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2010/12/07

polycddvd.jpg Polysics

eee-P!!!(初回生産限定盤)(DVD付) [CD+DVD, Limited Edition]

ポリシックス。日本の元気印のテクノポップバンド。(こういう死語ばかりの説明のセンスが、なんか、こう自分の年を感じるわけですが…。)DEVOの影響を大きく受けて生まれたバンド、代表曲の1つは“カジャカジャグー”。今回、この仕事を頼まれるまで知らなかったのですが、日本以上に世界で評価が高いバンドです。

そこで今回のソフトの特典のインタビューは英語字幕付きです。ちなみにウィキペディアの彼らの項目の最終更新は10月。wikipediaの最終更新は、12月4日になっています。これだけでも、海外での注目度の高さが分かります。

英語字幕は日本に住んでいる知り合いのアメリカ人(ミュージシャン)が日本語から英語の字幕を作り、こちらで原稿をチェックして仕上げたものなので、海外のファンにも十分内容が伝わるものになっていると思います。

日本では映画の字幕離れがよく話題になりますが、海外では母国語以外の情報をその国の言葉のままで聞きたいという需要がむしろ増えている気がします。映画も音楽もこの点では同じですが、これらは単なる情報ではないので、そのままの音、そのままの映像で楽しみたいという欲求があるのは自然です。そうした需要に応えようとした結果、字幕というのは生まれてきたので、こうした動きは素晴らしいと思います。

ところで、彼らが影響を受けたというDEVOですが、彼らの集大成のようなDVDの翻訳を以前やりました。ライヴあり、彼らのコンセプトの説明あり、ビデオクリップありの3時間強のソフトで、字幕も1500枚くらい。彼らを知らない人が見ても、その魅力にハマる可能性が高いタイトルです。

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DVD発売日: 2006/09/06

このDEVOの「ビデオ・コレクション+ライヴ1996」を訳した時に知り合った人から「Polysicsのインタビュー素材に英語の字幕を入れられませんか?」と頼まれたのが、今回の「eee-P!!!」の特典でした。

翻訳作業中、ポリシックスとマルコシアス・バンプとの関係も知るに至り、急に懐かしくなったりもしました。これは昔、「いかすバンド天国」という番組に僕が裏方として関わっていたためで、彼らと「たま」の対決の放送回の時も日比谷シャンテの地下で裏方をやっていたものです。

ここで大きく話が逸れますが、音楽と映画は1970年代に1つの頂点に達したと思います。映画はカラーが基本になり、人間の眼が感じるリアリティを記録するのが当然になった。音楽も電子楽器が市民権を得た。それは(語弊もありますが)「ある意味」で映画と音楽が成熟したとも言えると思います。映画で言うと、それまでは「映画って何?」というか、映画の力を皆で探っている面が残っていて、基本的な技術や演出や表現技法の中で、どこまでできるのか手探りの部分があった。そこから職人芸、職人技がたくさん生まれたわけですが、そうした過去の作品を見て育った世代が70年代以降、現場にどんどん登場してきます。その中で目立つ映画オタク系監督がジョー・ダンテだったり、映画をたくさん見た結果、監督になっていったマーティン・スコセッシやピーター・ボグダノビッチだったりします。それ以前の世代では不可能だったとも言える事です。作品の数も、見られる機会も限られていたわけですから。そうした人達の最近の代表格がクエンティン・タランティーノでしょうか。彼らの共通点の1つに自分の国以外の作品にも詳しいという事があります。

ここでやっとポリシックスの話に戻りますが、言語を越えた情報伝達は結果的にアーティストの創作力を高めるし、情報力の高さは創作能力を高めると僕は思います。

英語字幕1つで海外で大ブレイクとはいかなくても、情報発信の1つとして役に立ったらいいなと思います。(大げさだけど、頑張ってね)

CD発売日:2010/12/8

2010/03/27

え?これって翻訳が必要なところあったっけ?これも、一応、ありました。

映画ではなくコミック版の裏表紙です。

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(C)Tetsuya Takeda, Kenichiroh Takai 1991 

