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2016/08/29

こんにちは。根本齒科室の根本です。

しばらくご無沙汰しております。
最近、Yahooに出てきた記事ですが、フロスには有効なエビデンスがないというAP通信の報告があって、少し気になりました。

こんな記事(ケアネット)もありました(見られないかも)。

これについて私の考えを簡単に述べたいと思います。

最初にそもそも論ですが、まとめて言ってしまうと、
「フロスは、まず歯ブラシがしっかりできた上で」
ということになってしまいます。

そして、フロスには得意な点や不向きな点もあります。

◆ むし歯(間接)と歯周病(直接)のちがい

まず論文を見てあれっと思ったたのは、発表者が(AP通信はさておき)「アメリカ歯周病学会(AAP)」だという点です。
(これ、むし歯よりも歯周病、こどもよりも成人のことかな?)

たしかにフロスは、私の臨床実感からも、ある種のむし歯の発生を防ぐ効果はあっても、歯周病との関連は微妙です。
歯周病の場合、むしろ歯間ブラシの方が圧倒的に向いています。

それはなぜかというと、むし歯はプラークの関与が<>間接的ですが、歯周病はプラークが直接関与するからです。

むし歯は、「プラーク(むし歯菌)」「ショ糖」「歯」「時間」の4要素が重なってできます。

①むし歯菌が糖を食べ、酸を排泄する
②その酸で歯が溶ける

の二段階です。

歯周病は「プラーク(歯周病菌)」だけでなってしまいます。
①歯周病菌カルシウムと結合して歯石になり残留する
 一部はそのまま歯周ポケットにもぐりこむ

①’歯周病菌(歯石)の表面の膜タンパクそのものが害をなす

などのように一段階です。

このよう菌体そのものが害をなす点で、むし歯菌と決定的に異なります。
直接的/間接的、どういうことでしょうか。
分かりやすい例をひとつあげます。

オーストラリアにアボリジニという先住民族がいますが、彼らは昔はむし歯がありませんでした。
現代人のように歯を磨いていたかというとそんなことは決してありませんでした。
それでもむし歯がなかったのです。

ところが白人(もともと流刑者による植民地)の入植とともに砂糖が大量に流入したとたんに、彼ら先住民族の歯はむし歯でぼろぼろになってしまいました。

同じような例として、モンゴルの事情が、丸橋全人歯科の丸橋先生の著書でも紹介されています。
本によると、昔ながらの遊牧などで暮らすモンゴル人には、まったくむし歯が見られなかったのに、やはり西洋文明が流入しているウランバートルなどの子供たちを見ると、日本以上にむし歯に侵されてしまっていたとのことでした。

これは、むし歯菌だけではむし歯にならないことを端的に示しています。
「むし歯菌+砂糖」となってはじめてむし歯になるのです。

これが間接的の意味です。
「むし歯菌+砂糖」
どちらかを外せれば、むし歯にはなりません。

いっぽう、歯周病菌は、菌体の表面に悪い分子(LPS)が並んでいて、これが歯肉に直接触れることで歯肉に刺激を与え、炎症を起こさせます。
だから歯周病菌の作用は直接的なのです。

ざっくりですが、まだ病原菌がカルシウムと結合しないでふわふわのオカラの状態で炎症が起きている場合は歯肉炎、歯石になると歯周病ということが多いです(あまり学問的に正確な定義ではありません)。

いずれにしても菌体(表面の悪い分子)が直接歯肉や歯周組織に害をなすことに変わりはありません。
ですから、歯周病を止めるには、直接菌体(や歯石)を除去して減らすことしかありません。

プラークを減らすことでより大きな効果が得られやすいのは、むし歯よりも歯周病です。

フロスは、基本的に食渣(食べかす)を取るものであり、プラーク総量のコントロールが大事な歯周病には向きません。
プラークの総量をまず減らすには普通の歯ブラシでスクラビング法がしっかりできていることが大前提です。

◆ フロスの向き不向き

フロスがむし歯に有効な場面は、いくつかあります。

◇ なかでも、乳歯のD-E間の仕上げ磨きには必須です。

小児の患者様を診るときに、まず何をおいても見るところは、乳歯のD-E間です。
以前こちらのコラムでも書きましたが、ここは接点が不均等な形をしていて、
食渣がはさまりやすかったり、プラーク(むし歯菌)が取れにくかったりします。

参考までに、私が校医をやっている馴馬台小学校のデータから一部を引用します。

棒グラフの右側は、治していないむし歯の割合です。
3年生は39.1%と、1年生2年生と比べてもかなりの割合です。
しかし4年生になるととたんに激減します。
これは、むし歯になりやすい乳歯のDが交換で脱落する時期に一致しますので、Dがとてもむし歯になりやすい歯であることは一目瞭然です。
ここを守れるのは、おそらくフロスだけでしょう。

◇ フロスで、目立たないむし歯が発見できます。

フロスが引っ掛かる所は、詰め物が合っていないか、そこにむし歯があることを示します。
もちろん接点の部分なので、通常肉眼では見えません。
(光の透過性の差を見て診断するとか、ダイアグノデントペン(高額)で判定するなどがあるにはあります)

けっこう、フロスの引っ掛かりの感じがいつもと違うのは、有効な前兆だと思います。

むし歯ができると通常、片方の接点が崩れて部分日食のように凹んできます。
そこに隣の歯が入り込んできて、接点や歯と歯の距離はせばまるのが一般的です。
そういう状況だと、フロスも通りにくいので、目で見てなくてもすぐにわかります。

△ 歯と歯がくっついているとは、フロスは通りません。

ブリッジや連結冠などが典型的ですが、T-Fixという歯同士の接着剤固定のところや、矯正後の保定装置のワイヤーリテーナーを接着剤で止めたものがついている人などは、そこの部分はフロスが使えないのは当然です。

そういうところは、歯間ブラシやワンタフト(一束)ブラシのほうが効率的です。

△ 強く使うと、歯肉を痛めることがあります。

外側(頬側)や内側(舌側)に比べて、接点の直下の歯肉は大変薄く、すぐに炎症になります。
ちょっと強く歯肉に向けてはじくようにブチブチやっていると、すぐに歯肉を痛めてしまいます。
フロスに血がついてくるようなら、圧力が少し強すぎるかもしれません。

以上になります、
今回は簡単でしたが、混乱しやすい内容でもあったので、自分なりにまとめてみました。
基本的には、菌種もロジックも違う「むし歯」と「歯周病」にはそれぞれ異なる対応を取ることを
頭においておくことです。

【今回のまとめ】

フロスは歯周病よりも、ある特定のむし歯に有効である。


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