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2013/11/12

こんにちは。根本齒科室の根本です。
急激な冷え込みで、風邪をひかれる方が非常に増えております。ぜひご自愛下さい。

唐突ですが、看板を直しました。早く直れよGoogleストリート

ところで、風邪を引いていてもいなくても、歯医者に飛び込むのは勇気がいります。
まして初診ではなおさらでしょう。
(何をされるんだろう?)と思うと、歯医者の敷居は高くて門を叩きにくい。
「こんなになるまで何で放っておいたんだ」と怒られて、キュインキュイン削(ry
・・・想像するだけで恐ろしい、まさに地獄絵図です。

でもご安心下さい。
結論から言うと初診時はそんなに、というか、全然ヤバくないことが多いんです。
(何をされるんだろう?)
院長の大まかな頭の中の把握が、我が身の安全?!につながるwww第一歩です。

<強い痛みの2例>

まず最初に、我々が新患や急患の方々を見ていて、「これはお気の毒に」と思われるような強い痛みを覚える2例についてお断りしておきます。それは

▼ 歯肉周囲が、急にパンパンに腫れあがったもの
▼ むし歯が何もしなくてもズキンズキン痛い&熱いものも痛いもの

大体このパターンです。
この2つには共通点があるので、後で項を分けて述べます。

<主訴がない場合>

たとえばホワイトニング希望とか、全体的な検診希望とか。
この場合は、診断とか型取りしかしないので危険性()はゼロです。

<主訴がある場合>

受付が連絡を受ける所から始まります。通常は電話でお受けするのですが、まれに、ご本人が医院に訪れて予約を取られることもあります。

① まずは、緊急事態であるかどうかの判断が大事です。

◇ 取れたけど、痛みもないし、時間ができたので診てもらいたい

みたいな内容だったら、まずは心に余裕ができます。いっぽう、同じ取れたでも、

◆ 取れたのが前歯で、みっともないから何とかしてほしい
◆ 取れたところが痛い or かめない

などのような場合には緊急性が高いです。

② 専門用語ではなく一般的な言葉で伝えられます。

受付では、当然専門用語は使いません。
その中で、大まかに分類した状態が院長に伝えられます。主なところでは

◇ 痛い
◇ 腫れた
◇ 取れた

などのようなざっくりとした分類です。
もちろんそれぞれの中に細かい小分類がありますので、その言葉だけでは何とも判断できません。

③ 伝えられた内容から、必要な処置を推測します。

◇ 痛い の分類

冷たいのだけしみる^知覚過敏、C2
何もしなくても^Pul
熱いのだけ^たまにP急発
冷たいのも熱いのも^Pul
じーんと10秒以上しみる^歯髄充血
⇒落ち着くか、Perか

☆ 冷たいものだけがしみる場合

処置としては軽微なもので済むことが大半です。
初診や急患だったら、おそらく応急処置レベルでしょう。
しかし、症状がぴたっと劇的に取れないこともあります(とくに知覚過敏)。
ちなみに、知覚過敏の場合は、治療よりも生活指導がメインです。
おもに日中のかみしめグセの見直しと、歯みがき粉の見直しです。

☆ 冷たいのも熱いのもしみる場合

熱いのがしみる場合は、大まかに2通り考えられます。

ひとつは、神経がやられて歯髄反応が出ている場合です。
この場合は、とりあえず痛み止めを出して穴を仮にふさいで様子を見たりすることもあります。
ただ、痛みのレベルにもよりますが、患者様の同意が取れる場合は、その場で麻酔して神経を取る、などという話になってしまうこともあります。
とりあえず痛み止めを出して穴をふさいで、の場合も、次回はやはり麻酔して神経、のような話になってきます。

もうひとつは、歯ではなく歯の周囲の肉や靭帯(歯根膜)が炎症を起こしている場合です。
雑菌がたまったり、過剰な力がかかって打撲を起こしているようなところでは、熱いのがしみることがあります。
しかし、これは歯がしみているのではなく、歯肉がしみている状態です。

