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2019/03/10

こんにちは。根本齒科室の根本です。

堀ちえみさんが大変な治療に挑まれている中、口腔外科出身の身としてもぜひともご成功されることを祈るばかりです。
本件に関しては後日少しまとめて書ければと思っています。

さてこの間、市の歯科医師会の理事会がありました。
その席にたまたま市役所の人も同席していたのですが、龍ケ崎市独自の検診である2歳6ヵ月検診を、やめたいと言い出しました。
つまり、予算をつけるので、保健センターではなくて各医院でやってくれというのです。

個人的なことを言うと、せっかくなので本来であれば保健センターで続けてほしかったです。
Eの萌出時期とも合致するので、フロスの指導にはうってつけの時期でもあるし、他にもいろいろ理由はあります。

◆ 常連問題

役所側の理由としては、平日の日中を指定されても若い親御さんは時間に余裕がなく参加しにくいので、日時を指定しないことで行きやすくなるように、とのことのようです。

でも行く側の立場に立ってみると、保健センターだから行きやすいんであって、営利組織である民間の歯科医院にニュートラルな立場で行けといわれても、素直にはいそうですかとは言いにくいものです。

また、2歳6ヵ月児や、その若い親御さんでは、かかりつけの歯科医院を持っていること自体がかなりの少数派でしょう。
まずどこの歯医者に行こうか悩むでしょう。最近は歯医者は数ばかり多くて、そもそも子供が得意そうな歯医者かどうかも分からない。
これでは心配ですよね。
そしてそもそも歯科だし面倒なのでどこも行かない、とorz

ちなみに、市内では成人に対して「歯周疾患検診」、後期高齢者に対して「後期高齢者検診」というものも行っています。

「歯周疾患検診」は自己負担510円ですがちょこちょこあります。
えっ、有料なのに?とお思いかもしれません。

でも受診しないとスゴイ督促状のようなものが届くようなんです。
私の所にも届いたようなのですが記憶にありません
(税金とか年金の督促状のインパクトのスゴさに比べたら・・・)

でも受診者はほとんどは元からの常連さんなことが大半。
あとは常連さんの紹介がちらほらとかでしょうか。

「後期高齢者検診」のほうは無料です。
こちらは紹介すらほぼ皆無、常連さん一色です。

そりゃ、「歯周疾患検診」「後期高齢者検診」な年齢層ならかかりつけに持ち込むのが楽でしょう。
でもかかりつけを持たない若い親御さんに「歯医者を選んでとりあえず逝け」というのはいかにも酷です。だいたい歯医者選びも怖すぎてできない(特定の先輩の医院にしか行けない)自分が言うんだから酷に決まってます。

◆ 予算問題

市役所の人が会合で言っていたのは、ひとりあたり予算は6000円くらいつけられるとのことでした。

そしたらA先生が、検診だけでなく歯のクリーニングまでやりたいと言い出しました。
統計を取りたいだけならいざ知らず、予防効果を波及させるなら、最低限クリーニングをしないと、というA先生のご説はごもっともです。

しかし、そうしたら8~9000円くらい出さないと赤が出てしまいます。

その辺を踏まえてか、B先生が「とりあえず負担だ」と市役所の人の前で怒っていました。

市役所の人は「負担」の理由が分からなかったでしょう。
確かに5~6000円では、赤というのはそのとおりです。
それ以外にもうひとつ、負担の理由があります。
それについては次項(時間問題)で述べます。

ちなみに歯周疾患検診や後期高齢者検診は大変簡便なので、当院では5~6分で終わる内容です。

あと、少し独特で、医院から見ると自己負担510円の保険外診療扱いになります(後期高齢者は無料なので問題なし)。

通常は、同一患者で同日に保険診療と保険外診療が同時に日計表に載るのは「混合診療」といってお上が統計不正の次に嫌う所です。

しかし、この検診の場合は引き続く保険診療への移行を推奨していますし、患者様も「ついでに歯のヤニを取ってくれ」みたいにおっしゃることが多いので、これだけは時間の許す限りご要望にお応えするようにしています。

