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2017/03/14

ガチバーン映画祭Vol.14(2017年3月26日)で上映する「惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!」。この作品は製作当初からバージョンが2つありました。アメリカ公開版とイギリス公開版です。そして第三のバージョンは1979年、日本での劇場初公開の際に作られた日本語吹替版です。

アメリカ版とイギリス版は編集自体が違います。中盤30分くらいから顕著になり、アメリカ版では「軍 対 UFO」の戦いが重点的に描かれます。製作された1953年当時のアメリカはソ連の共産主義への恐怖心が強く、彼らの脅威を宇宙人が侵略してくる形で描いた作品が多く作られました。さらに「SFボディ・スナッチャー/恐怖の街」(56)を代表にした「夜寝て、朝起きたらご近所さんが別人のようになっていた」的な作品も多く登場しました。

「惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!」は、この「侵略宇宙人→お隣さんが別人」の話です。

しかし、共産主義への不安がアメリカほど色濃く社会を覆っていなかったイギリスでは、どちらかというと純粋に「こんな宇宙人がいたら恐いね」と本作を捉え、中盤から「この広い宇宙には無数の星があり、地球より文明が高度に発達した生物がいても何も不思議はないんだよ」話に時間を割きます。この結果、宇宙人を迎え撃つために軍隊が着々と準備を進める描写が減っています。

エンディングも…。ネタバレなのでここでは書きませんが、アメリカ版とイギリス版は違います。

以上が米英の2バージョンの違いの説明。

で、3つめの日本版ですが、これはイギリス版に準拠しています。というか、編集はイギリス版と同じです。違いは吹替えのセリフや音楽です。先に書いた通り、この作品は1953年製作。当時のアメリカの大統領はアイゼンハワーですが、吹替版では「カーター大統領(1979年当時のアメリカの大統領)が発表した」といったセリフがあり、主人公の少年も「ボクも確かにそれは聞いた」と答えます。さらに「隕石」を「メテオ」と言っています。これは「メテオ」という映画が1979年10月27日に日本で公開されたためでしょう。ちなみに「惑星アドベンチャー/スペースモンスター襲来!」の初日は1979年12月22日でした。(英語のセリフではMeteorと言っていますが)

でも、こうしたセリフの現代アレンジは序の口で、サウンドトラックが全面的に入れ替えられているのが日本版の特徴です。これは文字では表現しにくいですが、大野雄二さん的な…。角川映画的な…。

エンディングのサントラを日本仕様に変えるなんて、最近どこかで聞いたような話でもありますが、こういう改変はテレビ放映に限らず、よく考えてみると劇場版でも色々あったりします(笑)。

余談ですが、この作品が製作から25年以上も後になって劇場初公開となった背景には「スター・ウォーズ」の大ヒットがあります。このヒットで「2001年宇宙の旅」もリバイバル上映されました。「宇宙空母ギャラクティカ」、「フラッシュゴードン」も作られました。この流れの中で、すでに何度かテレビ放映されたことのある本作も、ついに劇場公開される事になったのです。

とにかく、この作品は侵略SFの古典の1本とも呼ばれ、面白いのですが、このバージョン違いを見比べるのも、とても面白いです。

とはいえ、ガチバーン映画祭Vol.14での上映はアメリカ版のみですし、イギリス版も日本語吹替版もソフト化されていないので残念ながら見比べするのは大変なのですが…(爆)。

で、見られるアメリカ版の見どころを1つ。この作品の製作は20世紀FOXで、当初は3D(この当時も「立体映画」が人気でした)で作られる予定でした。それが3Dの人気が高く、撮影に使うカメラが不足していて、スケジュールの都合から普通の2Dで製作される事になりました。でも美術部は3Dでの準備を進めていたので(2Dになったものの)妙に奥行きを感じさせるセットや構図の描写が多いです。

ということで…。

夜、寝ようとしたら閃光を放つ謎の飛行物体が裏山に下りていくのを見てしまう少年と、劇場で皆でワクワクドキドキ体験しましょう!!3月26日(日)桜坂劇場です!!