雑菌がたまった場合は洗浄・消毒して、ときに抗生物質(化膿止め)を出したりします。

ただ、炎症が起こって腫れている中を洗浄するときは、歯肉が押されたり食い込んで痛い可能性があります。でも、そういうところを洗浄すると、たいていオカラのようなプラークや膿がいっぱい出てきます。
大体、どこでも人間の体で皮がかぶっているところはカスがたまって汚くなるものです。
出ちゃうと、すっきりしますよ。

打撲している(咬合性外傷)ときには、必要に応じて咬み合わせを丸めたり隣の歯と接着したりして、負荷を軽減します。

☆ じーんと10秒以上痛い場合(主に冷水痛)

これは歯髄充血といって、微妙な状況です。
いちおう可逆可能な状態とされているので、まずは安静指示になります。

たいていは時間とともに落ち着くのですが、まれに悪化する場合があり、残念ですが、その場合は神経を取る形になります。

また、落ち着いたと思っても、しばらくすると歯の下1センチくらいのところが腫れてきたり、イボみたいなものができたりすることがあります。
これは神経が死んで、膿のようになって流出してきた状態です。歯肉内から歯肉外(口腔内)に流出してきた場合は、雑菌が穴を伝って歯や骨に逆流するので、やはり神経を取るときと同じ操作で歯の中の掃除・防腐処置が必要になります。
歯は死んでいるので麻酔は必要ありませんが、根の治療なので回数はかかります。。

◇ 腫れた の分類

奥^Perico系
その他^
 P急発系
 Per系
 ハセツ系

☆ 後ろの歯、とくに下顎の奥が腫れて痛い

若い方に多いのですが、十中八九、親知らず、とくに下の親知らずの周囲が急に腫れあがったパターンです。
ここには咀嚼筋(咬筋)がついているので、そちらにも炎症が波及すると、口が開きづらい、という症状を併発することもあります。
余談ですが、埋まっているような難しい親知らずを抜いた後に、純粋に剥離や縫合など、抜歯操作の影響による炎症が咀嚼筋に波及して、数日のあいだ顎が突っ張って口が開きにくくなることがあります。これは一過性のことなので、後日解消します。

こういう、急性炎症の日は、いろいろと問題があり、あまりその日に立ち入ったことができません。
何かを本格的に行うのは急性炎症という山を越えてから、です。
詳しくは後述する<強い痛みの2例>をご覧下さい。

☆ もう少し前の方が腫れて痛い

親知らずの場所でない場合は、まず歯周ポケットを見ます。
その歯の周囲だけ腫れていて、腫れている場所が歯の生え際(歯肉縁)に近い場合は、歯周ポケット内の雑菌が”バクハツ”した可能性が高いです。

これも、歯周ポケットの内部にはプラーク・雑菌が大量に繁殖している場合がほとんどなので、とりあえずやることは、電解水やぬるま湯による洗浄・消毒と、飲み薬(抗生物質、鎮痛剤etc)で炎症を抑えることです。

歯の生え際(歯肉縁)から少し離れている場所が腫れている場合は、原因が歯の内部的なものであり、若干厄介なことになってくることを疑います。
この場合は、歯の生え際からおおむね1センチ程度離れた所から膿が出てきている形になることが多いです。まず局所のレントゲンを撮り直して、肉眼で見えない部分の変化を観察します。

こんな風に炎症が起こるほどですから、すでに骨などの周囲の硬組織は、歯肉の中で融けたり変形を起こしています。

これは絶対ではありませんが、腫れや膿の漏孔の位置が、歯の生え際から1センチ以上と1センチ未満で、可能性が分かれてきます。

☆ 生え際から1センチ以上離れている所が腫れている~感染根管

この場合は、過去の根の治療の偶発症を疑います。
レントゲンを撮ってみて、根の先に黒い影があるような場合は、昔の根の治療のときに、治療行為自体で偶発的に感染したものの再発の可能性が高いです。
歯周ポケットは、腫れている盛り上がりの部分の上も平坦です。
処置も、閉じた系(根管内)の汚染に対してのみになります。
(根尖孔外バイオフィルムが疑われる場合は若干外科的な処置が必要です)

