Home > ゆるい映画劇場

2016/03/02

sc_jacket_m

久しぶりの更新です。「スタークラッシュ 超・特別版」Blu-ray。

なんと「ゆるい映画劇場0012」に続いてキャロライン・マンロー姐の連続主演(!)

一点豪華ではなく、十点豪華のイタリアの大作です。

2016年2月26日に発売されたソフトですが、同日、沖縄県那覇市の桜坂劇場で特別上映を行ないました。

「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人にはお勧めできない本作。上映前にネタバレ、矛盾点、破綻ぶりなどを分かりやすく説明して、皆でクスクス笑いしながら見ました。「あ、周囲の席の人も同じところでクスクスしてる」を感じながら、この壮大な宇宙空間を堪能したのでした。こういう作品こそ、映画館という空間でのんびり楽しむべきものだと実感しましたが、1978年の完成以来、日本の劇場では一度も上映された事がなく、この日も1回限りの上映で、我ながらとても貴重な体験になりました。(この特別上映は「ガチバーン映画祭(まつり)」という、毎月1本、レアな作品を桜坂劇場で2年間上映するという企画の1本目。2本目は3/25-3/27の「スウィート・スウィートバック」。3本目は4/29-5/6で「ワイルド・ギース」を上映します。)

さて、いよいよ本題のブルーレイ盤。このソフトの楽しみ方を説明しましょう。「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人には、お勧めできない楽しみ方ですが、(1)何も知らずにメインコンテンツ(アメリカ公開版本編92分)を見る。(2)そのままオリジナル版本編97分を最初の30分見る。(3)そのまま思わず97分版を最後まで見る。(4)監督のインタビューを40分くらい見る。(5)特撮担当者のプロモ映像(のようなもの)を25分くらい見る。(6)音声解説1を聞きながら92分版を見る。(7)音声解説2を聞きながら92分版を見る。(8)キャロライン・マンローのインタビューを75分くらい見る。(9)撮影当時に撮られた8ミリフィルムのホームムービーを20分くらい見る。(10)残りの特典を色々見る。

面倒臭そうですね…。休みなく見てもだいたい9時間(もっとか…)。でも、このソフトを手にしたら、(1)と(2)までは、騙されたと思ってやってみて下さい。(1)と(2)なら2時間で済みます。(1)と(2)を見ると、あら不思議。たぶん(3)まで自然に行きます。(3)まで自然に行けば…。という事です。これは噛めば噛むほど何とやらという味わい深い作品なのです。

冒頭に書いた「十点豪華」は、まず音楽。007の有名なテーマ曲の生みの親ジョ・バリーです。ワクワクします。作品の中の宇宙空間は(フルカラーで色んな色の星が輝き、安っぽく見えますが)、高さ15メートル、幅30メートルにもなる黒い壁に豆電球を仕込んだもの。それもイタリアの有名なスタジオ、チネチッタのサウンドステージに作られたもので、低予算のB級映画なら到底実現不可能な規模での撮影でした。主人公の女宇宙海賊ステラ・スターに襲いかかる穴居人は唐突に飛びかかる描写ばかりで、本編の映像では、彼らが3メートルもジャンプしているなど、本当に体を張ったプロのスタントを見せているのが伝わりませんが、穴居人役の彼らは一流のスタントマンばかり。皇帝の旗艦は後半の浮遊都市と同じくらい安っぽく見えますが、まだ予算があったので細かく作り込まれていて、大きさも軽トラックの荷台に収まるかどうかくらいありました。浮遊都市は残念ながら実際に安っぽい作りだったようですが、それも軽トラックの荷台に近い大きさがありました。そもそも浮遊都市というのが、あまり都市に見えないという問題もありますが…。皇帝役は「サウンド・オブ・ミュージック」の大佐クリストファー・プラマー(「スタートレック」でクリンゴンを演じる前)。「ナイトライダー」でブレイクする事になるデヴィッド・ハッセルホフも出ています。ストップモーション撮影も多く……。こうした「壮大」な要素が、なぜか画面からあまり伝わってこないという、これはすごい作品です。製作は十点豪華でやっていたのに「トンデモB級映画」と言われる仕上がりっぷり。ひどい時には「低予算のトンデモB級映画」呼ばわりです。確かに脚本も二転三転し、92分版、97分版どころか、削除シーンもたくさんあり、そもそも「スタークラッシュ」というタイトルは途中でプロデューサーが言い出したもので、それに合わせてエンディングを変えたとか、イタリア語版では穏やかな性格だったキャラAが英語版制作時にカウボーイか保安官みたいなキャラになってっいったり…。

1回見たら十分の作品とはワケが違います。「1回見たら、また見たくなるけど、しばらく後でいいや」という作品とも違います。オチが分かってしまうと緊張感が無くなって2回目以降は1回目ほど楽しめない、なんてありません。元からそれほど緊張感がありません。でも、ワクワク感は減りません。間違ってリピート再生して惰性で「ながら見」をしても、クスクス笑いのポイントは不動です。(1)と(2)をクリアした人は、最後まで見たくなる可能性が高いです。このソフト1本で週末どころか3連休いけるかもしれません。これで4,968円。

「映画は娯楽の王様」と言われた時代がありました。こういう作品を見ていると、しみじみとそれを実感できる気がします。

2010/12/12

atec_jac.jpg @allcinema
At The Earth’s Core(1976) @IMDB

子供の夢を膨らませるにはピッタリの作品です。でも特撮的にはティーン(10代)以上には通用しないかもね、と…。以前書いた「怪奇!血のしたたる家」と同じアミカス・プロダクション製作。プロデューサーも同じマックス・ローゼンバーグが参加しています。この作品の前後の時期、ローゼンバーグ氏はホラーから恐竜ものに興味があったようで、「恐竜の島」「続・恐竜の島」といった作品も製作しています。

この作品は洋画では少数派の「着ぐるみ」の恐竜が暴れますが、これをショボいと思ったらいけません。(いや、いいんですけど、せっかく見るという場合は思わないで見る。)「微笑ましい光景だね」と思って見るのが正しいでしょう。これは、正直言って、公開当時でもそう感じたものだったりします。

