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2014/06/27

ある日、レインボーサポートネットの相談所に、中学生の子を伴った母親が相談に来られました。

相談の内容は、「子供が同性愛者である事を母親にカミングアウトし、母親としてはどうして良いかわからない。子供が大人になった後、同性愛者がどのような人生を送ることになるのかを、教えてほしい」というものでした。

話を良く聞いてみると、母親としては、同性愛者が悲惨な人生を送ることを子供に教えて、改心して欲しいという意図があることがわかりました。

子供の行く末を心配する親心なのでしょうが、あまりにも短絡的で無知な決め付けです。

まだ中学生という年齢ですから、セクシュアリティを決めつけるようなことはせず、子供からのカミングアウトに対しては、包容力をもって接してあげることが重要なはずです。

この母親と子供には、様々なセクシュアリティの人たちの話をし、その分類自体を気にする必要はなく、自分を型にはめようとする必要はないのだということを説明しました。

子供なりに悩み、決断して母親にカミングアウトしたのでしょうから、まずは、それを受け入れてあげなければいけません。その上で、年齢的にまだ若いので、自分のセクシュアリティを決めつけたりせず、自分の心に素直に生きていくことの大切さを説くべきではないでしょうか。

LGBT当事者の皆さんのお話を伺うと、小学生とかそれ以前から、恋愛対象や性的興味が同性に向いていたという方が多いのも事実です。

ということは、この子供も、大人になったらやはり同性愛者になるかもしれません。

しかし、まだまだ精神的に未熟な年齢の時に、自分自身を型にはめるような意識を植え付けることは、自我の形成に悪い影響を与える気がしてなりません。

特に母親の愛というのは、どこまでも寛容な包容力であるべきです。

実は、この相談は今から約5年ほど前のものです。先日、この母親からお手紙を頂きました。

当時中学生だった子は、大学生になったそうで、先日、異性の恋人を母親に紹介したそうです。

「もし、あの時、子供のセクシュアリティを決めつけるような対応をしていたら、子供はその型にはまってしまい、かえって、自由な心をを奪われていたかもしれません」とのことでした。

もちろん、異性の恋人を連れて来たからといって、セクシュアルマイノリティでないとは限りません。

この母親は安堵の気持ちでお手紙を寄せられたのだと思いますが、この先も寛容な包容力を持ち続けて欲しいと思います。

2013/05/17

昨年、ある町の家庭教育学級で「第三の性教育」と題して、小中学校に通う子供を持つ保護者の皆さんを対象に講演を行いました。

第三の性というと、いわゆる半陰陽や両性具有を指す場合もありますが、私の言う第三の性教育は、セクシャリティに関する教育ということを意味します。

LGBTの区別や特徴、子供のLGBT当事者が抱える悩みを実例を紹介しながらお話しました。

講演から約1年経った先日、講演を聞いて下さった保護者の方から、児童・生徒のセクシャリティの問題に対して、より一層理解を深めるために、勉強会を作り、その成果発表を行ったという知らせを頂きました。

子供がセクシャリティに関する悩みを抱えている時、家族がその悩みを理解してあげることは、その後の人生を左右するほど重要なことです。

悩みを打ち明けられたら、その話を遮ったり、既成概念を押し付けるようなアドバイスをしたりせず、一緒に時間をかけて考えていこうという姿勢が必要です。

LGBT当事者には、家族関係が良好でないという方が多く見受けられます。

家族がセクシャルマイノリティに対する正しい理解と対応を身につけてくれていれば、少なくとも家族の中で孤立するようなことはないでしょう。

今回の家庭教育学級の受講者の皆さんのように、自発的にLGBT当事者への理解を深めようとする動きが、他の保護者の皆さんにも広がることを祈るばかりです。

子供の最大の拠り所は『家庭』であるはずです。その家庭内で、自分の居場所を失うことほど悲しいことはありません。

LGBT当事者の多くは、10歳未満の年齢で、既に自分自身がセクシャルマイノリティであるということを自認していたと言います。

子供のいる家庭の多くは、自分の家庭には無関係だと思い込んでいるのが現状でしょうが、それは大変危険です。

知らず知らずのうちに、我が子に家庭内での疎外感を感じさせないようにするためにも、第三の性教育を全ての家庭で実践して欲しいと願っています。

2013/01/25

今回は、中橋と経営者Kさんの対談です。

中「Kさんの会社には、LGBTの社員が複数人いらっしゃいますが、採用にあたって特に何かきっかけがあったのですか?」

K「きっかけは1人の社員でした。彼は元々アルバイトとして弊社で働きだしたのですが、とても優秀な子で、学校を卒業後に社員として入社してもらいました」

中「Kさんの会社は、分類で言うと、アパレル系ということでよろしいでしょうか?」

K「そうです。零細ですけど、何とか頑張っています」

中「卸から店舗経営まで順調に経営されてますね。さて、話を元に戻して、その、きっかけになった1人の方はどういう方なのですか?」

K「バイト時代から、販売の要領も上手で、お客様のウケも良く、仕入れに関する提案を積極的に行うなど、キラッと光る人材でした」

中「そういう人材に出会えたことは、経営者にとって幸せですね。それでその方がどうしたのですか?」

K「社員となって間もなく、店舗の運営を任せるようになったんです。アルバイトの採用も含めて任せて、厳し目のノルマも課しました。最初は苦戦していましたが、3ヵ月ほどして売り上げがドンドン伸びて来たんです。これには本当に驚きました。それで、理由を聞くと、有能なアルバイトたちを雇ったと言うんです。実際に店舗で見ていると、接客が上手なんです。接客の教育を徹底したんだなと思ったら、元々素質のあった知人を雇用したというんです。彼らの働きで、その店舗は前年比で2倍強の売り上げとなりました。」

