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2018/01/28

こんにちは。根本齒科室の根本です。
まだクビになっていないようなので、今年もぼちぼちですがよろしくお願いいたします。

先週の1月22日夜、久しぶりに大雪が降りました。
大雪といえば、2014年2月8日と14日の、ひざまでつかるような大雪を思い出します。

8日の日は、常磐線が止まってしまい、佐貫から取手駅まで約8キロを「歩いて」行ったのですが、ひざから下がびしょびしょになってしまいました。
14日は朝方に急きょ三島に向かうことになり、何とか常磐線が動いていたので間に合いましたが、昼からドカ雪になりました。
あのときはちょうど父の逝去と重なったのでよく覚えています。
(あっ雪だるまを作り忘れた)と気がついたとき、ふと先般の痛ましいニュースを思い出しました。

◆「2歳児死亡」more

去年7月、福岡県内の小児歯科医院で、虫歯を治療した2歳の女の子が低酸素脳症に陥り、2日後に死亡していたことが、関係者への取材でわかりました。

警察が業務上過失致死の疑いがあるとみて、慎重に捜査しています。

死亡したのは当時2歳だった(中略)去年7月、福岡県内の小児歯科医院で局所麻酔を使用した虫歯の治療を受けた後、唇が紫色になり、目の焦点が合わない状態になりました。

関係者によりますと、異変を訴える両親に対し男性院長は「よくあることだ」と説明して何の医療的措置もとらず、およそ45分後に(中略)近くの病院に(中略)その後大学病院に救急搬送されましたが、低酸素脳症に陥り、2日後に亡くなりました。

大学病院から通報を受けた警察は、業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査しています。

小児歯科医院の院長は、「必要な措置は取ったと考えている」とコメントしています。
引用元:http://newsplusalpha.net/archives/6381398.html

◆ 局所麻酔について

これは見ていて、いろいろな意味でやるせないものでした。
報道では、術後の症状について、院長が「よくあること」と言って、いかにも蛮勇を奮って突き進んだかのように見えます。
また、2歳児への局所麻酔ですが、私は経験がありません。(最小で3歳後半のおりこうさんに1~2度)
一般歯科の先生の大半は、まぁそんなもんだと思います。子供のむし歯で訪れても、進行止め(サホライド)を塗って様子をみましょう、ということが大半なのではないでしょうか。

そこで、以前からお世話になっている、小児歯科の認定医でもある師匠の先生に聞いてみました。

やはり、専門医(小児歯科認定医)でもあり、当院ばかりでなく多方面から依頼されたり行き着いたりした非協力児の治療を数多く手掛けておいでのようです。
いわゆる「●●最後の砦」救助におけるMedic(航空救難員)のような存在、俳句における夏井いつきのような存在、といえば、それ以上説明はいらないでしょう。

2歳児は何度か経験があり、3歳児は頻繁に行っているとのことですが、生まれて初めての麻酔は非常に神経を使うとのこと。微量を入れて様子を見ながらだとのことです。

児の非協力的な点よりも、まず麻酔のアレルギー反応などに気が向くということは、弟子の私(凡人)が言うのも難ですが、「才能アリ」が遠く感じます。
私あたりのレベルでは、どうしても子供が動かないように、とか、手早く処置するには、とか、ナメられないように、とかのほうに注意の大多数が向いてしまい、僭越ながらレベルの差を痛感する、などと傲岸不遜なことを思ってしまいます。

一般的には、歯科の麻酔カートリッジ(2%キシロカイン1.8ml)で極量の目安が成人男性で12~13本と言われていますが、これは麻酔薬よりは止血のためのエピネフリン(=アドレナリン。1/8万)による制約だといわれています。とはいえ、局所麻酔未経験の児は、やはり怖いです。

エピネフリンは、時折動悸などの不快症状(β反応)を引き起こします。交感神経と副交感神経で言うところの交感神経の方が興奮してしまいます。
私も何回か経験していますが、無理せず頭を低くしてしばらく横になって休むと回復します。
そういう人の麻酔は次から、高齢者用などの違う種類のものに変更します。

