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「どこに相談したら良いかわからなくて。。主人にも相談できずに、もうどうして良いかわからなくて・・・」
タダならぬ様子で相談を寄せられたのは、中学2年生の男の子を持つ30代の母親Oさんです。
Oさんによると、息子さんの部屋を掃除していて、怪しげなDVDを発見し、それを再生してみるとゲイビデオだったというのです。後日、息子の部屋からボーイズラブ系のマンガ本も数冊発見したとの事。
「本人にも聞けないんです。普通のH本とかなら、まだ話のしようはあるのですが・・・」とOさん。
なるほど、確かに困りますね。
では、普通のH本ならどう対処するのか、Oさんに聞いてみました。
Oさん「普通のH本なら、とりあえずそのままにして、息子に家庭で出来る程度の性教育をします。第二次性徴についてや、性の大切さについてきちんと教えるつもりです」
Oさんは、自分の息子が性に興味を覚える年齢を想定して、自分なりに家庭で行う性教育についての計画を立てていたようでした。そのための書籍なども購入して準備万端という矢先に、息子の部屋で発見したH本やDVDはゲイ物だったということにかなり大きなショックを受けているようでした。
私はOさんに、当初の予定通り、家庭で行おうとしていた性教育をそのまますることを勧めました。お子さんの性的興味の対象が同性であろうが異性であろうが、「性」というものに興味を持ち始め、H本やDVDを入手していることには違いないので、正しい性の知識(特に性感染症についての自己防衛に関する部分)について教えることは有意義だと考えたからです。
Oさんは、なるほどと理解してくれましたが、「ゲイがいけない事とは思わないのですが、自分の息子にはゲイになって欲しくありません。今のうちに何とかできないでしょうか?男女物のH本を与えたら治りますか?」と大真面目に聞いてこられました。
たしかにLGBTの多くの人は、自分のセクシャリティについて、幼年期~少年期の早い時期に周囲の友達とは違うという違和感を感じていたといいます。だとしたら、中学2年生という時期は、自分の本来のセクシャリティに関する興味を本能的に表す時期なのかもしれません。
しかし、中学2年生(14歳)という年齢では、セクシャリティを確定的に捉えるのは難しいでしょう。好奇心旺盛な時期ですし、興味本位からの情報収集かもしれません。
Oさんには、現段階でセクシャリティを確定することはできないという事と、多様なセクシャリティについて偏見なく適切に教えてあげるようにアドバイスしました。
子供がマイノリティ(少数者)として生きていくことについて心配し、できることなら多数者側の人間にして人生の困難を取り除いてあげたいと思う親心自体は理解できます。
しかし、セクシャリティは本人が選択肢を持っているようなものではありません。いわば本能的要素であって、治るとか方向転換できるとかいう次元のものではありませんし、特定のセクシャリティを強制できるものではありません。
『性の低年齢化』が問題になっていますが、成人向けの雑誌やDVDが、中学生の子供にも簡単に入手できてしまう現状があります。携帯電話やパソコンからインターネットに接続して、猥褻な画像サイトや出会い系サイトを利用する子供たちも多く居ます。
子供から性情報を完全にシャットアウトすることは、もはや不可能といっても過言ではありません。
親が子供にできることは、情報を正しく理解するための知識を教え、日頃からの対話を軽んぜずに、子供のちょっとした変化を感じ取れるだけの親密な関係性を築いておくことでしょう。
子供には子供の世界があります。そこは大人は踏み込んではいけない領域です。子供が子供の世界で上手に安全に過ごすことの出来るだけの能力を身につけさせてあげることが、親の責務と言えるでしょう。