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2018/02/12

こんにちは。根本齒科室の根本です。

いやだけど頑張る
好きだけど我慢する

これは動物にはできない、知的にタフな作業だと前回言いました。

 でもよくここ数日を思い返してみると、どれだけこの作業をできたか?
 ほとんどが好き嫌いに流されて生きていることに気がついて愕然とする。

嫌なことはしない
好きなことだけする

と歯はどうなるか。
ちなみに歯は、自分で勝手に悪くなることはほぼ皆無で、歯がくっついている人の方に原因があって悪くなることがほぼ100%なのは理解してください。

ここで、私が日ごろから気になっている「口が開かない人」について考えてみます。


当院の患者様でむし歯に困っている方のの過半数の方は「口が開かない人」です。
いつも(○○さんはやりにくいなぁ)(●●さんはしんどいなぁ)等と思いつつやっているのですが、我ながら非常に手がかかります。

それで今回このことを書く気になったかですが、1歳3か月になる我が息子の口を見たからです。

離乳食と幼児食の中間くらいの息子。
スプーンで食べさせるのは私の仕事。

ママ手作りの料理は大のお気に入り。
カパッと大きな口を開けて・・・

(すげー!あれっこれうちの患者様の○○さんや●●さんよりも大きくね?)
マジかよ。1歳児のくせしてwww

というか、「口が開かない人」の顎関節の方に問題があるのでは?
思いいたるまでに時間はかかりませんでした。

口がまったく開かない人はもちろんいないわけですが、問題はその開き方です。
開き方が悪いと、将来歯ブラシや治療でかなり苦労することになります。

◆ 顎の運動 について

下顎運動はおおまかに「回転」と「滑走」に分けられます。
まとめてみておくと分かりやすいので「顎が外れる」というのはどういう状態かも併せて示しておきます。

図で言うと、まず①回転運動から始まり、中盤から②滑走運動に移行します。

開く人は初期の①回転がスムーズです。下顎の咬合平面が上顎となす角(青いθ)が45度近くまで開きます。
患者様でも、開き過ぎて歯が唇に隠れてしまうので「そんなに開けないで、8分目くらいで結構です」と言わなければいけない人もかなりいます。

しかし「開かない人」は、下あごが平行に下に行くばかりで、回転しません。
口を開けてもほぼ平行なまま。

ちなみに③の顎が外れる状態は、②の滑走が行き過ぎて、骨の隆起を超えてしまった場合で、傍目には顔面が2倍くらいの長さになったように見えるので一目瞭然です。

付け加えると、顎関節症で顎がなったり「大きく口を開けると外れる」とお訴えの方も少なくありませんが、そのうち99%は③の状態ではなく②の状態の範囲内で、軟組織である関節円板(半月板の一種)が少しずれたレベルですので、大きな心配はいりません。

◆ 顎の運動と骨格 について

もうひとつ、一般論ですが、猪木や荒川静香、野球で言えば内川や石井一久のような、横から見て下顎が出てエラが直線的なタイプ(3級傾向)は可動域が狭めで顎が開きにくく、ダルビッシュや安藤美姫、つんくのような、横から見てエラが直角に近くオトガイがやや後ろでちょこんと尖っているタイプ(2級傾向)は可動域が広く顎が開きやすい傾向があるといわれています。
しかしこれも個人差で大きく変わります。

http://slideplayer.com/slide/8973113/


(直林)

この絵を見れば、大まかなイメージがかみやすいのではないか。

3級傾向の人は、プラークコントロールで不利な点がひとつあります。
それは、下顎前歯舌側部が内側に傾斜しているので、歯ブラシを充てるのが至難の業なんです。
ですから、歯石が付き放題の人が多い。

◆ 私の顎は開くのか、開かないのか

顎が開かない人が(私は口が開きにくい)と自分で気がつくことは、おそらくほぼないと思います。
そういう方は、我々が道具を入れようとしたときにはじめて判明します。とても入れにくいので、やんわりと指摘します。

「窮屈な場所なんで頑張ってください」
「前に歯医者の治療で苦労されたことはありませんか?」

治療していると非常によく分かります。

当然ですが、道具が入りにくい人は、歯が汚い。
我々プロが専門的な道具を使って目視しながらやっても難しいわけですから、一般の方が見ないで勘で歯ブラシでこすったって、端の方なんか全然当たるわけがない。

