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2010/12/30

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7 CITIES TO ATLANTIS
WARLORDS OF ATLANTIS (1978) @IMDB

この作品のオープニングを見て角川映画のオープニングを連想するのは僕だけなのだろうか…。これを映画館で見た当時、僕は小学5年でしたが、それでも「そっくり」と驚いた事はよく覚えています。見た劇場は渋谷の東急レックス(渋谷パンテオンの地下)。この作品の前のこの劇場での封切り作は、たしか「グレート・スタントマン」で、こちらは2つ年上の従兄と映画を見に行ったけれど従兄は「ジョーズ2」を見て、僕は「グレート・スタントマン」を見たんだった。

とにかくこの作品には小学5年生には大興奮のキーワードが詰まっていました。「アトランティス」、「怪獣」、「バミューダ海域」、「火星」、「海底」、「エラ人間」…。ワクワクして見た事を今も鮮明に覚えています。

そして今回、自分で字幕をつける作業をしながら、懐かしく見直したのですが、大人になって見るとどうなのかと思っていたら、感想は同じでした。「思ったよりもよくできていて、思ったよりショボかった。」

「ウルトラマン」の劇場版はテレビ放映された作品を何本かつないで1本にしたものだった(オリジナルの劇場用もあったけど)し、「仮面ライダー」は劇場用に撮ったのはいいけど、死んだ怪人が一気に復活して大運動会状態になるだけだし…。どれもワクワクしちゃうんだけど、やっぱり期待したほどではなく。でもやっぱりワクワクしつつ見る。そんな子供心で見ると「思ったよりもよくできていて、思ったよりショボい」と思うのです。話は、よくできているかどうかは別として、ちゃんとある。でも、それは小学5年生には少し難しく、でも、7つの都市をどんどん進んでいくという展開は単純で分かりやすく、その道中に色んな怪物がいて邪魔をしてくる。小学5年生としては、「もっと怪獣を見たい」、「もっと怪獣を強くしろ」、「もっと怪獣をかっこよくしろ」などと思うのですが、その辺りの不満は同時に次の都市への期待になり、ワクワクしながら見てしまう。子供なりに冷めた眼で見つつ、子供っぽく熱くなる。

そして最後まで見ると、結局は「いま1つ盛り上がりに欠けるねぇ」という事なのですが、頭の中では90分ほどの海底都市めぐりを堪能していて、やっぱり楽しかったね!となる。

先日の「地底王国」と同じ理屈ですが、当時はディズニーランドがまだ日本になかった時代です。こうした映画は1つの長いアトラクションだったのです。ディズニーシーの「海底2万マイル」を楽しめる人なら、この作品は楽しめます。アトラクションは数分で終わりますが、この作品は95分くらいあるし、むしろもっと楽しいかもしれないし、逆に「子供だましじゃねえか」と言うなら、退屈で仕方ないでしょう。

当時のワクワク感が頭にこびりついた僕にとっては、この作品は全部が見どころになりますが、それは公開当時、子供としてリアルタイムでこの別世界を経験してしまった場合で、普通はそうでもないでしょう。普通の人は「チャチな作りの子供だましだね」で終わるんだろうな…。でも、でも作り手の心がこもってますよ。水しぶきも砂ぼこりも本物だし。

ちなみに、「地底王国」がゆるい映画劇場に入っていて、こっちが入っていないのは、僕の判断基準もゆるいためです。

DVD発売日: 2010/12/21

2010/12/12

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At The Earth’s Core(1976) @IMDB

子供の夢を膨らませるにはピッタリの作品です。でも特撮的にはティーン(10代)以上には通用しないかもね、と…。以前書いた「怪奇!血のしたたる家」と同じアミカス・プロダクション製作。プロデューサーも同じマックス・ローゼンバーグが参加しています。この作品の前後の時期、ローゼンバーグ氏はホラーから恐竜ものに興味があったようで、「恐竜の島」「続・恐竜の島」といった作品も製作しています。

この作品は洋画では少数派の「着ぐるみ」の恐竜が暴れますが、これをショボいと思ったらいけません。(いや、いいんですけど、せっかく見るという場合は思わないで見る。)「微笑ましい光景だね」と思って見るのが正しいでしょう。これは、正直言って、公開当時でもそう感じたものだったりします。

