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2009/01/30

LGBTに対する『理解度』や『受け入れ度』は、人によって大きな格差があります。

中でも顕著なのは世代間での格差です。

年齢が上がれば上がるほど、LGBTへの理解や受け入れの度合いは低くなっていきます。中には明らかに差別的な表現をされて嫌悪感を露わにする方もおられます。

こうした世代間の受け入れ格差は、各世代の生育環境や社会情勢、教育などが深く関わっていると思われます。

RSNでは企業や団体に、LGBTセミナーを実施していますが、講演中に思うのは、年齢の高い世代の人にLGBTに関する正しい理解を促すのは本当に難しいということです。確たる理由もなく毛嫌いしている人の誤解や偏見を解いていくという作業は容易ではありません。

さて、こうした世代間の受け入れ格差は、様々なところに影響しています。若手は理解の少ない世代が作る厚い壁にぶつかり、それを何とか突き崩そうと努力しています。

例えば、私は行政書士という仕事を通じて、LGBT当事者の皆さんの行政手続や法的書類作成のサポートをしていますが、こうした活動について同業者から理解を得られないことがよくあります。行政書士の業務である各種行政手続の代理や相談、契約書や遺言書作成に関する業務を行っていても、なぜLGBTがそういう業務の対象となるのか理解していない同業者が少なからずいるのです。これは、LGBTの人々が抱えている問題を理解していないからでしょう。

LGBTというのは、セクシャリティの問題であり、セックスの問題ではありません。レズビアンとかゲイといった言葉を聞いただけで、何か「いかがわしい」分野の業務をしていると思い込んでしまう残念な“先生”がおられます。こういう人に遭遇してしまった時には、その人のために一からLGBTセミナーをするわけにもいかないので、苦笑いでスルーするしかないです。

同じような話をマスコミの方から聞くこともあります。RSNの活動についていくつかの新聞社などが報道してくれたことがあるのですが、そうした記事が紙面に実際に載るにも現場の記者さんと上司の様々な駆け引きがあったり、テレビ局の場合には現場のディレクターと上層部の意見の食い違いなどがあるそうです。

それでも、LGBT問題に取り組もうとする若手のジャーナリストたちは、自分の信念のために社内の様々な抵抗勢力と戦いつつ、LGBTの人々が抱える問題を社会に訴えているのです。

ただ、残念なことに、LGBTのことを全く理解しておらず、興味本位で見世物的に番組で取り扱おうとして、LGBT当事者を紹介して欲しいと申し出をしてくるマスコミ関係者もいます。

いわゆる「カミングアウト」的な瞬間をネタにしようという不心得な人です。LGBTに対する正しい理解を促進するようなスタンスであれば、RSNとして希望する相談者には報道機関を紹介することもあり得ますが、露骨に視聴率稼ぎ的で見世物的な番組作りに協力することはできません。

基本的に、RSNに相談して来られる方は、そうした社会への露出を希望している人は少ないということも知って頂きたいです。

今、テレビのゴールデンタイムという時間帯には、どのテレビ局の番組でも、LGBT関係の人と思わしき人たちがたくさん出演しておられます。

それはそれで、LGBTの存在が社会に認知される一つのきっかけにはなると思いますが、あくまで『見せる』ことをビジネスとしている人たちであって、LGBT当事者全員がそういうスタンスではありません。

実際に私がお会いするLGBT当事者の皆さんは、見た目でそれとわからないような方々がほとんどですし、社会的にオープンなカミングアウトを望んでいる人は少ないです。

自分がLGBT当事者だとカミングアウトすると、テレビで見たあの人たちと同じように思われるのは嫌だという人もいます。

おそらく、テレビで見る人たちは、ことさらLGBTであることを強調しているように見えているからでしょう。

そうしたLGBTであることを強調していること自体を面白おかしく見るのは現在の社会的風潮といってもいいでしょう。

LGBTが社会に正しく受け入れられているというよりは、一種の『見世物』になってはいないでしょうか?

