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2010/04/05

DVD発売日: 2005/04/27 

「クラシック・アルバムズ」シリーズの1本です。ニルヴァーナのヴォーカルだったカート・コバーンがこの世を去ったのは16年前の今日でした。彼の曲は思春期の戸惑いがよく出ていて、若い世代が共感しやすいものが多いですが、思春期というものを経験した人なら誰でも共感できるのではないかと思ったりもします。

前にも書いた事があるのですが、僕はニルヴァーナの一番のファンでもなく、周辺情報に詳しいわけでもありません。でもカート・コバーンが「レベルポイント」が好きだったという事から彼に強く親近感を抱きます。クラシック・アルバムズの「ネヴァーマインド」の中の本編と特典映像で語られますが、“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”のビデオクリップは、まさに「レベルポイント」をモチーフにした作品になっています。ビデオの監督サム・ベイヤーによると「高校の体育館で行なわれた撮影には大勢のエキストラが集められ、誰もが30分もあれば撮影終了だと思っていた」そうです。それが12時間もかかり、バンドもエキストラも「早く帰らせろ」と怒り出したとか。結局、ビデオの最後の30秒は、彼らの本物の怒りの爆発になったという事です。ベイヤー自身、「彼らが僕を雇ったのは、僕の作品集がひどかったからだ。下手な監督を使えばパンクに仕上がると彼らは考えた」と言っていますが、確かにパンクなビデオに仕上がっています。

カート・コバーンは1967年2月生まれ。僕は12月生まれ。世代も同じなので共感する映画が「レベルポイント」で一致するのでしょう。僕達の世代は高度経済成長が一段落して、物質的に満たされた最初の子供達だったのかと思います。社会的な運動に飛び込む必要もなく、思春期の戸惑い自体を一番の大問題にして生きられた最初の世代といえる面もあると思います。

アルバム「ネヴァーマインド」のジャケットは1ドル札をエサにした釣り針に手を伸ばそうと泳ぐ裸の赤ん坊です。(この赤ん坊はスペンサー君という名前で、特典映像の中で成長した本人も登場します。)このジャケットは飽和状態の物質社会を生きるヒトという生き物を象徴しているように、僕には見えます。

カート・コバーンは生きる事に疲れてしまったようですが、彼の曲を聞けば聞くほど、その気持ちは分かります。ビートルズが好きでパンクが好きだったそうですが、僕も好みが同じです。幸い、僕の場合は「生きる事に疲れた」と思いはしても、「生きてるだけで幸せ」だとか、「下手でも仕事があるだけ幸せ」だとか、目の前の毎日に追われつつ、無心に黙々とキーボードを打ちながら、人と話す機会があると嬉々として喋り続ける俗っぽい人間なので自殺はしませんが。(「人ってそんなもの」、「人生ってそんなもの」と、思い切り都合よく生きられる性格なんです。我ながら便利な性格だ。汗。)

どうやって書いても全くうまくまとめられませんが、ニルヴァーナの音楽は混沌そのものを曲という形で完結させる事に成功していると思います。その「感覚」は、本当に万人が共感できるもので、世代を問わず多くの人に知ってもらいたい音楽です。

そして、いくら疲れても、カート・コバーンには生きてほしかったです。

このソフト、クラシック・アルバムズの「ネヴァーマインド」はニルヴァーナの入門編としてお勧めです。

2010/04/05 04:44 | 翻訳作品(音楽) | No Comments