そうすると歯のクリーニングも希望の人は同日のうちにP病名をつけて保険診療のスケーリングまでいって30分。
どうどうと混合診療するしかありません。

◆ 時間問題

保健センターの幼児検診では1時間に20~30人くらいは診ています。
ひとり2~3分。

じつは検診こそは効率第一なのです。
だからこそ一か所に集めてやるというのは非常に合理的と考えます。

各医院に委託、の悪い例が、失礼ですがA高校さんのケースです。
A高校とは、某通信制の高校です。

ここの場合は、生徒さんが当院に来院して検診するスタイルです。
それがなんと自腹なんです。しかも540円(税込)!
当院まで来るのもご足労でしょうに、これはかわいそうです。

だからか、生徒さんが電話で予約して来院されるのですが、半分は無断キャンセルになってしまいます。
その金でタバコ(成人の場合)とか買ってたりしてorz

検診だったら、私が校舎に行けば済むのに。
検診用のミラーセットも持ってますよ。
いつも思います。

そして時間の無駄と言えば、医院の時間の無駄も無視できません。
まず貴重な予約枠を占拠しておいて半分も無断キャンセルになってしまうので、その分のロスは施設として見逃せません(飲食業の方ならよく分かりますよね)!

だからといって重ねて予約を取って、両方来られたらダブルブッキングです。とくに通常治療の方に大きな迷惑がかかります。
そういうことは、できません。
もう泣き寝入りです(飲食業の方ならよく分かりますよね)!

検診の方が見えたら見えたで大変です。

 保険証で本人確認
 1号カルテを発行する
 カルテフォルダと患者番号をひとつ消費する
 ユニットを掃除する
 トレーとコップを用意する
 1号カルテに歯式を記入する
 会計作業・領収書発行

こんなにやることがあります。
検診そのものの時間の何倍もかかります。

一人ひとりに対するこの辺のセッティングは、会場検診では存在しないものです。これをやるだけでかなりスタッフの手が取られます。

会場検診の時は職員が最初に準備して最後に清掃・片付けするだけなので受診者数が何人でもセッティングは1回と言えます。
だから効率的に仕事ができるんです。

院に来るということは、セッティングを人毎に繰り返す形になる。
これが大変な無駄なんです。
その後、こちらのかかりつけの患者様になっていただければそれはそれでいいのですが、何と言っても相手は高校生。
そんなにたくさん悪い所もあるわけでもないし、勉学や部活や(人によっては)就労に忙しいので、歯医者は後回し。
というか親の紹介でもない限り確実に中断です。

最初に書いた「歯周疾患検診」「後期高齢者検診」で問題なのは、まれに、当院患者でない新患の方が検診だけ希望して、そのまま終了になってしまうときです。
その徒労感ですら半端ではありません。

作ったカルテフォルダと準備の時間が無駄になる。
だから本当は「当院患者様以外の方は「歯周疾患検診」「後期高齢者検診」はお断り」と言いたいところなのですが、それは言ってはいけないルールになっているので、泣き寝入りです。

おもに準備の問題によって、会場検診にせずに各医院に委託すると予算面や時間面での負担が大きくなると言えます。

当院では、検診の方は5分枠にしています。
それでもまだきつい感じがします。

◆ 時間問題おまけ

ちなみに2歳6ヵ月児の場合、私個人的にですが、向かい合わせ抱っこから膝枕が一番早いです。
歯医者と保護者がひざを突き合わせて座り、保護者が子供を向い合せにだっこします。そのまま子供の頭を後ろに寝かせると、ちょうど歯医者の膝の上に子供の頭が12時の位置で来ます。

これは普通のイスを2つ並べてやるのは簡単ですが、歯科医院のイス(ユニットチェア)でやるのは困難を極めます。
 
 膝折れ型である
 回転する

この2つの条件を満たさないと、歯科医院のイスで向かい合わせ抱っこは無理なのですが、そういうと、その条件を満たすのはタカラのラポールくらいしかなくなってしまいます。

歯科医院のイスでは膝折れ&回転できる所がほぼないので難しい。
これも会場検診が絶対的に有利な理由のひとつです。

【今回のまとめ】

100名以下程度の集団では会場検診が圧倒的に有利。
(それ以上になると別)

2019/03/10 10:37 | 歯科の臨床的っぽいこと | No Comments

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