主演はダグ・マクルーア(ハリウッドの林隆三って感じ)。割と適当な性格で女好きで、地底に潜るための「鉄のもぐら」に乗っている様子は、何となく1980年版の「フラッシュ・ゴードン」を演じたサム・ジョーンズのキャラに似ているような感じです。そして共演はオムニバス作品「怪奇!血のしたたる家」(1971)の1エピソードのメインキャストだったピーター・カッシング。何だか彼は5年の間に思い切り老いぼれちまった…。と思いきや、「スター・ウォーズ」(1977)では目つきの鋭い非情なモフ・ターキンとして登場するわけで芸達者です。見事です。老教授役。

ストーリーは、奇想天外です。地球の中心は空洞になっていて、空はないけど空があるように見えるし、「地底」ですが、鳥族が世界を支配しています。中生代(中世代じゃなく)の恐竜や植物がいっぱいで…。70年代にはいわゆるテーマパークという娯楽産業が今のように成熟しておらず、映画そのものがテーマパークの役割も果たしていたのです。と言うと分かりやすいかな。そういう恐竜がいっぱい出てきます。

見どころは23分目くらいのところの人間と恐竜の綱引き。それから下級種族“サゴス”の天狗のような造形。支配種族メーハーは翼竜ですが、老教授の見識から“ジュラ紀中期のランフォリンクス”のようである事も分かります。学名もちゃんとあるんだから、すごいです。

そして、この地底王国にも文字があり…。そうそう、この王国では人間が奴隷種族ですが英語を普通に話せます。そして文字は石板に刻まれ、記録が残されているようですが、これが誰が書いたのか謎。英語を話す人間がいて、英語を話さないサゴスとメーハーがいて、この石板の文字が何語なのかも、また謎です。が、老教授は見事に解読します。

“メーハーの発声能力は限定的である”

“しかし催眠術を使う力があり”

“テレパシーも使える”

鳥にしては すごいな

鳥にしてはすごいと思いますが、何よりすごいのは謎の石板文字を解読できてしまう老教授だと思います。

この作品、先ほども「スター・ウォーズ」と書きましたが、何だか似たシチュエーションがあり、この作品の影響があったのかどうか、興味を持ちました。

始まって1時間ちょうど辺りで、メーハーの秘密を知り、主人公達が逃げるシーンが「エピソード4」の横穴に逃げるシーンに似ていたり、最後の別れのシーンは「エピソード6」の惑星エンドアに似ていたりします。こちらの作品が先なので、ルーカス監督が影響を受けた可能性はありますが、どうなのかな…。

少なくとも、昔、ポール・バーホーベン監督が「トータル・リコール」で来日した時、火星の展望ラウンジのようなセットがあり、それがヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の1シーンに似ていると思った僕は、関わっていた番組がインタビューに行く時、それを質問に入れて、実際に聞いてきたのですが、バーホーベン監督は「いや、それは意識していなかった」と答えていました。そう考えると、仮に影響があったとしても意識的にやった事とは限らないし、まあ、どっちでもいい事でもあります。ただ、この「地底王国」がヒット作をパクッたわけではない事だけは確かですし、そのテーマパーク的な遊び心や奇抜さにも好感が持てます。(弓で射抜かれた恐竜が爆発したりします。「おい、恐竜の体のどこに火薬が詰まってんだ!」と突っ込むところです。)

公開当時を知る人は、ワクワクしながら見た当時を懐かしみつつ突っ込み、知らない人は、そんなワクワク感で迎えられた時代も含めて突っ込みながら見るのが楽しい作品です。

そういえば、わざわざ蛇足。監督はケヴィン・コナーです。ケヴィン・コスナーではありません。

DVD発売日: 2010/12/21

2010/08/01

octpus2_front.jpeg @allcinema

OCTOPUS 2: RIVER OF FEAR

クジラにシャチとくれば、次は“ピラニア”にしようと思ったりもしたのですが、悩み抜いた末、タコにします。

そうそう。スティングの曲にあったじゃん。あれの映像化…。なんてウソです。ニューヨークに来たタコの話です。人間より大きいので、無闇に動くと人さまの迷惑になる大きなタコ。文明に溶け込めず、そんなタコに人々は冷たい。

という話でも何でもいいんです。が、実際は、独立記念日の祭典に活気づくニューヨークに大ダコ来襲!自由の女神の首はヘシ折られ、色々大変!な話と言った方が近いです。(でも本当はそうでもありません。)

“テンタクルズ”が“デイライト”になっちゃう巨大生物パニックもの(スケールはとてもちっちゃいです)が、これです。

  
レビューを見ると、やたら評判が悪いです。ええ、たしかにどうでもいいB級作品です。実際、訳している僕も「なんでここからこういう展開になるわけ?」と突っ込む事度々…。それでも訳している時はもちろん真剣で、さらに、正直言って、それなりに愛着をもって訳しました。(でも、細かい話は全部忘れてる…)

この作品を訳したのは、今もよく覚えていますが、2001年9月11日前後の1週間ほどでした。ハドソン川の水面からタコ目線で世界貿易センタービルを見上げるようなアングルが随所に入った作品です。1993年だったか、WTCが爆弾テロに見舞われましたが、それより少し前、僕はバッテリーパーク・シティに1月半ほど滞在していて、WTC周辺もしょっちゅうウロチョロしていました。最後にWALL街近所を散歩したのは1999年だったかな…。WTCがあった最後は…。

まあ、そんな記憶が自分の中にあり、あの悲しい光景が世界のメディアを独占してしまった頃、僕はタコがニューヨークを襲う映画を訳していました。もっともCBS制作の48HOURSも訳していたので、リアルタイムに近いニュースマガジンも見てはいましたが。

とにかく批評の意見をまとめると「期待しないで見れば、それなりに飽きない」という感じが平均値という感じ。そういう見方をする場合、字幕版より吹き替え版がいいよ、という意見も散見されます。ごもっとも…。

じゃ、いくら書いたって意味ないじゃん!と言われると返す言葉もありません…。ただ、ジャケットは怖そうでしょ?(そんなに怖くないんですが…)DVDには日本語吹替え版も入っているので、レンタル屋さんで見かけたら…。