☆ 生え際から1センチ以内の所が腫れている~歯根破折

この場合は、後々ちょっと面倒なことが多いです。
歯が縦に割れている可能性が大だからです。
レントゲンを撮ると、特有の黒いオーラ(後光の逆)が根全体を覆うように映りこんできます。
歯周ポケットは、腫れている盛り上がり部分だけ他のところよりも深く、ズボズボって1センチくらい入ります。

これ、後々結構アカンヤツです。

根が縦に割れると、割れたヒビをつたって病原菌が行き来したり、ヒビの奥で菌が繁殖したりするのを歯肉の外から抑えることができません。
ですから基本的に保存不能で、診断としては抜歯の適応になってしまいます・・

もちろん「抜きたくない」ということであれば、当面そのまま置いて様子を見たりもしますが、他の歯に比べると明らかに短命です。

これらのように、腫れていても、強い症状がない場合は、当日は現状の説明や投薬にとどまる場合がほとんどです。
ペンチやドリルでいきなり「グイッ!」となんてことはありません。

◇ ぐらぐら・・・案外重症のことも

差し歯がグラグラ
 上だけ取れている~最悪の事態はまぬかれそう
 Brで片方ダツリ~全交換
  ハセツ→上がコアごとダツリ~最悪の事態も
 全体的にグラグラ~P2あくまでXP
  ハセツ系?P急発系? 

歯がグラグラしてくることは、自覚症状のひとつです。
「自覚症状」ということは、それだけで、思いのほか進行している可能性が高いです。

基本的に、物がグラグラしているということは、足がしっかり固まっていない状態ですから、レントゲンで確認します。

骨が固まっていない場合と、根が割れていて芯棒を支えきれない場合があります。

根が割れていて芯棒を支えきればない場合は、割れる方向にも寄りますが、さっきの「アカンヤツ」になる可能性が高まってしまいます。
斜めに割れて、残りの根が十分大きい場合は、再製作も理屈上は可能です。
骨が固まっていない場合は、可能ならば丸めたり、隣の歯と接着して揺れや負担を抑えます。

しかしそもそも・・・

割れてきたということは、今までの形では力学的に持たないことの証左です。
取れてきたということは、今までの形では力学的に持たないことの証左です。

また同じように作りたい・・・「同じ轍を踏む()」という言葉がありますね。。

とはいえ、当日は「どうしても今何とかしてくれ」というような場合を除いては、大仕事になることもなく、仮のフタや仮の固定などで対応します。

何度もこのコラムでも書いてきましたが、歯は自覚症状に乏しいのが特徴です。つまり、自覚症状が出た場合は、高い確率で思いのほか進んでいることが多いのです。

<強い痛みの2例>

冒頭に、お気の毒だとご紹介した、強い痛みの2例について少しまとめます。

◇ 共通点は?

▼ 歯肉周囲が、急にパンパンに腫れあがったもの
▼ むし歯が何もしなくてもズキンズキン痛い&熱いものも痛いもの

Perico/P急発
PulPer/急化Pul/一部壊死

いずれも、必ず、付随した「炎症」とりわけ「急性炎症」が起こっているのが共通点です。

炎症の原因としては

 感染~微生物的(むし歯菌、歯周病菌)
 外傷~無生物的(物理的(咬合圧がメイン)、火傷、化学的刺激を含む)

のようなものが考えられます。

神経がずきずき痛い~歯髄炎
腫れて痛い~歯根膜炎
         歯周炎
親知らずが痛い~智歯周囲炎

◇ 炎症って、なんだろう?