中「すごいですね。それからどうなったのですか?」

K「さらにそのバイト君を正社員にして、別の店舗の店長にしたら、その店舗の売り上げも上がって、大変満足のいく結果になりました。そんな感じですから、私も彼らを可愛がりまして、娘の婿にとまで思ったのですが(笑)、全く女っ気がないというか、いや、彼らはいわゆるイケメンなんですよ。モテる外見と優しくて頼りがいのある中身を持ったイイ男達なんですよ。でも、彼女がいる様子でもないし、不思議に思っていたのですが、会社の慰安旅行で若手の女性社員とくっつけようと依頼があって(笑)、画策したら、何と彼が公にカミングアウトしましてね、驚きましたが、あぁそうなんだと妙に合点がいって、謎な部分が解けたもので、本人や社員たちと笑い合いましたよ。今では良い思い出です。それで、彼が雇ったアルバイト、後に社員になった彼らだけど、彼らも同じようなセクシャリティだということもわかって、これはこれで二度びっくりなんだけど、落ち込んだ女性社員も居たような(苦笑)、そんなことだったんですよ」

中「社長としては、セクシャルマイノリティを雇用していることへの戸惑いはありませんでしたか?」

K「びっくりはしましたが、仕事のスキルが高い人物なので、性的なことは何も気になりませんよ。よくいう偏見みたいなことは、弊社内ではないと思います。むしろ、彼らの持っている感性はこの業界に親和性があるというか、老若男女問わず、あらゆる層向けの商品に関して大変良いセンスで対応してくれていますよ」

中「そうですか。仕事の成果に対する評価にセクシャリティは関係ないという事ですね」

K「もしかすると、そういう性的な指向が、弊社の業務に良い効果をもたらしているのかもと考える節もありますよ。上手く説明できませんが」

中「ちなみに、社内にどれくらいのLGBTの方がおられるのですか?」

K「はっきりとカミングアウトしているのは4名です。他にもいるかもしれませんが、調査するわけではありませんので(笑) カミングアウトしている4名は、今では幹部ですよ。次期社長が出るかもしれません(笑)」

中「とても明るく語って頂きました。LGBTの社員と働くことに対して、特に構えているわけでなく、自然体で接しておられる様子がよくわかりました。ありがとうございました」

2012/06/29

何かの話の途中に、不意にレインボーサポートネットの話になり、LGBTについて話をすることがありますが、相手によっては、LGBTに対してそんなに詳しいわけではないのに、知っているLGBTに関する知識を披露しようとして、間違った認識を露呈してしまう方がいらっしゃいます。

ただそれは、悪意があるわけではなくて、自分はLGBTに対して正しい理解があって、受け入れていますよというアピールであったり、過度な拒否感は持っていませんよという姿勢の表明であったりします。

ただどうしても看過できない誤解もあり、そういう時にはなるべく修正をしてあげるようにしていますが、相手によってはそれすら難しいほどの誤解・曲解をしている場合もあって、そういう時には苦笑いするしかない状況です。

例えば、ゲイもレズビアンも全て「ニューハーフ」だと思っている方。そしてその代名詞は、はるな愛さん。確かに、はるな愛さんはニューハーフですが、少なくともレズビアンではありません。こういう方は、ビジュアルでLGBTを理解していて、男性なのに女性の格好をする・女性なのに男性の格好をするという部分を中心において理解してしまっています。

セクシャルマイノリティの区別を考える上で大切なのは、①体の性 ②心の性 ③恋愛対象の性 この3つに注目しなければなりません。①男②男③女であるならヘテロセクシャル(異性愛者)の男性ですし、①女②女③女であるならレズビアンの女性ということになります。

この①②③の分類は、パズル的な遊びが好きな方なら、かなり興味をもってご自分で組み合わせを試して、その結果を考えた上で、それが正解かどうかを私に聞いてきます。LGBTに誤解を持っている全ての人がパズル好きだといいのですが、そうはいかないのが現状です。

ただ、誤解を修正してあげて、それをきちんと理解した後に、根本的な疑問である「なぜLGBTが存在するのか?」という疑問について話をする方がおられます。存在については認知・理解をしたのだけども、その存在の理由にまで迫りたいという探究心豊かな方です。

しかし、こうなると私にはもう確たる答えを示すことはできません。お互いに、様々な意見をぶつけることになりますが、突然変異だとか、進化の過程なのではないかとか、逆に退化ではないかという方もおられます。