ただ、麻酔が初めてという人では、幸いにもβ反応を経験したことがありません。
「今まではこんなことはなかったんだけど、今日は・・・」
幼児でもまだ幸いなことに事故はありません。

◆ 小児歯科の先生の話~衝撃の事実

そんな師匠の先生なので、今でもしばしばお世話になっています。
先日も、あるお子様に治療台の上で号泣&大暴れされて、手も足も出なくなってしまったので、またお世話になることに。

後日メールで返信が届き、無事治療が済んだようです。
ところが、先生からの返信は、目を疑うような内容でした。
何とも説明しようがないので、当該部位を引用します。

先日の、●●ちゃんのおかあさんは、●●ちゃんに
「お願いだからちゃんとやって。」
「お願いします!」
と何度も子供に頼んでいました。
「何するの?」
という子供の質問に対しては
「何にもしないから。見せるだけだから。」

私は思わず、

「お母さん、本当に見るだけにしますけどいいんですか?」

と言いましたもん。

・・・お、お願いしますかよ(‘A`)

ちなみに私が修行中のころは、非協力児の子を抑えたりレストレイナー(簀巻き?!)に入れたりするのをよく手伝ったものです。その辺の態勢は非常によく整っており、しばしばスタッフの皆さんと数人がかりでやっていました。

今にして思うと、その辺の、抑え込むか抑え込まないかなどの判断は、慣れていないと難しいかもしれません。
あまり無理やり押さえつけてインシデントになるのも避けたいですし、かといって通常の方法では困難とはいっても、自分が下手なだけかもしれないと思うと、つい道具に頼りたくなるだろうし。。

とにかく、押さえつけられて治療される羽目「になってしまう」2歳児3歳児が一番気の毒でなりません。誰のせいだ?

◆ 後日談ですが、むし歯8本・・・

改めてネットで引き直したところ、なんと2歳にしてむし歯8本という口腔崩壊状態にあることが分かりました。
http://matomame.jp/user/marifx1800/cab265884f719869a6c9

ツイッターなどでは、親が悪い派と歯が弱い派に分かれているようですが、エナメル質減形成などの分かりやすい先天異常があれば必ずニュースなどで言及するはずです。そこで報道しない自由を駆使するようならそいつは人間ではありません。

また、「よくあること」がどのあたりを指しているのかは分かりませんが、

山口叶愛のあちゃん歯医者で異変も医師の対応なく低酸素脳症で死亡は防げなかったのか


この辺りを見ると、「拘束されて」「ラバー」などの単語が出てくることや、報道でも「小児歯科医院」という特徴的な表記になっていることから、院長は一般歯科医に比べて幼児の治療に一定レベル以上の自信を持っていたことが容易に見て取れます。おそらく師匠の先生ではありませんが、院長も、周囲の歯医者でダメで流れ着いてくるようなレベルであったと思います。

これは決して同業だから彼をかばって言っているのではありません。幼児に対して「拘束」「ラバー」は相当慣れていないとスムーズに利用できない道具です。私などもラバーのかわりにZOOで代用してしまうことが多く、むしろ感心します。

しかし、やはり気になるのが、「むし歯8本」です。

ご案内のように、1歳6か月になると自治体の保健センターで必ずイチロク検診があり、歯科も必須になっています。
その前に、小児科で何度も予防接種を行うと思いますが、必ず先生がのどちんこなど口腔内を観察します。

むし歯8本といったら、要観察歯や成りかけも含めてほぼ全滅に近い状態です。小児科の先生が気がつかないはずがありません。

この年齢でむし歯8本ということ自体がきわめてまれな異常事態です。
難病でもないのにどうやったらむし歯を8本も作れるのか、不思議でなりません。

しかし、このくらい簡単にできるとして、一番考えられるのが、「ボトルカリエス」でしょうか(最近はあまり聞きませんが)。

1歳くらいになると、自分で哺乳瓶やスパウトマグ、ストローマグから飲料を飲めるようになります。我が家は麦茶とルイボスティーしか与えていませんが子供がよく飲むからと、スポーツドリンクやジュースをボトルに入れたまま子供に任せてしまう例が時々あるようです。