それを助長しているのは他ならぬマスメディアなわけで、これが『見世物』であるならば、やがて流行は過ぎ去り、あの方々はテレビ画面から消えていくでしょう。もちろん、そんなことは織り込み済みなのかもしれません。

マスメディアといっても、報道とバラエティでは伝えるスタンスが異なるので、これをごちゃ混ぜにして語るのは失当かもしれません。

しかし、見ている側としては、報道とバラエティの区別はさほど重要ではなく、いずれも社会現象の一つの表れとして、自然に脳裏に焼き付いてしまうのではないでしょうか?

LGBT当事者のセクシャリティに対する葛藤を知れば知るほど、バラエティ番組で見るLGBTの皆さんがどうしても刹那的に思えてなりません。

現在の日本では、多くの一般の人に、LGBTについての正しい理解をしてもらう場というのは、まだまだ少ないのが現状です。しかし、若い世代が自然とそれを受け入れ、セクシャリティの差異を差別的なものとして捉えるのではなく、一種の『個性』として認識し始めている現状をみると、少なくとも若い世代にだけはLGBTに対する正しい理解が進行しているのではないかと思います。

若い世代は、メディアによって作られた流行や自分の傍にいるマイノリティから影響を受けて、自然にそれを受け入れているのであって、『人権』というものを特に意識してLGBTに対する認識を深めているわけではないと思います。

しかし、そういう自然な感覚がまさに自然権としての人権に近いものであって、こういう世代がこの国を動かす様になった時、日本のLGBTに対する社会制度は大きな変革期を迎えるのかもしれません。

01:01 | LGBT論 | No Comments
2009/01/16

彩香さん(26歳・仮名)は、3年付き合っている彼氏の聡さん(28歳・仮名)と婚約したばかりでした。

二人は聡さんの会社の先輩の紹介で知り合い、順調に交際を重ねて、ゴールイン間近の幸せいっぱいのカップルでした。

ある休日、二人はいつものように都内のお気に入りの場所でデートをしていました。いろいろなお店が入るビルの中でのウィンドーショッピング。何を買うわけでもないけれど、ただ二人で時間を過ごすことだけで幸せを感じれる時間だったそうです。

気に入ったお店があったので入ってみると、そこで誰かに声をかけられました。「聡く~ん!お久しぶり~!!」

聡さんの知り合いらしきその人は、そのお店の女性スタッフでした。

聡さんはちょっとビックリした様子でしたが、彩香さんにその女性が大学時代の友人だと紹介しました。そして、その女性にも彩香さんのことを「自分の彼女」だと紹介しました。

聡さんとその女性(亜紀さん)は少しばかり話をしていましたが、すぐに終わって、聡さんは彩香さんを連れて店の外に出ました。

彩香さんは、聡さんの学生時代の友人に会ったのは初めてでした。というのも、聡さんは地元も大学も遠方の地方出身で、上京してきたのは就職後だったからです。一方の彩香さんは生まれも育ちも江戸っ子です。

彩香さんは、聡さんの大学時代の話は、聡さん自身から聞いていて、学生時代の友人関係なども聞いたことがありましたが、今日会った亜紀さんの話は聞いたことがありませんでした。

「もしかして、モトカノ?」と思い切って聞いてみましたが、「そんなわけないじゃん」と素っ気ない返事。彩香さんにとっては、別に気に留めるほどのことでもなく、その時はそれ以上の突っ込んだ話はしませんでした。

挙式の具体的な日程も決まり、二人はその準備などで忙しくなっていきました。彩香さんは結婚式の二次会の幹事を務める人から、聡さんに何かサプライズプレゼントをしようと持ちかけられ、聡さんの学生時代の友人にビデオメッセージをしてもらおうと思いつきました。

そこで、以前に聡さんと行ったお店で会った亜紀さんのことを思い出し、聡さんには内緒でお店に会いに行きました。亜紀さんは快く応対してくれて、後日二人だけで会うことになりました。