そういえば、この作品の脚本は“グローイング・アップ”の監督ボアズ・デビッドソンだったりします。

  DVD発売日: 2002/01/25

2010/06/26

4dman.jpg @allcinema

THE 4D MAN(1956)

今、時代は3Dですが(一応ね)、もう一歩先を行く人が半世紀以上前にいました。4Dマンです。いわゆる四次元の男ですね。もちろん「ある科学実験」の暴走の末に起きる悲劇の話です。だいたい50年代の科学者は「世のために」と思って失敗して悲劇に見舞われます。(「太陽の怪物」の人は二日酔いの結果の悲劇か…。)

あらすじは、どうせ脱線しますが少し書くと、科学者兄弟がメイン。兄は彼女がいてエリート研究員で、弟は彼女がいなくて失業中。弟は兄の彼女を奪った過去があります。今回は…。(っていうか、この弟の、この過去って太陽の怪物になる素質を感じるんだけど、彼はそうならず、兄が…)この世界は不条理です。

さて、弟は究極兵器になり得るカーゴナイトという物質の研究に没頭しすぎた結果、前の職場を追われます。そこでエリート兄貴を頼るつもりでは本当にないのに兄貴の研究所に行って「俺、失業中」なんて余計な事を言います。さらに「どんな物質も通さない金属を研究中なんだ」なんて言った日には…。兄貴は、単なる好奇心ですが、その研究の成果を弟に内緒で見ていたところ、何でも通す体に変身。大変な副作用がある事も知らずに、「おお!ガラスの向こうのリンゴが取れた!」とか「ポストから手紙を抜けるかな?」「お!取れた」と無邪気に4Dマンぶりを楽しみます。

という事で見せ場満載(「ここも通り抜けられた」「これも取れた」と喜ぶ兄の図)で物語は悲劇に突き進むのです。

雰囲気としては都会が出てこない都会的な作品です。(BGMの軽快なジャズがちょっとうるさいです。)60年代の東宝の特撮ものも、こうした作品の影響を受けているのか、何か共通する空気を感じます。

弟役のジェームズ・コングドンという俳優は、たぶんかなり大根役者です。(横顔だけロバート・ショーン・レナードに似ています。あ、知らない?)兄役のロバート・ランシングは、かなり演技派です。ただお蝶夫人みたいにカールした髪が硬そうな気が…。ちなみに目つきはゴルゴ13です。

この作品は60年代に日本でも劇場公開されています。こういう作品が劇場にかかるというだけで、いい時代だったね、と勝手に思ったりします。80年代にビデオ発売された時には「4Dマンの恐怖・怪談壁抜け男」というタイトルで、ホラーではなく脱力系の売り方をされていました。

実際「ゆるい」映画ですから脱力系なのは確かですが、独特のツヤがあるというか、味のある作品です。

DVD発売日: 2010/06/29

2010/06/13

「残酷の人獣」

tiam.jpg @allcinema

TERROR IS A MAN(1959)

まだまだ忙しさは続いていますが、久しぶりにゆるい映画。“ドクター・モローの島”の源流で、密かに行なわれた人体実験…。みたいな話ですが、厳密に言うとこれは人体実験ではなく動物実験で、理想的な新人類を創ろうとするマッドな博士の話です。

舞台は「ブラッド・アイランド」と海図にある南海の孤島。主人公の博士と妻、そして数十人の先住者が暮らす小さな島に、難破した貨物船に乗っていたアメリカ人が漂着する。このアメリカ人はフィッツジェラルドという、字幕にするには「彼」とか「君」とかにしないと字数を食って大変な人。(なのに、博士は彼を「フィッツジェラルド君」と呼ぶし、助手にも「フェッツジェラルドさんを案内して」なんて言う…)。ちなみに彼のファーストネームはウィリアムで、こっちもちょっと長い。面倒臭いから博士に「やあ ビル」なんて呼ばせたいんですが、そうもいかず…。

という話ですが(って、またあらすじになってない)、問題は主要人物の年齢でした。口調を決めるのに年齢が1つの判断材料になるわけですが、映像だけ見ている限り博士とビル(本当はウィリアム・フィッツジェラルド)はそれほど年の差がないように見えます。でも演じた俳優の年齢を調べると、博士は当時60歳近い人が演じていて、ビルは40歳くらいでした。だから実際、博士はビルを「フィッツジェラルド君」なんて呼ぶわけです。

さらに博士の妻が問題をややこしくするのですが、彼女はフランシスといって、映像からは年齢不詳という感じ。彼女も調べてみると当時の3サイズは40-24-36(インチ)で…、じゃなくて、30歳半ばくらいで、彼女は60歳くらいの亭主への愛情を保ちつつも「ビル、私不安なの。夫が研究を続けると、危険な事が起こりそう」、「島から私を連れ出して」なんて言ってビルと仲良しになっていき…。という事で、彼女は彼を馴れ馴れしい呼び方で呼んでもいいんですが、最初は他人行儀で、徐々に馴れ馴れしくなる。これを字幕でも調整していくのって、案外面倒臭いわけです。

そんな「残酷の人獣」ですが、もちろん見どころは人獣です。この人獣が、また、その…。

そして博士の妻フランシスを演じるグレタ・ティッセン(と、またなぜか彼女に戻るし)。彼女は1952年のミス・デンマークで、1950年代にはマリリン・モンローと並ぶほどの人気のピンナップガールだったそうです。彼女のグラマラスな肢体を楽しむのが正しいのですが、それより注目してしまうのは、彼女の乱れない髪。南海の孤島で博士夫婦と先住民だけとか言いましたが、たぶん専属のスタイリストがこっそり住んでいるはずです。

というか、そもそもなぜ彼女はこんな島にまで博士と一緒に来てしまったのか…。謎は深まります。博士の実験室も、どうも家の大きさからは想像もつかない広さを感じさせるし、怪しいです。

