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2011/06/11

こんにちは。根本齒科室の根本です。

まずは、身近な歯の話についていくつかテーマをあげて述べてみたいと思います。
第1回目のテーマは、「歯は治療できない」です。
そして、究極の正解かもしれません。

そんなバカな、と思うかもしれませんが、これが私がプロとして
私なりに誠心誠意ずっと仕事を続けてきた結果、
ようやく達した結論です。

その前に、「治療」とはいったい何でしょう?

たとえば怪我や病気になったら、私たちはお医者さんに通います。
そうすると薬を出してもらったり、処置したり、場合によっては
入院して手術をしたりします。
その結果「治癒」します。
がんや一部の難病、生活習慣病ではこの限りではないこともありますが、
おおむね「治癒」します。

歯の場合はどうでしょう?
おそらくほとんどの人が、むし歯や歯周病は病気であり、歯医者で治療すると治癒すると考えていると思います。
だから患者様が歯医者の門を叩くときは「痛くなった」「こわれた・欠けた」ときなのです。

しかし、その実態はひどいものです。

むし歯の場合を簡単に例に挙げます。
まず麻酔なり何なりして、悪い部分(感染歯質)を削りますね。
むし歯が大きいと、歯の神経を取らなければいけないこともあります。
たいていはここで、とりあえず仮のフタをします。

しかしここからが医科と歯科で決定的に違います。
ここで傷口のように、フタでもしておけば穴(窩洞)がモコモコ盛り上がって
塞がってくれるでしょうか?
取った神経はフタの中で再生してくれるでしょうか?

これが医科なら、怪我をしたら包帯をしたり、骨折したらギブスを当てておいたり、
病巣ができたら手術で除去したりすれば
自然治癒力で勝手に治ってくれます。当然です。

歯科も医療を名乗るなら、フタの中で穴がモコモコ盛り上がったり
取った神経が再生したりしなければ
絶対におかしいのです。当然です。

しかし残念ながら削った歯は二度と再生しません。
取った神経も二度と再生しません。
別のもので埋め合わせなければなりません。

「そんなの当たり前だろう」

いや、ちょっと待ってください。それって、おかしくないですか?
「別のもので埋め合わせ」してるんですよね。
ぜんぜん「治癒」してないじゃないですか。
治癒してないということは、「治療」じゃないじゃないですか。

・・・気がつきましたか?そうなんです。
「別のもので埋め合わせる」のは、治療でもないし、狭義の医学的行為でもないのです。
ちなみに歯科以外の分野でこのようなことがあるのは「義足」「義手」「義眼」などが一般的です。

これらの作成には理学療法士や義肢装具士など、必ず医師とは別の方々が登場します。
私も詳しいわけではありませんが、義足で言うと仮義足(治療用装具・訓練)までは保険でできますが、
本義足(更生用装具・機能や形態の回復)は障害者手帳で作成、もしくは実費が一般的です。

このへんの分野は、もちろん「リハビリテーション」と呼ばれる範疇です。
リハビリテーションは外科(Surgery)でも内科(Medicine)でもありません。
つまりリハビリテーションと称する機能と形態の回復は、狭義の医科ではないのです。
もちろんそれが、どちらが価値が高いとか低いということとは全く関係ありませんが、
事実としてそのように区別されるのです。

強引に言えば、「きれいに切る」のが医療、「後始末をする」のがリハビリテーションです。

話を歯に戻しましょう。・・・お分かりいただけただろうか?(replay)

脅かしてすみません。
私たちは、歯医者で自分の歯を治療してもらっていた、と今までずっと思わされてきたのですが、
じつはほとんど治療されてこなかったかわりに徹頭徹尾「リハビリテーション」ばかりされ続けてきたのです。

その傍証のひとつとして、医者(医科医師、MD)が歯の治療ができるか、という問題があります。
日本では、医者(医科医師、MD)は、抜歯、投薬、むし歯の削除や歯石の除去、炎症や感染を起こした神経の除去などはできますが、

◆型を取る
◆セメントで取り付ける
◆歯の矯正

はできない「ことになっています」。
これは、これらの行為が医療の範疇ではなく、リハビリテーションだからです。

「これでは医者はほとんど歯の治療ができないではないか」

そのとおりです。
私はこれは、医者(医科医師、MD)が「できない」のではなく「しない」んだと思っています。
医者は歯医者(歯科医師、DDS)を理学療法士や義肢装具士の一種だと思っていて、
歯科「治療」と称してつめたりかぶせたり入れ歯を入れたりするものについては
機能と形態の回復、つまりリハビリテーションであると考えている、と推察します。
事実、差し歯や入れ歯の事をひっくるめて英語でOral rehabilitationと言いますし。

それが良いとか悪いとかの問題ではありません。
事実としてそうである、ということです。

しかし、歯科医師として一言言わせてもらいます。

あなたが自分の歯について「治療」と「リハビリテーション」を混同してしまうことは、
あなたの歯にとって致命的であり、今後の人生にきわめて悲惨な結果をもたらすのです。

「治療」なら治療の考え、「リハビリテーション」ならリハビリの考えでとらえるべきです。
ですからあなたが受けた一般的な歯の治療については、
リハビリの一種だった、と思ってください。

その上でひとつ、歯科については大きなポイントがあります。

それは、歯は再生したり治癒しない、ということです。

【今回のまとめ】

歯の治療は治療ではなく、リハビリテーションである。

2011/06/11 02:42 | 歯科の臨床的っぽいこと | No Comments

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