主演はダグ・マクルーア(ハリウッドの林隆三って感じ)。割と適当な性格で女好きで、地底に潜るための「鉄のもぐら」に乗っている様子は、何となく1980年版の「フラッシュ・ゴードン」を演じたサム・ジョーンズのキャラに似ているような感じです。そして共演はオムニバス作品「怪奇!血のしたたる家」(1971)の1エピソードのメインキャストだったピーター・カッシング。何だか彼は5年の間に思い切り老いぼれちまった…。と思いきや、「スター・ウォーズ」(1977)では目つきの鋭い非情なモフ・ターキンとして登場するわけで芸達者です。見事です。老教授役。

ストーリーは、奇想天外です。地球の中心は空洞になっていて、空はないけど空があるように見えるし、「地底」ですが、鳥族が世界を支配しています。中生代(中世代じゃなく)の恐竜や植物がいっぱいで…。70年代にはいわゆるテーマパークという娯楽産業が今のように成熟しておらず、映画そのものがテーマパークの役割も果たしていたのです。と言うと分かりやすいかな。そういう恐竜がいっぱい出てきます。

見どころは23分目くらいのところの人間と恐竜の綱引き。それから下級種族“サゴス”の天狗のような造形。支配種族メーハーは翼竜ですが、老教授の見識から“ジュラ紀中期のランフォリンクス”のようである事も分かります。学名もちゃんとあるんだから、すごいです。

そして、この地底王国にも文字があり…。そうそう、この王国では人間が奴隷種族ですが英語を普通に話せます。そして文字は石板に刻まれ、記録が残されているようですが、これが誰が書いたのか謎。英語を話す人間がいて、英語を話さないサゴスとメーハーがいて、この石板の文字が何語なのかも、また謎です。が、老教授は見事に解読します。

“メーハーの発声能力は限定的である”

“しかし催眠術を使う力があり”

“テレパシーも使える”

鳥にしては すごいな

鳥にしてはすごいと思いますが、何よりすごいのは謎の石板文字を解読できてしまう老教授だと思います。

この作品、先ほども「スター・ウォーズ」と書きましたが、何だか似たシチュエーションがあり、この作品の影響があったのかどうか、興味を持ちました。

始まって1時間ちょうど辺りで、メーハーの秘密を知り、主人公達が逃げるシーンが「エピソード4」の横穴に逃げるシーンに似ていたり、最後の別れのシーンは「エピソード6」の惑星エンドアに似ていたりします。こちらの作品が先なので、ルーカス監督が影響を受けた可能性はありますが、どうなのかな…。

少なくとも、昔、ポール・バーホーベン監督が「トータル・リコール」で来日した時、火星の展望ラウンジのようなセットがあり、それがヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の1シーンに似ていると思った僕は、関わっていた番組がインタビューに行く時、それを質問に入れて、実際に聞いてきたのですが、バーホーベン監督は「いや、それは意識していなかった」と答えていました。そう考えると、仮に影響があったとしても意識的にやった事とは限らないし、まあ、どっちでもいい事でもあります。ただ、この「地底王国」がヒット作をパクッたわけではない事だけは確かですし、そのテーマパーク的な遊び心や奇抜さにも好感が持てます。(弓で射抜かれた恐竜が爆発したりします。「おい、恐竜の体のどこに火薬が詰まってんだ!」と突っ込むところです。)

公開当時を知る人は、ワクワクしながら見た当時を懐かしみつつ突っ込み、知らない人は、そんなワクワク感で迎えられた時代も含めて突っ込みながら見るのが楽しい作品です。

そういえば、わざわざ蛇足。監督はケヴィン・コナーです。ケヴィン・コスナーではありません。

DVD発売日: 2010/12/21

2010/12/11

2010/12/11(土)-12/17(金)シネ・ヌーヴォX (デジタル上映)

だそうです。今度は関西でのホラー上映。今夜から日替わりで「地獄の門」「ビヨンド」「墓地裏の家」「怪奇!血のしたたる家」「ザ・リッパー」「悪魔の墓場」を上映するそうです。

最初の4本はDVDリリース済みで、最後の2本は近いうちに紹介しますが、2011年2月にDVDリリース予定の作品です。

大阪は池田高校が甲子園で優勝した頃には、よく行っていたんだけど、もう30年近く、ゆっくりは行ってない…。そういえば、20数年前に上海に行った時、南港から鑑真号に乗るために行ったのが最後かな…。帰りは香港から飛行機で日本に戻ったけど、最後に香港に行ったのも中国返還前で…。

いや、どの街も心には残っているので、時間の経過はどうでもいいですが、変化が激しそうで久しぶりに行きたいな、と。

今回は告知のみにて。(備忘録)