2017/03/01

ガチバーン映画祭Vol.13、2月26日(日)の上映は映画2本と短編ドキュメンタリー1本でした。作品は「4Dマン 怪奇!壁ぬけ男」、「太陽の怪物」、そして『「戦慄!呪われた夜」の裏側』。

2月26日(日)上映2作のチラシ

今回はポスターとチラシの到着が1月下旬。去年の第一回上映「スタークラッシュ」の時と比べて3週間ほど配布や掲示が遅れていました。到着してからの1週間くらいは1日のうちどこかで時間を作って各所を回り、計200ヵ所ほどの様々なお店や施設に配って歩きました。

ポスターもチラシもレトロな雰囲気でインパクトもあり好評で、行く先々の多くで「今回もすごいね」と喜んでもらえました。居酒屋さんの場合、にぎやかな上にお客さんも多く、インパクトのあるガチバーン映画祭のポスターやチラシも隅にひっそり。小さめのスナックやバーでは居合わせたお客さん達がチラシやポスターを見ながら映画談義が始まったり。沖縄特有のアメリカンな空気を感じさせるお店では置かせてもらった瞬間から内装の一部のように馴染み。店の入り口にポスターを貼ってくれるラーメン屋さんでは「お客さんが、よく話題にしてますよ」と、うれしい報告をしてくれたり。

チラシを置かせてもらい、ポスターを貼ってもらいに行くだけで客ではないのに、多くの人達が「顔なじみ」として歓迎してくれます。間が悪く忙しい時に邪魔してしまい、本当に申し訳なく思うこともあります。不愉快な思いをさせてしまった方々には、この場を借りてお詫びします。そして忙しい中で応対してくれる皆さんには感謝してもしきれません。

そんな皆さんの応対に接していて思うのです。「みんな、案外、映画の話をしたいんだな」と。誰もが何らかの思い出の作品があり、時間があるならそんな話をしたいよ、という思いが伝わってくるのです。せわしない日常の中で、「映画の人」みたいな存在の僕が、妙なポスターやチラシを持っていくと、話せる時は5分、10分と話し込んでしまったり。これも結局、ゆとりのある時間をもらってしまって申し訳ないなと思いながらも、本当に楽しいものです。

2月の2作と3月の2作、4作品を並べたB3ポスター

そして、こうしてチラシやポスターを受け取ってくれた皆さんに少しでも恩返しになればと思い、ガチバーン映画祭のフェイスブックのページの「写真」のタブに「街角ガチバーン」というアルバムを作り始めました(これは随時更新していきます)。それぞれの写真にお店の名前や住所を入れるようにしているので、ネットで沖縄観光の予習をしているといった人には少し参考になるかもしれません。

この街角ガチバーンには、もう1つ思いがあります。昔、映画のポスターは街角のどこにでもありました。10分も商店街を歩けば、それがどこの町でも、どこかに映画のポスターがあった。通学路、駅のホーム、タバコ屋さんの店先…。色々な所に立て看板があったり、掲示されていたり。そういう光景は、だいたい昭和のどこかに消え去ってしまいましたが、ネットのアルバムで映画のチラシやポスターが見える風景を眺めていると、そんな昔を少しだけ感じられるかな、と思ったりします。

2017/02/18

皆さん、ご無沙汰しております。前回の投稿から1年近くになりますが、この間、沖縄県那覇市の桜坂劇場で毎月1回、1日だけ、1回限りの上映で旧作の上映をやってきました。(最初の数回は複数回の上映もありました。)

この投稿の1つ前、1年前の投稿でも少し概要を書きましたが、ガチバーン映画祭(まつり)というイベントです。毎回トークイベントや作品の関係者からのビデオメッセージの上映などを交えて好評を得ています。これまでの12回で上映した作品は23作、そのうち20作は自分で字幕を作った作品でした。字幕翻訳をする時、見る人、観客を意識して原稿を作るのは当然ですが、僕の場合、DVDやブルーレイソフトに収録される字幕が大半で劇場の銀幕で皆さんに見てもらう機会が少ないのです。それで「皆に見てもらいたくて字幕を入れているのだし、いっそ自分で劇場で上映できるお膳立てをしよう」という思いから、この映画祭を続けています。