そして約束の日、彩香さんは亜紀さんにビデオメッセージの話をしました。亜紀さんは少し戸惑った様子でしたが、大学時代の友人たちに連絡を取ってビデオメッセージを作ると約束してくれました。二人は色々な話をして打ち解けた仲になりました。彩香さんが少しだけ疑っていたモトカノ疑惑も解消されました。意気投合した二人は、その後も会うようになり、二人だけで飲みに行く仲になりました。ビデオメッセージを秘密にするために、聡さんには内緒の行動でした。

ある時、亜紀さんは随分と酔っ払って言いました。「聡の元彼の話を知ってる~?(笑)」

「モトカレ?モトカノでしょ。聡はゲイじゃないわよ(笑)」彩香さんが突っ込むと、亜紀さんは「やっぱり知らないんだ。アハハハ~。」

えっ?彩香さんは酔いが醒めてしまいました。でも真相を聞かないわけにはいきません。亜紀さんにアルコールを勧めながら、聡さんのゲイ疑惑の真相の全てを聞き出すことに成功しました。

亜紀さんによると、聡さんは大学時代に深い関係になった同性の友人が居るとのこと。その話は、聡さんの大学時代の友人の中でも亜紀さんともう一人の女性の友人しか知らない秘密だということ。亜紀さんは、聡さんの相手の男性とは今も連絡を取っていて、その人はもう結婚しているとのことでした。

彩香さんは、このモヤモヤを抱えて聡さんと結婚するのは耐えられないと思い、勇気を出して聡さんに話をしました。すると聡さんは、真摯に事実を認め、秘密にしていたことを謝り、今はゲイ的な行動は全くしていないと言いました。その上で彩香さんと結婚して欲しいと、あらためてプロポーズをしました。

彩香さんは悩みました。このまま聡さんと結婚していいのか?聡さんはゲイなのか?

誰にも相談できず、自分一人で悩んでいた彩香さんはRSNに相談を寄せられました。

こういう場合、当事者同士がよく話し合うことが重要です。彩香さんと聡さんがよく話し合って、二人の関係の障害になっていることについて正面から向き合うことが重要です。

そもそも、聡さんはゲイなのか? これは難しい問題です。

聡さんが過去に同性愛的傾向があったとしても、現在は女性と付き合っている状況などからして、ゲイというよりはバイセクシャルでしょう。真相は聡さん本人しかわかりませんが、一時期ゲイ的行為があったとしても、本質的なセクシャリティはストレートであるという場合も考えられます。

彩香さんは、聡さんが結婚後に内緒で男性と関係を持つようなことだけは嫌だと言っていました。

同性・異性に関わらず、不貞行為は結婚生活を崩壊させる原因です。

結局、彩香さんは、聡さんが過去の話を秘密にしていたことを許し、結婚をされました。

この先は二人の問題です。二人が夫婦としてどのような関係を築いていけば良いのかは二人が決めることです。

彩香さんには、セクシャリティの話や、結婚後に夫の同性愛行為が発覚した場合の事例、同じような境遇の方の事例などをお話して、ご自身の判断の材料にしてもらいました。

この彩香さんのケースは結婚に至りましたが、逆のケースもありますし、結婚後に夫(妻)の同性愛が発覚する場合もあります。

そして、踏み込み具合というか、ゲイ(レズビアン)の度合いなども様々です。つまり、頭の中で想像(妄想?)しているだけなのか、行動に移しているのか?行動の頻度なども。

ゲイ(レズビアン)だった人が、ストレートになるのか?という難問もあります。

日々の相談に触れ、セクシャリティの壁というか、区別というか、その境界が曖昧な人が増えていることをことごとく実感していますが、必ずしもそういう人同士が結婚するわけではないので、この彩香さんのケースのような事例は今後増えていくのではないかと思います。

あなたの彼氏(彼女)の過去に、ゲイ(レズビアン)又はバイセクシャルの事実があったとしたら、どうしますか? 別れますか? 付き合い続けますか?