そういえば、この作品には見る者を貧血にさせる恐れのあるショッキングなシーンが含まれていて、本編上映前に、その件で警告のテロップが出ます。そこも当然訳しました。

警告

 本作にはショッキングな
映像が含まれております

そこで当劇場は観客である皆様に
事前に警告が必要だと考えました

               心臓が弱い方は
ベルが鳴ったら目を閉じて下さい

  再びベルが鳴ったら
目を開いて大丈夫です

どんなに恐ろしいシーンが出てくるのか…。確かにベルは2回鳴ります。「ここは見逃さないように」と気張らなくても、幸い見逃す心配はないと思います。

どうも怪しい仕掛けがたくさんある作品ですが、こんな会話もあります。

「地下の動物は
何と呼べばいいんです?」
「君なら?」
「考えました」
「あの目を見てから…」
「見たのは目だけですが」
「何と呼ぶ?」
「人間です」
「違いますか?」
「人間とは何だろう」
「種の始まりは?」
「あの目には魂があった」
「人間です」
「彼が人間で 魂があるなら」
「私が与えた」
「思い上がりでは?」
「私は科学者で哲学者じゃない」
中略
「研究の目的は?」
「人間は動物を飼育する」
「改良して 進化の
プロセスを早めもする」
「この原理を使ったら
どうなるか」
「人間を改良するために」
「実際にはできない」
「人間の脳は複雑だ」
「劣等感や不安だらけで」
「何世代も前の恐怖や偏見もある」
「だから新しい人類の祖として
動物を選んだ」
「自分で考える
まっさらな脳を持っていて」
「完全に客観的だ」
「そんな人間はいない」
「自然の法則で変わるには
待ち続けるしかない」
「何百年も何世代も
見ているしかない」
「時間のムダだ」

こう考えた博士の研究の成果が、ついにDVDでベールを脱ぐ!

DVD発売日: 2010/06/29

2010/03/18

sundemon.jpg @allcinema

The Hideous Sun Demon(1959)

誤まって放射能を浴びた科学者が日光を浴びるとトカゲ系の怪物に変身してしまうので困る話です。

白黒のせいでしょうが、変身した怪物が妙にリアルです。SFが好きな人は一度はこの怪物のスチルを見た事があるでしょう。でも、主人公の性格が…。「こんな所で泥酔して寝たらダメだよ」(@夜の砂浜)。「ほら、そこでそんな事してると困る事になるよ」(@夜の酒場で女に言い寄り、連れの男達に絡まれる)と、主人公の心の中の天使クンは囁かず、悪魔クンがド~ンと居座り、まんまと困る主人公。

「いくらフィクションだからって、もうちょっと同情したくなる男を主人公にするもんじゃないのか、普通は?」と突っ込みたくなる気持ちを抑えて考えたのです。たぶん、放射能を浴びたせいで主人公は肉体だけでなく精神も変化したんです!そうそう。そうすると、このトカゲは突如として哀愁の怪物になるわけ。

いえいえ、そう思ったのはこう書いている間の思いつき…。だって上司のような博士が作品の序盤で言うんです。放射能事故に巻き込まれたのは、身から出たサビだろ。彼は酒癖が悪かった。二日酔いで現場に行ったんだろ?みたいな事を。

あ~あ、やっぱり自爆じゃん。でも彼の支えになろうと親身になる彼女もいる。そんな彼女を放り出して酒場の女とイチャイチャ…。

やっぱりダメな奴が悲劇的な結末を迎えるヒドイ話です。でもでも、ヒドイ奴でも一介の科学者になる頭はあったわけで、必死に普通の男の子に戻ろうと焦る彼には同情します。(ただ、観客が同情したな~って思うと、すぐ「あ~ぁ、バカだね」と思う行動に出ちゃうんだもん。)

という話なので、褒めませんが、でもやっぱり訳すと愛着がある。酒場での殴り合いのシーンの撮影にはカメラの後ろに何人いたのかな?笑いをこらえつつ立ち会ってた人もいたんじゃないかな?いや、逆にエド・ウッドの現場みたいに、当事者達は思い切り真剣にやってたのかな?なんて、色々想像します。

少なくとも原作・製作・監督・主演を務めちゃったロバート・クラークは、本作を誇りに思っていたと、どこかの英語のサイトに本人のコメントがあったのは見た事がありますが…。(2005年没)

それからIMDBのユーザーコメント情報。初公開は何と「プラン9フロム・アウター・スペース」(エド様作品)と2本立てだったそうです。すごい。(「すごい」の意味が微妙ですけどね。)

そうそう、サウンドトラックには例の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」でも使われてる音楽も入ってます。(この曲、色んな映画で使い回されてるし。)

ちなみに本作は1959年製作、1962年日本公開。別に関係ないけど「太陽の季節」は1955年。

と、色々書いてきましたが、ごめんなさい。誤訳しました!!

発売版のDVDでは修正したので大丈夫ですが、この作品、じつは以前、ディレクTVのSFチャンネルでの放映用に翻訳した事がある作品で、今回のDVD発売用では当時の字幕を軽く見直せばいいだけだと思っていました。

それで1999年当時の自分の訳を見たらですね…。ええ、最初から間違えてました~。

作品は、けたたましいサイレンの音から始まります。放射能事故発生直後から話が始まるわけです。その後、主人公を乗せているであろう救急車が病院へ急行しつつ、ナレーションが入ります。そこを少し…。

アメリカが                                                  アメリカが打ち上げた
人工衛星2機を打ち上げた                    人工衛星による――
Immediately after the launching of US satellites number One and number Three into outer space,

その直後 太陽で                                     太陽が発する放射能の
危険な光線が発生した                            新発見は大ニュースになった
newspaper headlines across the country told the world of a new radiation hazard in the sun

放射能より危険な光線だ                          宇宙線より危険な光線だ
far more deadly than cosmic rays.

私の同僚の科学者                                    無名の科学者で私の同僚
ギル・マッケンナ博士は――                   ギルバート・マッケンナは
An obscure scientist, my colleague, Doctor Gilbert McKenna had

研究中に この光線を発見                       その危険を身をもって知った
already discovered this danger from the sun.

これは彼の物語である                               これは彼の物語である
This is his story.