少々の誤解は問題ではありません。大切なのは、決めつけることをせずに、興味と関心をもって正しく理解しようとする姿勢です。

LGBTの社会的露出が、メディアを通して活発になることは、存在の認知そのものには貢献することですが、偏ったメンバーばかりが露出することで、全LGBTがその偏りと同一視されるという危険性があります。

悪気のない誤解を、少しずつ紐解いて、正しい理解へとつなげる必要がありますが、その手段がどうしても不足しているのです。せっかくの興味や関心を、誤解や曲解で終わらせてはいけません。

もし、悪気のない誤解をしている方と接することがあれば、是非、正しい理解へと導いてあげて下さい。ひとりひとりの正しい理解が連鎖すれば、社会全体の正しい理解につながるはずです。

2012/03/23

この季節、レインボーサポートネットに寄せられる相談の中に、年度末特有の相談があります。

Q:息子の仲の良い同級生にゲイの子がいるのですが、また新年度も同じクラスになってしまうと勉強の妨げになるのではないかと心配しています。学校にお願いして別々のクラスになるようにしてもらうべきでしょうか?

Q:転勤の辞令が出て、恋人と離れ離れになりそうです。転勤の辞令を覆す方法はありませんか?

Q:大学進学で地方から都会に出るのですが、年下の恋人が学校を中退してついてくると言っています。親の同意なしに都会で一緒に暮らせますか?

Q:夫がゲイであることは薄々気付いていましたが、この春に夫が定年退職をするのを機に離婚しようと思います。離婚手続と年金分割について教えて下さい。退職金が出たらすぐに離婚手続をしたいです。

出会いと別れの季節であるこの時期特有の相談が寄せられるようになってくると、相談件数は増加していきます。そして、夏にピークを迎え、秋に収束向かい、冬にはグッと減ります。実に不思議な現象です。

さて、上記の相談にもありますが、親が子供の交友関係の中に、LGBTがいることを知り、過剰に心配するというケースがあります。

子供自身は何も問題なく友人として接しているのに、その親が自分の子供に何らかの悪影響があるのではないかと心配してしまうケースです。

ここでいう悪影響というのは、①自分の子供がLGBTになってしまうのではないか? ②自分の子供がLGBTに誘惑されるのではないか? ③自分の子供がディープなLGBTの世界に興味を持って勉強に身が入らないのではないか? なとです。

「LGBTを否定するつもりはないけれど、自分の子供とは関わらないで欲しい」というのです。

若い世代ほど、LGBT当事者と直接の友達であるという人たちが増えてきました。早い人では、中学時代からLGBTの友達がいたという人もいます。今や、自分の周りにLGBT当事者がいるのが当たり前と言ってもいい時代になりました。

子供が知るLGBT当事者は、友達の1人であって、それはたまたま友達がLGBTだったということに過ぎません。LGBTだから友達になったわけではなくて、逆にLGBTだから友達にならなかったわけでもなくて、セクシャリティ云々ではなく、人間同士の交流の成果として友情を他の友人たちと同様に育んでいるのです。

親にしてみると、LGBTと言えば、テレビ番組に出てくる個性の強い面々のことを1番に想起します。非常に強烈な先入観でLGBTをひとくくりにしてしまっているのです。

親が子供を心配するのは当然ですが、子供の交友関係に不要な介入をしようとすることで、逆に子供の健全な人間関係の構築を疎外してしまうケースもあるのではないでしょうか。過保護な親が増えてきているような気もします。子供の方が柔軟に良い対応をしている場合が多いと思います。

年度末という1年の締めくくりの時期、人生の岐路となるこの季節、様々な人生の選択に悩む人々や、新しい環境へと旅立つために過去を清算しようとする人々などからの相談が寄せられています。

2011/11/18

レインボーサポートネットには、様々なマスコミからの取材依頼があります。

LGBTの事を記事にするにあたり、意見を求められたり、LGBTの当事者の紹介を求められたりします。

そうして記事にしてもらう事が、レインボーサポートネット(RSN)の知名度UPに大きく貢献するので、大変ありがたいことだと考えています。

最初は、記事が掲載された時点で満足していましたが、機会に恵まれるにつれ、実は、大切なのはその後の世間の反応だということがよくわかってきました。

新聞に掲載された記事は、インターネット上のニュース記事になったり、通信社の取材の場合は、様々なマスコミに記事自体が配信されて、私の知らないところで色々な媒体に掲載されて、受け手の目や耳に届きます。

次にその受け手の中には、その記事に良くも悪くも興味をそそられると、批評を発信する人達がいます。SNSや巨大掲示板などのインターネットツールを使って。

その批評は、様々な立場の人が、様々な気分で書いているので、これがまた非常に面白いのです。

中には、かなりキツイ内容の批判や揶揄、中傷や侮辱・差別表現などもありますが、インターネットだからこそ匿名で自分の深層心理や、実名を明かしては言えないような心の奥の感情を吐露しているものだと考えます。

