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2013/09/30

ザ・ウォーカー
【The Book of Eli】2010年

直近の5年の中でベスト映画は、と言えば絶対入れたいのがこの映画。
とにかく映画館で見て、ものすごく感動した。

もちろんいわゆる最後の謎解きも感動のひとつだけれど、見終わった後に、
この映画の原題が邦題と全く異なる「The Book of Ely」イーライの本、
である、ということに深い意味を感じた時、なんだかすごくいろいろなことが合致した。

デンゼル・ワシントン【Denzel Washington】演じる “歩く者” 、
ある “本” を探し求めるゲイリー・オールドマン【Gary Oldman】演じる
カーネギー【Carnegie】。そして男は “本” を持つ。

本には名前がなく、男にも名前がない。

話は単純で後はふたりの追っかけっこ、それにカーネギーに自由を捕らえられていた娘
ソラーラ【Solara】が男と旅を供にすることになり話は淡々と進む。

カーネギーの手下達は男を “ウォーカー” と呼び
道中、男の名前はただ一度、バッグに貼り付けられた名札が出てくるのみ。

(Kmart ロゴ) Hello, my name is ELI

Kマート店員 イーライと訳されているが直訳は見ての通り
“こんにちは、私はイーライです”

しかもそれを見つけるソラーラは字が読めないので彼の名前、と気がついていない。

そして本はイーライやカーネギーが時折つぶやくセリフから、
聖書であることは観客の私たちには分かる。

この映画は単純な作りだけれど、名前がある物ない物、
名前が呼ばれる者呼ばれない者、が意図的に振り分けられているように思う。

見えるままのもの見えているのに気がつかないもの、見えないけれどあると感じるもの、
名前の意味、文字の意味、読む意味、理解する意味、をじわっと考えさせられる。

そしてこの映画全体のトーン、白黒っぽい、セピアっぽい、古めいた映画っぽい
そのざらっとした質感が派手なアクションの中にあるイーライの淡々とした、
けれど確実な一歩一歩の前進を更に際立たせる。

目的地目前にしてイーライは言う。

My name is Eli.
I have a King James Bible in my prossesion.

俺はイーライ
聖書を持っている

King James Bibleを調べてみると、聖書の中でも欽定訳聖書と呼ばれる、
国王による命名、つまり公的に訳された英訳聖書。
更には欽定訳聖書と言えばこのジェイムズ王訳と言われる格調高いもの。

そして何故「持っている」を “have” だけにとどめず “in my prossesion”、
〜の所有である、と “形のないモノ” を含む「持つ」にしたのか。

ありきたりだけれどイーライが物理的に所有した書物を、
旅を通しその言葉の意味までを理解し自分のものとしたから、という単純な意味。

けれどやはりそこにたどり着くには
私たちも約2時間、イーライと供に旅を続けたからこそ分かる感動
そこが一番だったのだと思う。

その過程を淡々と、時に強靭なアクションで演じたD・ワシントン、
私の中ではもう、デンゼル・ワシントン=ザ・ウォーカーだなぁ。

そして毎回コラムではついつい真面目なことばかりを書いていますが、この映画も、
普通にアクション映画的に気楽に楽しめるので、機会があればぜひ見てみてください!

2013/09/30 11:55 | movies | 1 Comment

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