2010/12/08

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LEMON POPSICLE @IMDB

このソフトの翻訳をしたのは2004年の4月から5月頃でした。当時も公開から25年が過ぎていましたが、今では30年以上前です。これを見たのは確か渋谷東急です。当時の僕は11歳。小学校5年の3学期です。どう考えてもマセたガキでした。でも、友達にも「『毛ジラミかいかい』(テレビでの本作の宣伝)って、笑えるよな」なんて言ってる奴もいたし、去年の今頃書いた「レベルポイント」も6年生で見て強烈な印象が残っているので、まあ、実際マセたガキだったのですが、同時期に「アルプスの少女ハイジ」の劇場版も見ていたりして。思春期って、そんなものだと思いますが、違う?

さらに、「アルプスの少女ハイジ」は同級生の女の子に「一緒に見に行ってくれいない?」なんて誘われたりして。(というか、正確に言うと「頼まれた」感じです。1人で都内まで映画を見に行く三浦半島の子供でしたから、「しっかりしていて安心」みたいな。)結局、これは一緒には行かなかったけど、何でだっけな…。

という青春の1ページにふさわしい下ネタいっぱいの、ほろ苦い青春映画。エッチ系のドタバタ学園ものというより、ナイーブな男の子の思春期をオールディーズに乗せて描いた秀作だと僕は思います。「ちょっと、上品ぶってんじゃないわよ、アンタ」みたいな下品さがあるけど、それこそリアルな思春期でしょう。

という話をしているのは、「バーレスク」の監督のインタビューを訳したからです。名前はスティーヴ・アンティン。彼は昔、俳優でした。「グローイング・アップ」のアメリカでのリメイク「グローイング・アップ/ラスト・バージン」(1982)で元祖のモテ男ボビーの役回りを彼が演じています。何よりビックリしたのは、インタビューの映像を見た瞬間に「見覚えのある顔」と思い、次の瞬間には「グローイング・アップだ」と思い出せた事です。彼の若々しさにビックリし、自分の記憶力も悪くないね、と自己満足にしばし耽りました。

そこで一気に頭の中がBack to the 80’sしてしまい、「グローイング・アップ」について書いているわけです。

元祖の「グロイーング・アップ」はオールディーズのメロディ満載でしたが、アメリカ版は80’s初期のヒット満載で、このサントラもまたいい感じのコンピになっていたはずです。ぶっちゃけあんまり覚えていないけど、ポリスやカーズが入っていたと思います。

また元祖「グローイング・アップ」に戻りますが、このソフトには監督のボアズ・デヴィッドソンを始め、編集などで製作に関わった人達のインタビューが入っていて、さらに封入のブックレットには日本公開当時の配給会社ヘラルド映画で宣伝を担当されていた人のインタビュー記事も入っています。作品そのものも楽しく見られますが、公開当時の宣伝の裏話も、実際に撮影していた監督の気持ちも、聞いてみると楽しみが増します。

その特典の監督の話によると「グローイング・アップ」は監督の実体験を映画にしたようなものだそうです。そしてこの作品のヒットの理由をこう分析しています。

1つ学んだ事がある

心がある映画は

誰もが抱える問題を扱った映画は

国境を越える

日本人が見ても

オーストラリアでもロシアでも

国籍に関係なく共感できる

(中略)

はっきり言えるけど

女の子を好きになると
戦争があっても

撃ち合いになっても
彼女しか見えなかった

フラれると泣いて

彼女を追っただけだ

確かに、この作品は国境を越えて訴えるものがあり、さらに時代も越えていると思います。傑作でもないし、他愛ない青春ドラマですが、とても共感できる点が多い作品で、せつなくなります。

DVD発売日: 2004/07/07

2010/11/30

hbc_jct.jpg @allcinema
The House By The Cemetery @IMDB

またしてもルチオ・フルチ監督作品です。あらすじは他のサイトで調べてもらうとして、最も印象的だったのが特典に入っているアメリカ版の予告編です。

この家に来たら

閉じ込められる前に契約書をよく読め

ローンは組んでも命で買うな

(ド~ン!)

墓地裏の家!

