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2009/11/06

アキラ君(仮名)は、地方から都会の専門学校に入学し、一人暮らしを始めました。
都会に出てきて、初めての一人暮らし。
若者がゲイライフを満喫するには十分な環境が、その都会にはありました。
アキラ君は、次第に都会でのゲイライフにどっぷりと浸かっていきました。
生活は夜行性になり、学校の授業はサボりがちになりました。そして1年も経たずに退学。
アキラ君は、都会で学生としてではなく、フリーターとして生活していく道を選択しました。

ゲイバーの店員を皮切りに、ゲイ向けのアダルトグッズ販売店員、ゲイビデオスタッフ、ゲイの社交場のスタッフなど、「その道」の現場職を転々としました。
しかし、いずれも長続きせずに、それぞれ数ヶ月で辞めてしまいました。
アキラ君曰く「客として見ていた側面と、内部にスタッフとして入った感じのギャップがあまりにも大き過ぎた」とのこと。
結局アキラ君は、お金に困ると、ゲイビデオに出演し日銭を稼ぐような状態になりました。

そんな生活の中で、アキラ君に彼氏が出来ました。
アキラ君より年下の彼は、かつてのアキラ君同様に田舎から都会に出てきたばかりの若者でした。
二人はアキラ君のアパートで同棲を始めました。
アキラ君の彼は、昼間は大学に通い、夜は居酒屋でバイトをしていました。
アキラ君は次第に彼氏に生活費の大半を頼るようになっていきました。
彼氏は、アキラ君がゲイビデオに出演するのを嫌い、お金の工面は自分がするので、アキラ君にはもう二度とゲイビデオには出演しないでほしいと願ったのでした。

二人の生活は慎ましい生活のはずでしたが、アキラ君のゲイライフは何も変化しませんでした。
彼氏がバイトに行っている間に、アキラ君はゲイの仲間と飲み歩いたり、彼氏を裏切るような行為を平気で繰り返しました。
やがてお金に困ったアキラ君は、友人や消費者金融から無計画に借金をし、そのお金で遊び、返済のためにまた借金をするという繰り返し状態になりました。
自転車操業的な借金生活は、そう長くは続かず、アパートに督促状が届き始めました。
アキラ君の彼氏は、なけなしの貯金から返済を肩代わりしてくれましたが、それでも全額返済には及びません。

そしてとうとう、何の前触れもなく、アキラ君はアパートから姿を消してしまいました。

残されたアキラ君の彼氏は、周囲の反対を押し切って、大学を中退し、昼も夜も働きながら、アキラ君の残りの借金を完済しました。
アキラ君が姿を消して1年ほど経った頃、アキラ君の目撃情報が寄せられました。
アキラ君は以前出演していたのとは別のビデオ会社のゲイビデオに出演していたのでした。
そして、あるボーイズマッサージ店に勤務していることも判明しました。
アキラ君の彼氏は、急いで現地に向かいました。

音信不通になって1年、二人はアキラ君が勤務する店で再会しました。
アキラ君と彼氏は、店のオーナーを交えて話し合いを持ちました。
これまでの経緯を一通り聞いたオーナーは、アキラ君を思いっきり引っ叩いた後、解雇を通告しました。

二人は一緒にアパートに戻りました。
1年前と全く変わらないアパートに戻ってきたアキラ君は、これまでのことを少しずつ彼氏に話し始めました。
彼死もまた、アキラ君にこの一年のことを話しました。
アキラ君の彼氏は、アキラ君のことを許しました。そして、やり直すことを一緒に誓いました。
アキラ君は昼間の仕事を探し始めました。就職難のため、なかなか思うような条件での仕事が見つかりません。
とりあえず、近所のコンビニでのバイトは見つかりました。

そして、初出勤の日、アキラ君は、アパートの前の道路で交通事故に遭いました。

徒歩で道路を横切ろうとした際に、大型トラックに轢かれてしまったのです。
ほぼ即死でした。

アキラ君の彼氏は、その時、アパートで事故の音を聞いていました。
駆け付けた時には、もうその最悪な結末が即座に理解できる状況でした。
この時ばかりは、アキラ君の彼氏は動揺を隠しきれませんでした。
アキラ君は複雑な家庭環境で育ったため、こういう時に連絡を取れる家族が居ませんでした。
困ったアキラ君の彼氏は、いくつかの伝手を頼って、私に連絡をくれました。
アキラ君の彼死もまた複雑な家庭環境で育ち、二人は似たような境遇にありました。

アキラ君の死後事務をしながら、私はアキラ君の生い立ちから死に至るまでの短くとも波乱万丈な一生を知ることになりました。
それを正確にアキラ君の彼氏に伝える仕事を、先日ようやく終えました。

怒りと涙と悔悟と無念、相手があってのものであり、この世から消えてしまえば、もう、何も残りません。残すことに意味はないのです。
ただただ、良い思い出だけが頭の中を駆け巡るのだとか。

限りある人生、どのように生きてもまたそれはそれで人生なのですね。
愛する人に出会うことも、愛してくれる人に出会うことも、本当に尊いことです。
合掌。。

2009/11/06 12:01 | LGBTと周囲の人々, LGBTと恋愛 | No Comments

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