今、遺言書を作成する人が増えてきています。
遺言書を作成する人が増えてきた背景には、遺産相続による親族間のトラブルを経験した人が、自分の子や孫の世代に同じような思いをさせたくないという思いから作成したり、未婚者や子供のいない夫婦が増え、自分の財産を法定相続人以外の第三者に譲ろうと考える人が増えてきたことが考えられます。
戦前は、家督相続という制度があり、いわゆる長男が全ての財産を相続するように法律で決められていました。しかし、戦後の民法では、家督相続の制度は無くなり、兄弟間であれば皆平等に相続分が規定されています。
戦後の民主・平等教育の成果もあってか、国民の権利意識が高まったため、遺産相続の場面においても、自分の権利を主張する人が増えてきました。
そのため、「相続」が「争族」になってしまうという骨肉の遺産相続トラブルが増えてしまったのです。
ところで、遺言書というと、資産家が遺産分けのためにあれこれと思案して書くものであるとか、自殺する人の書き置きであるとか(これは遺書の勘違いだと思われますが)、普通の人にとっては縁遠い文書であるように思われがちです。
確かに、全ての人が遺言書を作成する必要があるわけではありません。
でも、多くの人は、遺言書を作成することによって、メリットを得ることが出来ます。
特にLGBTは、遺言書を作成することによって、自分の遺産をパートナーに譲ることが可能になります。
信行さん(56歳・仮名)は、パートナーと相互に遺言書を作成して、お互いに万が一のことがあった場合には、相互に財産を継承できるようにしました。
信行さんの両親は既に他界していて、残る親族は2人の兄弟だけでした。
もし、信行さんが遺言書を作成せずに他界した場合、パートナーと暮らす信行さん名義のマンションは、信行さんの兄弟が相続することになります。
全ての財産をパートナーに譲るという遺言書を作成したおかげで、二人の生活の本拠であるマンションの権利が、信行さんの兄弟に相続されることは無くなりました。
このケースでは、法律上、兄弟姉妹には遺留分(相続人に対して留保された相続財産の割合)が無いので、遺言書さえ作成すれば、パートナーに全財産を譲ることができるわけです。
さて、遺言書と言っても、実はそう簡単に作れるものではありません。
遺言書の様式は法律で厳格に決められており、その様式に反して作成すると、法的な効力が否定されてしまいます。
また、遺言書には、①公正証書遺言 ②自筆証書遺言 ③秘密証書遺言という3種類のものがあり、通常は、公正証書遺言か自筆証書遺言かを選択して作成することになります。
私としては、公正証書遺言をお勧めしています。
公正証書遺言は、公証役場という役所で公証人立会いの下で作成され、その安全性と確実性は遺言書の中で最も高いものと言えます。
但し、デメリットとしては、内容を公証人や2名の証人に知られてしまう事と、公証役場に支払う費用などが必要という点です。
一方、内容を誰にも知られないように作成するのであれば、自筆証書遺言という手段があります。
自筆証書遺言であれば、費用もかからず、誰にも内容を知られずに作成することが出来ます。
デメリットとしては、遺言書の厳格な要件を満たすことが難しいという点と、紛失や変造の恐れ、死亡後に家庭裁判所で検認という手続きが必要という点です。
総合的に勘案すると、やはり公正証書遺言が最も安心して作成できる遺言書だと言えるでしょう。公証人や証人から秘密が漏れる恐れはほとんどありませんし、LGBTの方は、その事を告白することなくして作成することが可能です。
遺言書を作成する前に、まずやっておかなければならないことがあります。
それは、自分自身についての詳細なデータを整理するということです。
親族関係や財産状況、遺しておきたいメッセージなどについて、自分なりに整理しておかなければなりません。その整理したデータが、遺言書を作成する際の重要な情報源となります。
このデータの整理に活用できるグッズが「エンディングノート」と言われるものです。
このノートに自分に関する情報を書き込んでいくことで、自分自身の最期と真剣に向き合う事が出来、最低限の準備が可能となります。
エンディングノートは、今静かなブームとなっており、書店などで購入することが可能です。
参考までに、エンディングノートの作成を支援している団体のホームページをご紹介します。このホームページは、私も所属している高齢者を支援するNPO法人のホームページです。
http://homepage2.nifty.com/fas9/index.htm
普段は考えない自分自身の最期について、たまには考えてみてはいかがでしょう?