どういう選択をしても間違いではないはずです。

ただ、セクシャルマイノリティに対して偏見がないと公言している人の答えは限定されているような気がします。というより、限定されているべきなのかもしれません。私自身、セクシャルマイノリティに対して偏見がないと公言している1人でありますが、ここは正直苦しいところです。

ゲイやレズビアンとバイセクシャルは似ても似つかないものです。また、少々の経験をもってしてセクシャリティを判断することはナンセンスでもあります。

セクシャリティの区別を迫られるような発想や、偏見がありませんと宣言することで作ってしまっている『区別』自体が、実は人間の自由な感性や行動を制限しているのではないでしょうか。

とはいえ、こういう『区別』の発想は、長い時間をかけて作られてきた社会慣習や、「常識」という名の社会規範、あるいは法制度や行政手続などの『区別』を基本とする社会制度などによって自然と頭の中にインプットされるものであり、これを否定したり対峙したりすることは現代社会との戦いという壮大なものになってしまうでしょう。

本当に自由な世界というのは、それを欲したいと願う人の連鎖が長い時間をかけて獲得するものなのでしょうね。

2009/01/02

明けましておめでとうございます。読者の皆様には、今年もよろしくお願い申し上げます。
今年もレインボーノートでは、一般の方に向けたLGBT関連の記事を書いて参ります。
今年はなるべく、セクシャルマイノリティの方の具体的な事例をご紹介できればと思います。さて、2009年1回目は「交替主婦生活」です。

レズビアンの「美玖さん(38歳・仮名)と優香子さん(35歳・仮名)」は付き合い始めて16年目のカップルです。2人は大学在学中に知り合い、学生時代から交際をスタートさせました。

お互いを永久のパートナーと位置づけ、養子縁組による入籍も考えましたが諸々の事情で養子縁組はせずに、二人の間だけで効力を有するパートナー契約を結ぼうとRSNに相談を寄せられました。

パートナー契約は、婚姻契約に準じた内容を盛り込みますが、この2人は一般的なパートナー契約の内容の他に特別な条項を盛り込みました。
それが『交替主婦条項』です。

この交替主婦条項というのは、一方が3年間外に働きに出て、もう一方はその間家事全般をこなすというものです。
つまり、主婦生活を3年交代で行うわけです。
美玖さんと優香子さんは共に薬剤師の免許を有しているので、就職に関してはある程度恵まれた環境であるからできる技なのかもしれません。
共働きをすると、お互いが忙しくなり2人の時間をゆっくり過ごせないと考えたようです。
幸いなことに、今勤務しているドラッグストアが次の交替を受け入れてくれるという合意も出来ているそうです。できればこの先ずっと同じドラッグストアで2人の3年交替をやっていきたいと考えておられます。
自分たちのライフスタイルを守ることを第一にして、クオリティの高い生活を送っているこの2人の例は、非常に理想的なケースだと思います。

さらに、2人は自分たちの子供をもうけることを真剣に考えています。
AID(非配偶者間人工授精)を用いて、年齢の若い優香子さんに出産してもらおうというものです。
そして子育てに関しても交替主婦契約の通りに行おうと考えておられます。
セクシャルマイノリティのAID利用に関しては、様々な問題点があるのですが、もし医療機関がGOサインを出せばパイオニア的事例になるかもしれません。
2人はAIDの施術に関して、国内での実施に拘っていないので、海外で施術を受けてくる可能性もあります。
最先端の生殖医療は、セクシャルマイノリティカップルの家庭構築を可能にする技術でもあるわけです。
しかしながら、我が国の戸籍制度はこうしたレアケースにはもはや対応できるものでは無くなっています。
そもそも、同性婚を認めていませんし、同性同士のカップル間に「子」が出来るという想定はありません。
戸籍制度と最先端生殖医療の問題点については、別の機会に記事を書こうと思います。

人生の伴侶を得た人が、幸せな家庭を築きたいと願い、子供が欲しいと願うのは自然な感情かもしれません。
それは、セクシャルマイノリティであっても同様のはずです。
セクシャルマイノリティだから家庭を持ったり子供を授かることを諦めなければならないという時代では無くなってきているようです。