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2008/12/05

結婚適齢期のゲイとレズビアンが、周囲からの結婚のプレッシャーや世間体から便宜上結婚する『友情結婚』というものがあります。
便宜上の結婚といっても、婚姻届を役所に提出し、戸籍上の夫婦になるわけですから、外形上は普通の結婚と何ら変わりありません。
しかし、その夫婦のセクシュアリティには齟齬があるわけで、普通の夫婦とは大きく違うわけです。
お互いが納得して結婚しているのだから何の問題も無いようにも思えますが、円満にいく場合とそうでない場合があります。

まず、円満な友情結婚について。
ゲイとレズビアンが何らかのきっかけで知り合い、友人としての理解を深め、男女の肉体関係は無いにしても、お互いを人生のパートナーとして共に生きていくことを決意して結婚し家庭をつくるというパターン。
これは、長い時間をかけ様々なエピソードをお互いに経験しながら、最終的に結婚という選択肢を取り、結婚後もお互いのセクシュアリティを尊重しながら生活していくというものです。
まさに、ゲイとレズビアンの友情が、愛情に近いまでの形(友情と愛情の区別がつかないまで昇華した状態といえるかもしれません)になり、一緒に生活をしたいとか、家庭を築きたいという感情にまで高まっているのです。
もはや便宜上の結婚とはいえないかもしれません。だからこそ、円満な友情結婚といえるのです。

それでは、円満とは言えない友情結婚(危険な友情結婚)について。
便宜上の結婚という点を最優先し、とにかく「結婚しています。既婚者です」という状態を作り出すために、お互いのことを十分に知らないまま婚姻届を提出してしまったようなパターン。
友情結婚を斡旋するサイトなどで知り合い、割と短時間で婚姻手続に至っているケースです。
お互いに便宜上の結婚を切望しているので、後々のことをよく考えずに婚姻届を提出している場合が多いです。
そのために、結婚後お互いの相性が合わないとか、相手が望んでいたような配偶者の役割(夫として…、妻として…)をしてくれないという理由で離婚に至ってしまう場合が後を絶ちません。
ただこの時に、お互いが離婚に同意すれば良いのですが、片方が離婚に同意してくれない場合には泥沼の離婚戦争が始まります。
これが最も危険な状態なのです!
相手が離婚に応じてくれない場合、裁判所に調停を申し立てることになりますが(離婚においてはいきなり裁判ではなく最初は調停が行われます。「調停前置主義」)、裁判所の調停委員に友情結婚であることやお互いのセクシュアリティについてきちんと説明できるのでしょうか。
このような夫婦の場合、便宜上の結婚をしているわけですから、真に夫婦になりたいという意思をもってするのではなく、「結婚という制度」を利用するためだけに結婚手続をしたわけですから、制度の悪用とみなされかねません。
それはもはや「友情結婚」などという綺麗な言葉ではなく「偽装結婚」です。
偽装結婚は、公正証書原本不実記載罪などの犯罪となる可能性もあります。代表的な例は、外国人と偽装結婚して在留資格を不法に得るような場合です。これと同じように判断されかねません。
離婚調停や調停不調後の裁判において、偽装結婚と判断されかねないような事実を告白しますか?
離婚するにはそれもやむを得ないかもしれません。
そもそも偽装結婚なので、婚姻自体が無効だと主張する法廷戦術もあり得るかもしれませんが、かなりの犠牲を必要としそうです。
そして何よりも、調停などの公の舞台に話が進んでしまうことにより、友情結婚の目的であった周囲(親・兄弟・親戚・会社など)に対するセクシュアリティの秘密がバレてしまう危険性があります。
これでは友情結婚をした意味が全くありません。むしろ逆効果ですね。