原作の武田鉄矢氏が描いた“Orikin Country Club”という架空のゴルフコースの説明を英訳しただけですが。第一巻は1991年1月1日初版第1刷発行になっているので、作業は1990年の秋だった事になります。この英訳は知り合いのアメリカ人夫婦(ヘザーの家族ではなく)に頼りながら作業した事を覚えています。最終的に六巻まで発売され、6冊全ての裏表紙の英訳を行ないました。

この時、武田氏のメモが説明調で、それを訳した英文も説明調になりました。相談したアメリカ人夫婦には「英語でゴルフコースを説明する看板があるとしたら、もっと簡潔な表現になるはずだ。」と言われ、簡潔に訳す事もしてみたのですが、そうすると説明したい情報が全部落ちる事になります。そこで結論としては、「架空とはいえ日本のコースであり、英語で説明しているとはいえ、日本語での説明の英訳である」という考えで、説明調の英文を残す訳として仕上げました。その結果として「日本的な英文になっているけれど、文法的に変ではない英文」になっています。

この裏表紙では「日本的」という事の処理はそれほど難しくありませんでしたが、日本語のセリフに英語の字幕を付ける時、意外なところで注意が必要です。

たとえば「先生」や「先輩」。(「教授」は別です。)“スター・ウォーズ”ではルークがヨーダをMaster Yodaと呼んだりしますが、普通の小学校や中学や高校で子供達が「○○先生」と呼ぶ場合、英語では「Mr.○○」とか「Ms.○○」と呼びます。もちろん家での親子の会話なら「your teacher」とか「the teacher」になる場合もあり「teacher」という単語が「先生」を意味するのは確かなのですが、学校内で先生に対して子供が「先生!」と呼ぶ場面で、その訳が「Teacher!」になる事は、普通ありません。「先輩」や「後輩」も同じで、ファーストネームで呼び合う文化に、この概念は入ってきません。もちろん説明的なセリフで「彼は私の1つ先輩で」みたいな表現があれば、「He is a year ahead of me in school.」で成立しますが、廊下で先輩を見た後輩が「先輩!」と呼び掛けるとしたら、ファーストネームで呼ぶのが自然です。

こうした文化的な違いを自然に他の言語に置き換えられるかどうかで、字幕翻訳の場合は自然さが大きく違ってきます。字幕で情報は伝わっても「なんだか表現が不自然」という結果になる場合が多々あります。僕自身、英語字幕を作っている時、最近はほとんどなくなりましたが、以前の作品ではそうした不自然さが残っているものがあります。(青いね。)

ここで少し目先を変えて「タコライス」。30年前の人が「タコライス」と聞いたら(沖縄の人は分からないですが)、タコが入った炊き込みご飯を連想したかもしれません。最近では、タコスの具が乗った丼物を連想する人が多いでしょう。他の文化が混ざったものが新しい文化に単語レベルで浸透すると、その単語は新しい文化でも使えるものになります。「先輩」や「先生」も、英語圏で一般化すれば、英語字幕の中でも使えるものになるはずです。(以前、「ベスト・キッド」で「先生」が多用されて、少し市民権を得ましたが一般に浸透するには至りませんでした。)

2010/01/27

roe_keys.jpg 公式HP

振り回す女 駆け回る男 空回る運命
明日なきヤツらの、失走ムービー

英語字幕を作った作品です。

アラブ首長国連邦のドバイで2009年12月9日から16日まで開催された第6回ドバイ国際映画祭で『ランニング・オン・エンプティ』のワールド・プレミアが行われたそうです。この英語字幕を作った(「イエローキッド」と同じプロセスで訳したので、英語のネイティブスピーカーが訳したものを僕がチェックしました)のですが、英語字幕版というのは基本的に海外か機内での上映ばかりなので、反応が見えにくいものです。

