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2009/07/03

養護教諭のMさん(35歳)は、ある高校の保健室の先生です。
Mさんには、生徒から様々な悩み相談が寄せられ、その一つ一つに丁寧な対応をしていました。
特定のクラスを担任しない養護教諭という立場もあって、Mさんは全校生徒のカウンセラー的な役割を担っていました。

ある日、放課後の保健室に「M先生だから相談したいことがあるのだけど…」という1年生の女子生徒Kがやって来ました。
Mさんはいつものように雑談をしながら生徒をリラックスさせて、徐々に本題に入っていきました。

Kは、「制服のスカートをはきたくない」「女性的な胸が嫌だ」「友達に着替えを見られたくない」といったことを話し始めました。
Mさんは日々生徒の様々な相談に対応してきましたが、こういう内容の相談は初めてでした。
最初は、制服が嫌いで私服を着て登校したいという相談かと思いましたが、話を聞いていくうちに、Kが『女性の体であること』に違和感を感じていて、そのことについての相談だとわかりました。
Mさんは、どのようにアドバイスして良いかわからず、その場ではKの話をじっくり聞いてあげることしかできませんでした。
KもMさんにアドバイスを求めているというよりは、自分の悩みを聞いてくれるだけでいいというスタンスでした。
一通り話を聞いたMさんはKに「またいつでも話をしに来てくれていいからね」と伝え、Kも嬉しそうに頷くと、満足した様子で帰っていきました。

Mさんは、Kに適切なアドバイスが出来なかったことをすごく悩み、そして、この事を他の教諭に相談することもできずにいました。
そして色々と調べている中でレインボーサポートネットの存在を知り、こういう場合の対処について相談を寄せられました。

さて、このような事例の場合、まず重要なことは『決めつけてはいけない!』ということです。
Kは女性であることに違和感を感じており、男性になりたいと願っているのではないか?と推測することもできますが、必ずしもそうではないということを念頭においておかなければなりません。
Kはあくまでも女性の体であることに違和感を感じているのであって、心の性にまで違和感を感じているとは限らないのです。
セクシャリティを考える際には、①「心の性」 ②「体の性」 ③「恋愛対象の性」の3要素を考慮しなければなりません。
このそれぞれについて、当事者がどのような考えを持っているのかで、その対処法が異なります。
まして、まだ高校生のKに、セクシャリティを決めつけるようなアドバイスをするのは時期尚早でもあります。
大切なことは、自分で考える余裕と、それに必要な情報の提供をしてあげることです。
焦って決めるような事柄ではないという事と、自分の気持ちに向き合う時間と正確な情報、そしていつでも話を聞いてあげられるよという包容感で包んであげることが重要なのです。
ただ、もしKが、心と体の性の不一致により、精神的に追い詰められ、病的なレベルにまで達しているような場合は、専門の医療機関に速やかに委ねるべきでもあります。
高校生であるKにとっては、その生活の大半を過ごす学校という場で、自分の中での大きな悩みをいつでも聞いてくれる存在があるということだけでも、かなりの支えになることでしょう。

Mさんには、こうした「性」の3要素や、レインボーサポートネットに寄せられた過去の相談事例からのケーススタディなどの情報を提供し、それを学校現場で生かして頂くことにしました。
昨今の学校は、私が学生だった頃に比べると格段に生徒のメンタルヘルスに気を配り、カウンセリングなどの体制を充実させてきています。
生徒が『誰かに悩みを相談する』という行為自体について、自然なものとして受け入れ、積極的にカウンセリングを受ける習慣を身につけていけば、LGBTの当事者やその周辺の人間として悩んでいる青少年の救いの場がまた一つ増えることになると期待しています。
しかしそのためには、教育現場の大人たちが、LGBTに対する正しい理解と対処を身につける必要があるのは言うまでもありません。Mさんのように親身になって生徒の相談に向き合う先生が増えることを願うばかりです。

2009/07/03 12:01 | LGBTと周囲の人々 | No Comments

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