………。

いや、話が話なので、「研究中にこの光線を発見したギルの話だよ~」でも、作品のメインの部分には全く影響ないので、どうでもいいじゃん!と、言いたいところですが、せっかく右側のように訳せるのなら、最初から右側のように訳せよ!と自分に突っ込みたくなります。ええ。

でも、とにかく発売版で直せてよかったよかった。(1枚目と2枚目は切り方を変えて、長さを調整し直しました。)

 DVD発売日: 2010/03/29

2010/03/12

atomicsub.jpg  @allcinema
The Atomic Submarine(1959)

潜水艦は(ストックフッテージ以外)自前の映像は全てミニチュアです。最大級の原子力潜水艦も、もちろんミニチュアですがスクリューが回っていたり、それなりにディテールに凝っていて微笑ましい。

当時、子供だったアメリカ人のこうした作品への評価は決まっています。「50年代のB級SFは面白かった。」「子供心に怖かった。当時を思い出して、テレビで放送されるのに気づくと今も必ず見てしまう。」「最近のCGだらけの特撮よりはるかに想像力を掻き立てられる。」などです。

でも、ここまでの評価だと最近の日本人からすると「あぁ、例のB級SFね。吹替えならまだいいけど、字幕を追ってまで見ると疲れるし退屈だよ~」になるわけです。

いけません。見所は他にも色々あるものです。この作品の場合、スタッフ&キャストがテレビ畑の人が多いらしく、セットが安っぽい(ほ、褒めてない…)。いや、安っぽいのではなく、「こなれている」のです。そのため緊張感は高まりません。リアルな空気がない。極寒の北極海の海中を進む重苦しさがない。潜水艦の中なのに「ルーシー・ショー」のような食器棚にコーヒーメーカーがある。さらに「時間ですよ」とか「寺内貫太郎一家」のような画面上の人物配置が楽しかったりします。(テーブルの向こう側だけに人物を置いて、画面の下側はお茶の間の視聴者席のパターン)「潜水艦に空いてるロッカーなんてない」なんてセリフがある割に船室に洋服ダンスがあったり…。とってもテレビ的で~す。

やっぱり褒めてない?いいの。

とにかくストーリーから。冒頭のナレーションを借りて紹介すると、「冒険家ロバート・ピアリーは 20年もの苦難の末――」「1909年に北極点に到達した」「1950年代から60年代の 世界の変貌には彼も驚くだろう」「彼が必死に開拓した 氷の世界が――」「旅行や物流の要衝となっている」「それは空だけでなく 氷の下も同じだ」「広大な北極海の底」「乗客や貨物を運ぶ 原子力潜水艦が――」「何十隻も頻繁に行き交っている」「しかし 謎の惨事が多発し」「北極海航路は ついに閉鎖された」

この謎の惨事の原因になっているのが、なんと…。(ネタバレ自粛)

という話です。ホメロスの叙事詩オデュッセイアに出てくる怪物のような…。

ちなみに本作の1年前の1958年に作られたのがレイ・ハリーハウゼンの「シンドバッド七回目の航海」で、そこに出てくる半獣巨人が…。

たぶん、予算にかなりの差があったんでしょう。このあたりは突っ込むと穴が開きます。

で、そこらへんを補うかのように本作に織り込まれたのが「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」風のロマコメ。そして50年代特有のビートニックカルチャーの若者です。

前者は冒頭の一部だけですが、長い航海の後、久しぶりの休暇をとっている将校がガーフルレンドとイチャイチャしようとしているとノックの音。「休暇は取り消し。帰艦せよ」という命令を受ける。そして帰艦すると「戦争反対。原子力反対。何でも反対」の若い博士が乗り込んでくる。という具合です。他愛ない宇宙人による地球侵略ものではありますが、こうした要素を見ると、時代の空気はしっかり感じます。

そうした空気を感じながら見るのが、こうしたゆるい映画の愉しみなのではないかと…。え?そうした要素を入れているのは、見せ場が少ないから、時間を延ばすための苦肉の策だろ?(そ、そうかも…)

でも、ロマコメ部分は少し洒落てます。以下、ちょっと長いですが、リーフ(原潜の将校=左側)とジュリー(ガールフレンド=右側)がソファでイチャイチャしている時の会話です。

リーフ:
何か感じる?
Do you feel anything?
                         ジュリー:
                         本気なの?
                         Are you kidding?
何かが始まる気がする
This is just the beginning of something.

これは偶然じゃない
We didn’t just meet accidentally.
                         よく言うわ
                         Oh, that’s original.

                         その次のセリフは
                         Doesn’t the next chorus go something like…

                         “至福の時を大切にしよう”
                         ”Let’s not waste one precious golden moment”.

                         “邪魔が入らないうちに”
                         ”Any second there could be a knock on the door and-”
テレビの主人公は
いつも邪魔される
Well,it happens all the time to the heroes on TV

芝居でも 映画でも
Plays, motion pictures.

休暇が取り消されて
The hero gets his leave canceled and he’s-

女性は後悔して…
And she spends the rest of her life whishing…
                         黙って
                         Oh,honey.

                         至福の時を大切にしましょ
                         Let’s not waste one precious moment then.

             ★★★★★★★ノックの音★★★★★★★

                         何の音?
                         What’s that pounding?
この音さ (リーフの鼓動)
Need I say more?
                         リーフ 見て (ドアの下からメモ)
                         Reef, look.
まさか (メモを読み)
Oh,no
                         何なの?
                         What’s wrong?

                         見せて (一緒にメモを読む)
                         What is it?
信じられない (休暇終了のメモ)
Oh, no.