実はこの危険な友情結婚によるトラブルが増えています。
レインボーサポートネットにもこの手の相談が多く寄せられています。
結婚の手続き自体は、婚姻届に必要事項を記入押印して、役所に提出すれば簡単に出来ます。あっという間です。
その手軽さの反面、離婚で揉めた場合は、大変ややこしい事になります。
友情結婚は円満に夫婦としての生活を送ることができるのであれば、それは夫婦としてのお互いの在り方の自由の範囲内のことであって、外からの干渉を受けるものではありません。
しかし、円満さに欠ける結婚生活に陥ったとき、お互いがとても傷つく結果になりかねないのです。
最近では、ゲイとレズビアンの間だけでなく、ノーマルなセクシャリティの人と友情結婚をするゲイやレズビアンの人も出てきました。
このパターンでも、離婚で揉めた場合には大きなトラブルになります。

自分のセクシュアリティに嘘をつかずに生きていける世の中になれば一番良いのかもしれませんが、残念ながら現在の日本ではまだそのような世の中にはなっていません。
そこで、苦肉の策として友情結婚を選択する人が居るのですが、私としては、トラブルの多い友情結婚は決してオススメしません。
友情結婚というものを初めて知った時に私は、「上手いこと考えるなぁ。ゲイとビアンの利害に適ったものだね。」と感心すらしていましたが、その実態と失敗例を知るにつれ、これは止めさせなければと思うようになりました。
もちろん、先に述べたように円満な友情結婚もあるわけで、友情結婚の全てを否定することは出来ないかもしれません。
しかし、最近の友情結婚のパターンを見ていると、たまたま友情結婚的な結婚をしたという様なものではなくて、友情結婚斡旋サイトなどで知り合ってお互いのことをよく知らないまま手続きだけを優先させたようなケースが目立っています。
これでは、円満な友情結婚生活を期待することは難しいでしょう。
セクシュアルマイノリティであるか否かに関わらず、結婚適齢期の未婚者には周囲からの結婚のプレッシャーがかかります。
そのプレッシャーから解放される目的だけでの友情結婚は安直過ぎるのではないでしょうか。
結婚とは家庭を持つこと、家族を作ることです。そこに一番必要なのは、他の何よりも『愛情』であるべきです。
友情結婚に早々に失敗するケースは、友情を愛情かそれに近い形にまで高めることが出来ていない段階か、そもそも友情すらないという状態だと言っても良いでしょう。

色々な方と友情結婚について議論をすると、「家族」って一体何なのだろうね?というところに行き着きます。
家族を書類で裏付ける戸籍や住民票の制度は、進化する『家族の在り方論』に追い付いていないのかもしれません。
書類では愛情は測れません。だとするなら、真に愛情を持って家族になりたい、家族を作りたいと願う同性カップルに結婚かそれに類似する制度を新設しても良いのではないでしょうか。
そうすれば、自分を偽るために友情結婚を選択するセクシュアルマイノリティも減るような気がします。

2008/12/05 12:05 | LGBTライフ | 1 Comment

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[…] 中橋さんは、2008年11月にJunkStageのライターとして参加されました。以来、まる2年以上もの間、隔週金曜日に必ずコラムを掲載してくださる、非常に稀有なライターさんです。 話がいきなり脱線しますが、私のJunkStageでの任務の一つに更新管理というものがあります。あるライターさんが月に何回更新しているかを確認し、回数や内容によってはヒアリングなどをさせて頂いている訳です。JunkStageはあまたあるメディアの中でも(僭越ながら)非常に更新回数や内容をシビアに確認しておりますので、在籍していらっしゃるライターさんの多くは、ほとんどの方が私からのメールをお受け取り頂いた覚えがあるかと思います。 が、中橋さんには一度もこのメールを送ったことがありません。 2年間。決して短くもないこの期間、中橋さんは一度も締め切りを破ったことが無いのです!そしてコラムの内容はいわずもがな。昨年のJunkStageでは満場一致の大賞を受賞され、またアルファ・ブロガーアワード2008の中間審査を突破した「友情結婚」のコラムは未だに高いアクセス数を誇っています。 これが、いかに凄いことか、お分かり頂けるでしょうか。 […]

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