そのまま放置状態でいると、ボトルの吸い口に当たる上下左右の前歯数本づつ、特に上顎があっという間に酸蝕してしまいます。
これがボトルカリエスです。Google画像検索で結構キツイのが出てきます。

院長はおそらく、そのあたりの環境面における何らかの異常性を敏感に察知して、「これはいけない!」と、スイッチが入りすぎてしまったのでは、と「忖度」します。

その院長のキツイ思いはどこに向かうかというと、100%、いや、200%親です。これはもう、ストレートに親です。
「コイツを何とかしないと、この子は救えない」
院長もプロです。1秒かからないで直観で全てを悟ると思います。

ここまでは、ほぼすべての歯科医が、特にストレートに親に気持ちが向かう所などは「うんうん」と納得するところだと思います。

しかし、そのキツイ思いが親に向いてしまった結果「よくあること」などという敵対的な言葉になってしまったり、その言葉で逆に自分に引っ込みがつかなくなってしまったりしたところはないでしょうか?

傍目八目とは申しますが、チアノーゼ様状態など、急性症状を示している状況では、深入りしすぎだった感を禁じえません。

ある意味、泣き叫んで抵抗する児(とその親)をいかにコントロールするかが小児歯科の腕の見せ所の一つだったりもします。腕に自信があればあるほど(俺はその辺の藪医者共とは違うんだ)と思って頑なになってしまうのかも知れませんが、最後には謙虚な部分を残しておきたいものです。

◆ 1歳2歳の対応が大事~人間に生まれた以上

小さい子供が泣くと、やはり親としては心配になるものです。
2歳になると、子供の「イヤイヤ期」というのが訪れるのはご案内の通りです。

育児サイトなどを見ると、おしなべて
「ある程度子供のわがままは受け止めましょう」
等と書いてあるのを見るにつけ、今からうちの1歳2ヵ月を見ながら暗澹とした気持ちになってしまうのですが。

しかし、私は思います。

人間に生まれた以上、「好き嫌い」を超えた「理性的な努力」が必要です。

いやだけど頑張る
好きだけど我慢する

これは動物にはできない、知的にタフな作業です。
(種によってはある程度芸として仕込むことができる)

これができることは、進歩と成長のための必要条件だと思います。

当然と言えば当然ですが、大人の立場から子供を見ていて思うのは、基本的に

 自分のことしか考えない。自分中心
 好き嫌いでしか判断しない。

です。週末のモールのフードコートにでも行けば、そんな親子連れが掃いて捨てるほどいます。

まずいなぁ、と思うのは、親までが、子供の好き嫌いに振り回されてしまっているところです。
「これいや」
「じゃぁ、これこれ」
「これこれもいや」
「じゃぁ、あれ」
「あれもいや」
「もー、いいかげんにしなさい」
こんな感じで会話が進んでしまうんです。。

これが究極まで進むと、子供に「お願いします」になっちゃうんだろうと思います。

人間は基本的に、自分の都合ばかりではなくある程度周囲のことも考えて行動しないといけないし、自分の好き嫌い以外の基準で動かないといけないものです。

だから、物事の判断や行動基準は、好き嫌いと切り離して検討できる知的にタフな作業が必要なんです。

そこは少しづつ子供にはわかってもらわないと、と思います。

ただ、まずは好き嫌いの感情をしっかり学ぶ必要があり、その意味でイヤイヤ期は必要悪な時期かと思われます。
この辺については、もう少し書く機会があれば書いてみたいと思います。

【今回のまとめ】

小児歯科。幼児にむし歯を作ってしまう人的・環境要因の闇は深い

2018/01/28 01:34 | 歯科の臨床的っぽいこと | No Comments

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