RSNが当初マスコミに登場した頃の反応は、ほとんどが冷やかしや中傷でした。

しかし、年数が経つにつれ、ほんの5年足らずの事ですが、記事の内容を真剣に議論するような風潮がみられるようになってきました。

まだまだLGBTに対する風当たりは厳しいのが現実ですが、社会としてLGBTの皆さんの存在をどう受け止めていくのかという事について、存在自体の賛否両論を含めて本音で議論している様子は、私にとって貴重な意見の数々に思えます。

一般的に年齢が高い方ほど、LGBTに対する友好的な理解が得にくいという傾向がありますが、インターネットを多く活用する世代では、LGBTに対して一定の理解を示す方が増えてきているようです。

批判する人がいれば、それに反論する人がいて、さらに両方を客観的に見て批評する人がいるといった具合に、議論の過程がとても成熟しているように思えます。

字面だけを見ると、「便所の落書き」程度のものにしか見えないようなものもありますが、そこには何らかの意図があるわけで、その人物がなぜそのような書き方をしたのかと考えると、色々な見方ができます。

個人が情報発信を簡単にする事が出来る現在、見知らぬ誰かと意見を戦わせたり、多くの人の意見を知ることで、自分の意見をさらに完成したものにしていくことができ、それは理由なき偏見を是正してくれるきっかけにもなり得る重要なことだと思います。

全ての意見が、侮れぬ意見です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111116-00000842-yom-soci

2011/03/25



東北地方のレイさん(仮名・34歳)から、家族へのカミングアウトの相談を受けたのは、昨年(2010年)末のことでした。
レズビアンであるレイさんは、東京の大学を卒業後、実家のある東北地方に戻り、地元の金融機関に就職しました。
子供の頃から学業優秀で、家族や親戚も自慢するほど、地元ではちょっとした知名度を誇ったそうです。
そんなレイさんは、大学を卒業後に東京で就職するものと思われていたのに、地元愛から地元に戻るという決断をしたため、家族や親戚は驚きながらも大変喜んでくれたそうです。
3人兄弟(兄・レイさん・弟)のレイさんは、既に地元から離れて生活している兄弟に代わり、両親の面倒をみることも考えての帰郷でした。

就職したレイさんには、会社の上司や親戚から、色々な縁談が持ち込まれてきました。
『才女』ということを意識されているのか、一般的にはとても良い条件の縁談がほとんどでした。
しかし、レイさんはレズビアン。異性と結婚する気は全くないそうで、将来的にも自立して生きていくために、就職後もひたすらキャリアアップする努力を怠りません。
そんなレイさんのことを、会社の上司や同僚は「仕事と結婚した女」と冷やかしながら、徐々に縁談を持ち込まなくなっていったそうです。

でも、心配したのは両親です。
親想いで優しくて、何の問題も無い娘が、来る縁談を片っ端から断っているという状態を、さすがに不思議に思われたのでしょう。
しかし、娘がレズビアンでは?という発想には至らず、年老いた両親を残して嫁ぐことをためらっているのではないかと考えるようになったそうです。
年老いたと言っても、レイさんのご両親はまだ60歳代半ばの年齢。まだまだお元気です。
それなのに、両親揃って入れる介護付きマンションや高齢者専用住宅を探し始めたのです。
驚いたレイさんは、両親の誤解を解くために、家族(特にご両親)にカミングアウトをするかどうか悩んでいました。
親の期待に沿い、またそれ以上の成果を挙げてきたレイさんは、もともと両親へのカミングアウトには大きな抵抗がありました。
できればカミングアウトしたくないと思いながらも、両親の誤解を解くにはそれしか方法が無いのかと、半ばあきらめに近いような気持ちでカミングアウトに踏み切ろうとしているところでした。

私はレイさんと何度もメールのやり取りをしながら、レイさん自身の将来設計や家族と築いていきたい関係についてお聞きしました。
そうした中で、最初にご両親にカミングアウトするのではなく、お兄さんにカミングアウトすることになりました。
レイさんは、お正月に帰省したお兄さん夫婦に、思い切ってカミングアウトをしました。するとお兄さんは、驚きながらも、妙に納得した様子で「大切な妹であることは変わらない。気にするな」と言って受け入れてくれたそうです。
さらに、お兄さんの奥さんは、「レイちゃんやったら、私、付き合いたいわ~」とノリノリの返答だったそうです。が、レイさんがご遠慮したいとのこと(焦)
そんなわけで、お兄さんに対するカミングアウトはとりあえず成功したのでした。

外堀から埋めていくという作戦で、次は弟にカミングアウトしようという段取りになっていたのでしたが、何と、お兄さんが先に弟に話してしまいました。
レイさんが、弟を呼び出して、あらたまって話をしようとしたところ、「もしかして、お姉が、女の人が好きって話? 兄ちゃんから聞いてるけど…」という具合にあっけらかんと言われたとのことです。
それでどう思う?と問い返したところ、「別に」とエ●カ様みたいに、素っ気なく返されたそうです。
これについてレイさんは、弟らしいと思ったそうです。