という命令形のナレーションが「亭主元気で留守がいい」的で味があります。これは80年代の最初のビデオ化当時、本編終了後に予告が入っていたのを覚えていますが、このバージョンって入ってたかな?いずれにせよ、当時は予告には字幕は入っていませんでした。今回は、もちろん入れました。

ビヨンド」の時ほどは特典てんこ盛り(イタリア映画なのに、なぜかドイツ語の予告も入っていたり)ではありませんが、アメリカ版予告2バージョンに、イタリア版予告、海外版予告、脚本家ダルダーノ・サケッティのインタビューなどが入っています。このサケッティ氏のインタビューにはフルチ監督のファンには興味深い話が入っています。(なぜか「墓地裏の家」より、「地獄の門」や「ビヨンド」の話をしていますが…。)

それから、この作品には印象的なセリフがあります。墓地裏の家に住んじゃう一家の男の子のセリフで、彼のベビーシッターであるアンに彼はこう聞きます。「ママが“アンは死んでない”って」「本当なの?」(Ann? Mommy says you’re not dead. Is that true?)アン本人に聞いてるんですが、これは笑うべきか、恐がるべきか…。

それから主人公のルーシー(少年の母)が、朝、キッチンへ行くとアンが血の海と化した床を拭いているシーン。

おはよう アン

おはようございます

何してるの?

コーヒーを入れました

別にルーシーは寝ぼけているわけではなさそうですが、なぜか血の海の床が見えない…。(いや、気にしないで下さい。)

さらに本編の最後にヘンリー・ジェイムズの言葉として「子供は怪物か 怪物が子供なのか/誰にも分からない」(No one will ever know whether children are monsters or monsters are children)と英語のテロップが出るのですが、これは設定的にはヘンリー・ジェイムズ原作の「ねじの回転」からの引用っぽいと思います。しかし、原作を調べても、この言葉は見つかりませんでした…。

謎が謎を呼ぶショッカー。全ての謎を解く鍵はサケッティ氏のインタビューに隠されていると言っておきましょう。

そういえば、また血とかいっぱい出てくるので、そういうの苦手な人や嫌いな人には勧められない作品です。(あ、勧められても見ないか…。)

DVD発売日: 2010/12/03

2010/11/25

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The Phantom Of The Opera(1962) @IMDB

日本では劇場未公開・テレビ放映のみになった「オペラの怪人」です。原作はガストン・ルルーのクレジットが入っていますが、話はかなり違います。主要人物の人間関係もかなり違います。舞台もロンドン。パリの「オペラ座」ではないので「オペラ」の怪人というテレビ放映時のタイトルの方が合うかなという気もしますが、怪人の苦悩を描く原作のエッセンスは生きているので、ぶっちゃけどちらでもよい気がします。ネット検索でヒットしにくくなるくらいなら「オペラ座の怪人」で全然問題ないですし、そもそも原題はThe Phantom Of The Operaで、一連の映像化作品と同じですから。

この作品で怪人を演じるのはハーバート・ロム。以前書いた「決死圏SOS宇宙船」にも出ている彼ですが、1917年生まれで今も健在。僕が好きな「ピンク・パンサー」シリーズでも、そして本作でも悲壮な役回りが多い気がしますが、IMDBの写真を見ると、昔は二枚目路線もあったのかなと思います。(いや、単なる悪役かな…)最新のクレジットが2004年ですし、本当にまだまだ現役なのかと思います。このまま100歳を越えて最長寿俳優になるまで頑張れ!と応援したくなります。

さらに共演のマイケル・ガフ。平成のティム・バートン監督版の「バットマン」以降、一連のシリーズでブルース・ウェインの執事アルフレッド役を演じた人です。彼も1917年生まれで最新のクレジットは2010年「アリス・イン・ワンダーランド」での声の出演です。まさに現役。彼にも100歳を越えて最長寿俳優になるまで頑張ってほしいものですが、個人的にはハーバート・ロムを応援します。(って、どっちでもいい?とか、両方応援しろ?)

この2人が火花を散らすような共演を見せる本作。個人的にはアルフレッドがこんな人でなしを演じていたとは驚きでした。ついでにハーバート・ロムがやはり出ていた「モルグ街の殺人」と頭の中でかぶってしまい、訳していてそれが少し妙な気分でしたが、そんな事はまたどうでもいいですね。

冒頭はアンブローズ・ダーシー卿の作による“ジャンヌ・ダルクの悲劇”の初日から始まります。実はこれこそ怪人が…。とにかくジェラルド・バトラーがファントムを演じたバージョンとは話が違うので、ネタバレは避けておきます。(それほど意外な展開があるわけではないですが。)