こういった具合です。50年代のB級SFの愉しみはロマコメにありというわけではないですが、(はい、実際にないです。大げさです。)でも愉しみ方が色々あるというのは確かです。

翻訳のポイントとしてはジュリーの「よく言うわ」(Oh, that’s original.)でしょう。ここを「独創的ね」とか「オリジナルね」と直訳すると、会話があさっての方向に行きます。この場合は独創的の正反対で、「よく聞くセリフね」を皮肉で言っているだけです。(こういう所があるからこそ機械翻訳はムリなのですが、あってくれてよかった~。)

あと、これが大変だったのですが、登場人物の上下関係の使い分けです。艦長と副官の上下は簡単です。でも航海長(=副官=少佐)と砲撃長(=大尉)が同郷なのか、長い付き合いなのか、階級差はあるけれど対等に話します。これもまだOK。次は原潜に乗り込む“博士”たち。イギリス人で海洋学でノーベル賞を受けたというイアン卿と原潜の設計者ケント博士。この2人は60歳代で、皆が彼らに丁寧語で話し、彼らも皆に丁寧語で話す。最後に若い博士カール。彼は先に書いた50年代特有のビートニックカルチャー(ヒッピーカルチャーの兄貴分)の若者です。このカールの父親と副長は親しかったようで、その親不孝息子であるカールが副長に話す時の口調が常にしっくりこない…。さらにカールは博士でもあるので、艦長も命令口調ではなく何となく丁寧語で話すべきで…。こうした条件を全部気にしながら原稿を作っていくのですが、これは翻訳がどうこうというレベルではなく頭が混乱してきます。文字数を集約しながらセリフを作っていくと、何回見ても直しが残っていて大変なんです。

「あ!艦長がケント博士に偉そうに話した!」とか、「副長が艦長に『帰れ!』って言った」とか、いくら用心深く見直しても残っていたりします(職業柄、これはすごく恐ろしい事です)。

こうして「ゆるい映画」はまた訳されていくのでありました…。(ふ~)

あぁ、そういえば、この作品はブルースクリーンを使って合成が行なわれた最初期の作品でもあるらしいので、そのあたりも要チェックです。

それと冒頭のナレーションに出てくる冒険家ロバート・ピアリーは実在の人物で、音とスペルからするとピアリーよりペアリーに近いのですが、冒険家の歴史などを調べていくとピアリーで定着しているのでピアリーにしました。

DVD発売日: 2010/03/29

2010/03/02

bfaps.jpg @allcinema

ジョン・セイルズ監督作 

久しぶりに「ゆるい映画」です。ユーモラスでハートウォーミングな心地よいゆるさ。ニューヨークはエリス島(昔、移民局があったところ)に墜落したUFOに乗ってきた宇宙人ブラザー。いつの間にか彼はハーレムの酒場に辿り着き、この店に出入りする人々と交流を深めていきます。

ブラザーは一言も話せませんが、身振りでそれなりに意思の疎通をはかり、手をかざすだけで傷や病気を治し、故障したゲーム機まで直せるという特技を使って皆に喜ばれる存在になります。でも、宇宙からの使者が彼を追ってきて…。

あらすじはこんな感じですが、彼が行きあう人々の些細な描写がどれも楽しい作品です。

韓国系の果物店の店先でフルーツを食べて叱られるブラザー。よく見ると、「レジ」に入れるお金を渡せば怒られずにフルーツをもらえると理解した彼は、「レジ」に手をかざして開け、そこからお金を出してフルーツと交換してもらおうとします。 

ブラザーは出ませんが、役所の福祉課で生活保護の申請をしたい女性が職員に文句を言う場面も楽しいです。

こんなに書類があるんだよ

出生証明

死亡証明

医者の証明

就業証明

賃貸証明

納税証明

領収書

請求書

こんなに書類があっても

いつも 1つ
書類が足りないって

分かってるわよ

規則が変わったなんて
ウソでしょ

あの男が
書類をなくしたのよ

あんなに書類があったら
電話機だってなくなるわ

今回は私が手続きします

あの男に
書類は渡さないでよ

あの机で私の生活が
行方不明になるわ

不潔な男だよ

あの男を
役人にしたのが間違いさ

風呂に入れて

 
ゲームセンターには、どんなハイレベルのゲームでも遅く感じて退屈だという凄腕の少女。ブラザーはゲーム機のスピードを上げ、彼女を喜ばせます。

宇宙からの追っ手の2人組は、ブラザーが最初に落ち着いた酒場でドラフトビールのオン・ザ・ロックを注文し、それを一気に飲み干し店主を驚かせます。

そしてタイムズ・スクエアから125丁目のハーレムまで行くため、ブラザーが地下鉄に乗るとトランプのトリックを見せてくれる若者に遭遇。彼はブラザーに「バーテンとジョーという客の話をカードで見せる」と言います。

ハートの3がバーテンでスペードの3がジョー。
“ジョー 客が来ない”
“客を4人連れてきたら”
“2ドルやる”

そこでスペードの3のジョーがカードの山に戻り、26分(枚)後にジョーが戻ります。その次に出るのがキング4枚。客です。次は「2ドル」に相当するスペードの2。そこでバーテンは言います。

“男ばかりで孤独そうだ”
“女を4人連れてきたら
  もう2ドル払う”
ジョーは“任せとけ”と出ていく

ここでスペードの3のジョーがカードの山に戻り、今度は17分(枚)後にクイーン4枚とジョーが戻り、2ドル(ダイヤの2)が続きます。

このシーンは文字で説明するのは大変ですが、字幕ではもっと大変。要するに52枚のトランプのカード全部を使って、出すカード出すカードが話に沿った数になっているのが面白いのですが、映像をよく見ていると、さっきあったカードが次のカットでは他のものになっていたり、とにかくテンポの速い編集でごまかしています。そこで字幕も話として分かりやすいように訳しましたが、それにしても速いのでどうしても分かりにくい仕上がりになっています。2分ほどのシーンの間に52枚のカードが出たり消えたりしながら、最後に残る5枚がストレートフラッシュになる流れですが、2分だと目まぐるしいのは当然ではあります。

きっと、カードの彼は実際にストリートパフォーマンスをするプロなのでしょうし、その話術とカードさばきは、話を追えなくても楽しいです。

この若者は59丁目のコロンバス・サークルで地下鉄を降りますが、その時「マジックをもう1つ見せる」「白人を皆 消すよ」と言います。この列車は「Aエクスプレス上り」で「次は125丁目 ハーレム」。白人はここで降りるか各駅停車に乗り換えてしまうのでした。

そんな中、乗る電車を間違えた白人の若者2人が例の酒場を訪れます。イリノイ州から来た2人は道に迷い、物騒な雰囲気の街で困り果てます。さらに運悪く、酒場で隣り合わせたのはブラザー。「地下鉄はどこ?」と聞かれたブラザーは何も言わず親指を下に向け、「君はどこの出身?」と聞かれると親指を上に向け…。

