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高校から大学にかけてアルバイトしていたビデオレンタル店で、よく出ていた作品の1つ。グロいシーンがいっぱいで1回見ただけでお腹いっぱい状態で、今回、久しぶりの再会でした。この作品が日本で正式に紹介されたのは80年代のビデオ化時で、その後、DVD化もされています。
今回は(も?)字幕を全面改訂しました。作品が持つ独特の空気がおっかないので、見ないでおいた方が身のためと言う人も多い作品ですが、その独特の空気に浸かって見ると、「きゃ~」とか「おえ~」とは思いつつも見られてしまう不思議な作品。他の作品でのインタビューですが、脚本家のダルダーノ・サケッティの話を聞いているうちに、個人的には不条理な世界観も納得してしまいました。簡単に言ってしまえば、地獄の門が開くと何でもアリなのよ、という事なのですが、その「地獄感」というか、「何でもアリ感」に浸かってしまえばこっちのものなのです。
物語は何でもアリなので唐突な展開もあり、おっそろしい描写もありなのですが、ビデオ版の字幕が面白かったので、それを少し。
まず、最初の字幕版は80年代に東芝ビデオからリリースされたバージョンで、僕はこれを見た事があります。その後、DVDでリリースされたバージョンの字幕がどうなっているのかは分かりませんが、とにかくビデオ版。
字幕というのは字数を減らそうとした結果、やたらと警察関係の人が偉そうになる事が多く、この作品でもそうでした。目撃者から話を聞く刑事の口調が、まるで容疑者を尋問する感じだし。とにかく改めて訳しながら、その場その場での人間関係を考慮しつつ、より適切な日本語にしていきます。
そうするうちに、死んだはずのメアリーさんが埋葬直前に、棺の中で息を吹き返し、それに気づいた新聞記者のピーターが彼女を棺から助け出します。ピーターのおかげでメアリーは助かりました。
メアリーの知り合いのおばさんがピ―ターにお礼を言います。「あなたのおかげで、メアリーは助かりました」。英語ではBut for you, Mary would have suffered a terrible death.と言っているので、直訳だと「あたながいなければ、メアリーが恐ろしい死に方をしていたでしょう」みたいな感じです。ここが昔のビデオ版の字幕だと「それは――」「彼女が死と闘ったから」になっています。これも、むしろ不条理な世界観が出てよかったりしますが、意味は全然違うというか、単なる普通のお礼なので…。
あと、この作品のメインの舞台になるのがダンウィッチという地図にない町なのですが、この町の過去についても少し語られます。「ここは昔セーラムと呼ばれていた村で、魔女と異教徒の邪悪な村でした」なんてセリフがあるのですが、これは昔のビデオ版ではどっか行っちゃったようです。この作品のあらすじをネットで調べてもセーラムとか魔女といったキーワードは出てこないと思います。
あと、35分目くらいのところでGood Lord! That kid’s gonna fry…mark my word.というセリフがあります。ビデオ版では「フランクの子供だ(Good Lord! That kid’s gonna fry…)」「すぐ報告を(mark my word.)」となっています。これは単に「ひどいな(Good Lord!)」「ボブは必ず捕まえますよ(That kid’s gonna fry… mark my word.)」というだけ(That kid=ボブという若者)で、フランクの子供は関係ないんですが…。
まあ、色々訳していると、思い込みで間違えちゃう事もありますね。いずれにせよ、ルチオ・フルチ監督の不条理な世界が、字幕によってさらに不条理になっていた気がしましたが、今回のリリースでは改訂しちゃったので、その辺は楽しめなくなってしまいました。すみません。