監督はテレンス・フィッシャーでハマー・ホラーの何本かをヒットさせた人ですが、クレジットを見ていたら「ロンドン警視庁マーチ大佐」(Colonel March of Scotland Yard)というテレビシリーズの1エピソードも監督している事に気づき懐かしくなりました。1996年に訳したシリーズですが、彼が演出したのは“The Invisible Knife”というエピソードで、刺し傷はナイフなのに、その凶器が見つからない。その謎は?といった話。30分で1話完結のシリーズ。ブリティッシュ・ユーモアが効いたシャレた作品でした。超自然現象なども扱っていて、「Xファイル」の源流の「事件記者コルチャック」の、さらに源流のような作品です。これはぜひソフト化したいです。という事で、思い切りまとまりのないエントリーですが、興味のある人は見てみて下さい。

DVD発売日: 2010/12/03

2010/11/17

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Crimewave(1985) @IMDB

「スパイダーマン」シリーズのサム・ライミ監督の2作目。脚本は彼とコーエン兄弟。カッ飛ばしてくれます。このソフトですが、制作会社が倒産した結果、ネガが行方不明になってしまっているそうです。先日書いた「死刑執行人もまた死す」は配給会社の倒産時、フィルムだけは処分されないようにと、当時の社長が懸命に守ったため今もフィルム上映の機会があります。ネガが行方不明というのはかなり深刻ですが、とにかくソフト化できた事は、やはり歓迎すべき事でしょう。

この作品はホラーチックなスクリューボールコメディとでもいうか、展開がハチャメチャな奇想天外な物語です。それを楽しく見られるのは、細かく書き込まれた脚本があってこそです。

たとえば死刑直前の主人公が無実を訴え、事件当夜の回想に場面転換する彼のセリフ。

事件があった日
僕は通りの向かいで

夫妻の家に
監視カメラを設置してた

ここでは「事件があった日」で時間を特定させ、「通りの向かい」で彼が勤める会社と働いている現場の位置関係を特定し、さらに「夫妻の家」の場所の位置関係も伝え、後に頻繁に使われる小道具である「監視カメラ」の存在を強調しています。

この2枚の字幕を出せる時間は合わせて7秒。どの情報も作品の中では意味のある部品です。

どれか1つ情報を落としてよければ字幕にするのが簡単になりますが、脚本がガッチリ組まれているので、残念ながらそうはいきません。(それでも「アパート」を「家」にしたり、文字数は減らしていたりします。)

様々な登場人物の動きを分かりやすくするために、この作品の背景の位置関係をさりげなく観客に伝え、監視カメラに至っては、回想場面の最初で主人公が映り具合を調整している機械そのものなので、セリフが場面転換のキーワードにもなっています。

ここでジレンマが生まれます。情報を1つか2つ落としてしまって文字数を減らし、雰囲気でストーリーが分かるようにするか、少し読むのが大変でも、原語の情報を全て観客に伝えるか。

このジレンマは字幕翻訳をしていて常に付きまとうものですが、答えも常に1つです。できるだけ多くの原語の情報を伝えるために字幕はあるのです。登場人物の個性を出す言い回しを考えるのは二の次。必要な情報を伝えられて、それでも余力がある場合に加えるニュアンスです。

特に脚本がしっかり書けている作品の場合、余力はほとんどなくなってしまいます。ただ、それでも脚本自体のよさが伝われば、結果的によりオリジナルに近い作品鑑賞になり、楽しめます。

と、色々偉そうに書いているのは理屈で、実際にそれを実践するのは大変なのですが、洋画離れ、字幕離れが進んでいる今、考えるべき事の1つだと思います。

字幕を読むのは面倒だとか疲れるというのは、たしかにあります。読んでいる事を意識させない字幕を目指すわけですが、やっぱり読むのは面倒。それなら、せめて面倒な事をした、疲れる事をしただけの価値のある情報を伝えるべきです。面倒で疲れるのに中途半端な情報しか入ってこないという事で字幕の立場が弱くなるのだと僕は思います。

DVD発売日: 2009/08/21

2010/11/10

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HANGMEN ALSO DIE(1943) @IMDB

戦争関係の映画が続きますが、久しぶりのフィルム上映です。
東京の下高井戸シネマで2010/12/9(木)~12/11(土)の間上映されます。

これは昭和18年の作品。それだけで、この作品はすごい作品です。“ナチスと市民の攻防戦”とか“反ナチ映画の傑作”とか、そういうキーワードもぴったりですが、単に手に汗握るローラーコースター作品という言い方もできるくらいの作品です。(もちろん、白黒で1943年製作ですから、ダイ・ハード的なノンストップアクションを期待して見たら、のんびりしていて退屈な作品になるだろうし、それしか期待したくない人にとっては時間のムダだと思います。)