いよいよ外堀は完全に埋まり、本丸の両親に迫ります。
ですが、ここであらためて、両親にカミングアウトすることについて、それでいいのかどうなのか、両親の言動を過去にさかのぼって振り返り、出来るだけ、ショックの少ない形で何とかできないかということの検討をしていました。
レイさんとしては、兄弟にカミングアウトして、とりあえずは無事に受け入れてもらえたことで、一定の満足感はありました。
ただ、両親が兄弟のように受け入れてくれるかどうかは未知数だったために、その先に進むことをどうしても躊躇してしまいます。
カミングアウトは、結果を重視して考えれば、必ずしも『善』ではありません。場合によっては、それをしない方が良かったという事も多々あります。
レイさんは、自分の両親の場合はどうだろうということを、日々考えていました。

「とりあえず、暖かくなってから、両親へのカミングアウトをしようと思います」
これが、2月末にレイさんと交わしたメールです。

そして、3月11日の東北関東大震災の発生。
私は、少し前までメールのやり取りをしていたレイさんのことが気掛かりでなりませんでした。

そして先日、レイさんからメールが届きました。
レイさんご一家は、全員が無事であるとのこと。家は全壊したが、他県の親戚の家に両親と避難が完了したとのことでした。
さらに、避難していく道すがらに両親へのカミングアウトを済ませたとのこと。
両親からは「生きているだけで十分だ」と言われたとのことです。
レイさんご本人は「まさに、どさくさに紛れてカムアウトしちゃいました」と若干恐縮した様子。
でも、ご両親が凄い。「お前は生き残ったのだから、同じような境遇の人(レズビアンを指しているそうです)で、この地震で苦しんでいる人のために何かしないとバチが当たるぞ」との厳命が下り、レイさんは、震災が原因で連絡が取れなくなり離れ離れになっているレズビアンカップルのための情報収集サイトを立ち上げることにしたそうです。
『生きているだけで十分』この言葉から読み取れるのは、凄まじい体験を経て生き残った人から発せられる『命』への崇敬の念でしょう。
21世紀最大の国難となりつつある現状下では、セクシャリティなどのあらゆる個人的差異を超えた連携と、理解・信頼が強く求められています。
各人が自分の出来ることから被災者への支援を考えなければなりません。
「何かの役に立ちたい! 誰かを助けたい!」こういう時だからこそ、助け合いの使命感が自然に漂う国民性であって欲しいと願うばかりです。

あらためて、この度の東北関東大震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りすると共に、今なお惨禍の渦中におられる方の一刻も早いご快癒と平穏な生活の再建をお祈り申し上げます。

2010/10/08

今回は、中橋とゲイの息子さんを持つ佐賀さん(仮名・女性)との対談です。

中「LGBT当事者のご家族との対談は初めてです。今回、対談を快諾して下さった理由からお聞かせ下さい。」

佐「息子がゲイだということを知って5年くらいになりますが、ようやく自分の心の中でそれを受け入れる余裕ができたからだと思います。」

中「息子さんがゲイだということを知ったきっかけを教えて下さい。」

佐「息子が高校生の時に、当時息子がお付き合いをしていた男性とトラブルを起こして、その男性が我が家に押し掛けてくるという事件をきっかけに知ってしまいました。」

中「穏やかではありませんね。トラブルの内容を教えて頂いてもいいですか?」

佐「当時息子がお付き合いしていた男性は、4歳年上の大学生だったのですが、その方のゲームソフトやゲーム機を借りていて、それを無断で売って換金していたんです。それで、相手の方が怒って、怒鳴りこんで来たと…」

中「それはちょっといけませんね。息子さん、どうしてそんなことを?」

佐「相手の男性の浮気が発覚して、それで慰謝料代わりに売り払ったそうなんです。」

中「・・・。高校生だった息子さん、なかなかやりますね(焦)」

佐「息子は、恋人に裏切られて自暴自棄になっていたのでしょうね。それで、ゲームを売り払ったり、相手が押し掛けてきた時に、私や家族に全てを吐き捨てるように話してしまい・・・」

中「カミングアウトのやり方としては、最悪だったわけですねぇ。」

佐「そうですね。私は、息子がゲイだというショックと、実際に男性とお付き合いしているという現実に対するショックと、勝手にゲームを売り払って換金したというショックが同時に来て、もう頭が変になりそうでした」

中「それでどうなったのですか?」

佐「私がお金を相手の男性に払おうとしていると、息子の姉(私の娘で当時大学生ですが)が、相手の男子大学生を一喝して、そうしたら、相手が退散していきました。それっきりです。」

中「息子さんにはお姉さんがいらっしゃるのですね。」

佐「はい。一男一女です。」

中「お姉さんは、弟さんがゲイであるということは知っていたのですか?」

佐「はい。息子が中学生の時に、姉に相談して発覚したそうです。」

中「お母さんだけが知らなかったわけですね。」

佐「はい。うちは母子家庭ですから、私は外に働きに行っていて、帰りが遅いことも多く、今思えば会話不足だったのかなとも。姉が母親代わりの側面が大きかったのかなとも思います。」

中「息子さんがゲイだと知ってしまった後は、どのように息子さんに接しておられるのですか?」

佐「最初は、母子家庭であることや私が家を空けがちなので、そのことが理由で息子がゲイになったのではないかと思い、息子をゲイにしたことを本人に謝っていました。でも、息子や娘から、お母さんのせいではないと言われ、特に娘からは、ゲイに関する様々な事柄を教えてもらい、私のゲイに対する偏見を正してもらいました。」