詳しくはググって下さい。簡単にまとめます。

炎症とは生体の免疫反応の一種です。
物理的な刺激、病原菌や雑菌、ウイルスなどによる刺激、化学物質による刺激などが原因となって、正常な状態から炎症状態になります。

そのときの局所は

◆ 血管に細かい穴が開く(血管透過性亢進)

なんと、白血球やリンパ球などが局所に向かいやすくするため、血管に穴がたくさん開くのです。ですから、血管の内側も外側も含めて全体的に熱を持って、充血したり、ときに膨張したような感じになります。
つつき回したり切り込めば当然出血しやすいし、血が止まりにくいです。また、

◆ 局所のpHが酸性に傾いています

じつは麻酔の注射は弱アルカリ性なので、とりわけ急性炎症の部位には効きにくいことが多いです。それなのにプロスタグランジンなどの発痛物質なども分泌されるので、踏んだり蹴ったりです。

このように、血も止まりにくい、麻酔も効きにくい、となると、なかなかその場で手を出すことは困難です。
ですから、局所の洗浄・消毒や投薬(消炎鎮痛剤や抗生物質)で様子を見るのが定石です。

◇いつまでも地獄?!は続かない

こう書くと、急性炎症ってなんて恐ろしいんだ、と怖じ気づく様が見えるようです。
また人間は楽しい時間ほど短く、辛い時間ほど長く感じるものです。

しかし、このような地獄?!の状態は、長くは続きません。
おおむね2-3日、どんなに長くても数日です。

それを過ぎると、「急性炎症」⇒「『慢』性炎症」となり、ひとまずは激烈な症状は落ち着きます。
ただ、当然ですが、病気が治ったわけではありません。

今度は血も止まりやすいし、麻酔も効きやすくなりますので、この時期の間に原因を除去する本格的な処置に移行します。
また再発して「急性炎症」をくり返してしまうと、また手が出せなくなってしまいますし、ほぼ全例で、状況が更に悪化してしまいます。

「気合で治した」???
風邪じゃないんだから、歯やお口ではありえません。

<おまけ>

この仕事をしていると分かりますが、診てもむし歯などの悪いところがないのに、歯の痛みが出るケースも少なくありません。
歯やお口そのものに、むし歯や顎関節症のような直接的な原因がない場合は、歯科では適応外となります。
このように、治療や簡単な生活指導の範疇を超えている、などで、他覚的所見がない場合は
 

 神経痛
 不定愁訴
 負の自己暗示(過度な集中)
 神経症、心身症etc

などのような方向を疑うことも、ままあります。
当然このような場合は、様子を見たり、他科を勧めたりすることになりますが、重要なのは、その症状の経緯を初期の頃からできるだけ詳しく記録することです。。

いちおうプロ向けですが、簡単なオススメの本としては、こんなのがあります。

<おわりに>

いかがでしょうか?
「歯医者は痛い」「歯医者は怖い」
という先入観は、じつは古今東西を通じてあります。 こんなのとか

しかし、我々の側から見ると、初診時にできることはかなり限られています。
とくに症状の強いケースではそうです。

検査や診査以外では、たとえば仮のフタをしたり、局所を洗浄・消毒したり、お薬を出したり、といった内容が精一杯なところです。

まれに「今日どうしても歯を抜いてくれ」のようなケースがないわけではないですが、それでも最近は内科的な診断の重要性が高まっていますので、よほどでもない限り、むしろおいそれとハイハイと抜歯するわけには行きません。

以上のように、初診時に限って言えば、痛いことをされるケースはまれで、”安全率”はきわめて高いです。

その後、ある程度の診断・計画があり、徐々に進んでいくことになりますが、それはそれで後で検討すればいい話です。

ということで、今回のお題の結論としては、『歯医者の初診は怖くない』でした。
(他の歯医者は知らないよ)

【今回のまとめ】

初診時には痛いことをされない可能性が非常に高い。ご安心ください。

2013/11/12 02:18 | 歯科の臨床的っぽいこと | No Comments

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