映画鑑賞の醍醐味の1つは、その時代に我が身を没入させる事から得られます。作品が描く時代と世界に入り込むだけでなく、それが作られた時代に身を置ければ完璧です。昭和18年には世界中のどの遊園地に行っても、絶叫マシンと呼ばれるような最近のジェットコースターはありませんでした。それしか知らない世界に身を置いて、この作品を見たらハラハラします。(その想像力を眠らせる作品が最近は多くて困ったものだと思いますが…。)

毎度、長くなるので短めに書きますが、この作品は第二次大戦中、ドイツ占領下のチェコはプラハで実際に起きた事件を基にしています。この事件は後に「暁の七人」(また、あかつきですが)としても映画化されています。

とにかく、これは1999年8月に劇場公開用に訳したもので、先日の「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」と同じで、DVDソフトも当時のフィルムのままで字幕はon/offできません。前にも書いたように、個人的にはこれはこれでよいのですが、この字幕には他の点で不満があります。

当時の時間の流れの細かい部分は覚えていないのですが、プリントの到着が遅れに遅れた事をはっきり覚えています。どれくらい遅れたかというと、公開前日か当日に成田にプリントが届いたのです。配給元のケイブルホーグは結局、資金繰りに行き詰まり、残念ながら今は存在しませんが当時はそこまで困っていたわけではありません。5月か、少なくとも6月には支払いが終わり7月上旬から中旬にはフィルムが日本に届くはずでした。それで9月の公開になっていたのですが、なんと公開前日か当日まで届かなかったのです。

タイムコードの入っていないビューイングテープ(事前に作品を見られるようにフィルムをビデオにダビングしたもの)などは7月の段階で届いていました。フィルムの到着が遅れ始めたところで、そのビューイングテープを元にタイムコードを先に作ってしまい、翻訳作業は進めてありました。でも、上映はフィルムです。翻訳データが完成していても、フィルムに字幕を載せていく作業はレーザー字幕のシステムを使っても最低数日かかります…。

結局、差し替え作品の1つとして、フリッツ・ラング監督が自作について語る「ひとつ言っておこう」というドキュメンタリーをビデオで特別上映したり、何らかの対応をして「休映」にはしなかったのですが、「死刑執行人もまた死す[完全版]」がフィルムで上映されたのは、当初の公開初日から1週間から10日ほど後になってしまいました。

これは、この作品の字幕への僕の不満ではありません。問題は、時間がない作業になってしまい慌てていた上に、ビューイングテープの早さが微妙にズレていた事です。フィルムからビデオにダビングする時、映写機の回転速度が100でなければならないとして、それが99.95だったりする事があるのです。こうしたズレが生じる理由は何種類かありますが、0.001くらいのズレでも、100分の作品にすると数秒のズレが生まれてきます。字幕で数秒ズレていたら、話が全然分からなくなる事は、考えるまでもなく分かると思います。このズレの補正作業は、映画本編さながらとまでは言いませんが、スリリングな状況でした。

とにかく、先にこちらで作ったタイムコードの時間の進み方と、フィルムの上映時の時間の進み方にズレが生じます。この補正は残念ながら機械的にはできません。それを限られた時間で進めていったため、本来取ってあったスポッティングが半ば台無しになってしまったのです。

もちろんフィルムでの上映は1週間から10日後には実現したわけで、基本的にはOKのタイミングにはなっているのですが、当初、丁寧に行なった作業は生かされませんでした。それが今もフィルムとして残り、DVDとしても残る事になったので、それが不満なのでした。

それでもこの作品の価値が変わるものではありません。それが今も残っているのは歓迎すべき事です。それから、このソフトのバージョンは以前は[完全版]と付いていましたが、この作品の場合は本来これは必要がなかったもので、本作より短いものが[カット版]になるべきものでした。長い歳月を経て、完全な姿の本編の方が散逸してしまっていたのです。

この点に関しては実情は分かりませんが、少なくとも1999年に日本に輸入されたフィルム以降、この作品に関しては新しいプリントが見つかった形跡が世界的にありません。(実際はあるのかな?)その時のマスターにあたるプリントが今もどこかに存在するのではないかと思いますし、それをいずれ誰かがリマスターするなどすれば、音質も画質もアップしたフィルムやソフトが登場するのでしょう。でも今はこのバーションしか存在しないようです。

その意味ではDVDなのに字幕をoffにできない仕様でも、本当に見たい人は見ようと思えば見られる状態になっていてよかったと思います。

後は、もうあり得ませんが、こうした作品の字幕の制作費が満額支払われる事…。ケイブルホーグが倒産しちゃって、あり得ないのが残念ですが…。とにかくヘザーは生き残りました。