中「よくできた娘さんですね。」

佐「息子の一番の理解者は、姉である娘なんだと思います。」

中「娘さんのレクチャーで、息子さんのセクシャリティを受け入れられるようになったわけですね。」

佐「はい。でも、実際に受け入れるには時間がかかりました。理屈ではわかっていても、気持ちで受け入れるには葛藤がありました。ゲイが嫌いというわけではありませんが、息子の将来を考えると、険しい人生になるんじゃないかと思い、心配のあまりに、この現実を何とか変えることができないかとしきりに考えていました。ゲイは病気じゃないということを聞かされても、何か方法があるのではないかと思案したり、そもそもなぜうちの息子がゲイになったのかということを考えるうちに、母親である自分自身を責めたり、育て方や現在の家庭環境のことなど、色々なことをグルグルと考えてしまって鬱っぽくなったりもしました。でも、息子と娘が私を支えようと努力をしてくれて、私は『ゲイ』ということへの理解はまだまだ乏しいかもしれませんが、自分の子供への愛情は変わらないので、子供の個性の一つのように理解して今日に至っています。」

中「息子さんを拒絶することはなかったわけですね?」

佐「はい。それは一度もありません。とにかく母親として失格なのではないかと、自分自身を責めていましたから。同じような話を他のお母さんたちからもよく聞きます。」

中「他のお母さんたちというのは、ゲイの子供を持つ母親たちということですか?」

佐「はい。ゲイやレズビアンの子供を持つ母親で、コミュニティーサイトを通じて知り合い、時々オフ会をしています(笑) 同じ境遇の方々に知り合えたのは幸運でした。」

中「当事者でしかわからない悩みがあるでしょうし、そうしたコミュニティと関わりを持てたことは良かったですね。」

佐「息子がゲイであるということを前向きにとらえることまでは出来ませんが、息子のセクシャリティが自然の摂理に反したものであるという現実を踏まえて、そのことのために起きる様々な社会的障害を息子と一緒に乗り越えて行こうと思います。」

中「頼もしいお母さんですね。今後、何か抱負はありますか?」

佐「息子や息子と同じようにセクシャリティの問題で悩んでいる方々のために少しでもお役に立ちたいと、LGBTを支援するビジネスを展開する会社を設立したいと考えています。」

中「具体的にはどういうビジネスなんですか?」

佐「いろいろ考えていますが、まずは、LGBTの方々用に不動産の賃貸について仲介するビジネスを行いたいと思っています。」

中「不動産賃貸の仲介業ですか。なぜ、LGBTの方々向けに?」

佐「例えばゲイやレズビアンのカップルは同性同士で暮らそうとすると、なかなか契約が進まないことも多いのです。そこで、会社として、理解のある大家さんから、同性同士の入居OKな物件を提供してもらい、安心して入居してもらうというビジネスモデルを考えています。」

中「なるほど。LGBTの住居問題はよく耳にします。もし、LGBTの方々が、自分のセクシャリティを気にせずに家を借りられたら便利でしょうね。需要は少なからずあるでしょう。でも、不動産ビジネスは難易度が高いのでは?」

佐「実は私は長年、不動産業界で働いてきました。もちろん、雇われの身ですが、何度か独立して不動産業を営んでみたいと思ったことがあります。そして今が、その時かなと。もう歳ですが、小規模でも人に喜んで頂けるようなビジネスができればいいなと思うんです。」

中「素晴らしいですね。成功されることを心から祈念しております。」

佐「ありがとうございます。頑張ります!!」

2010/08/27

今回は、婚活をアドバイスするコンサルタント会社を起業した、杉田さん(仮名・レズビアン)と中橋との対談です。

中「いろいろとお聞きしたいのですが、まず、婚活アドバイザーとは具体的にどういうことをするのか教えて下さい」

杉「今、空前の婚活ブームですが、思い通りに婚活を成功させる女性は意外と少ないのです。そこで、理想の相手をゲットするために必要なスキルを身につけてもらうようにアドバイスをします」

中「アドバイスの具体的内容はどういったものですか?企業秘密ですかね(焦)」

杉「究極的には一人一人によって異なりますから、その辺の見極めや指導法は企業秘密ですが、大枠をお話しすると、あらゆる『自分磨き』についてアドバイスをし、実践の場を提供して、魅力ある女性になって頂くという事です」

中「自分磨きというのは、お化粧とかエステとか、いわゆる美容に関するものですか?」

杉「もちろんそれもありますが、立ち振る舞いやファッションのセンス、心理学など様々な分野について総合的に身につけてもらうためのアドバイスやレクチャーをします」

中「さながら『自分改造』ですね」

杉「婚活は就活同様、人生をかけた競争ですから、自分にとって足りないものを足りないままにしておいて良い結果が出るわけがありません。努力して補えるものは最大限に補ってもらって、自分自身の価値を高め、良い結果に結びつくようにアドバイスしています」

