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2010/07/05

Death In Holy Orders  @allcinema

2010/07/09(金)22:00AXNミステリー
2010/07/10(土)09:30
2010/07/11(日)18:10
2010/07/12(月)22:00

前編・後編それぞれ正味90分で完結するイギリスBBC製作による本格的なミステリードラマです。(後編は翌週OA。)ミステリーチャンネルのHPでタイトルになっている「アダム・ダルグリッシュ警視」は主人公の名前で、この後に放送される「殺人展示室」(こちらも前後編各90分)も彼が事件を解決していきます。イギリスのミステリー界には有名な名探偵がたくさんいます。エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、シャーロック・ホームズ、マーチ大佐などなど(マーチ大佐は分からない?いえ、彼もロンドン警視庁の名探偵です。あ、有名じゃない?ええ、有名ではありませんが…)。

こうした有名な探偵について語るほど詳しくはないですが、アガサ・クリスティーは邦訳を昔かなり読んだ記憶があります。でも、こちらの原作者P.D.ジェイムズについては、じつはイギリスでは著名なミステリー作家で、それも現役だそうですが、恥ずかしながら知りませんでした。(彼女の作品の邦訳はハヤカワ・ミステリからかなりの数が出版されています。)

とにかく詳しく語るほど詳しくないんだからムリに書いてもしょうがないので、ここでは本作について少し書きます。舞台は部外者の出入りが少ないという意味で閉鎖的な神学校。主要な登場人物が5人ほどいて、周辺の人々が10人ほどいます。その中に犯人はいるのか?もしくは部外者が犯人なのか?15人ほどの登場人物の多くに動機と取れる言動が見られ、それぞれが人に知られたくない秘密を持っている。それぞれに利害関係もある…。ミステリーの王道です。日本の2時間ドラマの拡大版くらいのイメージで見たらびっくりする仕上がりです。良くも悪くも地味な舞台で地味な展開のドラマですが、ミステリーですから、むしろそれは好材料。この閉鎖社会の中に殺人犯が暗躍するわけで、一度引き込まれたら後編も見逃したくなくなり、さらに「殺人展示室」も見たくなるはずです。

こうした作品の場合、字幕翻訳は極めて重要です。特にP.D.ジェイムズの作風では、セリフの10に1つは何かしらの伏線になっている状態で、それを落として訳すのは簡単だし、それでもストーリーを追う事はできるのですが、それでは当然面白くありません。(というか、面白いとしても、本来の作品の意図をどこまで鑑賞できるか怪しくなります。さらに、どの伏線が落ちても、それら全てが観客にとって推理の手がかりになるので、観客に対して不親切の極みです。)そこで伏線を活かしながら訳していくわけですが、これは途方もなく大変な作業です。一歩間違えれば字幕だけがネタバレになるセリフもあるかもしれない。逆に伏線を1つ落としただけで矛盾を感じる視聴者が出るかもしれない。映画もドラマも、そうした字幕は案外多いので、そんな事は大して気にせず、最大公約数的にストーリーを追えるシンプルな訳にするというのも1つの方法ですが、ミステリーの楽しみはそんなところにありません。見終わった時に「う~ん、納得」となるのが理想です。もちろん原作や脚本が破綻した部分を含んでいれば、それを字幕が取繕う必要はありませんが、字幕だけで破綻させるのは罪です。見終わった人がダメ出ししたくなるような部分がないように細心の注意を払いつつ訳していったわけです。(とは言っても、ダメ出しされるかもしれないとビクビクしていますが…。)

ミステリーチャンネルはケーブルテレビやスカパーのベーシック系のチャンネルです。今週末4回放送がありますので、よかったら見て下さい。

2010/07/05 05:31 | 翻訳作品(テレビ) | No Comments