22 03:36 | 翻訳作品(映画) | 4 Comments

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Comment & Trackback

劇中の台詞でシュワイクの死体が
6年前の死体にしては云々というのがありますが
60年前の死体にしては云々が正しいのかなーと思う部分がありました

Posted at 2010.10.13 11:06 PM by たろ

たろさま

こんにちは~。ご指摘の部分、確認しましたが
原語では以下のように言っています。(スクリプトより転記)

I don’t know…He’s in amazingly good shape
for a corpse that’s supposed to’ve been dead six years…

数字には神経質になるので、僕も覚えていて、「6年」って言ってるよな。
と自問自答していた部分です。

セリフ自体が矛盾しているというか、こういう場合はどっちにすると
いいのかな、と、出くわすたびに悩みます。

この作品の場合はセリフの通りにしました。

Posted at 2010.10.14 3:22 AM by ochiai

ご丁寧にありがとうございます~
元の台詞が6年だったんですね
なんとなく当時のイタリア映画の適当さを物語っていますね(笑

Posted at 2010.10.14 6:38 PM by たろ

たろさま

地獄の門が開いちゃったら何でもアリですからね。

でも、こうしたポイントと「地獄の門」のような
頓珍漢な字幕が重なると、そりゃ~もう、シュールな
話が輪をかけてシュールになるものですよね。

とは言っても、他に何か問題がありはしないか、
と、いつも字幕を作りながら思うものです。

今回は訳していた時に意識していたから焦るという
ほどでもなく「6」だと確認しただけですが、

「げっ!何でこんな間違いをしたんだよ~!」
という経験も少なからずありますからねぇ(汗

でもね、こうして見てくれている人がコメントしてくれる
というのはうれしいものです。

場合によっては「ごめん!間違えたんだよ。それは!」とか
「うっかりスルーしてたよ~(泣)」という事になる方が、
自分だけ知らずにいる裸の王様よりはマシかな、と思ってます。

だから、また気になる事があったら遠慮なく言って下さいね。

できるだけ「気になる事」がないように頑張りますが。

落合

Posted at 2010.10.14 9:51 PM by ochiai
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