中「確かに、杉田さんの会社設立の手続きをさせて頂いた際に、様々な事業内容を定款(テイカン・会社の規則)に記載しましたね。まるで何かの学校という感じでした」

杉「まさに学校ですよ。婚活学校!!女性が幸せになるための学校です」

中「杉田さんはなぜ、婚活アドバイザーとして起業されようと思われたのですか?」

杉「私はウエディングプランナーとして会社勤めをしてきました。もともと、イベントの裏方の仕事が好きで、学生時代はそういうアルバイトばかりしていました。卒業後に、運良くウエディングの業界に就職することができ、多くのカップルの結婚式や披露宴をお世話していく中で、とてもやりがいがある半面、結婚という人生の一大イベントをもっと前の段階からお世話することが出来ないだろうかと考えるようになりました」

中「そこで、婚活段階からの裏方を始めようと?」

杉「ハイ(笑)会社で身につけさせてもらったスキルや、あらためて大学で学んだ心理学などの知識を生かせて、女性に総合的に婚活をアドバイスする自信ができたので、思い切って退社して起業しました」

中「なるほど。で、ここからが今日の本題ですが(笑)、この仕事をされるにあたって、ご自身のレズビアンであるというセクシャリティは何か関係していますか?」

杉「う~ん…多分、関係してないと思います。先ほども言いましたが、私は裏方の仕事が好きで、私が準備したものやシナリオの中で、実際に舞台に上がる人が上手に事を進めてくれて、プロジェクトが成功するというのが好きなんです。だから、婚活のコンサルタントにしても、お客様が見事に婚活を成功されるように道筋を立てていく過程が好きなのであって、そこにはセクシャリティの要素は関係ないかなと思います」

中「なるほど。少しひねくれた見方かもしれませんが、男女の結婚とは無関係なレズビアンの方がなぜ男女の結婚に関して携わろうと思われたのか不思議な気がしたのですが、杉田さんのお話しを聞いて、その理由が理解できました」

杉「まあ確かに、自分自身とは無関係な部分が多いから、割り切ったアドバイスができるのかもしれません。男性のハートをゲットするためにというよりも、人間的に魅力のある女性を作り上げようとしているのかもしれませんね。それが結果的に男性にも評価されると」

中「婚活中の女性に対して、自分磨きのアドバイスをするのはわかりましたが、より良い男性の見分け方にみたいなことをアドバイスするのですか?」

杉「もちろんです。女性は自分を磨くわけですから、それに応じたか、それ以上の良い男性をゲットしなくてはなりません。変な男性に騙されないように様々なアドバイスをしますよ(笑)」

中「失礼を承知で質問しますが、レズビアンの杉田さんは、男性との交際経験は無いと伺っていますが、男性の善し悪しを見分けることをどうやって身につけたのですか?」

杉「ハハハ、、厳しい質問ですね。私がしているのは、恋愛アドバイスではなく、婚活アドバイスなんです。恋愛ではなくて、結婚。恋愛過程のドロドロを解決する手段をアドバイスするのではなく、結婚というゴールに向けて突き進む方法論をアドバイスしているのです。結婚後の生活についてアドバイスするわけでもありません」

中「杉田さんのビジネスにとっては『結婚』がゴールなわけですね」

杉「そうです。もちろん、お客様ご本人が理想とする相手に出会うようにコンサルティングするわけですから、その後の結婚生活が円満に進むように願うのは言うまでもありません。しかしまず、その入り口である『結婚』を成功させるのが私のビジネスの目標です。もっと具体的に言うなら、お客様がどの男性にしようかと迷うくらいに、男性からのアプローチが多い女性になって頂くということです」

中「女性にとって、恋愛と結婚は別物なのですね(焦)」

杉「そうですよ。その辺を割り切って活動しているのが、昨今の婚活女性の特徴でしょう。勝つか負けるかなんですよ」

中「そうですか。厳しい世界ですね。男性への婚活アドバイスはしないのですか?」

杉「実は、男性への婚活アドバイス事業も来年度から始める予定で、担当のスタッフや提携先確保を進めている最中です」

中「色々と広がっていきそうなビジネスですね」

杉「ありがとうございます。多くの人に幸せになって頂けるように頑張ります」

中「最後に、杉田さんには私生活上のパートナーはいらっしゃるのですか?」

杉「いますよ♪ 今、アメリカに留学しています。12歳年下です。(写メを見せて頂く)」

中「ラブラブな写真ですね。今は遠距離恋愛なんですね。しかも、一回りも年下で心配ではないですか?」

杉「浮気とかですか?(笑) 大丈夫です!!来夏に帰国して来ますので、そうしたら一緒に暮らして、私の事業も手伝ってもらおうと考えています」

中「私生活も充実していらっしゃるのですね。あと、もう一点ありました(焦) レズビアンであることを仕事関係の方にカミングアウトしていますか?」

杉「私は親兄弟にはカミングアウトしていますが、友人や仕事仲間などには一切カミングアウトしていません。仕事が恋人の猛烈社長と思われていたいです。でも私生活では彼女に甘えます(笑)」