こうした細かいエピソードの積み重ねが1つの作品になっています。過度な暴力もなく、ほんわかした逸品です。

そういえば、英語以外に韓国語、スペイン語、フランス語が少しずつ入ってきて、それらはスクリプトにも入っていなかったのですが調べて訳しました。「ブラザー本人が理解できず呆然とする」というシチュエーションなので、訳がない事にも意味があるわけですが、その中身が分からないという事は訳があっても分かるので、観客にまで分からない状態を作るより、「こう言っているのに通じてないわけね」と分かるようにした方がよいと判断しました。

「バグダッド・カフェ」にも通じる人の優しさに包まれた作品です。機会があったら見てみて下さい。

翻訳は2007年4月で字幕の枚数は905枚。

複数の会社が発売していますが、僕が訳したのは→DVD発売日: 2008/02/27

2010/01/14

pic_main.jpg イタリア/アメリカ(1959)

amazonにリンクを貼ろうと「すべてのカテゴリー」で検索したら「もしかして: カルティエ」と親切に出るじゃありませんか。カルティエじゃありません。カルティキです。

「2012」を50年も先取りしたSF巨編、ついにDVD化です!(超大げさ)クレジットされていませんが、作品を完成させた監督(主に特撮担当)はマリオ・バーヴァ。(え、知らない?「ザ・ショック」の監督です。((ええ、それも知らない?…。)))「ゆるい映画劇場特選」みたいな映画です。

さっそく冒頭のナレーションから行きましょう。「ティカルの古代遺跡に 残るピラミッド」「メキシコシティの南約500キロ」「何千年もの間 マヤの人々は ここに平和な文明を築いていた」「数学と天文学が 進んだ文明だった」「西暦607年のある日 彼らは北へ移住した」…。

さ~て、なぜ彼らは北へ移住したのでしょう?(僕は知りません。)まあ、考古学者の一行が遺跡に行ったら巨大アメーバに遭遇して大変。という話です。

巨大アメーバって、どこかで聞いた?「ゆるい映画劇場0001」に似てる?(錯覚ですって。)「人喰いアメーバの恐怖」は1も2もカラーで、こっちは白黒ですから(!)。すみません。似てます。マックィーン主演の「マックィーンの絶対の危機」(=「SF人喰いアメーバの恐怖」)が1958年製作で、こちらが1959年製作ですから…。(パクりじゃん!)

いえいえ、そうでもない。マックィーンを襲ったのは宇宙からのアメーバで、こっちはマヤ文明の邪神ですから。色んな所に人喰い巨大アメーバは生息しているという事です。(この映画、訳している時にうちの子がアメーバを見て、今もトラウマになっているし…。夢の中でアメーバに追い回されるらしい。)

とにかく西暦607年のある日マヤの人達が移住したわけですが、「1342年ごとに近づく彗星」というのがあって、それにアメーバは乗ってきたらしいんです。(結局、宇宙から来たんじゃん!)それで偶然、この映画に描かれる夜が、その彗星がまた(1342年ぶりに)地球に再接近するんだそうで、大変。(っていうか、すごい偶然。)

…話はどうでもいいんですが、アメーバは小学校の低学年児が見るとトラウマになる程度怖いです。

見どころは「ゆるい」意味で満載ですが、ダントツでベラ・ルゴシ・スペシャル(※注1)は見逃せません。

特典の予告編にも字幕を入れたのですが、“恐るべき魔術”、“驚異の原子力”、“地を這う巨大生物”、“恐るべし!”、“全世界が恐怖のドン底!”、“不死の怪物 カルティキ”。…東宝の特撮モノのノリで訳したんですけど、「地を這う巨大生物」だけが何とか本当で、後は…。

そういえば、この作品はイタリア語版でのリリースです。英語版も存在するのですが、音の欠落が多く修復困難という事でした。翻訳作業は、まず英語版で訳し上げて、その字幕をイタリア語版に載せて、イタリア語の翻訳家の方にチェックしてもらい、さらにその人でも大変な部分はイタリア人に見てもらい、確認修正して完成させました。

これって案外大変な作業で、最初は英語版の音でタイミングを出していくのですが、それをイタリア語版の素材に載せようとすると、タイミングを全部出し直す必要があり、それをやっているうちに、場合によってはタイミングがズレたりして、こんな映画(!)でも、翻訳には手間がかかっているのです~。

余談ですがイタリア映画はアフレコが基本で、イタリア語版と英語版を作る事も多かったはずです。(今もかな?)本作の場合、口の動きもそれぞれの言語にしっかり合っているので、アフレコではあるけど、両バージョンで撮影したのかな…。(そこまでは事情が分からなくてすみません。)そういえば、途中で電話番号をメモするようなシーンがあり、字幕でも電話番号を出すのですが、その番号が英語版とイタリア語版で違っていたりして、それも不思議でした。

とにかく、この作品も「ゆるい映画」として突っ込み入れながら見ると楽しいし、1人でしっかり見たりしたら、いい雰囲気で(矛盾は多いけど)案外ちゃんと怖いです。 

マリオ・バーヴァ監督作は過去に「ヘラクレス 魔界の死闘」をSFチャンネル用に訳した事があるので、これも見直す機会があったら「ゆるい映画劇場」で書きたいですが、VHS残ってるかな…。

DVD発売日: 2010/01/29

※注1
ベラ・ルゴシ・スペシャル:低予算映画「怪物の花嫁」でベラ・ルゴシが作り物の大ダコに自ら巻かれ、襲われているように見せかけた演技。(=熱い演技)

2009/12/16

unknown_jacket.jpg

原題はUnknown Island(1948)です。ロストワールド物の古典であり世界初のカラー恐竜映画。という事でワクワク。日本初上陸です。特撮史的に見逃す事はできません!(ほとんどの恐竜が“着ぐるみ”ですが…。)ブロントサウルスが(あんまり動かないけど)出てきます!怪しいディメトロドンも出てきます!背筋がピンと伸びたティラノサウルスも出てきます。それから「毛深い奴」も出てきます。(この毛深い奴はパッケージの左側の写真の奴です。・・・名前、ないし。)