地元の新聞やラジオ局の応援、そして本映画祭の上映会場である桜坂劇場の協力もあり、回を追うごとに来場者数も増えています。「映画館で映画を見る」というのはじつは大事な意味があると思います。映画の宣伝で「ぜひ映画館で見て下さい」といったメッセージを耳にすることがありますが、そもそも映画は映画館で見て初めて映画なのです。作品がかかっていない映画館は真っ暗闇で外界の音も遮断され、客席と壁のスクリーンだけの殺風景な空間です。作品が投射されて映画館は初めて意味を持つ。そこに身を置く観客は映画に集中するしかありません。

言い換えれば映画館は万能細胞であり、映画が始まる瞬間、その作品の世界に変貌するのです。さらに言うと偶然居合わせた他の観客の気配が、その作品の世界にリアリティを加える。その作品の息吹として観客1人1人の存在が映画という装置の一部として機能し合う。そんな条件が揃っている映画館で映画を見る。映画の世界に没頭できる。今は映像を再生するメディアがどこにでもあり、「物語を追う」という意味で映画を捉えるのであれば手のひらでも映画を楽しめます。この進歩は仕方ない事ですが、そうした手軽な見方をするにしても「映画館で映画を見る」という経験をしていれば、場合によっては「この作品は映画館で見たかったな」と想像しやすくなります。

ジェットコースターの映像をテレビや携帯電話で見るだけで実際に乗った事がない人にはジェットコースターで急降下する時の一瞬の無重力感は分かりません。でも、一度でもその経験がある人なら、それをテレビなどで見た時に「このジェットコースターはすごいだろうな」という比較ができるはずです。

とはいえ映画館に行くというのはお金も時間もかかる。かなりの投資です。テレビや携帯電話の気軽さには敵いません。そこでこの映画祭では上映前や後に見どころ解説をしたり、見た後に客席の皆さんと印象に残ったシーンの再確認をするようなトークイベントを開催しています。これで単なる映画の上映にライブ感が加わる。客席の一体感が生まれる。これも映画の上映の仕方の1つの形かなと思っています。

最近、「週刊ファミマガ」(沖縄ファミリーマート)というサイトの取材を受けました。これを読んでもらえると映画祭の概要がイメージしやすいと思います。→ https://www.okinawa-familymart.jp/article/detail.html?aid=10572

「字幕.com」では、これから時々、この映画祭をやっていて思ったこと、そして映画祭の公式サイトでは書ききれない、字幕へのこだわりなどを書こうと思います。

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2016/03/02

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久しぶりの更新です。「スタークラッシュ 超・特別版」Blu-ray。

なんと「ゆるい映画劇場0012」に続いてキャロライン・マンロー姐の連続主演(!)

一点豪華ではなく、十点豪華のイタリアの大作です。

2016年2月26日に発売されたソフトですが、同日、沖縄県那覇市の桜坂劇場で特別上映を行ないました。

「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人にはお勧めできない本作。上映前にネタバレ、矛盾点、破綻ぶりなどを分かりやすく説明して、皆でクスクス笑いしながら見ました。「あ、周囲の席の人も同じところでクスクスしてる」を感じながら、この壮大な宇宙空間を堪能したのでした。こういう作品こそ、映画館という空間でのんびり楽しむべきものだと実感しましたが、1978年の完成以来、日本の劇場では一度も上映された事がなく、この日も1回限りの上映で、我ながらとても貴重な体験になりました。(この特別上映は「ガチバーン映画祭(まつり)」という、毎月1本、レアな作品を桜坂劇場で2年間上映するという企画の1本目。2本目は3/25-3/27の「スウィート・スウィートバック」。3本目は4/29-5/6で「ワイルド・ギース」を上映します。)