中「なるほどそうですか。お仕事の更なる成功をお祈りします。今回はありがとうございました」

杉「こちらこそありがとうございました」

2009/11/06

アキラ君(仮名)は、地方から都会の専門学校に入学し、一人暮らしを始めました。
都会に出てきて、初めての一人暮らし。
若者がゲイライフを満喫するには十分な環境が、その都会にはありました。
アキラ君は、次第に都会でのゲイライフにどっぷりと浸かっていきました。
生活は夜行性になり、学校の授業はサボりがちになりました。そして1年も経たずに退学。
アキラ君は、都会で学生としてではなく、フリーターとして生活していく道を選択しました。

ゲイバーの店員を皮切りに、ゲイ向けのアダルトグッズ販売店員、ゲイビデオスタッフ、ゲイの社交場のスタッフなど、「その道」の現場職を転々としました。
しかし、いずれも長続きせずに、それぞれ数ヶ月で辞めてしまいました。
アキラ君曰く「客として見ていた側面と、内部にスタッフとして入った感じのギャップがあまりにも大き過ぎた」とのこと。
結局アキラ君は、お金に困ると、ゲイビデオに出演し日銭を稼ぐような状態になりました。

そんな生活の中で、アキラ君に彼氏が出来ました。
アキラ君より年下の彼は、かつてのアキラ君同様に田舎から都会に出てきたばかりの若者でした。
二人はアキラ君のアパートで同棲を始めました。
アキラ君の彼は、昼間は大学に通い、夜は居酒屋でバイトをしていました。
アキラ君は次第に彼氏に生活費の大半を頼るようになっていきました。
彼氏は、アキラ君がゲイビデオに出演するのを嫌い、お金の工面は自分がするので、アキラ君にはもう二度とゲイビデオには出演しないでほしいと願ったのでした。

二人の生活は慎ましい生活のはずでしたが、アキラ君のゲイライフは何も変化しませんでした。
彼氏がバイトに行っている間に、アキラ君はゲイの仲間と飲み歩いたり、彼氏を裏切るような行為を平気で繰り返しました。
やがてお金に困ったアキラ君は、友人や消費者金融から無計画に借金をし、そのお金で遊び、返済のためにまた借金をするという繰り返し状態になりました。
自転車操業的な借金生活は、そう長くは続かず、アパートに督促状が届き始めました。
アキラ君の彼氏は、なけなしの貯金から返済を肩代わりしてくれましたが、それでも全額返済には及びません。

そしてとうとう、何の前触れもなく、アキラ君はアパートから姿を消してしまいました。

残されたアキラ君の彼氏は、周囲の反対を押し切って、大学を中退し、昼も夜も働きながら、アキラ君の残りの借金を完済しました。
アキラ君が姿を消して1年ほど経った頃、アキラ君の目撃情報が寄せられました。
アキラ君は以前出演していたのとは別のビデオ会社のゲイビデオに出演していたのでした。
そして、あるボーイズマッサージ店に勤務していることも判明しました。
アキラ君の彼氏は、急いで現地に向かいました。

音信不通になって1年、二人はアキラ君が勤務する店で再会しました。
アキラ君と彼氏は、店のオーナーを交えて話し合いを持ちました。
これまでの経緯を一通り聞いたオーナーは、アキラ君を思いっきり引っ叩いた後、解雇を通告しました。

二人は一緒にアパートに戻りました。
1年前と全く変わらないアパートに戻ってきたアキラ君は、これまでのことを少しずつ彼氏に話し始めました。
彼死もまた、アキラ君にこの一年のことを話しました。
アキラ君の彼氏は、アキラ君のことを許しました。そして、やり直すことを一緒に誓いました。
アキラ君は昼間の仕事を探し始めました。就職難のため、なかなか思うような条件での仕事が見つかりません。
とりあえず、近所のコンビニでのバイトは見つかりました。

そして、初出勤の日、アキラ君は、アパートの前の道路で交通事故に遭いました。

徒歩で道路を横切ろうとした際に、大型トラックに轢かれてしまったのです。
ほぼ即死でした。

アキラ君の彼氏は、その時、アパートで事故の音を聞いていました。
駆け付けた時には、もうその最悪な結末が即座に理解できる状況でした。
この時ばかりは、アキラ君の彼氏は動揺を隠しきれませんでした。
アキラ君は複雑な家庭環境で育ったため、こういう時に連絡を取れる家族が居ませんでした。
困ったアキラ君の彼氏は、いくつかの伝手を頼って、私に連絡をくれました。
アキラ君の彼死もまた複雑な家庭環境で育ち、二人は似たような境遇にありました。

アキラ君の死後事務をしながら、私はアキラ君の生い立ちから死に至るまでの短くとも波乱万丈な一生を知ることになりました。
それを正確にアキラ君の彼氏に伝える仕事を、先日ようやく終えました。

怒りと涙と悔悟と無念、相手があってのものであり、この世から消えてしまえば、もう、何も残りません。残すことに意味はないのです。
ただただ、良い思い出だけが頭の中を駆け巡るのだとか。

限りある人生、どのように生きてもまたそれはそれで人生なのですね。
愛する人に出会うことも、愛してくれる人に出会うことも、本当に尊いことです。
合掌。。

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