内容は…、ゆるいです。

ストーリーは導入が「ジュラシック・パークⅢ」の感じ。主人公テッドはパトロンのような婚約者キャロルとシンガポールの港町の酒場で船探し。テッドは「戦時中に南太平洋を飛んだ」「日本軍の基地の偵察だ」「でも台風でコースを外れ 何百もの無人島の上を飛んだ」「その時_小島の1つで 戦車の3倍の動物を見た」のです。

そして戦争が終わり、テッドはその島に実際に行って「科学的興味」から恐竜の写真を撮りたいという事で、シンガポールの酒場でタナウスキー船長(名前が長い・・・)に船のチャーター話を持ちかけます。

72分ほどの作品で、この酒場での話だけで15分近くかかります。字幕は900枚少しですが、この15分で250枚ほどまで進みます。恐竜を見せたい作品なので、どうしてもドラマが薄くなっちゃうし、せめて冒頭の港町の酒場では派手な殴り合いとかビールビンで頭をガツンとか、そういう見せ場を作ろうという演出でしょう。

そういえばテッドはタイロン・パワー似の役者さん。キャロルはローレン・バコール風。タナウスキー船長は…、がっしりした体格だけど怖そうというほどでもないヒゲのおじさんと思って下さい。

ここにもう1人登場するのが、実際に恐竜の島に漂着して生還したフェアバンクス(名前が長いって!)という男。彼は1年前に島を脱出し漂流中にタナウスキー船長に助けられたのですが、船長いわく「奴は異常ではないが 脳が日照りで煮えた」「1年前 海で助けた時  ずっとブツブツ言ってた」「家みたいに大きな動物の話を」という人物。フェアバンクスは恐竜の島で仲間達が非業の死を遂げるところを何度も見てきたのです。それでこの1年、悪夢を忘れようと酒に溺れ、廃人のようになっていました。(彼はロバート・レッドフォードのイメージで。)そのために彼もシニカルで不機嫌です。

ここから10分ほどの上映時間で船は「ジュラシック・アイランド」に着きます。そこからは恐竜が色々出てきて…という展開。ここでただ「あ!ブロントサウルス!」「おお!ディメトロドン!」「わ~おティラノサウルス!」と言ってるだけだと子供向けの映画になっちゃいますが、この作品はひねりがあります。普通ならタナウスキー船長は「怖そうだけど、じつは優しい力持ち」となるはずが、かなり酒癖が悪くて、性格も悪い。キャロルに強引に迫ること数回。イヤ~な悪役に早変わりです。(後半、皆に嫌われ深酒して1人で野宿状態になりそうになった時、フェアバンクスに「あんたと残る」と言われ、「フェアバンクス いい奴だな」なんてベタなセリフを言ったりもしますが。)一方のテッドは恐竜の撮影に夢中。キャロルが「もう帰りたい~」と懇願しても、「もうちょっと撮る」とか言い出します。

逆に島に戻ったフェアバンクスは正気を取り戻し、いい人になって…。という人間模様が意外にあってエンディングも、ものすごく意外な展開をあっさり見せてくれます。

まあ、とにかく「世界で初めてカラーで撮影された恐竜映画」(昭和23年のカラー作品ですから)というだけで見る価値満点ですから話はどうでもいいんですが、どうでもいい話が妙に生臭く人間味があって面白いのは確か(っていうか特撮だけでなく、この人間模様への突っ込みでも楽しめるって意味ですけど)です。

それこそ仲間を集めてワイワイガヤガヤ突っ込みを入れて楽しむのに、ちょうどいいペースのゆるい作品だと思います。(褒めてるのか、けなしてるのか、ムリに宣伝してるのか、オイッ!と言われそうですが、「ちょうどいいペースでゆるい」というのが本当に合っている気がします。

さて、ここで本題です。字幕。

16分過ぎあたりで船が出航した後、タナウスキー船長と一等航海士の船上での会話です。

最初に原稿を作った段階では:

一等航海士:盗み聞きされるぞ

船長:一等航海士なら自信を持て

乗組員は日劇ダンシングチームのような先住民役の人達で、彼らは「恐竜の島」の事をうっすら知っている様子。船長達は行き先を言わずに出航したため、行き先を知りたがる彼らがコソコソしているために出てくる会話です。

ところで、この作品は英語のスクリプト無しで翻訳しました。音声自体がクリアーではない部分もあり、僕の英語力では聞き取りが怪しい場合も多々あります。という事で怪しい部分は第一稿を作った後でネイティブに聞き起こしてもらい、改めて訳します。

上記の船長のセリフは聞き取りが怪しかった部分でした。そこでしっかり聞き取ってもらうと:

一等航海士:They sneak up on you before you know it.

船長:Put hobnailed boots on them. You’re the first mate, aren’t you?

だという事が判明しました。一等航海士のセリフはまあOK。船長のセリフは聞き取りが簡単だった後半だけを字幕にしていましたが、前半が面白い表現でした。

そこで最終的に出来たのが:

一等航海士:コソコソしやがって

船長:下駄を履(は)けと命令するか

hobnailed bootsはスパイク付きの長靴みたいなものです。これを履くと足音が大きいのでコソコソ盗み聞きできないというわけです。最初の原稿でも会話や映像の雰囲気にはマッチするので引っかかりなく見られますが、しっかり聞き取りをやると細かいユーモアも出せる例です。(もっとも、爆笑もののジョークというほどではありませんが。)

恐竜映画で他に僕が訳した作品には「原始怪獣ドラゴドン」なんていう、ゆるい映画もあるのですが、恐竜が出る西部劇というレベルまでしか思い出せないので、いつか見直して何か書きたいなぁ。

それから「前世紀探検」(リンク先のallcinemaのデータベースではANIMEになっていますが、実写です。)こちらはドラゴドンより覚えていますが、カレル・ゼマン作品は全く違う意味での「ゆるい映画」です。別の機会に書きたいと思っています。

DVD発売日: 2009/12/29

Next »