という事で、貴重なフィルム上映です。

ちなみにIVC発売版も同じフィルムを素材にしています(字幕も同様)が、今回は改めてテレシネしたもので、オーサリングもやり直しているはずなので、作業時期の違いを考えると、同じフィルムを使っているとはいえ今回のソフトの方が画質がよいとは思います。

DVD発売日: 2010/09/03

余談ですが、フリッツ・ラング監督の「メトロポリス」が、ついに150分版になってソフト化されます。これは80年代にジョルジオ・モロダーが音楽をプロデュースしたバージョンで日本でも大々的に劇場公開されましたが、その時は84分バージョンだったか、短いものでした。この作品は1926年(昭和2年)のSF超大作で、それこそフィルムが散逸してしまい、様々なバージョンが存在してきました。リリースされるのが楽しみです。

サイレント映画も今になるまでタイトルが語られ、ソフト化されるような作品はどれも力強く、ドラマとしてとても重いものも多いです。僕自身はカナダの映画学科で何本か精査するような見方をしたり、時代背景を踏まえながら見たりしたので、かなり好きです。

もちろんフィルムの保存状態の関係から、画面が見ずらく話が分かりにくいとか、単調なBGMで寝てしまうとか、そういう問題もありますが、腰を据えて見ると貴重な映像資料であるばかりではなく、ドラマとして十分に楽しめて、色々な意味で想像力を駆り立てられるものです。お勧めです。

最後に、フリッツ・ラング監督の「大いなる神秘/王城の掟」と「大いなる神秘/情炎の砂漠」の二部作も誰かソフト化しましょうよ!

2010/11/06

awits_jcts.jpg @allcinema

A Walk In The Sun(1946) @IMDB

これは遠い昔の物語

1943年の物語だ

イタリアのサレルノ湾に
テキサス師団が上陸した

というナレーションから始まるのが1946年に公開された「激戦地」です。46年に43年を振り返っているのに「遠い昔の物語」と言っているのには、たぶん意味があります。「あの壮絶な戦闘は繰り返したくない。もう戻らないから、遠い昔だ」という事だと思います。

ところでTBSの開局60周年記念ドラマ「99年の愛~Japanese Americans~」の第4夜で語られるエピソードをアメリカ人スタッフが撮った映画に「二世部隊」(GO FOR BROKE!)というのがあります。

こちらは以下のようなナレーションで始まります。

第442連隊戦闘団と
第100歩兵大隊が――

日系アメリカ人部隊である

欧州での主要な戦闘7回
死傷者9486名

勲章18143個
大統領表彰7回

彼らの英雄的活躍を描く本作は

1943年 ミシシッピー州
キャンプ・シェルビーから始まる

どちらも過去に訳した作品ですが、この2作をつなぐ作品が「99年の愛」第4夜のようです。今、ふとテレビから聞こえてきたセリフがGo For Broke(「二世部隊」の原題)=「当たって砕けろ」だったので、ふと書いてみていますが、日系アメリカ人は映画「二世部隊」から見ると、TBSのドラマよりも、もっとアメリカ人だったように見えます。

恐らく、見ている自分に馴染みのない日系人俳優がキャストされていて、彼らは実際に日本語より英語が得意な人達だったからだと思います。実際はどのような位置というか、感じだったのか興味を持ちました。

いずれにせよ、ここで書いた2本の映画をサブテキストとして「99年の愛」を見ても、逆に「99年の愛」を見て2本の映画をサブテキストとして見ても興味深いでしょう。

そういえば「二世部隊」の主演のヴァン・ジョンソンは先日書いた「空爆大作戦」にも出ています。

「激戦地」も「二世部隊」も字幕を作りましたが、「二世部隊」は結局、僕の訳ではソフト化されずじまいになってしまいました。ただ、訳者が誰かは分かりませんが、ソフト化されているので見る事はできます。

以前、自分で書いたものの転記に近いですが、ここで「激戦地」について少し。監督は「西部戦線異状なし」の名匠ルイス・マイルストン。「プライベート・ライアン」と同じ、ノルマンディー上陸後の話です。ライアン「兵卒」を救うという任務ではないですが、イタリアの海岸近くの森を進む兵士達の人間模様を会話をベースに描きます。120分近い作品ですが、戦闘場面より会話で進むので字幕が1800枚にもなりました。時系列で並べると「空爆大作戦」があって「暁の出撃」があって、「激戦地」と「二世部隊」が並行するような感じでしょうか。まあ、違う国や人種の作戦だから接点は少ないけど。