この作品を見ていて感じたのは、英語の字幕を付けても、日本の今の若者の空気がどこまで異国の人達に通じるか分からないという事でした。見ているうちに「え?」とか「へ?」とか「まさか」と思う人間関係が徐々に分かってくる展開なので、それを謎解きのように見ていく楽しみは万国共通だろうとは思ったのですが、何というか現代の落語のようなやり取りが楽しい作品なので、そこのところは通じるのだろうか…と。複雑で生々しい人間関係を軽妙に描いていますが、そのグデグデ感というか、登場する6人の若者の空気が日本ならではという感じで、そこが伝わるのかな、というのが分かりませんでした。

でも、公式サイトにある現地リポートを読むと「上映が始まるやいなや終始爆笑」で、観客も作品の世界に引き込まれていたようです。

これも現地リポートからの引用ですが「上映劇場は巨大ショッピング・モール“Mall of The Emirates”の中に位置するシネコン。店内に人工スキー場まである、チョー豪華な施設は場違い度満点。早くもアウェーな雰囲気漂う中、性描写に厳しいお国柄を反映してか、激しいベッドシーンがあることから18禁の指定を受けてることも判明。果たして観客は来るのか!?と不安いっぱいのまま、監督&主演コンビは劇場へ。しかし意外にも会場はほぼ満席。」(中略)上映後「コメディーとダークな面が融合した優れた作品」との紹介に続き行われたQ&Aでも活発なやりとりが交わされ、「日本は勤勉なイメージだが、登場人物たちのようにだらだらと毎日を過ごす若者たちは実際に存在するのか?」など質問が続出。ワールド・プレミアは大成功だったそうです。

こういう時って、大げさだけど「きっと自分の仕事も文化の架け橋の助けとして役に立ったんだろう」と思い、ワクワクします。

今回上映されるのは英語字幕版ではないですが↓
2010年2月20日(土)より池袋シネマ・ロサ(レイトショー)

     3月6日(土)より大阪シネ・ヌーヴォX

2010/01/05

y-kidposs.jpg  

短編映画で腕を磨いた真利子哲也の長編劇場デビュー作です。この作品には英語字幕を付けました。翻訳のプロセスとしては、まず僕が字幕表示のタイミングを出し、そこに英語のネイティブスピーカー(アメリカ人)が英語の字幕を作っていき、それを実際に画面に載せて僕がチェックし、またネイティブに戻し調整して完成。それを監督本人も確認し、最終版の字幕にしました。

ストーリーはというと、ボクシングジムに出入りする若者達の人間模様と、新進気鋭の漫画家の新作「イエローキッド」のストーリーがシンクロしていく躍動感ある作品です。公式HPもあるので、詳しい事はこちらを見て下さい。

東京藝術大学大学院の卒業制作として制作費200万円で撮り上げられた作品で、僕は東京藝大から翻訳を依頼されました。この作品は「映画専攻第三期生修了制作」の1本で、第三期は全部で5本。他の作品の英語字幕も作っています。全5作のデータはこちら。2009/6/27-7/3の間、「東京藝術大学大学院映像研究科 映画専攻第三期生修了制作展」としてユーロスペースで上映された時のデータです。

説明が長くなりましたが、この「イエローキッド」が1月30日(土)からユーロスペースで公開され、順次全国で公開される事になりました~。(おめでとう♪)

1/30~東京ユーロスペース

2/13~大阪シネ・ヌーヴォXなどなど本当に全国各地

…と書いたのはいいけれど、この公開は英語字幕付きではない…。

いや、それでも28歳(撮影当時)の真利子監督の切れ味のいい演出は、200万の予算で撮ったとは思えない完成度なので、一見の価値ありです。テンポのいい飽きさせない演出から、彼の才能がよく見えると思います。(こうした若い人達の行動力が羨ましくなる今日この頃…。年ですねぇ…。)

ちなみに、英語字幕版はバンクーバー国際映画祭ですでに上映され、今月はロッテルダム国際映画祭、3月から4月頃に香港国際映画祭での上映が決まっています。

真利子監督、頑張って!!