さて、いよいよ本題のブルーレイ盤。このソフトの楽しみ方を説明しましょう。「映画はできるだけ予備知識なしで見て楽しみたい」という人には、お勧めできない楽しみ方ですが、(1)何も知らずにメインコンテンツ(アメリカ公開版本編92分)を見る。(2)そのままオリジナル版本編97分を最初の30分見る。(3)そのまま思わず97分版を最後まで見る。(4)監督のインタビューを40分くらい見る。(5)特撮担当者のプロモ映像(のようなもの)を25分くらい見る。(6)音声解説1を聞きながら92分版を見る。(7)音声解説2を聞きながら92分版を見る。(8)キャロライン・マンローのインタビューを75分くらい見る。(9)撮影当時に撮られた8ミリフィルムのホームムービーを20分くらい見る。(10)残りの特典を色々見る。

面倒臭そうですね…。休みなく見てもだいたい9時間(もっとか…)。でも、このソフトを手にしたら、(1)と(2)までは、騙されたと思ってやってみて下さい。(1)と(2)なら2時間で済みます。(1)と(2)を見ると、あら不思議。たぶん(3)まで自然に行きます。(3)まで自然に行けば…。という事です。これは噛めば噛むほど何とやらという味わい深い作品なのです。

冒頭に書いた「十点豪華」は、まず音楽。007の有名なテーマ曲の生みの親ジョ・バリーです。ワクワクします。作品の中の宇宙空間は(フルカラーで色んな色の星が輝き、安っぽく見えますが)、高さ15メートル、幅30メートルにもなる黒い壁に豆電球を仕込んだもの。それもイタリアの有名なスタジオ、チネチッタのサウンドステージに作られたもので、低予算のB級映画なら到底実現不可能な規模での撮影でした。主人公の女宇宙海賊ステラ・スターに襲いかかる穴居人は唐突に飛びかかる描写ばかりで、本編の映像では、彼らが3メートルもジャンプしているなど、本当に体を張ったプロのスタントを見せているのが伝わりませんが、穴居人役の彼らは一流のスタントマンばかり。皇帝の旗艦は後半の浮遊都市と同じくらい安っぽく見えますが、まだ予算があったので細かく作り込まれていて、大きさも軽トラックの荷台に収まるかどうかくらいありました。浮遊都市は残念ながら実際に安っぽい作りだったようですが、それも軽トラックの荷台に近い大きさがありました。そもそも浮遊都市というのが、あまり都市に見えないという問題もありますが…。皇帝役は「サウンド・オブ・ミュージック」の大佐クリストファー・プラマー(「スタートレック」でクリンゴンを演じる前)。「ナイトライダー」でブレイクする事になるデヴィッド・ハッセルホフも出ています。ストップモーション撮影も多く……。こうした「壮大」な要素が、なぜか画面からあまり伝わってこないという、これはすごい作品です。製作は十点豪華でやっていたのに「トンデモB級映画」と言われる仕上がりっぷり。ひどい時には「低予算のトンデモB級映画」呼ばわりです。確かに脚本も二転三転し、92分版、97分版どころか、削除シーンもたくさんあり、そもそも「スタークラッシュ」というタイトルは途中でプロデューサーが言い出したもので、それに合わせてエンディングを変えたとか、イタリア語版では穏やかな性格だったキャラAが英語版制作時にカウボーイか保安官みたいなキャラになってっいったり…。

1回見たら十分の作品とはワケが違います。「1回見たら、また見たくなるけど、しばらく後でいいや」という作品とも違います。オチが分かってしまうと緊張感が無くなって2回目以降は1回目ほど楽しめない、なんてありません。元からそれほど緊張感がありません。でも、ワクワク感は減りません。間違ってリピート再生して惰性で「ながら見」をしても、クスクス笑いのポイントは不動です。(1)と(2)をクリアした人は、最後まで見たくなる可能性が高いです。このソフト1本で週末どころか3連休いけるかもしれません。これで4,968円。

「映画は娯楽の王様」と言われた時代がありました。こういう作品を見ていると、しみじみとそれを実感できる気がします。