戦場での会話は大変です。階級上の上下関係は年齢と関係ない上、白黒作品で上陸作戦だと制服の違いも目立たず、声の違いも不明瞭。当時のオリジナル台本は残っておらず、最近になって改めてアメリカで聞き起こした台本は「聞き取れません」も多い…。

そんな中で「sea ration」という表現がありました。それを「海洋性食品」と訳して納品したところ、「それはc-rationのはずです」と、クライアントから簡単に誤訳を指摘されました。こんな時は言い訳したくなります。「英語の台本にはsea rationとあったんだ」と…。c-rationは軍隊用語で、携帯食糧でした…。

さらに思い出しましたが、TBSの開局50周年記念ドラマだったでしょうか。「百年の物語」の英語字幕を奮闘して作りましたが、当時のヘザーでの英語字幕の翻訳体制は今とは違って日本語的な英語が残る事が多かったから…。今は違いますけど。(汗)

DVD発売日: 2009/04/28

2010/11/02

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THE DAM BUSTERS(1954) @IMDB

第二次大戦中の1943年5月17日に実際に行なわれた『チャスタイズ作戦』の発案から準備、訓練、そして実行までストレートに描くシンプルな作品。監督は「オルカ」のマイケル・アンダーソン。

原題もシンプルにThe Dam Busters(=ダム攻撃隊)。邦題は「暁の出撃」ですが、出撃するのは夜中です。今は暁(あかつき)は明け方というイメージですが、昔は「未明」まで含む使われ方をしていたので、問題なし。

要するに昔は「夜明けの出撃」も「夜中の出撃」も「暁の出撃」でよかったわけです。

さて、このチャスタイズ作戦ですが、「スター・ウォーズ」第1作(エピソード1じゃなくて製作1作目の方)のクライマックス、ルークによるデス・スター攻撃と同じです。これだけ命中率の低い標的に爆弾を落とすという発想もユニークですし、それを実現するための様々なアイデアも凄いです。それが実話だったというのだから、まさに「事実は小説よりも奇なり」です。

これは戦争映画というよりも、プロジェクトXを見るような気分で楽しめる作品です。実際、戦闘シーンはほとんどなく、クライマックスに向かって敵の対空砲火がしばらくあるだけです。

この作品では階級、距離や重さなどの数値、地名、人名など、どれも事実に基づいているので、これらの確認が一番手間でした。中でも数値は換算も多く、手を抜かずにやっていても単純に間違える危険は大きいわけで、本当に入念にやりました。間違いがない事を祈る…。(汗)

ただwikipediaにも詳細が書かれているくらいに有名な作戦だったので人名や地名や階級などは、確認しやすかったのは助かりました。

ところで、この作戦を指揮したガイ・ギブソン中佐は当時25歳。戦争というのは「平時」に対して「戦時」というくらいで、日々の緊張感が違うのでしょうが、とにかく壮絶な人生だったと思います。彼の戦歴を見ると、この人こそルーク・スカイウォーカーのモデルという気がします。

こうした緊張感のある作戦を発案から準備、訓練、実行までを淡々と描いているこの作品ですが、ブリティッシュ・ユーモアも時々入っていました。低空飛行の訓練をする局面では、付近に住む農夫が政府に抗議の手紙を書く場面があります。内容はこうです。「閣下、食料危機と戦う養鶏農家として強く抗議します。夜中、若い愚か者が面白半分で飛んでいます。楽しいのでしょうが、彼らが鶏小屋の上を飛ぶたびにメンドリが卵を早く生み、落ちて割れてしまいます。これは私だけでなく国家の損失です」。

こうしたユーモアは昭和18年当時の日本では許されたのでしょうか。普通の人々は戦時下でも普通に暮らしていたのだから、大変な状況の中でも笑いはあったでしょうが、どんな具合だったのかな…。

それからもう1つ。この映画を見ていると「ぜひダム攻撃を成功させてほしい。皆、無事帰還させてあげたい」と英軍に同化しますが、ダムが決壊した後、下流では1000人以上の民間人が亡くなっています。これを思うと、戦争は何度やっても、最終的には「もう繰り返したくない」という結論に達するのだろうと思います。勝者の結論も、敗者の結論も、それだけは同じなのではないかと…。

とにかく戦争映画を敬遠する人でも楽しめる作品だと思います。

DVD発売日: 2010/11/03

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