したがって、歯科疾患の罹患率が高い。
特にむし歯の人に口が開きにくい人が多いのが気になります。

甘党、生活スタイルが杜撰、口腔乾燥傾向などの要因がないのにむし歯になるパターンで、この「口が開かない」は結構多いです。

これは私にとっては絶対的な定理、いや公理です。

名医ではない私は、難しい口は治療しにくいし、簡単な口は治療しやすい。
この辺がすぐにダイレクトに伝わってきます。
ある意味、凡人ならではの利点かもしれませんね。

本当なら、ものすごく重要な情報なので、もっとしっかり伝えてあげたい。

「あなたは口の形が開きにくくて、道具も入りにくいんです」
「私の臨床実感として、平均的にはこのくらい開くものですが、あなたの場合はここで止まってしまってこれ以上開かないのでここに届きません」
「普通に歯ブラシをしているだけでは届きません。ここは頑張ってこうこうしてください。じゃないとここがすぐダメになります」

・・・

患者様、おそらくいい顔はされないでしょう。

「何を基準に、開きにくいとか決めつけてるんだ?」
「歯ブラシ程度で無理したくないし、悪く言われるのは心外だ」

いや、基準は経験ですけど。
それに私が言わないとだれも言わないでしょう。だから進んで猫の首に鈴をつける憎まれ役を買って出る人間が必要なんです。

裏側の歯石も同じです。
私が取れないとだれもその歯石を取らず、その歯石のせいで骨が溶け、(便宜的な呼称としての)歯槽膿漏=手遅れになるわけです。
前の歯医者では技術的に難があったか道具が古かったかなどで、結果としてその歯石を取ってもらえなかった。
だから積極的に憎まれ役を買って出る人間が必要です。

話を顎に戻します。

◇ 顎を開ける努力
◇ 歯ブラシを届かせる努力

について書いてみます。
(歯ブラシを届かせる努力を後に書いたのには理由がある)

顎が開きにくい人は、自分ではもうこれ以上は開かない、これが普通だと思っているので、それ以上開けようとしないものです。

下顎運動はおおまかに「①回転」と「②滑走」に分けられました。

開きにくい人は、基本的に初期の①回転が制約されていることが多いのは先に書いた通りです。
「③顎が外れる」滑走系の運動とは関係ありませんので大丈夫です。

なので、①の回転に限定して、辛抱強くストレッチをして可動域を広くしていくことができたら、歯科疾患の予防に非常に資すること間違いないと、私は断言できると思います。

この顎の①回転を阻害しているものは主に周囲の「靭帯」や「腱」です。無理はいけませんが、これらの軟組織は根気よく柔軟やストレッチをすることで相当どうにでもなります。

ちなみに、股関節を見てください。
靭帯や腱がどうにでもなる大きな証左です。

どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法(Amazon)

これをやれば、私でも4週間後には何とかなるのかもしれません。

しかし、口についてこれを提唱した人はまだいないので、このような考え方が無理のない範囲でぜひ少しでも広まればと思うところです。

分かりにくい補助線ですが、耳の前の赤い点を回転の中心軸とすると、滑走せずに回転だけさせようとしたら、水色の矢印のように、

「下方」ではなく「後下方」

になるのは分かりますでしょうか。
真下に顎を引きずり出したらそれこそ回転軸(赤い点)が前に外れてしまいます。

この「後下方」に上手にストレッチが出来れば、解剖学的にも可動域の制約が徐々に取れてくるのではないかと私は考えます。

頻度ですが、関節円板前方転移に伴う疼痛の寛解のためのストレッチを参考にすれば間違いはないかと思います。
私の場合は一例ですが、入浴中に30秒×3セットくらいが無難だと考えています。
自力で口を開けるのではなく、あくまで他力(右手の力)で下顎を「後下方」に押し下げて、やや痛いレベルの所で止めて30秒です。そのあと30秒のインターバルを入れて1セットとします。

この下顎の可動域については仕事上結構気になるので稿を分けた次第です。

【今回のまとめ】下顎の可動域が歯科疾患の罹患率を大きく左右する(と私は思う)


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